68僕は始、私は備
莉耶の声が聞こえてそこにいるのと目を開けると、莉愛の目が腫れていて大丈夫だよと起きあがろうとした。そしたら傷つけられたところが、激痛が走って思うように動けない。
「ごめんなさい」
「莉愛は悪くないよ。この時間帯は学校でしょ?気にせず学校へと行って」
「でも……」
「僕は大丈夫。波ちゃん、莉愛をお願い」
行くよと莉愛を連れてってもらい激痛がとれるまではベッド生活か。僕が七星に指示をしているのはまだ誰にも気付かれていないからこのまま順調に進めればいい。
だけどいつばれるかわからないし、海さんの目と剣総司令官の目があるから長い時間星の観察はできないだろう。そうなることを想定して動くしかなさそうだな。
「影神」
「坊っちゃん……」
「痛みを早めにとりたいから、薬の調合してほしい。それから見つけたんだよね?最後の材料」
「はい。ですが作るのに少々手間がありまして、もう少し時間はかかるかと」
「わかった。だけど早めにだよ。莉愛をこれ以上、悲しませたくないから」
御意とすぐ痛みを和らげる薬をとりに行ってもらい、痛いけど体を起こして引き出しにしまっていた手帳を出す。真の神としてまだ謎が一つだけ解けていないものがあった。それは以前、心から僕が抱えている事柄を見抜かれたやつの一つ。
なぜ真神家が散らばってしまった理由だ。兄弟がばらけてしまった謎を解かないと、後々問題が起きそうだしもしかしたら兄弟の中に裏切り者がいる可能性だってあるはず。
その鍵を握っているのはきっと星音なんだろうけど、聞いてしまえばまた何されるかわからない。
自力で突き止めるしかなさそうだなと手帳を閉じて、引き出しにしまっていると海さんがやってくる。
「俺に隠していることがあれば吐け」
「何もないですよ。僕、仕事あるんで行きますね」
軍服を羽織り部屋を出ようとしたら、海さんに扉を止められてしまった。
「飼育員、もう一度聞く。何を企んでいる?」
「企んでない。黒バラの騎士として仕事を全うするだけ。プロテアがあるんだし悪さはできないのも、海さんだってわかってるでしょ?」
「……行け。ただ星音と剣を甘くみるんじゃねえよ」
わかってますと部屋を出て剣総司令官の部屋へと入る。
「剣総司令官、ご迷惑をおかけし申し訳ございません」
「別にいい。動ける?」
「はい。痛みはありますが、動けます」
「なら、ついて来い」
どこに行くんだろうかと剣総司令官について行き、駐車場で僕が運転席に座って剣総司令官が助手席に座りエンジンをかけた。
「どちらに?」
「南へ迎え」
イエッサと答えながら出発し剣総司令官は音楽をかけ、星音が歌っている曲を流す。懐かしい曲と聴きながら剣総司令官が指示をしつつ、あることを言われた。
「自分の妹は生まれてすぐ悪魔に奪われ、それ以外妹は消息不明で会えなかった。しばらくしてから、ある女優の記事を見て確信した。自分の妹だということ。だけどその当初、自分の両親は悪魔に取り憑かれていてまんまと罠に引っ掛かり、両親は死した。だから自分は両親の後を継いで、セリニ・ネアの仕事を全うしていた頃。全然連絡をして来なかった海から連絡が来てな。昏の星を見つけた。もう少しして確保へ向かうと言ってきてな」
海さんが動いてなければ僕はもう少し莉耶と過ごせたのにと思いつつも、その先も話を聞く。
「自分は迷いがあった。自分の妹を堕天使アゲンロスに捧げることが本当に良かったのか。久々に会っても妹は自分を兄として見ていないのは承知で、南十字星の印をつけた。この三年、本当にこれでよかったのかふと考えることがある。妹を救える方法はないのか、堕天使アゲンロスを消滅させても妹は帰ってくるのか……」
「帰ってきます。僕はずっと願ってるから安心してください、剣総司令官。そう言えばずっとお聞きしたかったことがあるんですけど、妹さんの名前、何と仰るんですか?」
「南十字星から一つとって美南と両親から聞いたことがあった」
