55僕は仕、莉は毎
エンジース街を人通り確認した僕は、莉愛に小芝居をしてもらうことにし泥団子を渡して迷子に見せかけた。泥を天満に投げつけることで、どういう行動を取るのか把握していても今度は僕が仕掛ける番だ。
これ以上ディアヴォロスを殺させないための罠と思ってもいい。最近は大人しいと思ったが現場に訪れるたびにディアヴォロスの遺体が増えていた。
さてどうかなと様子をみるとやはり動き出して、莉愛はわざと捕まってもらう。って言ってもあれは美汐なんだけどね。愛娘を危険には晒したくないから、エルミスの力がある美汐に頼んだ。
「動いた。僕たちも動こう」
美汐が捕まったのを確認して、どこに連れて行かれるのか確認をとる。エンジース街にある北に連れて行かれているのがわかりGPSを辿ってそこへと向かった。
子供たちは興味があるお店で立ち止まりつつ、北側に進んで行くとネメスウィートという場所に辿り着く。門番がいて検索をかけてみると捕食人間限定しか入れない場所らしい。僕らはネオリオ人だから入れないようだ。
「ここからどうする?」
「突撃しても勝てそうにないよ」
「美汐、聞こえる?」
『聞こえてる。中に潜入してみたけど、ここはナルシストが仕切ってるっぽい。だからなのか美形のネオリオ人やディアヴォロスの女性が集まってる。子供たちとあたしは別室に閉じ込められてるよ』
「了解。僕らも入れるかやってみるよ、十分に気をつけて」
りょっと聞こえて無線での会話を一時中断し、どうにかして会場の中へ入るしかない。どうするかと考えたら僕は一ついいことを考えてしまった。もう一つの無線マイクで影神に指示を出す。
「影神例のものを至急、頼む。それから家にある黄色のバラと色合いに合わせて違う花を揃えて」
御意と聞こえ数秒後に影神が到着し黄色のバラ数本とオレンジと小さな花、それから少し季節外れの花である水仙もある。これはちょうどいいとフラワーアレンジをして花屋の格好になった。深く帽子を被る。
「昏花たちはここで待ってて。僕が合図するからその間に桜庭課長と心に報告して」
了解と僕はフラワーアレンジで作った物を持って門へと行く。気づかれないように影神が作ってくれた偽装の名刺を門番の人に渡す。
「僕はこういうもので、柊様の依頼で来ました」
「柊様、花なんか頼んでいたか?」
「さあ。まあ美しいものには目がいってしまう方だ。一応武器がないか確認させてもらう」
一度花を門番に渡しもう一人の門番がチェックをして、武器がないことを証明できたから中に入れてもらった。
中は神パーティーを似せたような場所で、建物が見えてくる。ここで大鳳天満と鉢合わせたら厄介だが行くしかない。
建物内に入り柊のところに案内してもらい、柊が使っている部屋へと入った。そこに柊がいてずっと鏡を見て美しいと呟いている。
「柊様に贈り物をお届けに参りました」
踊りながら僕のところへやって来る。
「これは美しい花たちさ。誰からだい?」
ふっ。こんなあっさり引っかかってくれて、どうもありがとう。僕は柊に花を贈り突き飛ばした瞬間に、一本の黄色のバラを抜く。柊は驚きの顔をして、僕は帽子を脱ぎ捨てて黄色のバラに血を流して剣を作った。
「真神昏斗、なぜ入れたのさ?」
「花屋で騙される方が悪い。それにディアヴォロスとネオリオ人を返してもらうよ」
「それは不可能さ。美しいものは全て私の物になる。例えディアヴォロスでもネオリオ人でもさ」
指を鳴らして現れたのは昏未で僕に攻撃をしてきて、僕は昏未を止める。
「兄を祓いたまえ。祓えたらご褒美をやろうではないさ」
自我を失っているような感じで柊の指示に従っている昏未。なんとかして連れ戻したいが足をみるとまだネジバナがついている。柊を倒さないと無理なのかと考えながら、攻撃を避け攻撃を与えた。
頬にかすり傷ができたことで顎が外れるほどショックを受けている柊がいる。
「美しいものに傷を与えるとはいい度胸をしているさ。昏未、こちらに来たまえ」
昏未の行動がぴたりと止まり柊のところへと行って、何をする気だと見ていたら舌を出してかすり傷を舐める気でいる柊を蹴飛ばす。
「何を考えてる気?兄として認められない行為だ」
「言っただろう。美しい私には美しいものが似合う。昏未は私のコレクションだ。何をしようが勝手だろう」
「ふざけてる。昏未も他の人たちも物ではない。昏未は返してもらうよ。昏花、今だ!」
建物が揺れ僕は昏未を連れて建物を脱出すると、エンジースに囲まれた。想定内だよと僕が指笛を吹くと昏花たちや桜庭課長が茂みから出てきてエンジースを人質にとっている。
