58僕は愛、莉は流
みんなが回復をしている頃、僕と昏希は昏有兄さんと昏無姉さんが来るのを待っていた。莉愛が奪われても僕にとっては想定内であり好都合とも言える。
なぜなら僕は莉愛が物心ついた頃に、全て打ち明けているからだ。産んでくれたのは星音でも母親は莉耶であること。よく耳にする代理出産というやつだ。
星音はそれでも構わないと莉耶の相談を受けていたこともあり、僕らの作戦に乗っかってくれたこともあり、偽装結婚も何もかも全て星音がいてくれたからここまでやって来れた。
おそらく七星は天満に言いつけて、天満とそして莉耶の子になりたいと志願するはずだ。だから必ず莉愛を利用するだろう。但しそれも琥珀さんと真珠さんから教えてもらった情報でもあるから莉愛はそれを阻止してくれるはずだ。一見見せかけて実は違ったというのを証明させるために僕らは動く。
「昏斗兄上、莉愛は大丈夫であろうか?」
「大丈夫。それに莉耶と計画していたのはもうだめだけど、僕らが考えた計画はまだ実行できる。昏希は今まで通り、自分が希望した方へ進んでほしい」
「御意。あっ昏有兄上と昏無姉様だ」
昏希が大きく手を振ると昏有兄さんも大きく手を振ってくれて、到着し状況はと聞かれたから全て話した。
「そうか。莉愛はやはり奪われたが、話してあるんだろう?」
「はい。打ち明けているから、なんとか乗り越えてくれそうな気がします。それでさっきメールで送ったこと」
「一人で来いというやつか。状況は読めないが一人で行けるか?」
「もちろん。それに菊太も連れて行こうと思います。僕はスリウス犬使いですから」
歩きながらそう答えるとなぜか昏有兄さんに頭を撫でられ、チラッとみると昏有兄さんの右隣ではベナが歩いていた。そういうことかと僕は照れながら菊太を呼ぶ。
昏有兄さんもスリウス犬使いだから同じスリウス犬使いとして、もっと頑張らなくちゃね。
「それじゃあ、行ってきます」
「できれば建物の配置図とか盗めそうならとってこい」
それはわかりませんよと冥王星のペンダントを使ってワープし、すぐにエンジースに囲まれてしまった。一人で来いと言ったはずだと言われそうでも昏の人じゃないし、菊太は僕の相棒だからいいよね。
それにしても空島ごと大鳳天満の家だなんて広すぎるでしょと歩き玄関が開いて、中にお邪魔すると僕が作った花たちが出迎えてくれた。
応接室らしい部屋に案内してもらい、ここでお待ちをと言われてソファーに座り菊太は伏せをして寝てしまう。全てが白で白が好きなのか、それとも天使は白だから白のみにしたのかはわからない。
こんなところに莉耶がいるのかと待つこと数分後、扉が開いてお父さんと僕を呼びながら莉愛がやって来た。そしてもう一人、大鳳天満も入ってくる。
「何もしてないですよね?」
「するわけないだろ。犬は例外だからな。元カノに会いたいか?」
「会えるなら会わせてよ」
「条件をのむのなら会わせてやってもいい」
条件ってなんだと天満の顔をみるも読み取れず、お茶と焼き菓子がテーブルに置かれ焼き菓子を頬張る莉愛。
「条件ってなに?」
「莉愛を七星の許嫁にさせろ。週に一度会わせ仲を深めさせる」
「断ると言ったら?」
「今すぐにでもネジバナを絡ませるだけだ。どうする?」
二人が結ばれば莉愛も天満のものにされてしまう。なるほど父親同士話をつけたいから兄さんたちを呼ばせなかったということか。面白い、上等だよと言いたいところだが、これ以上天満の思い通りにはさせるものか。
「面白い、上等だよ。だけど今度は天満の思い通りにさせない」