星音にぴったりの名前だなとそこからは何も喋らず、星音の曲を聴きながら南の方角へとただ進んでいった。
到着したらしく車を停車させ、車から降りると大きなドームがあって、こんなところにドームなんかあったっけ。見ていたら行くぞと言われたからついて行く。
中はどんな感じなんだろうとみると建物内の壁紙が星で所々にバラが描かれている。もしかしてここで行うつもりなのかと進んでいくと客席がたくさんあって、中央にはセリニ・ネアの軍員が何かを確認していた。
そこへ行くと軍員は敬礼をして剣総司令官が外せと言われたから軍員はイエッサと返事しながら退散していく。
「昏斗、この中に入り黒バラ流星群を発動させてもらう」
「ここでですか?」
「あぁ。各プラネットの映像を全て流し観客を楽しませる。終わり次第、配置しているセリニ・ネアが始動し、捕食人間を地下へと追い込む予定だ。自分たちはVIPルームで観ている。中断しようが自分のプロテアが見張ってるから、逃げ場はないと思え」
「イエッサ。ここで観る星は一番なんだろうな……。剣総司令官、夜になるまでここにいてもいいですか?」
「構わない。自分用のバイク持っているだろ?それで帰って来い。自分はまだ仕事があるからな」
ありがとうございますと頭を下げ、剣総司令官は行ってしまい僕は寝っ転がって夜になるまで空をずっと観ていた。
僕が成し遂げたことが全て水の泡になり、元通りになってしまってもみんなが止めてくれると信じるしかない。それに気がかりなのが剣総司令官だ。さっきのことが本音なら、なぜ今も星音についているのかわからない。
美南はまだ星音のどこかで封印されているのか定かではないけれど必ず美南を救ってあげなきゃ。可愛い雪星が美南の帰りを待っているからね。
アリスからまじないの解除方法教えてもらえばよかったな。そうすれば七星も莉愛もそれぞれの母親と一緒に……。はっと僕は起き上がって頭を手で押さえる。
僕の息子と娘が違う母親を選ぶ……。そうすれば天使と悪魔の子となり二人は決して結ばれない運命へと行ってしまうだなんて。次の僕の子たちにそんな運命が降りかかるのは阻止したいが僕次第だ。
黒バラ流星群は悪魔を暴走させる、赤バラ流星群は愛に満たされ平和を取り戻せる、白バラ流星群は悪魔を弱らせて逆に天使が無敵になってしまうから駄目だ。何かきっとヒントがあるはず。僕を入れて七人の兄弟を作った意味……。バラの色にもしかして関係してるかもしれない。
確か父さんが残したバラの意味について、詳しくあったような……。
はあはあと今のはなんだと頭を悩ませる。さっきのは前世の記憶で、前世の僕はこのことを知っていた。きっと琥珀さんと真珠さんに聞いたんだろう。だとすれば前世から僕の運命は決まっていたことになる。
星音に頼んで本家に行き調べ物をしたいけど、父さんが今管理しているらしいから思うようにいけない。
さっきバラの色にもしかして関係しているかもしれないと思い出せた。
赤バラは愛、あなたを愛します、貞節、熱烈な愛。
白バラは無邪気、清潔、相思相愛、尊敬。
黒バラは憎しみ、恨み、あなたはあくまで私のもの、決して滅びることのない愛、永遠。
ピンクのバラは上品、しとやか、温かい心、満足。
オレンジのバラは無邪気、魅惑、信頼、絆。
黄色のバラは献身、美、さわやか、あなたに恋をしています、嫉妬。
緑のバラは穏やか。
青のバラは夢が叶う、神の祝福。
絞りのバラは満足。
斑のバラは君を忘れない。
どれかに僕らが入るということなのだろうか。ちょっと待ってこの感じと僕はあることに気がついた。そういうことだったんだと理解して、夜待つことに。
星を観察できたことで自宅に帰り、歩いていたら星音の扉が少し開いていて灯りがついている。まだ起きているのかと近づいたら星音が楽しんでいる声と剣の声がした。音を立てずその会話を聞く。
「もう我慢できない、星音」
「わしゃにとって剣はわしゃの全てじゃ。もっと、もっと甘えるがよい」
