60僕は勝、莉は約
大鳳天満が落下していくのがみえても、僕たちは飛べないし莉耶が行こうとしても手遅れだと思った時のこと。小鳥たちが大鳳天満に向かって行き、なんだと僕らは崖の下を見る。
そしたらこっちに来て誰かと思えば空神飛羽が、大鳳天満を担いで地に寝かせた。
昏花頼むと昏花はリコーフォスの花で大鳳天満を癒していく。
死んだら七星に顔向けができないと大鳳天満の手を握り、莉耶も大鳳天満の手を握って起きてよと叫ぶ。それでも大鳳天満は目を覚まさず、昏花の力を全て使い切っても無駄だった。
こんな形で勝手に死ぬんじゃないよと、自然になぜか涙が垂れ大鳳天満の頬に垂れると大鳳天満が光り出す。同時に夜空から星が落ちてきて、星の精霊が現れた。僕は思わず星の精霊に命じる。
「僕は星に願う!大鳳天満の命をどうか救って!」
星の精霊は応えるかのように星の精霊が大鳳天満の胸に入り眩しい光に包まれて数秒後。いきなり飛び起きた大鳳天満で、莉耶はもうっと怒りながら大鳳天満に飛びついた。
「なぜ俺は生きている……」
「私を弄んで勝手に死なないでよ、馬鹿天満!天満は生きて一生償ってもらうんだからっ」
昏有兄さんたちは椿を拘束して一度ネオリオ社で預かるようだ。昏未も昏来がいる病院に連れてってもらった。
「大鳳天満」
「……俺が負け犬だったな。ずっとリィヤのことは忘れられず、リィヤの生まれ変わりである莉耶を奪って、酷い目に合わせていた。償っても償えきれない。俺は死ぬべきだ」
「そんなことない、大鳳天満。七星は今でも天満の子としていたいと願ってる。育った環境が違ったこともあり、莉愛を妹として見ていない。だけど育った環境で育てるべきだと思う。ただそれには一つ欠点があるんだよ」
「莉耶か」
頷き僕は首に下げていた婚約指輪をとって莉耶の薬指につける。
「勿忘草の花言葉覚えてる?」
「覚えてるよ。私を忘れないでと真実の愛。例え昏斗にあんな記事を載せられても平気でいられたのは、そこに真実の愛が含まれていたからなんだよ。こうやって私を助けにきてくれたしね」
「もうちょっと早く行きたかったけど、子供のことも考えて四年間は我慢してもらっちゃったけどね」
「まあその四年で天満のいいところを見つけられたのがよかったよ。天満、私ね。この子を産むつもりだよ」
なぜという顔をしていて僕と莉耶は笑って、僕が説明をする。
「実は前以て考えてたんだ。子供たちのことを考えて、一緒に子供たちを育てないかって。前に訪ねた時、莉愛が言った言葉忘れたりは言わせないよ。莉愛の願い、ちゃんと叶えてほしい。エンジースの長として、そして失った命を一緒に背負おう。それが僕の願いでもあるんだ」
「お前がそんなことを言うとはな……ありがとう、昏斗」
僕と莉耶は大鳳天満に手を差し伸べそれをとって立ち上がる大鳳天満を一応ネオリオ社へと連行した。
ネオリオ社に行ってみると金星アプロディロで金神蓮と一緒に戦っていた甘ちゃんが、うわーんと莉耶に抱きついてよかったと嬉し泣きをする。
僕はそのまま大鳳天満を取調室へと連れて行き、そこには海さんが待っていたのだ。壁に大鳳天満を突き飛ばしてめえと殴りかかろうとしたから止めに入る。
「ちょっと海さん!天満はもう大丈夫です!」
「飼育員は黙ってろ!莉耶を泣かせた分、殴らなきゃ気が済まねえ!」
「好きに殴ればいい」
大鳳天満も何を言っているんだよと僕は海さんに突き飛ばされて尻餅をついてしまい、海さんは大鳳天満に強く殴りかかって大鳳天満が倒れてしまう。
「海さん!」
