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第25話 積み重ね

翌朝。


朝食を済ませて鉄拳亭を出ると、そのままギルドへ向かった。


昨日決めた通り、今日からしばらくはレベル上げを意識して依頼を受けるつもりだ。


とはいえ、強そうな魔物を探して無理に戦うつもりはない。レベルを上げるために死んだら意味がないし、生活するには金も必要になる。


今の自分でも倒せる魔物を狩りながら、依頼の報酬も稼ぐ。その方がいい。


ギルドへ入り、依頼板を確認する。


東の森に関する依頼は、今日も見当たらない。あの森で何が起きているのかは気になるが、今の俺が考えても仕方がない。


視線を別の依頼へ移す。


南側のリーフ草採取、南から南東にかけて見かけるホーンラビットの討伐。それから、以前にも受けた南東のゴブリン討伐。


どれも今の俺なら受けられる依頼だ。


「この辺かな」


依頼の内容を確認して受付へ向かい、登録証を渡す。手続きを済ませると、町の南門へ向かった。


門を出てしばらく歩き、街道から少し外れる。


今日は最初から急いで南東へ向かわず、まずは南側を回っていくつもりだった。リーフ草を探しながら進めば、ホーンラビットが見つかる可能性もある。


昨日までなら、依頼を1つ受けて、その依頼だけをこなすことが多かった。でも、同じ場所で取れるものや狩れる魔物が分かっているなら、まとめて探した方が効率がいい。


少し歩いたところで、草の間に見覚えのある葉を見つけた。しゃがんで形を確認する。


「リーフ草だな」


昨日採ったものと同じだ。


根元を傷つけないように採取して、バルドにもらった小袋へ入れる。一度覚えてしまえば見つけるのはそれほど難しくない。


とはいえ、似たような草もあるので、見つけるたびに確認は必要だった。


さらに南へ進みながら探していると、今度は少し離れた場所で草が揺れた。足を止めて様子を見ると、長い耳が草の上から覗いた。


ホーンラビットだ。しかも1体だけ。


「いた」


剣を抜き、ゆっくり距離を詰める。


向こうもこちらに気づいたらしく、身体をこちらへ向けた。昨日なら、突進してくるタイミングをかなり意識していた。


もちろん今も油断するつもりはない。ただ、何度か戦ったことで動きは分かってきている。


ホーンラビットが地面を蹴った。


正面から向かってくる角を横へ避け、すれ違いざまに剣を振る。一撃で倒れたホーンラビットが動かなくなったことを確認して、剣を下ろした。


「慣れてきたな」


最初に戦った時より、ずっと落ち着いて動けている。


周囲に別の魔物がいないことを確認してから、昨日と同じように血抜きを始めた。


処理の手順も、昨日より迷わない。まだバルドのように手早くできるわけではないが、本を何度も確認しながらやっていた昨日よりは早く終わった。


必要な肉を切り分けてマジックバッグへ入れ、討伐証明になる角も回収する。


「これなら結構回れそうだな」


死体を丸ごと持ち帰らなくていいだけでも、かなり楽だ。


その後も南側を歩き、リーフ草を見つければ採取し、ホーンラビットを見つければ狩る。


途中で2体同時にいるホーンラビットも見つけたが、昨日経験したばかりだ。片方の位置を意識しながら先に1体を仕留め、残った1体を落ち着いて倒す。


昨日ほど危ない場面にはならなかった。戦い方を知っているだけで、同じ相手でもずいぶん違う。


昼を過ぎた頃には、リーフ草も何株か集まり、ホーンラビットの肉も増えていた。


「そろそろ南東に行くか」


露店で買っておいた軽食を取り、水を飲んでから移動を始める。目的はゴブリンだ。


以前にも何度か戦っている相手だが、今日は最初から複数を相手にする可能性も考えている。


南東へ進んでしばらくすると、遠くに動く影が見えた。すぐには近づかず、少し離れた場所から様子を見る。


ゴブリンが3体。それぞれ手に粗末な武器を持っている。


以前なら、3体いると分かった時点でもう少し慎重になっていたと思う。今も慎重に動く必要はあるが、怖くて手を出せない数ではない。


「狙う順番と位置取りさえ間違えなければ、3体でも問題ないな」


大事なのは、3体を同時に相手にしないことだ。一番近い奴を先に倒して、残りの2体が左右から同時に来ないように動く。


周囲を確認してから剣を抜き、ゴブリンへ近づいていく。


最初にこちらへ気づいた1体が声を上げ、残りの2体も振り返った。3体が一斉に向かってくる。


そのまま正面からぶつかることはせず、少し横へ動く。先頭の1体だけが前へ出る形になった。


振り下ろされた武器を避け、胴へ剣を叩き込む。


まず1体。


止まらず、そのまま位置を変える。


後ろから来ていた2体のうち、近い方がこちらへ向かって武器を振った。それを剣で受け流し、体勢が崩れたところへ斬り込む。


2体目が倒れる。


残ったのは1体だけ。こうなれば難しくない。


相手の動きを見て攻撃を避け、剣を振る。最後のゴブリンが地面へ倒れた。


周囲を確認してから、息を吐く。


「うん。3体ならいけるな」


以前よりSTRが高くなったわけでも、AGIが上がったわけでもない。それでも、前より楽に戦えた。


相手がどう動くのかを知っているし、自分がどう動けばいいのかも少しずつ分かってきた。ステータスだけじゃなく、戦った経験そのものも無駄にはならないらしい。


「これなら、もう少し探してもいいか」


倒したゴブリンから討伐証明を回収し、再び南東を歩き始める。


レベル10までは、まだ遠い。


でも、昨日までと同じことを繰り返すだけじゃない。採れるものを覚え、魔物の処理を覚え、複数を相手にする戦い方も覚えた。


できることは確実に増えている。


だったら、焦る必要はない。


今日倒せる相手を倒して、経験を積む。まずはそれを続けよう。

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