柊とエンジースは僕らに天罰を与えるため、羽根を用意していた。
「エンジースに逆らうとどうなっているかわかっているはずだ。さあ皆よ、天罰を与える時間さ」
来ると感じそれぞれ攻撃を開始し、僕は柊に攻撃を当てていく。動きは単純で柊はただただ僕に羽根で攻撃していた。
「私に勝てるわけがないさ、昏斗」
「以前の僕と比べないでもらえる?」
僕はこの日をずっと待っていたんだよ。覚醒した姿をより活かすために僕らは修行をこの四年で積み重ねてきたんだから。覚醒の姿になり、いざっと柊に反撃を開始し柊にどんどんと傷を当てていく。
「昏の星!」
「怒っちゃった?ごめん、だって君は美しくない泥団子のようなものだからさ」
「何を無礼なことを言うんさ!」
数本の羽根が僕に刺さろうとしても回避して、もう一撃を与える。
この四年で僕は三人のことについて調べていた。今回は柊で柊の過去には美が執着していることだった。だから美にこだわりそしてナルシストとなってしまった原因は周囲の目だ。
柊には姉が二人いて姉たちが美貌すぎて姉たちはサクラとして両親の手伝いをしていたが柊はその真逆。父親に似たこともあり人を寄り付けないことで、両親や姉たちに虐待を受けていた。そのせいで誰も信じられず、自己愛するようになったらしい。
これは僕のファンであるエンジースに聞いた情報だ。ただ大鳳天満に拾われた辺りから美から離れられず、自分が美しいといつも手鏡を持っているんだそうだ。水仙を贈ったのも花言葉がうぬぼれと自己愛を持つから。
怒ってしまった柊は完全に僕を仕留めるまで追いかけてくるらしくその調子と僕は攻撃しながら逃げ回る。時間はエンジースが外で僕らと戦っている間に逃げ切ってくれればいい。
弓へと変換させてエンヴィリオを作り泥団子を作ってもらって投げてもらう。その間に僕はバラの剣と星の剣を合体させまるでバラ流星群のように柊に向けて刃を振るった。
この前は僕がやられたけど、今回は違うよと柊が倒れたことを確認し、柊様と駆け寄ろうとするエンジースを止める。案外楽勝だったと柊をネオリオ人にさせようとした時、椿の花びらが刺さって柊から距離を離す。
そこにいたのは紛れもなく椿で柊を回収すると同時に昏未が動き出して手を掴む。
「昏未、行くな」
「僕の言うことしか聞かない。昏未、おいで」
待ってと手を離さないでいると昏未についているネジバナが僕を攻撃しようとして思わず手を離してしまう。そのせいで昏未が椿のところへと行ってしまった。
「いい子。昏未を返してほしければ天王星ラウモイズにある僕の本邸に来るといい」
言葉を残して椿は柊と昏未を連れていなくなってしまいエンジースもいつの間にかいなくなっている。
「昏斗、こっちに来て!」
突っ立っていたら昏花が慌てていてどうしたんだと行ってみるとこれはと十字に縛られているのは老人だった。ゆっくり降ろしてあげ、安否確認を取るもお亡くなりだ。
この人一度どこかでと考えているとクロノスと駆け寄って来たのは、土屋支部長だった。
「お知り合いなんですか?」
「あぁ。俺の祖母にあたる人だ。母を産んだ後、病死されたと聞いている。だがエクリプス人として生きていると聞いてた。なぜだ!祖母は悪いことは一度もしていない!」
地面に強く叩く土屋支部長でクロノスがまさかの土屋支部長の祖母にあたる人だったとは知らなかった。父さんだったら知ってたかもしれない。
遺体を運び葬儀は明日行うことになり、霊安室の前で僕と昏花が室内で泣いている土屋一家の泣き声を聞く。天の使いであっても、やってはいけない行為だってあるはずだ。全てディアヴォロスには天罰を与えるつもりなのか。
許せないと拳を作っていたらそっと昏花の手が僕の拳を包む。
「昏斗、後もう少しだから我慢しよう。クロノスの死を無駄にさせちゃだめ」
「わかってる。わかってるけど、クロノスは僕らにいろんなのを開発してくれた人だ。失いたくはなかった人材を奪われた。エンジースに憎しみが強くなる一方だよ」
「それでも勝手に動かないで。お兄ちゃんたちも動いてくれるって言ってくれたんでしょ?なら後は天王星ラウモイズに行くだけだよ」
「少しだけぎゅーしていい?」
「もう、誰もいないからって恥ずかしい言葉言わないでよ。でもいいよ。昏斗が落ち着くならぎゅーしてあげる」
昏花に抱きついてやっぱり落ち着くしリコーフォスの香りがするから落ち着く。
「昏斗」
「なあに?」
