221 世紀単位です
三人の師匠達を引き連れての出勤は、かなり大変だった。
亮司と幸菜の初日こそ、外から入るために電車などを使って来たが、屋敷とは特別に借り入れた部屋の扉で繋いであるため、出勤までは二分とかからない。
問題はその後だ。
「っ、ジェイ様!?」
「やだ! アイ様久しぶり!」
「ケイちゃ〜ん!」
挨拶が止まらない。
「何だよお前っ。老けたんじゃね?」
「何十年前と比べてるんです? 老けたじゃなくて、大人になったって言うんです!」
そんな会話があるかと思えば、魔女同士の交流もある。
「アイ様、一緒に研究しようって言ったのに、ちょっと行って来るって、一世紀もどこまで仕入れに行ってたんです?」
「え? うわあ、忘れてたあ。あ、でも待って、アレなら持ってる。ちゃんと手に入れてはいたわよ?」
やはり時間の感覚が違う。
「ケイちゃん? デートの約束が途中だけど……」
「そうだっけ? ああ、映画館デートするって言ってたわね。いいわよ? 何観る? 特撮は?」
「今の観たらびっくりすると思いますけど?」
「え? どうなってるの?」
「着ぐるみからCGの時代に変わってますからね?」
「CGって? え? これなに?」
「スマホです。本当に一度も地球に寄らなかったんですねえ」
「え〜? 何それ?」
軽く浦島太郎状態で、色々と衝撃も受けているようだ。
それぞれ楽しそうなので、宗徳達は周りに断って、先に着替え、扉の間へと向かった。
しかし、そこでもジェイ達が来たと騒がしくしていた。
「ウソ! あの三人が!?」
「ジェイ様だって!? ひいじいちゃんの借りてた本返しとけって遺言が果たせる!」
「まだいる!? 誰か! 引き留めてて!」
「私もひいおばあちゃんから預かってるのがあるわ! アイ様もいる!? すぐに! すぐに家に行って取ってくるから!!」
えらい騒ぎだった。
「すごいわね……こんな大きな会社の職員の大半が、こんなに混乱するなんて……」
「それもあの三人が帰ってきたってだけでな……すごい人なんだな……」
幸菜と亮司は唖然としていた。
「なんか、遺言多いな」
「どれだけの間、ここを留守にしていたんでしょうねえ」
「一世紀とか?」
そう宗徳と寿子が話していると、チェルシャーノがゆったりとした足取りで近づいてきた。
「アノ人たちなら、二世紀半はいなかったねえ」
「また桁が違うし」
「あははっ。まあね。一般的には、世代交代が二度はある時間だね」
やはり時間の感覚が違う。
「徳々も会ったの?」
「俺らと一緒に来たんですよ。なんか、薔薇様を訪ねてきて、なぜか俺らを弟子にするって」
「弟子!? アノ三人が!?」
「「「「「弟子!?」」」」」
「お、おう……なんかおかしいのか?」
周りの者達までもが反応して、宗徳達へと視線が集まる。
「えー! だって、弟子なんて、それこそ何世紀振りだろう? 十〜五、六?」
「やべえ、そっちも桁違う……」
数世紀と聞いてもすごいのに、桁が一つ違った。
「ネームド登録されてから、最低一人は弟子を取ることが推奨されてるらしいんだケド、気持ちが乗らないとか言って、ずっと見送ってたんだヨ」
チェルシャーノが嬉しそうに笑った。心配していたようだ。
「やっぱり、一度存在を消されちゃうようなものだからネ……存在が不安定になるんダ。そこで、世界に繋ぎ止める為にも、弟子ってのが必要になってくるんだけど……そっかあ、徳々達を選んだんだネ……」
しみじみと言うチェルシャーノ。周りにも、同じように思っている者がいるようだ。しかし、宗徳には分からない。
「俺らには、顔合わせて突然『お前ら、俺らの弟子になれ!』って言ったけど?」
「……なにソレ……強制? まあ、キミたち全員、かなり潜在能力高いしネ。弟子にしたい人たち、結構いると思うヨ」
「俺も?」
「私も?」
確認したのは亮司と幸菜だ。そんな二人に、チェルシャーノが顔を向ける。
「なに言ってるのさ。二人もだよ。何だろうねえ? これも徳々パワー?」
「「ありそう……」」
「なんでだよ」
「まあ、あなたですからね」
「だからなんで?」
宗徳以外は全員納得していた。
その後、三人の師匠達と出発できたのは、昼になる頃だった。
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