52僕は婚、莉は命
莉耶が奪われてから数日が経ち、昏花は前のように全然喋ってはくれず、どうしたものかとミネラルウォーターを飲んでいた。蝕夜も参戦して修行に専念していて力はだいぶついた頃のこと。
珍しいお客が登場し大変っすと僕に押し付けてきたのは地神千歳だ。押し付けられた雑誌を確認してみたらエンジースの雑誌らしくぺらっと捲った。
天使の長である大鳳天満とそして莉耶の婚礼写真が写っている。文面では帰ってきたプリンセスとようやく結ばれた長とあっても閉じて地神千歳に返した。
「あれ?反応薄くないっすか?どうしたんすか?」
「見せても無駄だよ。昏斗、今星音ちゃんと付き合ってるから」
昏花が大袈裟な言葉を吹っかけ地神千歳は一瞬固まり大声で叫んだ。僕はもう莉耶に興味がないとランニングしようと動いたら目の前に金神蓮がいる。
「久しゅうなぁ、昏斗はん。甘露の様子を見に来たついでに言わせてもらいまひょうか?ほんまにたいがいせえへんと、莉耶は永遠に取り戻せなくなるで!それでもえぇのか?」
「いいんです。僕は僕の道を進むまで。あなたたちに指図されたくはない。エンジースの一件が終わっても、次の問題が起きることは蓮さんも神としてわかってるでしょ?」
「心配して来よったのに、ほんまに昏斗はんは頑固すぎるやろ。もうえぇ。昏斗はんが決めたことや。好きにすればえぇ。行きまひょう、千歳はん」
「あっ待ってくださいっす、蓮さん」
金神蓮は地神千歳と一緒に帰られ、厄介な人が首突っ込んでくるとは思わなかったけど、心配してくれてありがとうございますと背中が見えなくなるまでみていた。
そしたら軽い拳骨を受け昏花があれでよかったのと不機嫌で聞いてくる。
「いいんだ。さてとこちらも手を打っておかないとならない。だから僕と星音はちょっと木星セウスジアに戻るよ」
「なんで?」
「それは秘密。蝕夜がこれパワーアップしてくれてデートしに行ってくるよ」
あのねと昏花に怒られる前に僕は逃げて、星音を連れて蝕夜がワープの力をくれたから木星セウスジアに行く。やっぱりここは落ち着くと手を握りながら、予約していた教会に訪れる。
「昏斗、ここって」
「式を挙げよう」
「だったらみんなを招待してもよかったんじゃ」
「星音にサプライズがしたくて、黙っててもらってたんだ。昏花は絶対に言いそうだったから内緒にしてた。今頃蝕夜に聞かされてる頃だと思うよ」
「そうなの?嬉しいな。ありがとう」
教会に入り星音と僕は着替えるために別室で着替えた。着替え終えた僕の燕尾服をチェックしていたら蝕夜が入ってくる。
「もう一度確認するぞ。これでよかったのか?」
「いいに決まってる。それに莉耶だって諦めて大鳳天満の婚礼を受けた。だから僕も莉耶に興味がないことを示すために記者の方たちや星音のファンを呼んでもらったんだよ」
「僕は納得していないんだが、昏斗が決めたことだ。もう確認はせぬ。ただ後悔はしないようにするんだぞ」
「ありがとう、心配してくれて。そうだ、兄さんと昏希も来てる?」
「うむ。事情を伝えて式に参加するようだ。昏希の方は甘露に会いたがっていたから一石二鳥とも言える」
それはよかったと変なところはないことを確認し、スタッフに呼ばれて蝕夜は先に戻ってもらう。僕はスタッフについて行き神父の後ろで待機した。星音を連れてくる父親役は誰なんだろうか。蝕夜に相談していた時にいい父親役がいると聞いた。
どんな人なんだろうかと扉が開き拍手されながら式場へと入る。昏花はいつも通り不機嫌な顔で拍手をしており、新婦を待っているとすぐに登場した。
星音のファンは可愛いと写真を撮り始め、僕たちは驚愕してしまうほど、父親役がなんと星河会長が普段通りに戻っている。そのせいでせっかくお化粧したのに今でも崩れそうな顔をする星音。星河会長が僕に星音を託し席へと着席した。
