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第24話 これからの成長

町へ戻ると、そのままギルドへ向かった。


受付で登録証を渡し、持ち帰った6本の角を並べる。


『ホーンラビット6体ですね』


「うん。それとリーフ草も」


バルドにもらった小袋から2株のリーフ草を取り出す。


昨日と同じように状態を確認され、討伐報酬とリーフ草の買い取り分を受け取った。


昨日と違うのは、これで終わりじゃないことだ。


マジックバッグには、現地で処理したホーンラビットの肉が入っている。


ちゃんと売れる状態になっているのか。


それを確認するため、ギルドを出て鉄拳亭へ戻った。


扉を開けると、店内ではバルドが夕食の準備をしていた。


『おう。帰ったか』


「期待の肉を持ってきたぞ」


『期待はしてねえって言っただろ』


朝と同じことを言われた。


「まあ見てくれって」


厨房へ入り、マジックバッグから持ち帰った肉を取り出す。


昨日はホーンラビットを丸ごと5体、ロープで括って引きずって帰ってきた。


今日は違う。


血を抜き、必要な肉だけを切り分けて持ち帰っている。


バルドは一つずつ手に取り、切り口や肉の状態を確かめていった。


『……昨日よりはマシだな』


「お」


『まだ切り方が雑なところはあるが、これなら普通に使える』


「よし」


思わず声が出た。


昨日教えてもらったばかりだ。


本を確認しながらとはいえ、自分一人で処理したものに値段がつくなら十分だろう。


『全部買ってやる』


「助かる」


提示された金額を受け取る。


討伐報酬、リーフ草、それに肉。


昨日とやっていること自体は大きく変わらない。


それでも、丸ごと死体を引きずって帰る必要はなくなったし、処理の仕方も少し分かってきた。


これなら同じ依頼でも、前よりずっとやりやすい。


肉の代金を受け取ったところで、バルドがそのまま手を出してきた。


『で、今日も泊まるんだろ?』


「……はいはい」


一泊分の宿代を渡す。


稼いだばかりの金が減るのは相変わらず少し悲しいが、昨日よりは手元に残っている。


その後、部屋へ戻る前に夕食を取ることにした。


今日の皿に載っていたのは、厚めに切られて焼かれた肉だった。


「これ、もしかして」


『お前が持ってきたホーンラビットだ』


「もう使ったの?」


『使うために買ったんだから当たり前だろ』


ナイフで切って口へ運ぶ。


表面は香ばしく焼けていて、噛むと中から肉汁が出てきた。


「うまっ」


思っていたより柔らかい。癖もほとんどなく、普通に肉としてうまい。


「ホーンラビットって、結構うまいんだな」


『だから買ってんだろ』


「なるほど」


もう一切れ口へ運ぶ。


自分で狩って、血を抜いて、切り分けた肉だ。


そう考えると、なんとなくいつもよりうまく感じる。


食事を終えて部屋へ戻り、剣や荷物を置く。


ベッドに腰を下ろしてから、バルドに借りた本を開いた。


ホーンラビットのページは、もう何度も見ている。


そこから何枚かめくっていく。


ホーンウルフ。


ゴブリン。


名前だけなら知っている魔物もいれば、まだ見たことのない魔物も載っていた。


硬い殻を持つもの。


鋭い牙を持つもの。


素早い動きで獲物を追い詰めるもの。


中には、物理的な攻撃だけでは倒しにくいと書かれている魔物までいる。


「……色々いるな」


今まで戦ってきた相手だけを考えていればよかった時とは違う。


これから活動範囲を広げれば、当然こういう魔物とも戦うことになる。


そこで、今日の戦闘を思い出した。


ホーンラビットの角を手で受けた時、思っていたほどの痛みはなかった。


以前ゴブリンの攻撃を受けた時も、大きな怪我にはならなかった。


「VITは、ちゃんと効いてるんだよな」


ステータスを開く。


【ステータス】


Lv:5


STR:11

VIT:17

AGI:12

INT:10


未使用ポイント:10


10ポイント。


使おうと思えば、今すぐ使える。


「どうすっかなー」


最初に目が行くのは、やっぱりVITだった。


死なないことを優先して上げた能力だが、今のところその判断は間違っていなかったと思う。


攻撃を受けないのが一番なのは当然として、それでも完全に避け続けられる保証なんてない。


一発食らっただけで致命傷になるより、耐えられる方がいい。


