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思いやりのおせっかい

えっと、ここまで出かかってるんだけど――

「――って、知亜君じゃないっ!?」

「……あっ、春子さんっ!!」

偶然にも、知亜は以前お世話になった新井家の奥さん、春子と出会った。春子と知亜は、思いがけない出会いにとても驚いていた。もう、当分出会う事は無いだろうとお互いに思っていたのだが、世界は狭いものだ。

「昨日の今日で知亜君に出会うだなんて、不思議な気持ちだわ。」

「――春子さんっ。」

知亜は、春子の足に抱きついた。先ほどまで、1人で寂しい思いをしていた所に知っている大人が現れたのだ。知亜にとっては、とても嬉しい事だ。さらに、一晩だけだが楽しい思い出をくれた人なのだから喜びや安心も倍増である。

「――はいはい、もう怖くないからね。私が一緒にいてあげるから。」

「――ありがとうございます。」

春子は、抱きついてきた知亜の頭を優しく撫でて、知亜を落ち着かせた。そんな春子の優しさに触れ、知亜は抱きつく力を少し弱めた。




「はい、ジュース。」

「ありがとうございます。」

春子と知亜は、『ヨイスヤ』の出口にある休憩所にいた。

「それで、知亜君はどうしてここにいるの?」

「えっとですね、僕の洋服を買いに明美さんと一緒にここに来ました。」

「明美、さんって、どなた?」

「あっ、明美さんっていうのは僕がいる施設の人で、お母さんみたいな人です。

「――そう、じゃあそのお母さんに置いてかれたというわけね。」

「えっ、いや、あの置いてかれたとかでは――」

春子は、知亜を放っておいて好き勝手買い物をすると解釈してしまい、知亜の言葉が耳に入らないのか目を真っ黒にしていた。

「全く、優さんもちゃんと考えて知亜君を預けなきゃダメじゃないの。……帰ったらお仕置きね。」

「あ、あの、春子さん?」

なにか、ぶつぶつ言う春子が怖くてしょうがなかった。その時、

「――知亜君っ!!」

明美の声が聞こえた。知亜は、明美の声がした方を見るとすでに明美は知亜の近くまで来ていた。そして、泣きながら知亜を抱きしめた。

「もう、どこ行ってたの!?本気で心配したんだから。あの子みたいにいなくなっちゃったのかと思っちゃったじゃないっ。」

明美の様子が少しおかしい事に知亜は気付いていた。しかし、それは自分を本気で心配してくれていたと勘違いした。本当はの理由を知らないまま――。

「あの、あなたが明美さんですか?」

「えっ、はい。あの、あなたは――」


――ぱんっ――


明美は、春子に頬を叩かれた。

「……なに、するんですかっ!」

「あなたこそ、知亜君を放って置いて何をしていたんですか?」

「知亜君の洋服を買っていたんです。私は、知亜君のお母さんのようなものですから。――それより、あなたこそ知亜君のなんなん――」


――ぱんっ――


二回目のびんたを明美は受けていた。

「あなたは、知亜君と洋服、どっちが大切なんですか?」

「――っ、そんなの知亜君に決まってるじゃなですか。」

「それが分かっているにもかかわらず、知亜君を置き去りにしたんですか?」

激しい言い争いが続いていた。明美は頬を赤くさせながら、春子は瞳を黒く濁ませながら。

「好きで置き去りに――」

「するわけはないでしょう、当然です。しかし、結果を見ればどうですか?私が知亜君を保護しなかったら万が一が起きていたかもしれませんよ?」

「――っ。」

春子は明美に話すひまを与えない。一体、なぜこんなにも明美を責めるのだろうか。

「春子さんっ、やめてください。明美さんをそんなに責めないでください。」

――僕を本気で心配してくれる明美さんを。

知亜は、あまりにも明美に対して理不尽過ぎる春子を止めにかかった。

「知亜君は、黙ってなさい。これは、私とこの人の問題だから。」

「っ、だけど――」

知亜は、春子のあまりの迫力にたじろぐしかなかった。

「あなたは本当になんなんですかっ。いい加減、名乗ったらどうですか。」

「私?私は、新井春子。知亜君を保護した警察官の奥さんです。」

その言葉を聞いて、明美は一瞬戸惑った。

「――だからなんなんですか。もう、あなたは知亜君とは関係ないじゃないで――」

その言葉を聞いて、春子はもう一度明美の頬をはたこうと手を振り上げて勢いよく振りおろす。しかし、

「――だめっ!!」

それを知亜は止めようと明美の顔の横に立ち、春子の手を押さえようとした。しかし、子どもの力で止められるほど大人の力は弱くない。知亜は、春子の勢いのついた打撃を受けて軽く吹き飛んだ。

――そして、知亜は起き上がらなかった。

…………

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