↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/34

第12話 魔法

さらに南東へ進む。


最初の二体を倒してから、しばらくゴブリンは見つからなかった。


探しながら歩いているうちに、左腕の傷も気にならなくなってくる。


血はもう止まっている。


この程度なら問題ない。


そう思っていた。


『ギャッ!』


「っ!」


横から飛んできた石が肩に当たった。


痛い。


振り向くと、少し離れたところにゴブリンがいる。


三体。


一体は棒。


もう一体は短剣。


最後の一体は、さっき俺に当てたらしい石をもう一つ持っていた。


「投げるのもありかよ」


石持ちが腕を振る。


今度は見えている。


横へ動くと、石が後ろへ飛んでいった。


その間に、棒と短剣を持った二体が走ってくる。


さっきと同じように、一体を先に倒す。


そう考えて棒持ちへ剣を向けた。


でも、短剣持ちが横へ回る。


こいつらも挟むつもりだ。


「させるか」


こっちから動く。


棒持ちへ向かうと見せて、短剣持ちとの距離を取る。


二体が並んだ。


これなら同時に左右から来られない。


先頭の棒持ちが振りかぶる。


剣で受けず、横へ避ける。


さっき覚えた。


ゴブリンの攻撃は、ホーンウルフほど速くない。


見てからでも避けられる。


空振りしたところへ剣を振る。


肩に入った。


『ギャッ!』


浅い。


もう一度。


今度は腹。


倒れた。


「一体!」


短剣持ちが飛び込んでくる。


剣を合わせる。


刃がぶつかった。


押し返す。


そこへ――


「痛っ!」


また肩に石が当たった。


一瞬、そっちを見てしまう。


その隙に短剣が振られた。


避ける。


間に合わない。


脇腹が熱くなる。


「っ……!」


服が切れている。


血も出た。


さっきの腕より深い。


でも動ける。


痛いけど、動ける。


「先にあっちか」


石を投げてくる奴がいると邪魔だ。


短剣持ちから距離を取り、そのまま石持ちへ走る。


『ギャッ! ギャッ!』


慌てて地面から石を拾おうとする。


遅い。


剣を振る。


胸に入った。


ゴブリンが倒れる。


残り一体。


振り向くと、短剣持ちがすぐそこまで来ていた。


「うおっ!」


反射的に剣を振る。


相手の短剣が弾かれた。


そのまま体ごとぶつかる。


ゴブリンがよろめいた。


追いかけて剣を突き出す。


腹に刺さった。


『ギ……』


剣を抜く。


ゴブリンが地面に崩れた。


「はぁ……」


三体。


周囲を見る。


今度こそいない。


「二体より、全然きついな……」


数が一体増えただけ。


でも、戦ってみると全然違った。


特に石を投げてきた奴。


近くの二体だけ見ていればいいと思っていたせいで、何度も意識を持っていかれた。


脇腹を見る。


血が滲んでいる。


深くはなさそうだけど、放っておいていい傷なのかは分からない。


「今日は、これで――」


《レベルが上がりました》


突然、表示が出た。


「お」


来た。


【ステータス】


Lv:4


ATK:11

VIT:17

AGI:12

INT:10


未使用ポイント:5


また5ポイント。


どこに振る。


脇腹の傷を見る。


VIT。


昨日なら、たぶんそうした。


でも今回は少し考える。


ATKを上げれば、もっと早く倒せたかもしれない。


AGIが高ければ、短剣も避けられたかもしれない。


VITが高かったから、この程度で済んだ可能性もある。


「……今はいいか」


ここで急いで決める必要はない。


帰ってから考えよう。


表示を閉じる。


まずは骨瘤だ。


「これ、やっぱり嫌だな……」


三体分を切り取る。


最初より手際は良くなった。


それが少し嫌だった。


これで最初の二体と合わせて五体。


十分だろう。


脇腹も痛い。


今日は帰る。


骨瘤を袋へ入れて立ち上がった時、声が聞こえた。


『おーい!』


人?