「やってみろ。どうせお前は負け犬なのだからな」
「それと莉愛のお願いを聞いてもらえるかな?」
なんだと聞いてくれて許嫁にさせるんだったらこれくらいは聞いてくれるでしょう。
「莉愛、ちゃんと言える?」
「うん!天使さんたちと仲良くなりたい。でも遊ぼうって誘っても天使さんたち遊んでくれない。どうしてなの?悪魔さんの子たちとは遊べて、天使さんの子たちと遊べないのは不公平だよ」
四歳でありながらもよく言ってくれたと後でご褒美あげなくちゃねと天満の顔をみると、凄い嫌そうな顔をして思わず写真撮りたい気分だ。
可愛い莉愛が言ってるんだよ。黙ってないでなんとか言えばと待っていると天満の口が開く。
「天使さんは悪魔さんとあるお約束をした。それは互いを傷つけないこと。だから天使さんと悪魔さんは仲良くできないお約束がある。でも莉愛は七星のお嫁さんだから、天使さんたちと遊べるよ」
「本当に本当?」
「もちろん」
「やった!願いが叶ったよ、お父さん!」
「よかったね、莉愛。それで何曜日に会わせてくれる?」
僕が問うとそうだなと天満が考えている間に、無線から小さな声が聞こえて影神は何をしているんだと少し気になってしまう。
「毎週日曜日だ。場所はこちらで指定させてもらう」
「ならさ連絡先、交換させてよ。そのほうが都合がいい」
最初は戸惑っていたが連絡先を交換してもらい、僕らはお暇することにした。帰る際、僕は大鳳天満の家をつい眺めてしまう。
ここに莉耶がずっといたんだと思うと、胸が苦しくなって胸に手を当てた。琥珀さんと真珠さんが占った通りの結果になっている。妊娠したと言われてすぐに琥珀さんと真珠さんに未来を占ってもらっていた。
そしたらこの通り、七星は天満の子になってしまい、莉愛のお婿さんになる未来。それも今も変わらないと二人が言っていた。それに以前見せてくれたカードが変わって僕と莉耶が繋いでいる絵が天満と莉耶の愛が深く、僕がぽつりと覗いている絵。
家を見ていたらスマートウォッチが鳴り、誰だろうと確認したら早速大鳳天満からだった。
今週の日曜日、場所は木星セウスジアにあるバラ園十一時だ。遅れるなよ。それと莉耶は妊娠中だから気分次第で行くそうだ。莉耶が来なくても絶対に来い。以上だ。
そのメールを見て僕は思わず莉愛に抱きつく。
「お父さん?どうしたの?」
「本当のお母さんに会えて嬉しかった?」
「うん!でもね、お父さん……」
「ん?」
莉愛の顔を見て何か思い詰めたような顔をしている。何かとてつもなく嫌な予感がした。
「私、今のお母さんが大好きなの。血が繋がってなくても、今のお母さんと一緒にいたい」
子供は正直すぎて、大人の言葉は時に効果が出ないこともわかっていた。辛くても莉愛の願いは聞いてあげなくちゃね。でもその前に今の莉耶の気持ちを知っておかなくちゃならない。
だから今週会えたら莉耶の気持ちを知ろう。それからでも遅くはないと判断し、僕の今の気持ちを莉愛に伝える。
「莉愛の気持ちはよくわかった。でもお父さんは今もね、本当のお母さんが大好きなんだ。離れ離れで過ごしてるけど、別の人を選べない。そこできっぱり決めようって思ってる。今週の日曜日、来るかわからないけど本当のお母さんに直接会って、話し合うよ。それからでもいい?」
「ごめんなさい」
「いいんだよ。僕は莉愛の気持ちに答えたいだけだから。さあ帰ろう。お母さんが莉愛が大好きなオムライス作ってくれてる」
やったと喜びながら僕らは別荘に帰り、星音が作ったオムライスをみんなで囲みながら食べて行った。
