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第27話 装備

町へ戻る頃には、空が少し赤くなり始めていた。


門を通り、そのままギルドへ向かう。


今日受けていた依頼は、リーフ草の採取とホーンラビット、それにゴブリンの討伐だ。


受付で採取したリーフ草と討伐証明を出し、報酬を受け取る。


これで今日の依頼は終わり。


あとは鉄拳亭へ戻るだけだ。


鉄拳亭へ戻ると、夕食前なのか、バルドは厨房と食堂を行き来していた。


『おう、おかえり』


「ただいま。バルド、ちょっと見てほしいものがあるんだけど」


『なんだ?』


「今日、初めて見る魔物を倒してさ」


『初めて見る魔物?』


バルドが聞き返したところで、食堂の方から声が飛んできた。


『バルド! こっち酒もう一杯!』


『あいよ!』


バルドはそちらへ返事をしてから、俺を見る。


『ちょっと待ってろ。先にこっち片付けてくる』


「分かった」


バルドが酒を運んでいる間、俺は空いている席に座って待つ。


しばらくして戻ってきたバルドが、俺の前で足を止めた。


『それで、何を狩ってきた?』


「名前はたぶんガルディロ。図鑑で見たやつだと思う」


『……どこでだ?』


「平原。いつもより東まで行ったところ」


『出してみろ』


店の中で出すには邪魔になりそうなので、裏へ回る。


マジックバッグへ手を入れ、まず今日仕留めたホーンラビットの肉を取り出す。


「こっちはいつもの」


『おう。あとで見とく』


それから、奥に詰め込んだガルディロを引っ張り出す。


「問題はこっち」


入れる時もギリギリだったが、出す時も楽ではない。


「よっ……と」


地面へ下ろすと、丸まっていた身体が少し開いた。


バルドがしゃがみ込み、甲殻や首の傷を確認する。


『首で仕留めたのか』


「うん。そこくらいしか剣が通らなくて」


『なるほどな。血もそれなりに抜けてるみたいだ』


「血抜きしたわけじゃないけどね」


『首をここまでやってりゃ、結果的には抜ける』


バルドはもう一度傷を確認してから、甲殻へ目を移した。


『ガルディロか』


「やっぱり知ってる?」


『そりゃな。平原の東側じゃ珍しい魔物でもねえ。ただ、町の近くまで来る奴でもない』


「俺が東に行きすぎたみたい」


『だろうな』


即答された。


『甲殻にはほとんど傷がねえな。どうやって倒した?』


「木にぶつけて、倒れたところをズンッと」


『……そんな簡単な相手じゃねえぞ』


「簡単じゃなかったよ」


『見りゃ分かると思うが、こいつは甲殻が売れる。状態が良けりゃ防具にも使われる』


「防具?」


『ああ。胸当てなんかにそのまま使うわけじゃねえが、加工して補強に使う。職人次第だな』


なるほど。


剣を弾いた甲殻だ。


防具に使えると言われれば納得できる。


『肉も食えなくはねえ。ただ、こいつは肉より甲殻の方が値がつく』


「へえ」


ホーンラビットとは逆だ。


魔物によって、価値のある場所も違うらしい。


「これ、どうすればいい?」


『俺が捌いてやってもいいが、甲殻まで売るならギルドの解体場に持ってった方が話が早い』


バルドが少し考えてから、ガルディロを見る。


『ただ、肉を一晩そのままにしとくのも良くねえな。こっちは俺が捌いて買い取ってやる』


「甲殻は?」


『そっちは残しとく。売るなり加工するなり、好きにしろ』


「じゃあ、お願いする」


これなら肉を悪くする心配もないし、甲殻をどうするかは後で考えられる。


『しかし、お前もそろそろ防具くらい考えた方がいいんじゃねえか』


「防具か……」


『その格好で魔物相手にしてんだ。死にたくなきゃ、身を守る方にも金を使え』


耳が痛い。


この町に来てから、時間が空いた時に安い肌着や服を見つけては少しずつ買い足しているけど、防具らしいものはまだ揃えていない。


採取用のナイフや道具は少しずつ揃えてきた。


でも、戦う時の格好は大きく変わっていない。


今日だって、ガルディロの突進をまともに受けていたらどうなっていたか分からない。


VITがあるから大丈夫。


そんな考え方をするつもりはない。


「防具って高い?」


『物による。革ならまだ手が届くだろうが、金属を使ったもんは当然高くなる』


「だよなあ」


『最初から全部揃える必要はねえ。胸当てでも腕当てでも、自分が必要だと思うところから揃えりゃいい』


それなら現実的かもしれない。


今持っている金と、これから稼げる金。


武器もいつかは替えたいし、マジックバッグも今日のガルディロ一体でほとんど限界だった。


欲しいものを考え始めると、いくらあっても足りない。


「金、稼がないとな……」


『冒険者らしくなってきたじゃねえか』


「金が足りないのが?」


『欲しい装備のために魔物狩るところがだ』


「なるほど」


少し納得してしまった。


夕食を食べながら、頭の中でこれから必要になりそうなものを考える。


防具。


武器。


もう少し大きなマジックバッグ。


それに宿代や食費もかかる。


レベルを上げることばかり考えていたけど、強くなる方法はそれだけじゃない。


装備を揃えるにも金がいる。


そして、その金を稼ぐには依頼をこなして魔物を狩る必要がある。


「結局、やることは変わらないか」


明日も依頼を受けよう。


レベルを上げながら金を稼ぐ。


その金で装備を揃える。


今の俺には、それが一番分かりやすい。


部屋へ戻る前に、さっきバルドが残しておくと言っていたガルディロの甲殻を思い出す。


売れば金になる。


防具に使えるなら、加工してもらうのもありかもしれない。


どちらにするかは、明日考えよう。

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