66僕は籠、私は申
新星ノヴァセリニに来てから僕は閉じ籠るように違うプラネットには行かず、いつの間にか三年が経ってしまい莉愛は七歳になって今は小学校へ通っている。僕は相変わらずアゲンロスに忠誠を捧げながら、剣総司令官の番犬として働いていた。
セリニ・ネアの正式社員は全てこちらに戻って来て、ずっと新星ノヴァセリニから出ていない。
仕事をしていると隣の部屋にいるはずのアゲンロスが、強引に開けるものだから扉が吹っ飛ぶことがしばしばあって避けながらキーボードを打っていた。
後ろからハグされようともこれが日常なため放置しながらどうかしたと聞く。
「今の名前が気に入らん。アゲンロスという名はもう飽きたのじゃ」
「そうは言っても、みんなが認識しちゃってるし手遅れだと思う。だけどそんなにその呼び名に飽きたなら変えてもいいんじゃない?役所に行けば名前変更できるから」
「なんて名前が良いかのう。名を考えてもピンと来ないのじゃ。何か案はないか?」
「それなら民に考えてもらうのはどうかな?みんなやってくれると思うよ」
「それじゃ!今すぐ剣を呼んで来い」
わかりましたと僕は耳に無線をつけて、剣総司令官に連絡してみるとすぐ声がかかった。
「剣総司令官、アゲンロス様がお呼びです。至急、王の間へと来てください」
すぐ行くと言ってくれて行きますよと立ち上がって、エスコートをし玉座に座らせ僕は斜め前に立ち待った。少しすると剣総司令官と海さんがやって来てアゲンロスの前に跪く。
「お呼びでしょうか、アゲンロス様」
「よく来てくれたのう。わしゃは名の変更をしたい。民にどんな名前がいいのか聞いて結果を知りたいのじゃ。頼んだぞ」
セリニ・ネアのイエッサと答えて、剣総司令官と海さんがすぐにやってもらう。最近はアゲンロスの願いを聞いてるだけだけど、そろそろ昏有兄さんたちが何か仕掛けて来そうだな。
そう考えた僕はアゲンロスが座っている大きな玉座に僕はアゲンロスの膝に寝っ転がる。
「どうしたのじゃ?甘える時間はまだ早いぞ」
「少しだけこうさせて。アゲンロス」
なんじゃと僕の頭を撫でるアゲンロスに、僕にはここが窮屈だということを伝えた。
「僕が生まれた時は木星セウスジアしかないと思ってたけど、いろんなプラネットがあることを知って、旅ができる喜びは今も残ってる。ねえアゲンロス、僕にはここが少し窮屈すぎて旅に出たくなっちゃったよ。たまには家族旅行しに行けたらいいな。それにここには人間しかいない。アゲンロスは悪魔で莉愛も悪魔だ。だからディアヴォロスとエクリプス人を入れるのはどう?その方が今後の未来もいい方向性になると思う。それに大鳳天満を憎む天使もまだいるはずだ。どうかな?」
「ふむ、じゃがディアヴォロスの帝王と呼ばせている月日蝕夜が邪魔じゃのう」
「そんなの無視すればいい。だって蝕夜を恨むディアヴォロスやエクリプス人が出てくるはずだ。救えるのはアゲンロス。君だけだよ」
僕が甘えると考えてみるとしようと言ってくれて、よかったとありがとうを伝えていると、ただいまと莉愛の声がして寝っ転がるのをやめた。
莉愛はランドセルを背負ったまま僕に飛びついて、それからアゲンロスにもハグをする。
「学校はどうじゃ?楽しんでいるか?」
「楽しいよ!でも私、悪魔の格好だから揶揄われることが多くて辛い」
「立派な角に立派な翼を馬鹿にするものは誰なのじゃ?言ってみるんじゃ」
「こらアゲンロス、まだ子供なんだから仕方ないでしょ?ほら天使みたいに消せることはできないの?」
「莉愛が悲しむ顔は見たくないのじゃが立場というものを……うぅわかったのじゃ。但し学校にいるだけじゃ。それ以外はわしゃと同じく見せるのじゃよ。よいな?」
やったと喜ぶ莉愛で友達と遊んでくるようだ。最初は泣いてばかりだったがアゲンロスと仲を深めさせたことで、今はこの通りいつもの莉愛に戻った。
「そうじゃった。昏斗の意見も聞いておこう。どういう名が合うと思うか?」
「んーそうだな。花で例えるとエキナセア。花言葉はあなたの痛みを癒します、優しさ。アゲンロスは僕の痛みを癒してくれているし、最初はどうなるかと思ってたけど実際は優しいから。だからその由来でえきなはどうかな?でもせあもいいかも。そこはアゲンロスが決めてよ。それに民の声も聞いて選んで」
