49僕は早、私は瓶
植物園に到着し一般の客が来園していて、受付の方にこう言う者ですと名刺を見せ中に入らせてもらった。結構な人盛りで逸れそうな感じだ。逸れないでよとこんな歳でも昏来と昏未の手を繋ぎ進み、まだらのところで手を離す。
ここは何も起きていないようだから、次のところでも行こうとした時に北の方から叫び声が聞こえ僕らは北の方へと進んだ。
行ってみるとそこにサラセニアが出現していて、ディアヴォロスやエクリプス人を対象に狙っている。昏来と昏未に指示をしながら、バラに血を三滴垂らして弓へと変換させた。僕は岩を弓で撃ちエンヴィリオを出現させ、観光客を避難させていく。
もしかしてまた桜がどこかにいるのかと周囲を警戒していると、僕の頬にかすり傷ができ、後ろを振り向くと桜の枝が落ちていた。
「邪魔者が三人。こんなことされたくなかったらさっさとリィヤ様を返していただけませんか?」
「嫌だね。それに流彗くんは返してもらうよ」
「流彗ではない。梅です。それに梅は、もう二度と穢れたあなたたちと接触しないように、椿が見ていますからさすがに逃げられないでしょう」
昏来と昏未は一度、椿に負けているから前に出ようとして止めながら、怒りを隠しつつ微笑みながら桜に言う。
「そう言ってるけどさ、莉耶はもうエンジースじゃないよ。だって僕がネオリオ人にしといたからどれだけ莉耶を捕まえようとも無意味だ」
「そうですか。なら梅に命じさせますよ。梅はあなたの姉と鈴の子。それくらいできる」
姉さんが見抜いていたら流彗くんをネオリオ人にしておいたはずでも、あれをみる限りエンジースにされてしまったのは確かだ。あれが本来の流彗くんの姿となる。
「返していただけないと言うなら、こうするまでですよ」
何をする気だと桜がしようとしている瞳を見て、僕は逃げろと叫びながら二人を庇うと同時に爆発が起きた。植物が多くあることで燃え上がりが早いと、吸わないように鼻を塞いで植物園を脱出する。
逃げている最中に目の当たりしたのはディアヴォロスたちが倒れていて、エンヴィリオである程度のディアヴォロスを避難させた。しかし安否確認をとると息を引き取っていることがわかる。
「嫌だっ」
「嫌っ」
「昏来?昏未?」
こんな未来望んでないと二人が同時にはもり、二人が光り出したのだ。これはまさか覚醒と見ていたら、蝕夜と昏花が来て、昏花はできる限りの命を助けていく。
光が消え二人をよくよくみると覚醒した姿で、メカをもっと進化した服装だった。
「昏未」
「うん」
二人が手を繋ぐと大きな時計が現れ針が反時計回りに動き出し、亡くなったと思っていたディアヴォロスやエクリプス人が息を吹き返したのだ。
まさかこんな力が二人にあっただなんてと初めて使ったらしい二人は力がつき、倒れてしまったところ僕と蝕夜が受け止めてあげる。
「よく、やったぞ。お前たち」
「前世の二人はこの力使ってなかったの?」
「そうではない。道具にされその力すらも利用され続けていたのだ」
「そうなんだ……。ん?なら昏希が希望する道に進むように、二人も望む未来にさせられる力があるなら莉耶を救えるかもしれない」
「ほう。それは考えてはいなかった」
二人の力と昏希の力があれば防げることを伝えなくちゃ。
「昏斗、ちょっといい?」
「ん?」
昏花に呼ばれて蝕夜に二人を見ててもらい、昏花がさっき見ていたディアヴォロスのところへ行くとこれはと拾う。くしゃくしゃにした紙屑っぽいけどこの香りは昏無姉さんがつけている香水と同じ。
紙屑を広げてみると昏無姉さんの文字で十二時にここの植物園に来てと書かれてあった。時計をみると十二時を過ぎていても、昏無姉さんはどこにもいない。
僕らが桜と接触している間に逃げたか、それとも連れ去られたかのどちらかになる。
