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プラネットコード(改訂版)  作者: 福乃 吹風
48/78

44僕は里、私は励

 木星セウスジアに到着し電車から降りてみると、ディアヴォロスやエクリプス人がいつもより穏やかだ。それに僕らを見つけると会釈するから余計に不審な感じがする。

 いつもこうなのと莉耶に聞いたら顔がとても変な笑顔で、違うよと言った。クレヴィー社がなくなったことでディアヴォロスとエクリプス人は一応プラネットコード社が職を紹介している。だが半数以上がエンジースとなったからほとんどのディアヴォロスは職を失っている状況だ。

 

 ここは昏有兄さんに相談するかと駅から降りるとなんだこの景色はと、自然が多く木々がたくさんあって地面には小さな花が咲いている。僕の理想とした世界そのものだと興奮していると、置いていかれそうになり馬車に乗り込む。


「故郷に帰ってみてどう?」

「僕はずっと地下にいたけど、なんか懐かしいような感じがする。やっと帰って来れた喜びが嬉しいよ。そうだ、桜庭課長。プラネットコード社に行かれるのですか?」

「一応、支部長も捕食人間だから会いに行かなくちゃならない。状況を見て昏斗、案内を頼むね」

「はい、僕も本家に行ってみたいと思っていたので」


 本家はどんなのところなのか楽しみだなと馬車に乗り数分後、森の中に入りなぜかここで馬車を降りる桜庭課長たち。僕も降りて後をついていくとなぜか大樹を登り始めたのだ。謎だらけですと大樹に登り切ってみると吊り橋がたくさんあり上の方を見ると明かりが見えていた。


 こんなところにプラネットコード社があるだなんてと菊太は犬の姿だと足が震えていて、それを知っている海さんはわざと揺らす。また始まったと飼い主である僕がと思ったらキランと目が光り、菊太が走り出したのだ。

 本当に海さんと菊太、仲いいよねと思いながら渡りきり、支部長の部屋へとついた。

「みた感じ平和そうだね」

「だけどエルーさんいないよ」


 甘ちゃんは時々驚かされる呼び名で呼ぶけど、全員が許しているのは金神家だとわかっていたからなのかな。そこはいまいちわからない。

 少し待っているとやっと来たかと声がかかり振り向くと、なんとその姿がエルフそのままだったのだ。初めてみた。まさかエルフ族がまだいたとは父さん、なんで教えてくれなかったんですか。


「エンジースという天の使いが現れ、社を奪われそうになったから追い払っておいた。他の支部も今はエンジースと奪い合いをしていると聞いている。それで昴、先に真の神と会長がおいでだ」

「え?本家にいるんじゃないの?」


 ついて来いと言われ僕の問いを答えてくれなかったのが少し残念でもついていく。違う釣り橋を渡ってすぐに見えたのが姉さんと桃花会長に流彗くんがいた。

 流彗はいつも通りの元気で菊太に飛びつき、姉さんの合図で菊太は流彗くんをここから外す。


「第七捜査課の皆さん。無事で何よりです。私が早く気づいていれば、社を乗っ取られることもなかった」

「兄さんはこのことを?」

「えぇ昏有には報告してあるけど、悪魔と連んでいるから受け入れられないと言われてしまって。だから本家なら大丈夫と思ってここについたらエルーが出迎えてくれたの」

「そうだったな。昏斗はこれが初めてか。僕は木星セウスジア支部長、木元エルー。数人だが僕と同じエルフ族でもあり天使を追い払うことができた。僕一人の力だったら流石に難しかっただろう。それで真の神である昏無、そして昏斗にあるものが届いた」


 木元支部長が指を鳴らすと支部長代理の方が箱を持って来て、体が震えるぐらい中身を見るとテオスパーティーで着る衣装だ。それに色が緑。つまり父さんが僕たちを呼んでいるということ。

 招待状には父さんの直筆で、こう書かれてある。


 昏斗、流彗くんの誕生日パーティー以来だな。早速で悪いんだが昏斗をテオスパーティーに招待させてもらう。来なくてもいいが、これは莉耶ちゃんのためでもあることを忘れないでもらいたい。

 どういう意味だと思考を膨らませていると、姉さんは行くわと答えたのだ。


「昏斗も行くでしょ?」

「まあ莉耶のためって書いてあるし、父さんと話せるなら挑むつもり。でもなぜ今更こんな茶番をする必要があるのかわからない。テオスパーティやテオス舞踏会は潰れたようなもの。それに捕食人間はすでに地下から地上へネオリオ社がやったって報告が上がってる」