「うむ、そうするとしよう。早く来ないかのう。楽しみじゃ」
じゃあ僕は仕事に戻るねと軽くキスをして、隣の部屋に戻り仕事をしていく。
一週間後、全民が名前を考えてくれて、僕と剣総司令官は同じ名前を集計していた。そのままがいいという人もいればこんな名前に合いそうという名前を上げてくる人がいる。
面白い名前だったり名前長すぎでしょと思う名前もあったりで集計をしていたらこれは莉愛の字でこう書いてあった。星音とありその紙で手が止まってしまう。
「どうした?」
「すみません。莉愛が書いてくれた名前が星音だったから。でもその名を呼べないから破棄します」
「待て。複数上がってる。おそらく自分の軍員たちが出張でいた時に星音のファンにでもなったんだろう。アゲンロス様に見せる。それを貸せ」
イエッサとそれを渡し集計した結果、六割の人たちが星音を選び三割がアゲンロス、一割がいろんな名が上がった。やっぱり星音かと隣で莉愛と遊んでいるアゲンロスのところへと行く。
「終わりました」
「わしゃの名はなんてなるんじゃ?」
「星音。器をくれた方の名です」
「ほう、そう来たか。せっかく昏斗が考えてくれたのもよかったのじゃが、それにしよう。皆にそう告げよ」
敬礼をして剣総司令官は民に報告するため、この部屋を後にする。僕はそのままアゲンロスと言いたかったけれど、もしかしたら鍵になると思い星音とこれから呼ぶことにした。
いっけない、この時間は莉愛に稽古をする時間だと大きな庭に出て、訓練場へと向かっていたらおとさんと走ってくる子が来る。意外と早い帰りだとおいでと抱っこし、和と心がゼエゼエしながら到着する。
「保育園の合宿、楽しかった?」
「うん!いろんなね、プラ行ってきた!一番楽しかったの木のプラ。心しゃん、おとさんに渡して」
心は僕がずっとここにいたこともあったけど、バラは常にあったが見せてもらうとこれはとスノードームをみる。雪ではなくバラが動いてこれは僕とマジマジ見てしまう。
「おねちゃんはこれだよ。和しゃん、渡して」
和ははいと莉愛に渡すとまじですかとびっくりするぐらい、七星の写真集で僕はそっちの方が嬉しいんだけどな。まあ後で見せてもらおう。
「おかさんはお部屋?」
「お部屋にいるよ。ちなみに何を買って来たの?」
「おとさんに見せて」
心が僕に見せて来たのはなんと冥王星のペンダントだった。売ってるのと僕が触れようとしたら心が隠してしまう。
「どこかに行こうとか考えてないよな?」
「さすがに考えてないよ。でもよくこれ見つけたね」
「冥王星プルイーナスが街を作り始めてた。それによって冥王星プルイーナスにも民が増え始めている」
へえそうなんだと息子を抱っこしたまま星音のところへ行きただいまと明るく言うこの子は、新星ノヴァセリニに着いてすぐに我慢できず例えアゲンロスであろうともやってしまったことによりできてしまった。
これは天満から天罰が下りそうだと思っていても、確実に諦めたしセリニ・ネアが全プラネットに知らせたため、莉耶や昏花たちも諦めているであろうと思っている。
「おかさん、見てみて!冥王星のペンダント!おかさんがいたところに行けるらしいよ!家族で行きたいから、心に買ってもらったの」
心、正直な息子にわがままを言わせてしまってごめんと手を合わせると別にいいと口パクで言ってくれた。だが怒りのマークが出るような笑顔が引きつっていて怒らせたと僕らは感じる。
「よかったのう、雪星。莉愛、雪星を連れて部屋に戻るんじゃ」
「お稽古は?」
「話が終わったら、すぐ行くから雪星のことお願い」
「わかった。雪星、行こっか」
うんと莉愛と雪星がいなくなった瞬間、どういうことじゃと心と和を縛りつけて怒りを現す。
「お主たちがいながらも何を買ってあげているんじゃ?昏斗に渡しよったスノードームも、莉愛に渡しよった縁を切った兄の写真集も奴らが作りよったものじゃろ?もしやお主どもはわしゃを裏切り蝕夜と接触しているのではないか?」
「接触はしていない。それは星音もわかっているはずだ」