「天の使いなら罰する相手は違うだろうが!ディアヴォロスは多少荒くれで人を襲うケースが多い!だけどな、純粋な心を持つディアヴォロスがいること忘れるんじゃねえ!会ってたんだろ?琥珀と真珠に。それなのになんでこうなってるんだよ!」
海さんが暴走すると指笛を吹いて菊太に来てもらい、海さんを止めても海さんは大鳳天満の顔を何度も殴る。菊太じゃ止められないと取調室から出て、廊下にいたネオリオ社員に海さんを止めてもらった。
僕は真っ先に昏花を呼び出して大鳳天満の顔を治してもらう。
海さんは椅子を蹴り飛ばして行ってしまって、相当怒っているのがわかった。顔が元通りになって何があったのと昏花が質問してくるから、海さんがねと伝える。
「こんなに殴られるのはいつぶりだろうか」
「立てる?」
自力で立ち蹴り飛ばされた椅子に座る大鳳天満で、僕は向かいの椅子に座り取調べを行う。
大鳳天満は数えきれない無数の人たちを殺害し、莉耶と流彗くんに昏未を誘拐し監禁及び脅迫していたことを自白。そして僕の息子を奪った罪がある。
思慕という花言葉を持つネジバナと契約したのは、莉耶を自分のものにしたいがために契約をしたらしい。
「一つ気になったんだけど、莉耶を連れ去った時、アマランサスの花が現場に落ちていた。それも天満の力で間違いはない?」
「そうだ。不老不死という花言葉を持つことからなぜかその花が自由に使えた。抵抗するものだからアマランサスの力も解放して莉耶を奪ったとも言える」
アマランサスの花もそうとなれば、確信が持ててしまった。本当は星音が見せてくれた写真にもう一つ写っていた花。大鳳天満は悪魔によって利用されていた。
「天満、事情聴取はこれで終わりだけど、一度天満には刑務所行きが決定する。だけどすぐ出られるよう手配は済ませるよ。天満は刑務所の中より、僕らの仲間となってくれた方が好都合だから」
「頼む。できれば莉耶の出産時には立ち合いたい」
「努力するよ。それで七星に言っておくことはある?あるなら伝えておく」
「言えるとしたらこうだ。どれだけかかってしまおうが絶対に会いに行く。それまでは莉耶を頼むと」
伝えとくと話していたら桜庭課長がやって来て、大鳳天満は両手を出し桜庭課長が手錠をかけ行ってしまう。刑務所は土星スノロクにあり、各プラネットの犯罪者が集まっているそうだ。
もちろん炎沢支部長も今そこにいて、土星スノロクに行ったら会いに行っていたな。戦争があったから脱走してなければいい。
莉耶と星音を連れて僕は七星と莉愛がいるところへと戻る。莉愛は星音に抱きつき、七星は莉耶に抱きついている間、僕と菊太は昏来がいる集中治療室へと入った。
母さんは疲れ切ってしまったのか父さんの肩を借りて寝ている。
「終わったようだな。真実はやはり椿か」
「父さんが言っていた通り椿がエンジースの黒幕でした。それによって昏来がやられてしまった」
「琥珀と真珠に何度占ってもらっても、昏来が生死の狭間に落ちることには変わりなかった。だから私たちは願うしかない」
「願い……」
そうかと僕は閃いてしまって、入れますかと聞いたところ入れるらしく昏来が寝ているベッドに座って手を握り目を瞑る。大鳳天満が死ぬ間際に星の精霊が出せたんだ。
僕の願いが星に届けと強く願っているとお星様だと莉愛の声が聞こえて、目を開けるとさっきとは小さかったのに星の精霊が女性の姿となって僕を見ていた。
「お願いだ!僕の弟を!」
そう告げると女性はにっこり笑って昏来のおでこにキスをするとさっきより眩しい光が放って、僕たちは目を開けられず瞑る。数秒瞑っていたら、昏来の声が聞こえて目を開けると吾輩生きてる?と僕に問いかけたからもちろんと頭を撫でた。