星音をエスコートしながら段へと上がり、式が始まる。
神父が言葉を告げていき、その答えはもちろん誓いますと伝え誓いのキスをと言われた。ベールを上げ僕と星音は誓いのキスをしその瞬間をカメラマンが撮影する。
し終わった僕と星音は照れ笑いをし今日から夫婦となった。
式が終え宴となり僕と星音はファンに囲まれながら撮影写真が行われ、ひと段落したところで兄さんと昏希が来る。
「昏斗、おめでとう。やるじゃねえか」
「もう兄さん。褒め言葉は後で受けますから」
「そう照れんなって。これでよかったんじゃないか。莉耶ちゃんも無理やりやらされてる感はあったが、俺たちには決まり事がある」
「はい。だからネオリオ人である星音を選んだんです」
昏希はまだ納得していないような顔でも、昏希もわかっているようだ。
「もう少し大きくなったら甘露にプロポーズを申し込みます。それまでは甘露のこと、頼みます昏斗兄上」
「わかったよ、昏希。父さんは?」
「地球オルモフィーケで母さんと一緒に生中継を見ていたはずだ。今頃母さんも喜んでるんじゃないかな」
「母さんの具合はどう?」
「母上なら順調に回復していると甘露の父上から聞いてる。少ししたらリハビリに専念するそうだ」
よかったと一安心していると星河会長がこちらにいらして、兄さんと昏希は水神潤たちがいるテーブルの方へと行ってしまう。
「星音、昏斗、本当にすまなかった。私は美食がしたく、星音を食そうと考えていた」
「もういいよ。それは過去の話でしょ?それに私をここまで育ててくれてたのは紛れもないお父さんだもん。憎んだり恨んだりはできないよ」
「あなたがやった行為は絶対に認められません。ですが命が助かった以上、償ってください。今、バラの流星群の効果がなくなり、ディアヴォロスが捕食人間を食す行為が起きています。それを止められるのは星河会長です。僕らに力を貸してください」
「昏斗、感謝する。昏無と流彗は来ていないのか?会って謝りたいんだが」
「それは後ほど、お話しします。今は楽しみましょう」
みんなが音楽に合わせて踊り出し、僕も星音も踊って結婚式が終わった。みんなは先に土星スノロクに戻ってもらい、僕は星音と二人きりで本家に泊まる。
影神も嬉しそうにニコニコしながら、ナイトティーを淹れた後、二人きりにさせるため退散していく。
「影神さん、面白い人だね」
「でしょ?小さい頃から僕を笑わせたりしてくれてたよ。明日は土星スノロクに戻って今後について話し合いが行われるから早めに寝ようか」
「そうだね。それにお父さんとまた会えたこと明日、蝕夜様にお礼しなくちゃ」
ナイトティーを飲み切ってテーブルにティーカップを置き、僕らは就寝した。
真夜中真っしぐらにそっとベッドから降りて、静かに扉を閉め影神が羽織りをかけてくれる。
「坊っちゃん、なぜこの時間帯に展望台へと?」
「ちょっと確かめておきたいことがあったんだ。土星スノロクで椿が壊したのは偽物だったよね?」
「はい。誰にも触れさせないようにと私が装置を管理しています」
「ディアヴォロスが捕食人間を食しているのは間違いはない。考えられるとしたらまだどこかにスコヤディがあって暴走したのかもしれないって考えてる」
「坊っちゃんの推理が正しければ、スコヤディは今、昏有坊ちゃんが保管しているはず。まさか」
そのまさかとはまだ判断はできないけれど、昏有兄さんは悪魔が大嫌いだ。それに僕と莉耶が付き合っていることを喜んではくれていたが、本心では受け入れてはいなかった。
もしかすると昏有兄さんが大鳳天満と接触し、動かしていたとすれば僕は一生昏有兄さんを恨みそうだ。