「興味を持つものは持たせる。それが星音のやり方だから従いました」
星音落ち着いてと手を握るも、冥王星のペンダントを壊そうとしていて止めに入る。
「僕は星音から逃げるつもりないし、子供たちを捨ててみんなのところに帰るつもりも、もうないことぐらいわかってるでしょ?僕はずっと星音に忠誠を捧げる黒バラの騎士だ」
「すまぬ。ちょっと怒りが出てしまっただけじゃ。それでわしゃにこれをくれた雪星はなんて言ってたのじゃ?」
「家族旅行がしたいって。電車に乗らなくてもそれがあればどこでも行ける。雪星が今行きたいのは冥王星プルイーナスらしいよ」
「あやつの惑星なんぞ、行きたくはないのじゃが雪星が望むと言うのなら行くとしよう。それに剣を呼んで来い、心。和はこのまま雪星の子守をじゃ。昏斗、時間を無駄にしてすまなかったのう。莉愛の稽古を頼むぞ」
スノードームは僕のデスクに置いておき、莉愛のところへ行くと写真集を眺めていた。お待たせと声をかけるとなぜか莉愛が涙を流す。どうしたとポケットにしまっていたハンカチを取り出し涙を拭ってあげる。
「莉愛?」
「お父さん、これ見て」
どれと莉愛の隣に座って見せてもらうとそこに写っていたのは七星で、赤いバラ十一本の花束を持って満面な笑みで笑っている。それでなんで泣いているのかというと文字が入っていてこう記されていた。
遥遠い星と星が愛した花は僕の最愛なる人だから、赤いバラを十一本にしたんです。遥遠い星は僕にバラの本数の意味を教えてくれた。十一本は最愛。だからどこかで見てくれると信じてこの花束を贈ります。
どんなに離れていても、遥遠い星と星が愛した花にもう一度会えることを願って。
七星がこんなこと言うだなんて、僕も莉愛も嬉しいよ。ありがとう、七星とやろうかと後でじっくり見せてもらい剣の稽古をしていった。
夜、雪星を寝かせつけた後、僕は庭に出て天体望遠鏡を立て星の観察をする。ここには展望台がないから天体望遠鏡で観察するしかなかった。
今日も綺麗だと星の観察をしていたら、ほっぺたに温もりを感じみたら海さんが缶コーヒーを二つ持っていて一つもらう。
「飽きねえの?」
「飽きないよ。これが僕の日課だからね。それで僕を閉じ込めて三年がすぎたわけであるけど、何が起きようとしているの?今は大人しくしてそうだけど、そろそろ動き出す雰囲気は出てる」
「スコヤディを撒き散らかしてやるのも一つの手だったんだが、飼育員の兄が手放さなかったから剣総司令官は次のプランを立てた。全プラネットに願いを込められる力はだいぶついただろ?それを利用して黒バラの流星群を流してもらい、ディアヴォロスを普段通りに戻させ捕食人間を地下に戻す」
「ネオリオ人は?」
「以前のように戻るだけだ。やらなければ莉愛と雪星の命がないと思え。どうせ全てが終わったら元通りにするつもりだろ?いくら子を作ろうとも人質が増える一方だぞ。そこは覚えておけ」
海さんに見抜かれていたとは想定外で波ちゃんや他の人たちにも見抜かれているということか。やらなければ莉愛と雪星の命がないことが理解し返事をして、僕は星を眺めて行った。
⁑
昏斗と莉愛に星音ちゃんを奪ったアゲンロスがいなくなって三年が経ち、私はごく普通に子育てをしていた。日葵と紫雨は冥王星プルイーナスの小学校が建設されそこに通っている。お友達も増えて楽しそうに学校生活を送る二人でも、たまに莉愛お姉ちゃんと遊びたいとしょんぼりしてしまう時が来る。
その時は子役デビューをした七星くんが絶対に会えるよと励ましていた。それにしても意外だったな。子役として今は星音ちゃんと同じぐらいファンが多いとかマネージャーをしている莉耶ちゃんが言ってた。
きっと七星くんは昏斗と莉愛にアピールしているのが伝わってる。予約で買った写真集にも名は載せてないけど星と花に例えて説明していた文面も見つけたから。
その一方、お兄ちゃんは昏斗を堕天使アゲンロスに奪われたことにより、蝕夜と縁を切って敵視するようになってしまった。昏希はお兄ちゃんが心配でいつも通りネオリオ社で働いている。