日曜日当日、僕らはバラ園の前にいて、そろそろ来るはずなんだけどなと見ていたら、七星くんだと手を振る莉愛で七星くんも気づき走ってくる。その向こうを見るとこれは嫉妬するぐらい恋人繋ぎをしてこっちに来る天満と莉耶。
星音はそれを見て星音も恋人繋ぎをしてきて、やりづらいと莉耶と目が合ってしまった。
「園内に入ろうか」
落ち着け僕と言い聞かせながらチケットを見せ入園しバラを見ていく。莉愛はバラがたくさんと興奮しながら七星くんは恥ずかしがり屋なのかじっと莉愛を見ていた。
こいつがいなければこうやって兄妹として遊びに来てたのかなと一瞬思ってしまう自分がいる。
「綺麗だね」
「そうだね。莉愛、棘には気をつけるんだよ」
はーいと言いながらも武器を作ってしまうんじゃないかと最近ヒヤヒヤする。だってバラに触れて血が出た時すぐ花びらに垂らして武器がたくさん出てきちゃったことがあったから注意してみないと。
「私が天満さん引きつけてるから、莉耶ちゃんと話してきて」
「ごめんね、星音」
星音は演技をして天満に近づき話し込んで莉耶の手を離したら莉耶がこっちに来てくれた。今すぐにでもハグしたいモードを我慢してバラを見ながらゆっくり歩く。
「莉耶、気分大丈夫?あいつから妊娠してるからって聞いたよ」
「平気。ごめん。もっとしっかりしてれば七星があんなこと言わなかったはずなの」
「いいよ。それに琥珀さんと真珠さんからそういう運命が来るって聞いてたから覚悟はしてた。莉耶、こんなこと言うのはどうかと思う。でも僕たちの子供たちの願いを聞くべきじゃないかな……。本当は天満を倒して莉耶を取り戻したいのはある。ただ莉愛がね、本当のお母さんに会えたのは嬉しいけど今のお母さんと一緒にいたいって言われて……」
告白すると莉耶は悲しそうな笑顔を浮かべながら、私も七星に言われちゃったと伝えてくれる。
「七星がね、前に昏斗が言った言葉で天満に泣きついてきたの。天満の子になりたいって言われて七星の願いを潰しちゃダメなんだって。それに妊娠が発覚した時から、昏斗に会う自信が本当になかったの。昏斗の子を守れなかった未熟さと後悔があって。でも私は」
莉耶は僕の顔を見て僕の手首を掴み、こう言ってくれる。
「私はそれでも昏斗と一緒にいたい。もう二度と離れたくなんかないよ」
僕の胸で泣いてしまう莉耶でやっぱり僕も諦められないと優しく包み頭を撫でながら僕の気持ちも伝えた。
「僕も莉耶ともう二度と離れたくないし、七星も莉愛も僕らの子供だよ。それにどんなことがあってもいつでも元に戻せる。この四年間、よく一人で頑張って来れたね」
「助けて」
「もちろん。そのために準備は整った」
愛を深めていたら天満に見つかってしまい莉耶が高速で離れ天満のところへと行ってしまう。星音がごめんと手を合わせていた。
天満は冷めた表情で行くぞと先へ行ってしまい、莉耶は僕らを見て助けてと口パクで言っている。バラ園を選んでくれてよかったよとスタッフに化けている昏有兄さんに報告した。
「昏有兄さん、決行する。準備はいい?」
『待ちくたびれたよ、この日をな』
僕が無限拳銃を空に目掛けて発砲する前に星音の手が僕の手を握り一緒に打つ。プシューッと発煙弾が出てきてそれに気づいた天満はネジバナを出そうとも出せないよう仕組ませてもらったよ。僕は真っ先に莉耶を救出するため覚醒した姿で、天満に挑もうとしたら莉耶がいない。