「どう思う?」
「ディアヴォロスが起きたら、事情を聞いてみよう。姉さんが失踪したわけがわかるかもしれない」
「わかった。私も蝕夜と一緒にお姉ちゃんの手がかりを探してみる。それに八雲くんのことも心配だし、私たちは行き来するよ」
「ありがとう、昏花。僕らも何か分かり次第、情報を流すね」
ディアヴォロスたちは一旦病院へと運ばれて行き、昏花は蝕夜と一緒に行ってしまわれ、僕は昏来と昏未を連れてセリニ・ネアへと帰還した。
二人が起きる間、報告書を作成していたら莉耶たちが戻ってくるもベドべどの姿で戻ってきた。その一方桜庭課長たちはびしょびしょになって帰ってくる。
「皆さん、どうしたんですか?」
「あのナルシストの人と接触して、私を確保するために変な植物でてきたの」
「昏斗、これってなんだかわかる?」
星音が画像を見せてくれてちゃっかり柊がこちらを向きポーズをとっている姿はどうでもいいや。ふむふむ、なるほど。そうきたかと星音に教えてあげる。
「これは食中植物のモウセンゴケだね。粘液を持ってて腺毛に触れてしまうとアウト。足掻けば足掻くほど腺毛と葉が折り曲がるようになってる」
「本当に怖かったのはここからだよ。あの柊って人。ナルシストできもいのはわかってたけど、最悪だったのは莉耶ちゃんに対する態度が」
「何かされたの?」
「大したことじゃなかったんだけど、離れなくなって私が暴れ過ぎてたら嫌がってる姿を何枚か撮られちゃって」
「ごめん、僕がいればこんなことにはならなかった」
「いいの。それより桜庭課長たちの話も聞いてあげて」
ずんっとした桜庭課長と甘ちゃんで、しかも海さんも落ち込んでいるのは珍しいと話を聞いてあげた。
「ひどいんだよ!椿っていう男の子がね、あたしを池に突き落としたの!それで水中だったから顔を上げる前に変な草に触れたら逃げられなかったの!」
んー甘ちゃんが言う草というのはおそらくあれだろう。僕らが見てきたサラセニアに莉耶が言っていたモウセンゴケ。つまりエンジースは食虫植物を巨大化にしたのを利用しているってことだ。
なんか想像するだけでゾッとする食虫植物で、一番当たりたくないのはモウセンゴケ。
「甘ちゃん、おそらく甘ちゃんが捕まった植物は食虫植物にあるミミカキグサだよ。ミミカキグサはね捕虫嚢という器官を使ってプランクトンやミジンコなどが入ると蓋が閉まる。ただ今回は複雑だ。どの食虫植物もディアヴォロスを対象にしていたからあの大きさに変わった。そうですよね、桜庭課長?」
「その通りだよ。甘露が思わず入ってしまったのは想定外だったけど、ほとんどはディアヴォロスを確保していた。まとめて処刑でもするかのようだったよ」
「あの小僧、今度会ったらぶっ飛ばしていいか?八雲より生意気な小僧だ。思い出すだけで腹が立つ」
どういう目線で見ているんですかと海さんに問いたいぐらいでも、あんなにディアヴォロスにぐじぐじ言っていた海さんがディアヴォロスを助けただなんてね。やり方は雑そうだけど、被害が大きくならなくてよかったと理解した。
「桜庭課長、今後どう動きますか?」
「ここはエルーに任せて、早めに土星スノロクへ行こう。エルーはエルフ族だし、僕らより木星セウスジアには詳しいからね」
「なら明日とか?」
「早めのほうがいいんじゃね?ここに止まっているより、流彗を助けに行かなくちゃだろ?」
それもそうだ。本当は木元支部長ともう少し話したかったけれど、今はそれどころじゃない。
「そうしようか。三人がお風呂上がったら一応ミーティングしよう。僕らもシャワー浴びよっか」
桜庭課長たちもシャワーを浴びに行ってしまわれ、その間に僕は報告書を完成させていった。