お姉ちゃんは相変わらずでプラネットコード社で働きながら、人事活動をしているとか聞いたな。昏来も昏未も負けてはいれないと八雲くんと流彗くんと一緒に桜庭課長の元で訓練をしている。まあそこに甘ちゃんがいるからなんだろうけど、甘ちゃんは前より元気がない。
それは三年前に昏斗と接触したものの止められなかったことが、今でも悔やんでいるんだろうと星は言っていた。
あの子たちが帰って来るまでに調べ物を済ませておこうと思ったら、ずんとした星がやって来た。
「どうしたの、星?」
「天満が二つの命を別々にしてもらったのはよい。だが僕より、ディアヴォロスたちは蝕夜に親しんでる。もう僕は終わりだ」
確かに最近、蝕夜がディアヴォロスを動かしていたようなものだからね。まあ星は元々ネオリオ人だったんだし、別にそこはこだわらなくてもいいんじゃないかなと言おうとしたらお邪魔するっすと地神千歳がやって来た。
珍しいお客さんだなとどうしたのと問うとこれ見てっすと言われこれはセリニ・ネアの週刊誌だけどなと確認する。
「全プラネットにバラ流星群を発動させる日が訪れる。日程は近日公開……。どういうこと?」
「わからないっす。ただ昏有さん、また同じことが起きるんじゃないかって考えてるみたいっすよ。俺ら五神はそれの調査に行くことになったんすけど、それだけじゃないっす。付箋貼ってあるところ見てくださいっす」
付箋が貼っているところをぺらっとめくったら、昏斗の情報だった。昏斗は今現在、黒バラの騎士として新星ノヴァセリニを守りつつ、葉室剣総司令官の番犬として動いている。
これは何度も見たからわかるけど熱愛報道の情報を見てしまった。昏斗はアゲンロス様と深い関係でありつつ、新星ノヴァセリニに住み始めた頃、すでに子を授かり今は長女の莉愛様と長男の雪星様を育児されながら働いている……。え?元々星音ちゃんとそういう関係で生まれたか、それともアゲンロスの子供。
「義弟昏斗もなかなかやるな」
「ちょっと星、これは一大事でしょ!これ莉耶ちゃんには見せたの?」
「それ見せても子育ての邪魔だから帰ってって言われちゃったっす。もう本当に昏斗くんと莉耶ちゃん……破局しちゃったんすかね。あんなに仲が良かったのにもったいないっす。天満さんもあの男はもうほっとけって言われちゃったんで」
「昏斗、何考えてるのよ。星、また昏斗捜索隊作って。意地でも捜すしきっと桜庭さんたちも協力してくれる」
「だが前は喰雅が会長で特別に作ってもらったようなものだ。桃花も今は元に戻ったご両親との私生活を邪魔したくない。特別扱いはできないかもしれんぞ。それでもよいか?」
「私はもう我慢できない。昏斗に会うまで私、諦めないよ。千歳さん、そういうことだからお兄ちゃんに伝えて。前は赤いバラ流星群で綺麗だったけど、これ見る限り黒バラの流星群が流れる。そう伝えればお兄ちゃん、すぐにでも動いてくれるはずだから」
「よくわかんないすっけど伝えるっす。それじゃあ」
冥王星のペンダントを使って地神千歳はお兄ちゃんがいる地球オルモフィーケへと行ってもらい、私は星と一緒に冥王星プルーナスの別荘で住んでいるお母さんのところへと急ぐ。
「お母さん!」
「あら、昏花、それから星さん」
「黒バラってどんな花言葉を持つんだっけ?」
「黒バラは確か憎しみ、恨み、あなたはあくまで私のもの、決して滅びることのない愛、永遠という言葉があるわ。それがどうかしたの?」
「セリニ・ネアが動き出す。昏斗が再びバラ流星群を発動させるの。もしかしたら黒バラを発動させるんじゃないかって」
お母さんは考え込みスマートウォッチの画面を開いて、影神のご両親になぜか連絡を取り始めるお母さん。
「えぇそうなんです。もし忍さんがこのことをご存知でしたらと思いまして。はい、えぇ。ありがとうございます。夫にもこのことは知らせておいてください。よろしくお願い致します。それでは失礼します」
どうだったんだろうと通話を終えたらしいお母さんに、言われたことは影神がその装置の作り方を知っているらしく、新星ノヴァセリニでやるつもりなんじゃないかとおじさんたちは言ってたそう。
すぐにみんなをかき集めて会議開かなくちゃと私たちは昏斗と関わっていた人たちをかき集めていった。