展望台へと入り天井を開け星の観察をする。何かヒントがあればいいんだけどなと観察していたらお嬢様と影神が驚いていた。なぜ驚くとみると捕まったと思っていた昏未がボサボサの状態で、昏来と呼びながら気絶してしまう。
「すぐ治療を」
「御意」
服装はエンジースが着ている服装だった。未来が変わったかと星をみると僕にしか見えない星のメッセージが出来上がる。
昏の星、土のプラネットに幸福な愛を咲かせろ。それが運命の分かれ道となる。
土のプラネットは土星スノロクを指していて、幸福な愛は花言葉だから花で例えるとブバルディアというウエディングブーケの花材として人気の花。今は二月だからちょうど手に入る花だけど、咲かせろだと種から育てろってことだよね。
明日有名な花屋で種を入手できるか交渉してみるか。展望台を閉じ昏未が心配で昏未のところへと行った。
影神に診てもらうと足にネジバナがついていて、踵をみると自分で切ったような傷跡がついている。
「どう?」
「大丈夫そうですが、問題は足です。試しに採ってみようと触れたんですが粘り強くで思うように採れません。おそらく大鳳天満の力が進化しているのではないかと」
「やはり。そうだったんだ。蝕夜がくれたペンダントで逃げて来れた。明日、目を覚ましたら話を聞く。それまでに足についたネジバナを調査できる?」
「かしこまりました」
影神に頼んで僕はもう一眠りするため、星音が寝る寝室へと戻った。
翌朝、星音と一緒に朝食を食べていると車椅子に乗った昏未が来て足が固定されている。
「おはよう、昏未。大丈夫?」
「大丈夫なわけないですわ、お兄様。足が勝手に動くの。だから固定してもらって今は落ち着いてる」
「一体何があった?」
車椅子を押してもらい僕の隣に停止させて、昏未が朝食を食べながら教えてくれた。
「起きたらエンジースと似た洋服に変わってて、武器は全て没収されてましたわ。でもラッキーだったのが流彗と同じところに閉じ込められてましたの。私めは流彗と監視役と隠れんぼをしながら閉じ込められている塔を調べてった結果。これを見つけましたの」
持って来ちゃったのかいと見せてもらったのは、瓶でよくよくみるとキラキラと何かが待っている。
「スコヤディですわ。目に映らないぐらいに粉々にして各プラネットに巻かれていた結果でしたの。それを見つけてしまったことで、天罰を受けてこの有様ですわ」
「それでそのネジバナは何を?」
「天満に呼ばれるとこの足が勝手に動くようになっていますの。だからナイフで足に傷をつければ効果はないと思って、傷をつけてたら、流が冥王星のペンダントを発見しましたの。ただ監視役に見つかって一緒に逃げるはずだったのに、私めが握った瞬間ここに辿り着いた」
大鳳天満を倒さない限り、このネジバナは永遠に採れないっていう意味だろう。よくも可愛い昏未にこんなのをつけたな。
「それで莉耶と接触とかはできた?」
「婚礼には強制的に参加でしたわ。一度お話ししましたの。これでよかったのですのって。そしたら莉耶がこんなことを言い出して腹が立ちましたわ」
「なんて言ったの?」
「どうせ昏斗は天満に勝てるわけない。勝てないのにわざわざ来る必要はないし、昏斗のことは諦めるとこれを私めに渡したの。腹が立ちません?」
昏未が渡してくれたのは莉耶にプレゼントした婚約指輪だった。
「影神からお聞き致しましたの。昨日、お兄様がご結婚されたと。おめでとうございます。あんな女、早くお忘れしましょう。だから星音、絶対にお兄様を支えてくださいね」
「もちろん、支えていくよ」
「お兄様も絶対に星音を泣かせたりしませんこと。よろしいですか?」
「もちろん、幸せにするつもりだよ。ハネムーンはどこにしようか」
「それはエンジースをお仕置きしてからにしよう」
そんなことを話しながら朝食を食べ行く前に花屋へと訪れてみる。ブルバディアの花は見つけたけど、種はなさそうか。一応店員に聞いてみるかと店員に聞いてみると取り寄せになってしまうらしい。