命がかかっている以上、VITはいくらあっても困らない気がする。


次にSTR。


今の戦い方は、基本的に剣だ。


敵を早く倒せれば、それだけ攻撃される時間も減る。


今までVITを優先していた分、STRは11のままだ。


「こっちも欲しいよな」


本へ目を戻す。


硬い身体を持つ魔物の説明が目に入った。


今の剣でどこまで通用するのかは分からない。


武器を良くするのも大事だろうけど、自分自身の力を上げられるなら、それも無駄にはならないはずだ。


その次はAGI。


素早く動けるなら便利なのは間違いない。


攻撃を避けやすくなるかもしれないし、先に攻撃できる場面も増えるかもしれない。


ただ――。


「今のところ、そこまで困ってないんだよな」


ホーンラビットの2体同時は少し危なかった。


それでも、動きが遅すぎてどうにもならなかったというほどじゃない。


必要になる時は来るかもしれない。


でも、今すぐ優先して上げるべきかと言われると迷う。


最後にINT。


「これ上げたら、間違いなく魔法寄りになるよなー」


エシュ。


マイム。


ラファ。


覚えておいてよかったとは思っている。


今日だって、ラファは役に立った。


魔法をもっと覚えて、INTにもポイントを振れば、今とは違う戦い方ができるようになるのかもしれない。


それはそれで強そうだ。


ただ、今の俺は剣で戦って、必要な時に魔法を使っている。


INTへ本格的にポイントを振るなら、魔法をもっと覚えて、使い方も練習して、戦い方そのものをそっちへ寄せた方がいい。


「魔法特化になりたいわけじゃないんだよな……」


もちろん、魔法を捨てるつもりもない。


使えるものは使う。


ラファみたいに、戦闘以外でも役に立つ魔法だってある。


ただ、限られたポイントをどこに使うかとなれば話は別だ。


ゲームなら、最初から完成形を決めて必要な能力へ振ればいい。


高火力にしたければSTR。


壁役ならVIT。


素早さを活かすならAGI。


魔法を主力にするならINT。


昔やっていたゲームなら、そんな振り方もできた。


でも、ここでは死んだら終わりだ。


「極振りはねえな……何も考えなくて済むし、ロマンがあるから好きだけど。」


一つの能力だけを伸ばして、他を捨てる気にはなれない。


だからといって、全部に均等に振ればいいとも思わない。


必要だと思ったものを、その時に上げる。


今のところは――。


VIT。


次にSTR。


AGIは必要性を感じたら。


INTは、もっと魔法を使いたくなった時に考える。


「……こんな感じか」


方向性はなんとなく見えてきた。


でも、10ポイントしかない。


VITにも振りたい。


STRにも振りたい。


AGIだって、これから必要になる可能性はある。


INTも完全にいらないわけじゃない。


本をめくる。


まだ戦ったことのない魔物が、いくらでも載っている。


今の俺が知らないだけで、この町の周辺にも色々な魔物がいるらしい。


しばらくページを眺めていて、ふと思う。


「……もっとレベル上げればいいのか」


レベルが上がれば、またポイントが増える。


だったら、今ある10ポイントだけを見て悩み続ける必要もない。


もちろん、強い魔物へ無茶に挑むつもりはない。


今の自分でも倒せる相手を探して、依頼を受けて、金を稼ぐ。


そのついでにレベルも上げる。


本に載っている魔物を実際に相手にすれば、自分に何が足りないのかも分かってくるかもしれない。


AGIが必要になるかもしれない。


魔法がなければ苦戦する相手に出会うかもしれない。


その時に、また考えればいい。


「よし」


本を閉じる。


まずは、もっと戦ってみよう。


金を稼いで、経験を積んで、レベルを上げる。


目標を決めるなら――。


「とりあえず、レベル10かな」


5から10。


今までと同じように上がるなら、その間にもポイントは増える。


10という数字も、なんとなく区切りがいい。


そこまで行った時に、自分がどうなっているのかも見てみたい。


今ある10ポイントをどう使うかは、もう少し考える。


焦って決める必要はない。


明日から、また依頼を受けよう。


今度は金を稼ぐためだけじゃない。


もっと強くなるために。

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