ちらっと覗くと二人はそういう関係性だと知り、音を立てず莉愛の部屋へと入ろうとしたが、部屋の外で立っている波ちゃんがいる。
「入らせて」
「もう寝てるよ」
「いいから入らせて」
「嫉妬しちゃった?そうなんでしょ?可哀想な昏斗。じゃあ私が癒してあげよっか?」
「いいから入らせてよ」
波ちゃんはだーめといつもなら言うも、普通に入らせてくれて莉愛の寝顔を見た。莉愛、もう少しの辛抱だからねと布団をかけ直し、おでこにキスをする。角も羽根も尻尾も全部とってあげるから。
少し莉愛の顔を見れただけで癒され、僕も就寝しようとしたらお父さんと起きてしまった。
「どうした?」
「ううん。久々にお父さんの部屋で寝ちゃだめかな?少し怖い夢見ちゃって」
「いいよ。行こっか」
部屋を出て波ちゃんに説明をし、同行してもらって僕の部屋の前にはいつも海さんがいる。海さんが暗証番号を入れて僕の部屋に入ると勝手にロックがかかる仕組みだ。
莉愛はそのまま僕のベッドで寝てしまい、僕はシャワーを浴びて寝巻きに着替える。もうこれ以上、莉愛や雪星を悲しませないためにも、僕は始動するよ、みんな。
莉愛の隣に寝っ転がり僕も就寝することにした。
黒バラ流星群発動日となりチケットを取れた人たちが入っていく中、僕は中に入って時間になるまで待機をしている。
「坊っちゃん、大丈夫ですか?」
「なんとかね。発動させている間は莉愛と雪星のそばにいてほしい。ここに悪魔は星音とそれから莉愛だけでも、念のためってやつかな」
「かしこまりました。終わり次第、お迎えにあがります」
「よろしくね、影神」
影神はこの部屋から出て行き上を見ると雲一つない夜空。僕が救ったプラネットが全て元通りになってしまう。みんな、ごめん。莉愛と雪星にストックを守るためにやること、どうか許して。
七星、みんなのこと頼むよと星に願い、司会者が喋り始めてカメラが複数僕を映していた。
観客席から昏斗様とか黒バラの騎士様とか歓声の声が上がりる。深呼吸して司会者の合図により血を黒バラ七本に流し装置に一本ずつ差し込むと装置が光る。僕は覚醒した姿となり目を閉じながら、手を前に出し装置に向かって願いを告ぐ。
「真の神に昏の星にて、花の力より郡じ流れよ!」
目を開けるとバラの花びらが空へと舞い流星群のように流れ始めた。全員に行き渡るまでの時間帯は約六時間程度。全プラネットに行き渡れ。僕の憎しみ、怒り、悲しみを届けさせろ。それがどんな結末が起きようとも僕は願い続けるよ。
⁑
私たちは水神潤が考えた作戦にし私たちが備えて準備段階に入っていたら黒バラの花びらが一枚、ううんと空を見上げると黒バラ流星群が発動していることがわかった。
昏斗が今流しているんだと悟り、耳につけていた無線でみんなに知らせる。
「みんな!始まったよ!」
それぞれ待機していたみんなが了解という返事が聞こえて、ここから各自のプラネットにいるディアヴォロスを止めに入るから連絡はまずできない。
私は星と一緒に地下へ逃げてくださいとディアヴォロスに言いながら、すでに暴走しているディアヴォロスを止めに入る。
今回ばかり蝕夜とプルトナスも対象となるため地下にいてもらっているから安心だけどこの六時間ぐらい。私たちは暴走してしまったディアヴォロスを止めていく。
紫雨も蝕夜の血を受け継いでいるから地下にいてもらっている。星の子である日葵はお母さんの指導のもとちゃんと倒せるようになったから小さいモンディエを倒してくれていた。
昏斗は七星になんて言ったのかはわからないけど、七星は今、大鳳天満と一緒に天王星ラウモイズにいる。菊太も珍しく、七星についていった。
「ここはもう大丈夫だろう」
「他のみんな……大丈夫かな」
「信じるしかない。他に残っていないか見回ろう。日葵、おいで」
なんとか回避はできたけれど、この先が不安だと思いながら冥王星プルイーナスを見回りに行くことに。