莉耶はと絶対に手放さない天満がなぜと考えている暇はなく、天満に挑んだがすぐに倒れた。こんなあっさりやられるかと思ったら、天満が再び現れ何かがおかしいと気づく。
「星音、莉愛を頼む」
「うん!」
菊太に頼りながら天満を見つけるも簡単に倒せて、昏有兄さんのイライラモードが無線から発動してしまっている気がする。この方法なら莉耶を救い出せると思ったがまたはずれてしまったようだ。
⁑
天満に引っ張られながら発煙弾がない場所に行き、ドンっと壁を叩く天満で俺の顔を見ろと言われても見れない。目を開けたら絶対に心が奪われると目を瞑っていたら、天満が離れる感覚を感じ目を開けた。
私は今花の中と考えていたら外側から昏花ちゃんの声が聞こえる。
「ストーカー天満。もういい加減諦めてくれないかな?莉耶ちゃんはあなたのこと一ミリたりとも愛していないことぐらいわかってるでしょ?それなのに莉耶ちゃんを縛りつけて、それで満足?」
「貴様、俺から天罰を与えさせるつもりか?」
「天罰、天罰って言ってるけど、あなたは実際、人の命を奪う殺人鬼と同じだよ!罪もないディアヴォロスとネオリオ人をこの四年で何人亡くなったか知ってる?」
「知ったことじゃない。悪魔も悪魔と関わっている人物も全て罰すると決めている。それが何が悪い?ディアヴォロスも多くの人間を食した罪人だ。俺たちは捕食人間を守る天使なんだよ。守りたくても守れず亡くなってしまった仲間たちもいる。仲間たちのためにも俺たちが罰することに邪魔はさせない」
状況が読めないまま二人の会話を聞いていると、昏花ちゃんが珍しく怒った。
「莉耶ちゃんがそれを望んでいるとでも思ってんの?エンジースのみんなが同じ思いでいると思ってるのは大間違いなんだよ!天満に逆らえないから従うしかないってほとんどの人が証言している!今頃天満がいないことで天満の空島がどうなっているか早く見に行ったほうがいいんじゃない?」
足が勝手に動くと思えばネジバナがいつの間にかなくなっていて、今までとることもできなかったのに。花が消え昏花ちゃんが大丈夫と聞いてくれたから私は思わず昏花ちゃんに抱きついた。
「待たせちゃってごめんね、莉耶ちゃん。でもまだ終わっていないことはわかってるよね?」
「うん。そうだ、七星と莉愛を見つけなくちゃ」
「それなら安心して。影神が保護してる」
「でも七星は天満の子になっちゃってる。止めようがないよ」
それでも昏花ちゃんは笑って行こっと私の手を握り、七星と莉愛がいるところへと向かった。
⁑
昏未はまだ目を覚ましてくれなかったけど、昏未の分まで頑張ろうと昏有兄様の合図で発煙弾を放ち昏斗兄様の援護に行こうとしたら桜がの花びらがみえ一度そこで吾輩は足を止める。
よくよく見ると桜で桜の武器を持っていた。昏斗兄様の援護には行かせないってやつか。上等じゃんと吾輩は剣になっている白いバラにもう三滴垂らして手裏剣へと変わる。
「そこどいてもらえる?」
「無理です」
「ふうん、そういやさ椿どう?元気になった?あいつに一発殴りたいからさ、早く元気にっ」
全然気づかなくて吾輩の腹に赤く染まり、剣が抜かれ吾輩は倒れる。
「すみません、真神昏来。あなたには死んでもらいます。椿が復讐するのにあなたは邪魔なんですよ」
「ま…て……」
桜の足を掴みたくても掴めずもう一回刺されて朦朧としてしまう。煙を放ったから吾輩の場所は特定できないかも。昏斗兄様、すまぬ。
寒気を感じ吾輩はもうすぐ死ぬのかと、昏未の顔が浮かぶ。昏未、一人ぼっちにさせてすまぬが、これからは自分が進みたい道に進んで。それが吾輩の願いだから……。