声のした方を見る。


三人の冒険者が歩いてくる。


男が二人と、女が一人。


装備を見る限り、俺よりずっと冒険者らしい。


そのうちの一人が、地面に転がっているゴブリンを見た。


『お前がやったのか?』


「そうだけど」


『一人で?』


「ああ」


男が三体のゴブリンを見回す。


『三体か』


「ここはな。少し戻ったところで二体倒してる」


『なら、そっちもそのままか?』


「骨瘤は取ったけど」


男が俺を見る。


『やっぱり新人か?』


「昨日、初めて依頼を受けた」


『なるほどな』


なんで分かった。


そう思っていると、男がゴブリンを指差した。


『討伐証明だけ取って、そのままにしてただろ』


「ダメなのか?」


『ダメってわけじゃねえけど、街道に近い場所じゃやめた方がいい』


男がしゃがみ、ゴブリンの死体を見る。


『血の臭いで他の魔物が寄ってくる。死体を食う奴もいるからな』


「あ」


そこまで考えてなかった。


倒した。


骨瘤を取った。


それで終わりだと思っていた。


『持って帰る価値がある魔物なら持って帰りゃいい。そうじゃないなら、場所にもよるが埋めるか焼くかだな』


「埋める……」


五体。


穴を掘る。


「大変じゃない?」


『だから、こうする』


男が後ろを振り向いた。


『頼む』


『はいはい』


女の冒険者が前へ出る。


何をするんだ。


女がゴブリンの死体へ手を向けた。


『――エシュ』


一瞬。


何もなかった場所に火が生まれた。


「…………」


炎がゴブリンの死体を包む。


「…………え?」


燃えている。


火だ。


何もなかった。


火打ち石も使っていない。


薪もない。


手を向けて。


何か言った。


それだけ。


「魔法!?」


思わず声が出た。


三人がこっちを見る。


『……そこからか』


男が笑った。


「いや、だって魔法だろ!?」


『魔法だけど』


女が不思議そうな顔をする。


魔法。


本当にある。


いや、あるとは思っていた。


神様に会って、転生して、ステータスまで出てくる世界だ。


魔法があってもおかしくない。


でも。


実際に見るのは全然違う。


「今のもう一回できる?」


『できるけど、なんで?』


「見たい」


『燃やすものないでしょ』


「そうだけど……」


もう一回見たい。


かなり見たい。


男が笑っている。


『お前、ほんとに新人なんだな』


「昨日なったばっかりだからな」


『それより』


もう一人の男が俺を見る。


視線が脇腹で止まった。


『怪我してるぞ』


「ああ。さっきやられた」


『腕もだな』


最初の二体につけられた傷か。


すっかり忘れていた。


「これくらいなら大丈夫だと思う」


『大丈夫かどうかじゃなくて、治せるなら治した方がいい』


そう言って、今度はその男が俺の前に立った。


「治す?」


『動くなよ』


手が傷の近くへ向けられる。


「もしかして――」


男が短い言葉を口にした。


聞いたことのない言葉。


淡い光が傷の周りに広がる。


「おお……」


痛みが引いていく。


脇腹を見る。


さっきまで開いていた傷が、少しずつ塞がっていく。


完全に跡形もなく消えたわけではない。


それでも、血は止まり、痛みもほとんどなくなった。


腕の傷も同じように治してもらう。


「すげえ……」


さっきの火もそうだ。


今のもそうだ。


「これ、俺にもできる?」


『できるぞ』


「できるの!?」


思わず聞き返した。


三人が笑う。


『エシュや今の簡単な治療くらいなら基礎魔法だ。魔力の扱いを覚えれば、大抵の奴は使える』


「じゃあ、誰でも魔法が使えるのか?」


『基礎ならな』


女が燃えているゴブリンを見ながら答える。


『そこから先は別。得意な属性も人によって違うし、持ってる魔力の量にも差があるから』


なるほど。


基礎は覚えれば使える。


でも、強い魔法まで全員が同じように使えるわけじゃないらしい。


そういえば。


俺のステータスにもあった。


INT。


今は10。


あれが魔法に関係しているのか?


未使用のポイントも5ある。


……いや。


まだ何も知らない。


振るなら、ちゃんと知ってからだ。


「魔法って、どうやって覚える?」


『覚えたいならギルドで聞いてみろ。授業料を払えば、基礎魔法くらいは教えてもらえるはずだ』


「授業料……」


また金か。


武器。


防具。


マジックバッグ。


宿代。


その上、魔法まで。


「冒険者って金かかるな……」


『だから稼ぐんだよ』


男が笑った。


なるほど。


ものすごく納得した。


でも、授業料か。


いくらするんだろう。


高くなければいいけど。


いや。


多少高くても覚えたい。


目の前で炎が生まれた。


傷が塞がった。


こんなのを見せられて、興味を持つなという方が無理だ。


「ありがとう」


傷を治してくれた男に礼を言う。


『気にすんな。次から死体の処理も忘れるなよ』


「ああ」


……そうだった。


魔法ですっかり忘れていた。


少し戻ったところにも、あと二体いる。


「あっちの二体も燃やさないとダメだよな?」


『場所を見てからだな』


「じゃあ――」


女を見る。


『何よ』


「さっきの魔法、もう一回見せてくれない?」


『……死体処理でそんなに喜ぶ奴、初めて見た』


呆れた顔をされた。


でも仕方ない。


魔法なんだから。


俺は三人と一緒に、最初に倒したゴブリンのところへ戻ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。