「私、今でもねこの道でよかったのかなって迷いがあるの。星がリコーフォスの花畑を見せてくれて、そこでプロポーズされた時、本当に嬉しかったのに、心のどこかではもう一人の蝕夜のことを思っちゃうの。蝕夜がいなくなってもみんなは自由に生きられる。それなのに蝕夜だけが全部背負って消えてしまうのはどうかと思うし、プルトナスも本当はお兄ちゃんである蓮さんや妹の甘ちゃんと一緒に暮らしたいんじゃないかな」
「僕もそう思ってた。別の方法が必ずあるから蝕夜と向き合わなくちゃならない時が訪れる。その時は昏花が必要だから頼むね」
「任せて。向こうから星音ちゃんが来てる。離れよう」
妹離れができてないと思われるのは嫌だから、離れて星音と合流をした。
⁑
ー天王星ラウモイズー
天満に泥団子を投げた子はその後、どうなったのかは知らない。ただ着替え終わった天満はまだ、怒りを放っていてエンジースたちに強く当たっている。それを見せないようにと私は七星のそばにいた。
「お父様、大丈夫だったかな」
「大丈夫。機嫌が治るまではそっとしておこうね」
「うん!ねえねえお母様、椿のお家に行っちゃだめ?」
「椿の家?ちょっと待ってね、聞いてくる」
天満の息子であっても行ける場所は限られていて、天満が許さない限り基本敷地内から出るのは禁じられている。
天満がいる場所へ行ってみると、玉座に座ったまま寝落ちをしていた。起こしちゃ悪いかと部屋を出ようとしたら足が勝手に動いて、天満の膝に座ってしまうと天満の手が私の腰に触れる。
「莉耶、何かあった?」
「起こしちゃってごめんなさい」
「いい。それで何かあったか?」
「七星が椿の家に行きていって言ってるの。行ってきてもいい?」
ふわあっと欠伸をしながら寝ぼけている天満は私を強く抱きしめて、スーッと寝息をたててしまう。ちょっと話し中に寝ないのと頬をつねってみるとこう回答がきた。
「いいけど条件がある」
「条件?」
「そろそろ七星に弟か妹を持たせたい。弟妹がいれば俺から離れないだろう」
天満ってなんか星河会長の性格に似てるかもと思ってしまう自分がいる。条件をのまないと七星の自由は訪れないのなら、私も条件を出してみようかな。
「じゃあ私もおねだりしてもいい?」
「なんだ?」
「もう昏斗のことはきっぱり諦めたけど、昏斗にフラワーアレンジメントを依頼したいの。真っ白い建物で色鮮やかなものは一切置かれてないから、少し部屋の雰囲気を変えたい。だめかな?」
「言われてみれば建物も家具も一色だった。いいだろう。桜に依頼させる。それでいいか?」
なかなか離れてくれない天満で、最初は嫌だって突き飛ばしてたけど今はもう突き飛ばしたりはしない。腕を天満の背中に回し私はいいよと答える。
「いいよ。桜に一つ伝えてもらえる?バラを九本、添えてほしいの」
「なぜ九本?」
「それは届いてから教えてあげる」
「気になるが、楽しみは取っておこう。桜」
すっと桜が跪いてお呼びでしょうかと桜が言い、桜に指示を出す天満。
「昏斗と接触し、フラワーアレンジメントの依頼をしてこい。要望は九本のバラだ」
「御意」
本当は自分から直接言いに行きたかったけど、天満は昏斗の接触をさせないために私から一切離れない。だから逃げることも不可能だったから諦めた。
「ねえ天満、私が毎月買ってた雑誌、買ってきてくれた?」
「これのことか?」
「ありがとっきゃっ。ちょっと」
いきなり私をお姫様抱っこして歩き出して、びっくりしてしまう。私は雑誌を持ったままどこへ連れて行かれるんやらとついたその場所は、信じられない光景を目の当たりにした。
⁑
よりによってディアヴォロスの後継候補者であったクロノスがやられるとは思わなかったっす。昏斗くんの情報だとエンジースの天罰によって殺害されたらしいけど、現場に行こうとも入ることも許されないからどうにもできないっすけどね。ただ俺には地の精霊がいるから見れなくてもへっちゃらっす。
ふむふむ、なるほど。これは昏有さんに報告しなくちゃならない情報っすね。スマートウォッチの画面を開き、昏有さんに連絡しようとしたらセリニ・ネアの桑桐恵がエンジースと話していて中へと入ったっす。
まさか内通者だったのかと地の精霊を使って様子をみる限り、エンジースと話し込んでいるのがわかる。これは一大っすと昏有さんに報告する。
『何かわかった?』
「やばいっすよ、昏有さん。たった今、セリニ・ネアの恵がエンジースと話してるっす。これってつまり内通者だったってことでいいんすよね?どうしますか?」
『そう来たか。恵の尾行を頼む。俺は直接心に掛け合ってみる』
「了解っす」
俺は言われた通り、恵を尾行するため変装をして恵が出てくるのを待った。




