3. 片づけは命令ではなく習慣で教える
子どもが遊び終わったあと、床におもちゃが散らかったままになっている。
その時、大人はつい言ってしまう。
「片づけなさい」
「床に置きっぱなしにしない」
「踏んだら危ないでしょ」
大人から見れば、これは当然の注意である。
床に物があれば踏むかもしれない。つまずくかもしれない。部屋も散らかる。だから片づけるべきだと分かっている。
けれど、子どもは最初からそこまで分かっているわけではない。
子どもからすれば、おもちゃはさっきまで楽しく遊んでいたものだ。
床にあることも、すぐには悪いことに見えない。
目の前にある方が、また遊びやすいと感じることもある。
だから、ただ「片づけなさい」と言われても、子どもはこう思うことがある。
「どうして?」
「まだ遊ぶかもしれないのに」
「そこにあったら何がだめなの?」
「なんで自分が片づけるの?」
ここで大切なのは、子どもが反抗しているとは限らないということだ。
子どもは、片づけそのものを嫌がっているのではなく、片づける理由がまだ見えていないことがある。
また、床に物がある危険と、誰が片づけるべきかという責任を、子どもなりに別々に感じていることもある。
「床にあると危ない」
これはリスクの話である。
「自分が遊んだものは自分で戻す」
これは役割の話である。
この二つを分けて伝えると、子どもは理解しやすくなる。
そこで大事になるのが、習慣づけである。
子どもにとって、おもちゃを出すことは遊びの始まりである。
ならば、おもちゃを片づけることは遊びの終わりである。
つまり片づけは、罰でも命令でもなく、遊びの一部として覚えさせる方がよい。
親が子どもと一緒に遊ぶ。
遊び終わったら、一緒に片づける。
「これはここに戻そうね」
「ブロックのお家はここだね」
「使ったものは戻すと、次にまた遊びやすいよ」
そうやって、片づけを生活の流れの中に入れていく。
最初から子ども一人に任せる必要はない。
親が一緒にやればよい。
子どもは、親の動きを見て覚える。
一緒に戻すことで、片づけは嫌な作業ではなく、自然な終わり方になる。
その上で、少しずつこう伝えていく。
「おもちゃで遊んだら、片づけるところまでがお仕事だよ」
この説明は分かりやすい。
子どもにとっても、自分が遊んだものは自分で戻す。
という役割が見えるからである。
ただし、ここで大切なのは、いきなり責任だけを押しつけないことだ。
「あなたが出したんだから片づけなさい」だけでは、命令になる。
しかし、
「一緒に片づけよう」
「遊んだおもちゃは戻そう」
「これはあなたのお仕事だよ」
「片づけると、また次に楽しく遊べるよ」
と伝えれば、子どもは片づけの意味を学びやすい。
片づけには三つの意味がある。
一つ目は、危険を減らすこと。
床に物があると、踏んだり転んだりする。
二つ目は、自分の役割を覚えること。
自分が遊んだものは、自分で戻す。
三つ目は、共同生活を覚えること。
家の中は自分だけの場所ではなく、家族みんなが使う場所である。
この三つを、子どもに一度で理解させる必要はない。
何度も一緒に遊び、一緒に片づけ、短く説明していけばよい。
子どもは、繰り返しの中で学ぶ。
最初は親と一緒に片づける。
次に、少しだけ自分で戻す。
やがて、遊び終わったら片づけるものだと覚えていく。
これが習慣になる。
単に部屋をきれいにすることではない。
危険を減らすこと。
自分の役割を知ること。
家族と一緒に生活する感覚を育てること。
そして、そのためには命令だけでは足りない。
親が一緒にやる。理由を説明する。
子どもの仕事として少しずつ任せる。
この順番があるから、片づけは押しつけではなく、教育になる