奇跡だ。お医者様にはもう目覚めないと言われてたのに、僕の願いが星に届いたんだと口元を押さえる。
「何?昏斗兄様。泣いてるじゃん」
「もう心配させないでよ」
「えへへ。そうだ、昏未は?昏未は大丈夫?」
「私めはここですわ、昏来。起きたらこれですもの。それでどうなったのか教えてくれます?」
いいよと昏未も昏来が寝ているベッドに座って、何があったのかを伝えていった。
昏来と昏未に伝えた後、僕らは天王星ラウモイズへと戻り体を休んでいても、莉愛と七星は菊太と庭で元気よく遊んでいる。莉耶は星音と談笑をしていて、僕は展望台へと向かった。
なんだかんだで大鳳天満に勝ったと言うべきなのだろうか。もっと激しい戦いと思っていたが終わってよかった。ガラガラと扉を開けて天井を開け眩しい光が展望台を照らす。
「昏斗」
「空神さん。どうかしたんですか?」
「大鳳天満は死刑すべき。みんなも思ってる」
「僕も最初は思ったよ。大鳳天満は死刑すべきだと。だけどさ僕らも実際、この四年で多くの犠牲を出してしまった。失わなくても僕らが失わせてしまったようなもの。それはアステル幹部が一番わかってるはずだ。違う?」
空神飛羽の顔を見ると自分でもわかっているような表情で、空神飛羽の過去は以前聞いたことがあった。確か空神家はいらないとエンジースによって、空神家は亡くなったが唯一、生き残ったのが空神飛羽である。
だからエンジースが関わっている件について敏感なんだそう。
「ごめん。余計なこと言った。忘れて」
「待って、空神さん。なぜあの時、大鳳天満を助けた?憎んでいたなら助けないはずなのにどうして?」
「……天使だろうが、悪魔だろうが、人間だろうが、助けるのがアステル幹部の勤めでもある」
「憎しみは消えるものじゃないけど、いつか分かり合える日が必ず訪れる。僕は願うよ」
空神飛羽は何も言わず、ネオリオ社へと帰ってしまい展望台を閉じて別荘へと戻った。
夜、子供たちを寝かせつけていた莉耶と星音も寝てしまい布団をかけてあげる。大鳳天満が釈放されるまでは三人で子供を育てようと決めた。
残りの三つは何も起こらず順調に進めばいいけど、少し不安が大きいと二人の寝顔を見ていると、小声で僕を呼ぶ昏花で、どうかしたんだろうかと寝室を出る。
「どうした?」
「蝕夜のことでちょっと」
なんだろうかと談話室に入りすでに暖炉がついており、影神がハーブティーを淹れてくれていた。気にせずソファーに座ってハーブティーを飲みながら相談にのる。
「家を出たきっかけがあって。夜中目が覚めて隣で寝ているはずの星がいないから、蝕夜がどこかに行ってるのはわかってた。でもなかなか戻ってこなくてどこに行ったんだろうって家中を探してたら、こんなのを見つけちゃって……」
昏花が写真を見せてくれてこれはとつい昏花の顔を見てしまう。昏花は体を震わせてしまい、大丈夫だよと昏花を包み込む。実際に見てみないと真実はわからないし、昏花がこんなに怯える理由は目を合わせてしまったからなんだ。
星はこのことを知っているのか、知らないのか聞いておかなければならない。
「大丈夫。僕がついてるし子供たちには触れさせないよ。約束する」
「子供たちが見ちゃったらどうしよう」
「僕らがついてるし大鳳天満も早めに釈放してもらうよう手続きをする。だから昏花は今まで通り子供たちと一緒にいて。僕が話をつけてみるから」
このことはまず張本人に聞いてみなくちゃならない。なぜあれが蝕夜の家にあるのかを。昏花はそれで寝付けず僕は昏花の手を握って一緒に寝てあげた。
翌朝、やけになんか騒がしいと目を擦りながら起き上がってみると、日葵と紫雨がいてその向こうにはムッと顔をしている蝕夜の顔があったのだ。なんだ来てたんだとベッドから降りようとしたら昏斗と寝言で言っている昏花がいる。
