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第11話 ゴブリン討伐

町を出て、南東へ向かう。


しばらくは街道を歩き、途中から道を外れた。


依頼票に書かれていたのは、この辺り一帯。


草原が続いているが、ところどころに木や背の高い草が生えている。


ゴブリンがどんな場所にいるのかは受付で聞いてきた。


洞窟に住んでいる。


森にいる。


集落を作る。


そんなイメージがあったけど、この辺りのゴブリンは決まった場所に住み着いているわけではないらしい。


数体で移動しながら、動物を狩ったり、街道を通る人を襲ったりする。


だから常設依頼になっている。


「さて……」


どこにいるんだ。


ホーンウルフの時もそうだったけど、依頼を受けたからといって目の前に魔物が現れてくれるわけじゃない。


しばらく歩きながら周囲を探す。


草が揺れるたびに目を向ける。


何もいない。


さらに歩く。


「……見つからないな」


探すだけでも大変だ。


ゲームなら対象のいる場所まで行けば、だいたい何かしらいた。


こっちはそうはいかない。


少し休もうかと思った時だった。


何か聞こえた。


声?


足を止める。


風の音に混じって、また聞こえた。


人の声とは少し違う。


俺は剣に手をかけ、音のした方へゆっくり近づいた。


背の高い草が生えている。


その向こうから、何かが動く音がする。


姿勢を低くして覗く。


いた。


「……ゴブリン」


小さい。


俺より頭二つくらい低いだろうか。


緑がかった肌。


尖った耳。


額には、小さく盛り上がった硬そうな部分が見える。


あれが骨瘤か。


一体は木の棒。


もう一体は、錆びた短剣のようなものを持っている。


二体。


まだこっちには気づいていない。


どうする。


一体ならホーンウルフより特別危険ではないと聞いた。


でも二体いる。


昨日のホーンウルフも二体だった。


あの時は不意打ちを受けて、かなり危なかった。


今回は違う。


先に見つけたのは俺だ。


剣を抜く。


できれば一体ずつ相手にしたい。


石でも投げて一体だけ――


そこまで考えた時、短剣を持ったゴブリンがこちらを向いた。


目が合う。


『ギャッ!』


「バレた!」


二体が同時に動いた。


棒を持った方が真っすぐ走ってくる。


速い。


でも、ホーンウルフほどじゃない。


振り下ろされた棒を剣で受ける。


ガンッ、と硬い音がした。


「っ!」


思ったより重い。


小さいからといって、力まで弱いわけじゃないらしい。


押し返そうとした瞬間、横からもう一体が来た。


短剣。


体を引く。


刃が服の前をかすめた。


「危なっ!」


二体を同時に見る。


棒を持った方がまた前に出て、その横から短剣持ちが回り込もうとしている。


偶然じゃない。


こいつら、俺を挟もうとしてる。


「そういうのもやるのかよ」


受付で聞いた通りだ。


武器を使う。


複数で行動する。


でも、それだけじゃない。


こいつらは、お互いの動きを見ている。


棒が振られる。


今度は受けずに横へ避けた。


空振りしたゴブリンの体勢が崩れる。


そこへ剣を振る。


『ギャッ!』


肩から胸にかけて斬れた。


倒れはしない。


剣を引こうとしたところへ、短剣持ちが飛び込んでくる。


避けきれない。


左腕に衝撃が走った。


「痛っ!」


慌てて距離を取る。


腕を見る。


服が切れていた。


その下に赤い線ができている。


血も少し出ている。


でも、浅い。


昨日VITを上げたからなのか。


それとも、単に刃が鈍かったのか。


分からない。


どっちでもいい。


動ける。


傷を負ったゴブリンが、また棒を構える。


まだ来るのか。


なら。


先にこいつを倒す。


二体を相手にし続けるより、一体にした方がいい。


棒を持ったゴブリンへ踏み込む。


向こうも棒を振り上げた。


振り下ろされる前に、剣を突き出す。


刃が腹に入った。


手に嫌な感触が伝わる。


ゴブリンの動きが止まった。


剣を抜く。


『……ギャ……』


そのまま地面に倒れた。


一体。


確認している暇はない。


後ろから足音がする。


振り向く。


短剣が迫っていた。


剣を上げる。


刃と刃がぶつかった。


今度は押し負けない。


相手は一体。


それだけで、さっきまでとは全然違う。


剣を弾き返すと、ゴブリンがよろめいた。


一歩踏み込んで剣を振る。


一撃目は腕。


短剣が落ちる。


二撃目。


首を狙うつもりだった。


でも、剣は少し下にずれて肩口へ食い込んだ。


『ギャアッ!』


ゴブリンが叫ぶ。


剣を引き抜き、もう一度振った。


今度は胸に入った。


ゴブリンが倒れる。


「はぁ……はぁ……」


周囲を見る。


他にはいない。


しばらく剣を構えたまま待つ。


何も出てこない。


「……勝った」


二体。


昨日よりは、ちゃんと戦えた気がする。


不意打ちじゃなかったことも大きい。


レベルも上がっている。


それでも無傷ではない。


左腕を見る。


血は出ているが、流れ続けているほどではない。


「これくらいなら……大丈夫か」


剣についた血を拭ってから、倒れたゴブリンを見る。


二体とも動かない。


さて。


問題はここからだ。


額を見る。


骨瘤。


依頼票に書いてあった討伐証明。


「…………」


これを取る。


剣を見る。


もう一度ゴブリンを見る。


「これでやるのか?」


剣で削ぎ取るのは、なんか嫌だ。


いや、何で取っても嫌だけど。


しゃがみ込んで、骨瘤の周りを見る。


皮膚の下から骨が盛り上がっているように見える。


引っ張って取れるものじゃない。


「……やるしかないか」


なるべく考えないことにする。


剣の先を当てる。


切る。


硬い。


「うわ……」


嫌な感触が手に伝わってくる。


魔物を倒すのとは、また違う。


戦っている時は必死だから考える余裕がない。


こっちは落ち着いて、自分でやらなきゃいけない。


何度か刃を入れて、ようやく骨瘤が外れた。


手のひらに乗せる。


小さい。


こんなものが金になるのか。


もう一体を見る。


「……もう一回か」


二つ目は、一つ目より少し早く取れた。


慣れたくない。


骨瘤を袋に入れ、立ち上がる。


ゴブリンの死体は持ち帰らなくていい。


ホーンウルフの時とは違って、これだけで討伐を証明できる。


「楽だけど……」


袋を見る。


「気分はこっちの方が悪いな」


まだ時間はある。


常設依頼だから、二体で戻ってもいい。


もう少し探してもいい。


左腕の傷を見る。


大した傷じゃない。


体もまだ動く。


少し考えてから、剣を握り直した。


「もう少しだけ探してみるか」


無理はしない。


危ないと思ったら帰る。


昨日より少しだけできることが増えた。


なら、もう少しだけ試してみたい。


俺は周囲を確認してから、さらに南東へ歩き出した。

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