翌日、木星セウスジアは木元支部長に任せて僕らは次のプラネット土星スノロクへと出発していた。故郷だったからもう少しいたかったけど、仕方ないよねと星を眺めていると莉耶が寄りかかってくる。
「ねえ、昏斗。もし子供ができたら嬉しい?」
「そりゃあ嬉しいよ」
「そっか」
「まさかできたの?」
「そんなんじゃないよ。ちょっと聞いてみただけ。そうだ。土星スノロクって確か桜庭課長の故郷らしいよ。第七捜査課に所属になったときに教えてもらったの。でもあまりいいイメージがないし、帰るつもりもなかったらしいよ」
桜庭課長にどんな過去があるんやらと考えていたら、スマートウォッチが鳴り応答した。
「昏花?」
『ごめん。今電車だよね』
「いいよ。どうかした?」
『昨日助けたディアヴォロスが起きて事情を聞いたの。お姉ちゃんとそのディアヴォロスが仲がよかったらしくて、たまに情報を渡してたっぽい。だけど待ち合わせ場所にも来なかったから、何かあったんじゃないかって思った時に、あの爆発が起きたらしいよ』
やはりそうだったのか。なぜ僕らに何も言わず出ていってしまったのかいまだに見当がつかない。昏無姉さんは昏の無で無限を意味する。そういう点で考えられるとしたら、昏無姉さんは何かに恐れて身を隠したとも言えるのだろうか。
それに比べ昏有兄さんは昏の有で有限を意味し、限度があるにも関わらず、ありとあらゆることを成し遂げている。
『それでお姉ちゃんがディアヴォロスに託したのはそれだけじゃなかった。もし来なければ、弟の昏斗に会い、土星スノロクへと向かってほしいって』
「そうなの?」
『うん。どういう意味なのかはわからないって言ってたよ。だから私たちもお見舞いが終わり次第、そっちに行くね。ついでにお父さんにも話してみる』
「よろしくね。そうだ。昏花、エンジースが使っている植物は多分だけど全てが食虫植物だから気をつけて」
『了解。蝕夜にも伝えとくね。それじゃあまた後で』
通話を終えどうして土星スノロクに行ってほしいのかわからないけれど、昏無姉さんは無敵でもあるから大丈夫だろうと信じたい。
土星スノロクに到着して、今までのプラネットよりめちゃくちゃ汚い場所だった。枯れた花がたくさんあるのは工場がたくさんあって煙が多く出ているから街並みが汚染されているのだろう。
エンジースではないプラネットコード社の皆さんもセリニ・ネアにいるらしいから、元支部長と合流してどういう状況になっているのかを確かめなくちゃならない。
車に乗ってセリニ・ネアに出発しながら他愛ない話で盛り上がっていたら海さんが急にブレーキをかけた。
「海さん?」
「ちっ飼育員、運転しろ。昴、ここで腹を括れ。さもないとあいつに顔向けできねえぞ」
なんだろうと少し気になるも海さんとバトンタッチして運転席に座り、海さんの指示通りに車を走らせる。一見普通に見えるが銃声を鳴らす桜庭課長と海さんで後ろで何が起きているんだ。
少しして銃声は聞こえなくなり、終わったのかと思えば前に岩のラーフォスが通行止めしていて急停止させる。
「先回りされたか」
ミラーに映るエクリプス人がいて、バラの剣で岩のラーフォスを倒して前に進むか。莉耶も甘ちゃんも銃を構え始める。
「見つけたぞ、昴。よくも私を裏切りやがったな」
「僕は裏切ったつもりはない」
「なら来い」
桜庭課長が車から降りようとして、甘ちゃんが桜庭課長を止めるも大丈夫と甘ちゃんに伝えて、ディアヴォロスたちと一緒に行ってしまわれた。
「海さん、どういうことですか?」
「話は後だ。車を出せ」
⁑
病院にまだいた私たちは大丈夫なことを確認でき、急いでお姉ちゃんを捜しに土星スノロクへと向かった。
何ここというぐらい汚れ切っている街並みで、こんな場所があるだなんてと歩く。蝕夜はまず最初にクロノスと会うらしくて待ち合わせがここらしい。