一緒に寝てたのばれちゃったかと久々にぐっすり寝ているから、まだ寝かせてあげようと布団をかけ蝕夜を連れて客室を出た。
「なぜ一緒に寝てた?」
「兄妹だから別にいいでしょ。それに蝕夜じゃなかった。星、話がある。ここじゃあれだから、違うところで話そう」
「ムムムッ。まあ良い」
僕は莉耶にちょっと出かけてくると伝えて、蝕夜と一緒にある場所へと向かったのだ。
⁑
星とどこに出かけたんだろうと思いつつもまだ眠そうな七星の着替えを手伝い、昏斗がいない朝食をいただく。昏花ちゃんはまだ寝ているからそっとしておいてと昏斗に言われたけど、夜中に一体何があったんだろうか。
それにしても七星と違って莉愛がこんなに礼儀正しく食べる姿に昏斗と星音ちゃんの育てが上手いのかな。その一方七星は箸を罰点にするように食べていてちょっとだらし無い。こういうところは天満に似てしまったのもあるかな。
そんなことを思いながら星音ちゃんの演技を改めて言いたいことを伝える。
「全て演技だってわからないぐらい、二人とも演技うまかったよ。私も天満に気づかれないよう演技してたけどやっぱり凄いね星音ちゃんは」
「最初計画聞いた時はびっくりしたよ。それに偽装結婚式を行った時、亡くなったはずのお父様が蝕夜様のお力で、生き返って来てくれた時は凄く嬉しかったな」
「今はネオリオ人として桃花ちゃんのところで働いてるんだよね?」
「うん。ご両親をあんな目に合わせた償いとか言っててしばらくは会ってなかったな。ねえ莉耶ちゃん、私、一度お父様に会いに行こうと思う。私はほら育ての親としてだけど莉耶ちゃんが戻って来たことだし、私の将来のこともそろそろ考えたくて」
「莉愛はどうするの?莉愛は私じゃなくて星音ちゃんを選んだ。昏斗もわかってて一緒に育てようって決めたじゃん」
莉愛がいる前でそんなことを言っていても、莉愛は気にせず朝食を食べていて七星は私たちの会話を聞いていた。お願いと目で合図を送ると七星はご馳走様と言って莉愛と退席してもらう。
「星音ちゃん、よく考えてよ。莉愛が一番悲しむことぐらいわかってるでしょ?」
「ごめん、莉耶ちゃん。もうこれ以上、私の力で育てられない。大鳳天満が帰って来たとしても、私はそこにいれない」
「どういうこと?」
「前世の記憶を見ちゃったの。私はいずれ堕天使のアゲンロスに体を奪われる。莉愛や昏斗たちのそばにいたら確実に巻き込んじゃう。それは避けたいの」
「昏斗に相談はしたの?」
横に振る星音ちゃんはこうも言ってた。
「昏斗に相談すれば、昏斗は私のために動いてくれる。それはもちろん、嬉しいよ。だって私は昏斗のことが大好きだから。でもね、四年間、偽装夫婦で莉愛を育てながら過ごしていくうちに、ここにいるべきなのは莉耶ちゃんだって気づいたの。これが真実の愛なんだって、昏斗の顔を見てればそれぐらい気づく。だからお願い。このことは昏斗には黙ってて」
「でも」
「別れを告げて私はみんなの前から消える。大丈夫、なんとか体を乗っ取られないように頑張るから。お願い、莉耶ちゃん」
星音ちゃんの決意に私は、星音ちゃんの大親友として受け止めるしかないとわかったと伝える。
「昏斗やみんなには言わない。でも何かあった時はちゃんと連絡してよ。何か手伝えるかもしれないから」
「うん、わかった。それじゃあ私、一旦お父様に会ってくるね」
「行ってらっしゃい」
約束をし星がくれた冥王星のペンダントを使って、星音ちゃんは育ての親、星河喰雅のところへ行き、私は一人で朝食を食べていった。




