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夏休み怪日記  作者: UMA5
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8月22日(土)

8月22日(土)天気 晴れのち雨


 散歩中突然突風が吹いてきたと思ったら大きなせんすとうちわがどっちの方が風を仰げるかでけんかしていました。北風と太陽ならぬ、風対風。色々吹き飛ばされそうで大変でした。なんとか平和な争いに持っていけました。




 ビューっと吹く風に慌てて帽子を抑える。先ほどまで風が吹いている感じは全くなかったのに、突然の突風だった。

 風が吹いてきた方に目を向ける。しばらくするとまた同じ方向から突風が吹いてきた。


(なんか普通の風っぽくない。怪異かも、行ってみよう。)


 風の吹く方へ向かうとそこには大人くらいの大きさの大きなうちわとせんすが喧嘩していた。


「どうだい! オレの方が強い風吹かしたぜ!この勝負、オレの勝ちだな。」


 とうちわの怪異が煽り、


「何をおっしゃる。私の方があなたより強い風を吹かせたでしょう。その証拠に先ほどここらにあった木の葉があんな遠くまで飛んでいるではありませんか。」


 とせんすの怪異が負けじと言い返す。


「なあに言ってるんだい。木の葉なんて軽いもん、オレだって遠くに飛ばせるぜ。オレはこの店の看板、あんな遠くまで飛ばしたぜ!」


「それをおっしゃるなら私はそこののぼり旗をあっちの壁まで飛ばしてやったでしょう。」


 などと、やんややんやと言い争っていた。


(このままほっといたら街中のものが吹き飛ばされる。)


 これは大変だと思い、飛翠は声をかける。


「あの、うちわの怪異さんにせんすの怪異さんですか? なんで喧嘩していらっしゃるんですか?」


「あん? このせんす野郎が自分の方がオレより風を起こせるなんていうからよお。」


「そもそもあなたが、オマエなんかじゃたいして風も吹かせられないだろうって言ってきたんでしょう。全く失礼な方です。」


 昔話やら童話やらで何百と見かけたケンカである。これを解決したければさっさと勝敗を定めるか、ルールを変えるか、第三の敵を持ってくるかしかないのでは、と飛翠は考えた。

 第三の敵については飛翠はなれないし、それに相応しい相手は思いつかないし、思いついても呼ぶのが申し訳ない。なので却下。

 とりあえず、そこらへんのものを吹き飛ばさない方法の勝負に変えてもらおう。飛翠は考え、


「時代は一瞬の強さよりも持続可能性ですよ。」


 などと、口に出した。何か考えがあっての言葉ではない。なんかそれっぽいことを言ってとにかく彼らの気をこちらに向けようと思った。


「持続可能性? なんじゃそりゃ?」


「いったいどうしたら勝ちだというのです?」


 どちらの怪異も飛翠の言葉に食いついてくれた。この機を逃すわけにはいかないと、飛翠は必死に頭を回しながら続ける。


「えっとですね、うちわとかせんすって、エコロジーの観点ではとてもいいんです。いや、それじゃなくて、エコなんですけど、でも今ハンディファンとか流行ってるじゃないですか。それというのも、ハンディファンはずっと風が吹いてくるからで…。」


「あ? なんの話だ?」


「つまり、お二人って仰いだときしか風が吹かないでしょう? ずっと風が吹き続けられないじゃないですか。一瞬だけ強いより、ずっと風が吹き続けた方がすごいんです。」


 飛翠は話しながらなんとか話をまとめた。


「なるほど。看板を遠くに飛ばすのではなく、ずっと空に飛ばし続ける方がすごいってことですね。」


 せんすの怪異さんがうなづき、


「はんっ! その勝負でもオレは負ける気しねえけどな。」


 とうちわの怪異さんが勝負に乗った。

 それでも、看板を使われるのは危険だ。他のものにできないかと考え、ポケットを探る。ちょうどいいものが入っていた。


「いえ! 看板なんかよりこちらのティッシュを飛ばし続けられた方がすごいです。」


 と、飛翠はポケットに入っていたティッシュを取り出す。


「あ? ティッシュ? そんな軽いもんいくらだって飛ばせるだろうが。」


「いえいえ、それがティッシュこそ、なかなか飛ばし続けられないんです。看板みたいに真っ直ぐなものは風をまっすぐ受けられるでしょう。だから意外と飛んでられます。でも、ティッシュみたいな柔らかいものは風を受け流してしまうから、強い風を受けてもひらりとかわして落ちてしまうんです。だから、ティッシュを飛ばし続けられるとすごいんです。」


 物理とか科学とかそういう話を飛翠は全く知らない。言ってることが間違っているのはわかっている。しかし、今、目の前にいる彼らを丸め込めればいいのだ。なので、それっぽいことを話した。

 飛翠の強い言葉に彼らは気圧され、そうかもしれないと受け入れ出した。


「確かにまあ、ティッシュのほうが飛ばすのは難しいかもしれねえな。」


「そうかもしれないです。それでは、ティッシュをより長く空に飛ばし続けたほうが勝ちということにしましょう。」


「ようし、その勝負乗った!」


 なんとか彼らを丸め込むことができた。ティッシュを空に飛ばし続けるなら、周りへの被害も減るだろう。

 飛翠はティッシュを袋から2枚だし、彼らの前に持っていく。


「それでは、今から私がティッシュを上に投げるので、お二方はそれを飛ばし続けてくださいね。いきますよ、よーい、スタート!」


 合図とともにティッシュが空に投げられた。

 平和な争いが始まった。

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