一つの工場へと入り中ではディアヴォロスが働いている中に進み、一室にクロノスが汚れた顔で出迎えてくれる。
「蝕夜、それと昏花ちゃん。いらっしゃい。そう言えば頼まれてたもん。作っといたよ。昏花ちゃんはこれね」
木箱を渡されてなんだろうとみたら夾竹桃にそっくりな花が瓶に入っていた。これって確か甘ちゃんのお父さんがリコーフォスを研究してたつもりが違う花になったっていう花だよね。どうして私にこれをと便を取り出すとその下にメモが入っていた。
昏花ちゃん、これは試作品なんだがこの香りがいいと女性に人気でなぁ。よかったら、使ってみてくれねえか?感想はいつでも待ってる。早く金星アプロディロにも平和が戻ることを願って。
ふうん。そうなんだと瓶の蓋を開け嗅いでみると本当にいい匂いがする。香水とかにしたら良さそう。後で蝕夜に相談してみようかなと、蝕夜が頼んでいたものを見せてもらった。
「これは無限拳銃?」
「エンジースに立ち向かうための武器だよ。もう見ていられないと判断したまでだ。ありがとう、クロノス」
「いいって。そう言えば最近、ディアヴォロスが荒くなってるの。あっしが止めに入ってもダメで。お願いできる?」
「また奴か?」
「まあ、そういうことかな。それに昴がこっちに来たのわかったみたいで今頃拉致しに行ってるかも」
全然話についていけてないと二人の会話を聞いていたら、スマートウォッチが鳴ってみるとお父さんからで応答する。
「お父さん」
『話は大体理解した。昏無はおそらく天王星ラウモイズにいるだろう』
「それって流彗くんを助けに?」
『それはまだだ。私が知る限り、流彗には危害を加えないだろう。目的は莉耶ちゃんだ。人質をとっていけば莉耶ちゃんは絶対に大鳳天満のところへと行く。それに琥珀と真珠から新たなカードが出たそうだ。絵柄は上に三つの星と宝石が閉じ込められ、真ん中には天使、これは大鳳天満だろう。下には四つの星があるが星が欠けている』
宝石は意味がわからないけど昏の三名が人質に取られるってことでいいのか。私も狙われる可能性が大きいってことで間違いはないんだよね。
「ありがとう、お父さん。気をつける。お兄ちゃんと昏希にも気をつけてって伝えといて。それから木星セウスジアのことなんだけど」
『大丈夫だ。お母さんに一目あったから、木星セウスジアに戻りお前たちの故郷は必ず守る」
「うん。それじゃあまた何かあったら伝えるね」
電話を終え二人の会話を聞いていった。
⁑
天使になってしまった流は、どうにかして助けを求めにネオリオ社へといけないか確認したけど鳥車がなければ移動ができない。空島だし一歩間違えれば死んじゃう。監視の人の目を盗んでいけたとしても最後には椿が待ち構えている。それでもこの人たちは僕を梅って呼ばれるのが大嫌いだ。僕には母さんがくれた流彗っていう名があるもん。
鳥車に何かを運んでいるのが見えて、流はそこに隠れて布を被った。移動しているのを確認し、違う島でネオリオ社でもディアヴォロスでもいいからまず助けを求めに行こう。
到着したのか荷物を運んでいるのが見えて、気づかれないうちに助けを呼びに行こうとしたらやっぱり椿がいた。
「梅、そう簡単に逃さない」
「流は流彗だ!梅じゃない!バラがあったら意地でもネオリオ人に戻るんだから!」
「天満にお仕置きされたくなかったら、ちゃんといい子にしてないと大好きなお母さんが天罰を下ることになる」
お母様が天罰を受けている姿を想像しちゃって、足が思うように動かなくなっちゃった。近づいてくる椿で後ろには大人の天使が来てしまう。
僕の足、動いてよと願っても椿が出す植物さんに飲み込まれちゃって、出られなくなっちゃって大嫌いな場所に戻されちゃった。




