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別れは唐突に、出会いは未定

……あれ?あの子は?私の涼はどこにいるの……

「何してたんだ、明美っ!お前のせいで涼は……」

暗闇の外、病院で灯る白い光が点滅しているなか、そんな怒声が響いていた。

中村 俊哉 ≪なかむら としや≫、彼は明美の夫であり涼の父親である。その俊哉は、執拗に明美ばかりを責め立てた。

「…………」

「何か言ったらどうなんだっ!もう、涼はお前のせいでっ、涼はっ……」

俊哉は、さらに明美を責め立てる。

「……さい……めんなさい…」

明美は謝る事しかできない。他に何かできるのか。いや、何もできない。自分の子どもも守れない自分に何かできるわけがない。何もできなかった自分が許せない。

「……すいません、警察の者ですが奥さんに事件当時の状況を教えてもらいたいのですが……」

2人の刑事がやってきた。1人は若く、もう一人は年老いた刑事だった。

「…………」

「…ちっ、どうぞ好きにしてください。こんな女、もう知りませんから。」

俊哉は刑事にそう言うと、涼がいる部屋に行った。

「……なんですか、あの男は。」

「そう言うもんじゃねぇ。自分でも何してるかわからないくらい混乱してるんだよ、あいつも。」

2人の刑事は、俊哉の態度にそんな事を言っていた。

「それで奥さん、当時の状況を……って話せる状態じゃないか。」

刑事は、明美の生気を失った顔を見て聴取することをあきらめた。

「…………」

「…とりあえず現在の状況を話します。現在、息子さんを刺した犯人は……」

刑事の『犯人』という言葉に、明美が反応した。

「…そうよ、あいつ!あいつはどこっ!?私の大切のものを奪ったあいつはどこっ!……絶対に許さない…殺す…殺してやるんだからーーーーっ!!」

明美は、狂ったようにそう叫ぶと年老いた刑事の胸倉を掴んだ。

「教えなさいよっ、あいつの居場所。知ってるんでしょ!?早くっ、早く教えなさいよっ!」

「ちょ、ちょっと落ち着きなさい。」

「落ち着けるわけないでしょ!あいつは、涼を……私の子どもを…あの子が何をしたっていうのよっ…」

泣き崩れる明美。を、若い刑事が支えて近くにある椅子に座らせた。

「……俺は、旦那さんのとこに行ってくる。お前は奥さんの側にいろ。何をしでかすかわからねえからな。」

今の明美には感情の制御ができない。そんな状態の明美を1人にするのは危険と考え、若い刑事に明美を任せた。





「だから、もうあんな女知ったことじゃありません。」

「……あのな、あんたも確かに辛いとは思う。だけどな、奥さんはそれ以上に辛い思いしてんだよっ。男なら側で支えてやらねえかっ!」

年老いた刑事の怒声が、涼のいる室内に響き渡る。

「……あなたには関係ない。これは夫婦の問題だ。」

「……あんたには何を言っても無駄なようだな。だがな、人が1人、しかも子どもが亡くなってんだ。夫婦だけの問題だけじゃない事だけは理解しろよ。それで、今の状況としては……」

年老いた刑事は、話を聞ける状態にはない明美にかわって夫の俊哉に現在の状況を説明した。

「……そうですか、犯人はもう捕まえているんですか。」

「ああ、犯人はすぐ近くに住む大学入学に失敗した浪人だ。殺害動機は、誰でもよかったと言ったそうだ。」

「……そんな奴に…涼はっ……」

犯人のあまりにも許し難い殺害の動機に、俊哉は両手に力を入れて握りしめていた。血が出るのではないかというほど強く。

「時を見て、奥さんに話しておいてください。見ず知らずの私たちより、あなたからの方が落ち着いて聞けるでしょうから……」

「…………」

刑事の言葉に、何の反応もしない俊哉。その俊哉を見て、任せていいものか迷ったが俊哉に任せることにした。




「おい、帰るぞ。」

「えっ、ですが……」

年老いた刑事は、若い刑事に署に戻る事を告げて出口へと歩き出す。しかし、若い刑事は明美の様子を心配しておろおろしていた。

「おい、早くしろ。やる事はたくさんあるんだ。解決してる事件にこれ以上首を突っ込んだってしょうがないだろう。」

「っ、そんな言い方ないでしょう!?この人が、どんな気持ちでいると思ってるんですかっ!?解決したら、それで終わりなんですかっ!?」

正論を言う若い刑事を無視して、年老いた刑事は歩き出す。

「ちょっと、待ってくださいっ。」

若い刑事は、年老いた刑事を追いかけていった。

「…………」

何も話そうとはしない明美を残して……

……涼がいない。もう、お母さんって呼んでくれない。私のせいだ、私の……

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