取り寄せにどれくらいかかるか聞いたところ、一、二週間はかかるそうだ。参ったなと次の花屋に行ってみるもどこも在庫がないらしくせいぜい五日に届く花屋で取り寄せてもらうことになった。
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ここに来てから数日が経ち、私は完全に大鳳天満のものとなってしまった。お母さんもお兄ちゃんも婚礼を祝福してくれたのはいい。でも少し助けてほしかった。お母さんとお兄ちゃんが心配しているのは、私ではなく流彗くんのみ。
少し心が折れそうって思ってても、この子がいる。隠し通して産めるかどうかが肝心。今のところ気づかれていないから、大丈夫だけどばれたら終わり。何としてでも守り抜かなきゃ。
「奥様、こちらに置いておきますね」
「ありがとうございます」
まだ慣れない呼び名でも、慣れなくちゃとスマートウォッチでニュースを見ていたらある記事を見つける。
嘘でしょとショックがあるも、仕方ないよね。あんな雑誌を見せちゃったら昏斗もそれ相応の対処はしてくると覚悟はしてたから。それでも授かった命は絶対に守るよと言い聞かせながら画面を閉じ足が動く。
そろそろこの花を解除してもらいたいけど、まだ私が逃げると想定しているのかなかなか解除してもらえない。
行ってみると天満は玉座にゆったりと座っていた。体がそのまま動くから天満の膝に座り、お言葉を受ける。
「莉耶が恋をしていた昏斗が、元女優の星河星音と結婚したらしい」
「そんな情報、私にはいらない。それより私、もしかしたら天満の子、できちゃったかもしれない。お医者さん、呼んでもらえるかな?」
本当かと輝かしい目をして桜を呼び医者を呼んでもらうことにした。いずれお腹が大きくなるのを想定して、まずはばれないように診察を受ける。ただ監視はされそうだから黙っていよう。
お医者さんがすぐ来てくれて一室で診てもらうと、小さな命がちゃんと動いている様子が見える。
「これは……奥様。この大きさだと三ヶ月は経過しています。天満様のお子様ではないですよね?」
「お願い、言わないで」
お医者様は立ち上がって部屋を出てしまい、私も行こうとしたけれど扉が開く。天罰が下ると動いている映像を見ていたら天満の顔が見えた。
「天満、嘘をつくつもりはなかったの」
「椿」
「はい」
「梅を連れて来い」
御意といなくなりごめんなさいと天満の手首を掴むと、椿が流彗くんを連れて来る。流彗くんはバラの剣を取り出し、止めてと言いたくても遅かった。
私のお腹を刺してバラが子宮に入っていくのが見え、赤ちゃんを包み剣が抜ける。痛みもなかったけど赤ちゃんは亡くなっちゃったのと見ていたら赤ちゃんは無事だった。
「梅、よくやった。ご褒美だ。もう行って構わない。お婆ちゃんとお父さんのところに行け」
「莉耶お姉ちゃん、ごめんなさい」
そう残して流彗くんはお母さんとお兄ちゃんのところへ行き、私のおでこにキスをする天満。
「何をしたの?」
「昏の人はどんなこともできるだろ?それを利用させてもらった。昏斗の子ではなく、俺の子にさせてもらう。産まれてくる日が待ち遠しい。これを知らせなければな」
そんなと昏斗の子が天満の子になってしまうだなんて考えもしなかった。まだ私は昏斗に伝えてない。父親になるんだよってサプライズにしたかった。それなのに天満は卑怯だよ。
「天満……」
「全て俺のものになる。そう前にも言っただろ。俺の思い通りにことが進む。昔の俺ではないことを証明するためにもだ。俺は皆に知らせてくる」
喜びを隠せないでいる天満はみんなを集めて報告するのだろう。私は想定外なことが起きて、しばらく立ち直れなかった。




