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220 楽しい師匠たち

宗徳や寿子達とそれほど変わらない七十頃の男性、魔導士と四十頃に見える魔女二人。薔薇はいつも気怠げで艶やかに見えるのに対して、この三人は元気に飛び回っていますという雰囲気だ。


「俺達はまあ、地球産の魔導士や魔女だ。昔、異世界召喚されて自力で戻って来た組って言われてる」

「コイツと一括りにされるのは、若い頃は嫌だったんだけど、今はそんなに。私たちも歳を取ったのねえ」

「異世界では聖女だったのに、こっちに戻って来たら魔女とか言われて、へそ曲げたのが懐かしいわあ」


それぞれにそれぞれの生き方があったようだ。


「あっ、言っておくけど、薔薇様よりは私たち、若いからね? 友人ポジションって言うか妹ポジションなの」

「遠慮がないって事っスね? なんとなく分かります」

「「「そうそうっ!」」」


薔薇が困った子を見るような目で三人を見ているが、確かに落ち着いた姉が妹や弟を見ている感じだ。


「この歳になると、歳が離れてるとか気になんねえの」

「そうね。一回り違うとかまだまだ」

「そう言って、あなたこの前の彼氏とは三回りは違うからね?」

「そうだった?」


あははと笑うが、どうやら一回りというのが、十二歳差基準じゃなかったらしい。その誤解を、薔薇が近付いて来て解く。


「あやつらの一回りは、六十だ」

「あ、還暦……三回りって言った?」

「そうだな。百八十だ」

「「あらまあ」」

「「ほお……」」


宗徳達は揃って納得というか、感心した。そっか還暦計算かと。


「あ、話が逸れたな。でな? 久し振りに帰って来てみたら、薔薇様が定住したって聞いて、気になってな。そしたら、びっくりするくらい才能ありありなお前らを見つけたってわけ!」

「俺ら?」

「おう。お前とそっちのは別格だな! 俺が見る! ジェイだ。ジェイ師匠と呼ぶように!」

「「はい……」」


宗徳と寿子を指差した魔導士が宣言した。


魔女の一人、小柄で人が好さそうで、柔らかな雰囲気のある女性は、幸菜の前に立った。


「じゃあ、私はこの子を見るわ。なんだか、雰囲気が娘の一人に似ているし、未来視の素質があるわね〜」

「え……」

「運がいいなって思ったことない? あと一歩遅かったらあの人とぶつかってたわ〜とか」

「っ……あります……」

「うんうん。他にも色々出来そうだし、あなたは今日から私の弟子よ。私はアイ。よろしくね」

「えっと……お願いします?」


そして、もう一人の魔女。とてもよく喋りそうな女性は、亮司の前に腰に手を当てて立つ。


「私はこの子ね? あらら。二人目の夫に体の骨格がとってもよく似ているわね。武術やる?」

「え、ええ……昔少し……」

「良いわね。空間把握能力も高いけど、体術も仕込めそうだわ。ケイよ。よろしく」

「よろしくお願いします……」


そう言うしかない。


そこで宗徳が気づいた。


「ん? アイに、ジェイに、ケイ? アルファベット?」

「おっ! 気づいたか。すげえな。そうだぜ? この辺の次元の、特に強い力を持つ魔導士や魔女のコードネームみたいなものでな。上から二十六人だけ登録される。世界を理由なく滅ぼさないように誓約するのと同時に、元の名前が質に取られるんだ」

「それは……思い出せなくなる系で?」

「ああ」

「「「「……」」」」


名前を取られる、忘れられるということがどんな感じなのか分からないが、宗徳達は不安を感じた。


寿子がまさかという様子で更に確認する。


「でしたら、元のお名前をご存知の方は?」

「おっ。鋭いな。名が置き換わるってことは、新たな存在に上書きされるんだ。だから、忘れる」

「っ、それは……」

「仕方ねえよ。まあ、同類は忘れねえ。なんでか呼ばなくなるし、書けなくなるが、あくまでも忘れるのは一般の、力を持たない人たちの記憶からだ。俺たちはまあ、登録前には知り合いは全員天寿をまっとうしていたからな。変わりはねえよ」

「そうですか……」


けれど、忘れられるということはとても怖いことだと寿子には思えたようだ。


「そんな顔しないで? 元々、登録されるくらいの力を出せるようになるのは、守るものがなくなった後なのよ。家族や友人が生きていれば、滅ぼしてはいけないって自制が利くでしょう?」

「縁が切りたいほど嫌いな家族とかだったら、忘れてもらって清々するしね!」

「だから、登録が無理やりとか、辛いとかいう感じにはならん」

「へえ……」

「それなら……」


宗城達はほっとした。すると、更なる疑問が湧いて来た。


「じゃあ、アルファベットの順番は関係あるんで?」

「いや。空きが出たら繰り上がる。だから、オーとか、ピーとか当たらなくてよかったなあって思ったな」

「本当よね。私たちの結構名前っぽいし」

「ふふふっ。オーとかの後に自分で付けるのよ。ただ、一音しかダメだから、オートとかピーグだったみたいだけど」

「「「「……」」」」


ものすごく微妙だ。無理やり感がある。


「Hはどうなるんで?」

「エイイチとかあったわ。けど、先代にかつて使ったことのある名は登録できないから、あと数代したらどうなるのかしらあって楽しみにしてるのよ」

「お前らも基準に引っ掛かりそうだからな。ちょい今から候補考えておくといいぞ?」

「……はあ……頭の体操になりそうっスね」

「「「たしかに!」」」

「「「「……」」」」


あははと笑う師匠達。なんだか楽しそうな人たちだ。


「あ。そんで? お前ら今日の予定は?」

「普通に異世界で仕事っスね」

「へえ。なら俺らも行くか」

「そうね」

「扉使うんでしょ? 自力じゃないで行くの久し振りだわ。楽しそう」

「ってことで、俺らも行くわ。お前らの力見るにも、異世界の方が良いしな」


ということで、三人の師匠付きで、仕事に向かうことになった。


薔薇が最後まで申し訳なさそうにしていたのが印象的だった。




読んでくださりありがとうございます◎

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