接触と触手
アルにも魔女の烙印は存在していた。
蒙古斑のようにくっきりと存在する烙印。これによってアルが魔女に呪われている事が確定した。
「お尻に烙印、ですか。節穴なジェミニス様の目は、女性のみにある穴と烙印を見間違ったのではありませんか?なぜならあの穴は、多くの呪いを注がれる為に存在していますから…」
「見間違ってねーよ」
多くの呪いを注がれるとか言うな。
創作意欲が湧いてしまうではないか
「つまりジェミニス様は、呪いを注ぐ穴を見た事があると」
「ねぇよ。アルの前でこんな話すんな」
馬鹿なのか。
「失礼しました。お嬢様、女性にはですね・・・」
「教えようとすな」
「なるほど理解しました。ジェミニス様は私がいなくなった後、メルルが言っていた事を教えてあげようか?などと供述しながら、お嬢様を手籠めにするおつもりですね。不潔過ぎます。汚らわしい」
「汚らわしいのはお前だ」
「私はまだ綺麗なピンク色です」
「…」
なんだろう。ツッコみを入れるのも疲れてきた。
お兄ちゃん子の可愛いカラリアよりも、この女の方がよっぽど色欲の魔女をしている。
キャラ設定間違ってないか?
カラリアをあんな魔女にしたのは、僕の匙加減ではあるけれど。
「中折れしてヘタるよりも前に、お嬢様を呪った魔女について話して頂きたいのですが?前戯が長いというのも考えてものですね」
【うん ジェミーはなしそらしすぎ】
「酷い」
僕は少しばかり傷付いた。
話を逸らしているのは、どう考えてもメイドの方なのに。
「酷いのは醜く膨張したジェミニス様のアレです」
「膨張してねーから」
「どう見ても、心は醜悪に膨張していると感じたのですが違うのですね」
「ちげーよ」
心の方かよ。
どっちであっても醜くもないし、膨張もしていないけれど。
「で、いつになったら本題に入るのですか?」
【はやく】
「ごほん…烙印があった以上、アルと魔女が繋がっている事は間違いない。後は、アルの声を奪った魔女に、こちらから接触できるかどうかだけだと思う」
冷たい視線を振り払うよう、大きく咳払いした僕は二人が望む本題に入った。
カラリアのような魔女であれば、条件次第でこちらから接触する事が可能であり、気紛れに向こうから接触してくる事もある。
アルを呪った魔女がどういったタイプの魔女かは知らないが、接触してみない事には話がまとまる事もない。
「触手で接すると書いて接触。実にいやらしいです」
「メルルは少し黙ろうか」
そのように興味深い題材を投げられてしまっては、話が盛大に逸れてしまうではないか。
【まじょさんとは こえをあげてから いちどもあったことないよ】
「そうか」
アルの答えは予想した通りのものだった。頻繁に接触してくるカラリアこそが普通ではないのである。
【これ よくないこと?】
「そんな事はないよ。ちなみにアルは、声を失った以外に変化はないか?」
魔女や魔女の烙印が視えるようになったりとか、怪我の治りが早くなったりとか。病気にならなくなったりとか、色は色でも違う色まで奪われるようになったりとか…。
魔女と関わった以上、何かしらの変化がアルにも出ている筈だった。
【わからない】
「なら、それを探す所から始めよう」
魔女との繋がりは、呪いであると同時に加護でもある。僕は会った事がないけど、魔法のような芸当ができる者もいるらしい。
魔女でなくとも魔女と呼ばれ、恐れられるくらいには、魔女と繋がった者は特別な存在になるのである。
魔女狩りによって殺される者の大半は。ただの人でしかないのだけど。
【また おいしゃさんごっこ?】
「またとか言うな。僕はまだ、そんな悪事に手を染めてない」
【まだ?】
「そこは見逃してくれ」
未来の事は、誰にも分からないのだ。
「しかし、お嬢様の裸体をまさぐる以外、探る方法はあるのですか?着衣型を好む殿方がいる事は、知識として知ってはいますが、なっ…まさかここで接触を?汚らわしい」
「メルル。もっと黙ろうか」
接触をいかがわしい言葉に仕立て上げないでくれ。触手プレイの一つにしか、思えなくなってくるではないか。
ていうか、触手プレイって何だよ。
脳ではなく魂で淫猥さを理解できたものの、どういったプレイなのかは分からなかった。
分からないから、後で詳しく教えて下さいメルルさん。
【ジェミー どうするの?】
「烙印がある以上繋がりは確実にある。問題は何の縁で繋がっているか…」
僕とカラリアは色で繋がっている。
だからこそ何を呼んで出て来る事はなくとも、僕が色欲にまみれたなら、繋がりを通じて現れる事になる。例えば、ここでメルルの衣服がはだけでもしたら、世界をカラリアの黒が覆う事になるだろう。
僕はメルルを見た。
使用人のエロメイドにも関わらず、メルルの衣服ははだけておらず、谷間の強調された服ですらなかった。教本に出てくるメイドは皆、エッチな恰好をしていたのに、メルルの着ている服はガードが堅かった。
まさか、知識の方が間違っているのだろうか?
いや、まさか…。そんなはず…。
「…ジェミニス様がいやらしい目で、私を見てきます」
「見てねぇよ」
ちょっと想像しただけです。
【ジェミーのエッチ】
「アルはそんな言葉覚えるな」
声がないからまだしも、そんな風に罵倒されてしまったらカラリアが出てきてしまうではないか。
僕は軽く深呼吸をした。