「もしかしたらエンジースを誘き出す罠。おそらく対象は莉耶。エルー、莉耶の衣装とかは届いてなかったかい?」


 なぜか木元支部長は頬を染め咳払いをしており、これは届いているようだ。海さんは早く出せと木元支部長に言っており、支部長代理の方が持って来た。

 中身を拝見させてもらうと、僕の父さんはなんちゅうものを送ったのだよと吐息が出てしまう。


 その衣装は天使ではなく妖精の衣装で羽根までもがセットになって入っていたのだ。父さんこんな趣味はお持ちではないですよねと問いたいぐらい。

 だけど招待状の文面にはこう書かれてあった。


 昏斗の彼女さんである莉耶ちゃん

 初めまして、私は昏斗の父親である真神昏真と言う。ディアヴォロスの名ではズーアスという名だ。

 本当は息子の彼女でもあり危険な目に合わせたくはないが、蝕夜の指示により送らせてもらったものだ。これは私の趣味ではないことは伝えておく。

 今回、莉耶ちゃんを対象にエンジースを誘き出すために、莉耶ちゃんを利用させてもらう。勝手にテオスパーティー会場を使った罰だと蝕夜は言っていた。それと莉耶ちゃんを奪わせないための策も用意させてもらっているから安心してほしい。招待した者たちの前日に莉耶ちゃんを迎えに行かせてもらおう。大丈夫、迎えに来るのは愛娘である昏花だから。それでは会場で待っている。 昏斗の父より


 父さんの趣味でないことで安心感は持てたけど、招待した者は全員天使だということでいいのか。だけどなぜ僕と姉さんだけが呼ばれたのかは書かれてはいなかったな。


「エンジースを誘き出すために使うだなんてな。行かなくていい」

「……私、行く。真実が知りたい。私はなぜ今までプラネットコード社にいたのか。それが知りたい」

「僕と姉さんがついてるし、この内容を見る限り、昏花や蝕夜に父さんもいるし僕たちもいるから」

「ありがとう。それにしてもこれを着て出席するのはちょっと恥ずかしいかも」


 甘ちゃんや桃花会長は可愛いと言っているが、大人組はさすがに恥ずかしくて着れない部分も出てくる。誰が来るのか予想はつかないけれど、行く方向性になり桜庭課長たちは外で待機をしてもらうことになった。

 

「あの皆さん、違う話になってしまいますが、本社を狙ったのは椿という少年たった一人。その子には十分、気をつけてください。あの子は平気で天罰を与える子です。何人か天罰を受け死亡してしまった」

「気をつけます。桃花会長、しばらく姉さんを借りますね」

「はい。ご武運を」


 

 テオスパーティーの前日、莉耶は妖精の衣装に着替え終わり昏花が来るまで貸してくれた僕の部屋で莉耶と二人っきり。


「昏斗」

「ん?」

「少し怖い。秋っていう人や桜っていう子にまた会って、昏斗が傷つく姿なんて見たくはない」

「大丈夫。僕は覚醒した。何があっても莉耶を守ってみせる。それにもしかしたらテオスパーティーに鈴哉さんやふじさんがいるかもしれない。その時はちゃんと話してみるよ」

「うん。ひたるたちは?」

「ひたるたちは一度水星ヘルスミエと金星アプロディロに行って、水木支部長と宝郷支部長が無事か確認してから来るみたいだよ。まああの人たち、そう簡単にやられるような人じゃないしね」


 支部長たちはともかく他の社員が無事かまだ安否確認が取れていない状態でいる。エンジースにやられてしまったか、それともスマートウォッチが使えずどこかで身を潜めているかのどちらかだ。

 待っていると目の前に昏花が登場し、頬を染めて小さく馬鹿蝕夜と呟く。


「莉耶ちゃん、行こっか」

「うん。それじゃあ会場で」

「莉耶を頼むね、昏花」

「任せて」


 昏花は莉耶の手を繋ぎ、一瞬で消えてしまって菊太がやって来る。


「あれ?もう行っちゃったのか」

「うん。菊太、ちょっとドライブしに行こうか」

「珍しいけど、ついていくぜ」


 一度行ってみたかった本家に行ってみたくて、下に降りペンを起動させバイクに変換させる。それに乗って昏無姉さんに教えてもらった住所へと向かった。

 昏無姉さんと昏有兄さんは何度も本家に行っていたらしく、本当はもう少し大人になったら連れていく予定だったらしい。その時はまだ子供だから危険だと判断していたからだろう。


 バイクを走らせて約二時間程度で、真神家本邸という看板を見つけて進んでいく。影神が手入れをしているから汚れとかはないみたい。どんな場所だろうと進むに連れバラがちらほらとあり大きな門の前に到着する。

 なんて綺麗な場所なんだと庭にはバラがたくさん咲いており、バイクから降りてバイクを回収し中へと入った。


 もし普通に過ごしていたらここにいたのかと玄関に到着し、入れるかなとドアノブを捻ると開く。家の中に入るとそこにいたのは昏有兄さんだった。


「昏有兄さん」

「今、ここに住んでる。それより、どうした?兄ちゃんが恋しくなって会いに来たのか?」

「それもそうだけど、本家がどんなものか見たくなって」

「そうか。まだここを見せてもらっていなかったんだな。人通り案内してやるよ」


 昏有兄さんについて行き本家の中を人通り説明してくれて、談話室で話し合う。


「それで父さんから招待状が届いて、それに参加することになった」

「なるほどな。俺も招待された。俺がここにいるのを知ってて送ってきたんだろうけどな」

「昏有兄さん、あのさ」

「桃花ちゃんを引き受けなかったことについてだろ?散々、昏無の説教食らった。だけどな、今それどころじゃねえんだ。本当はこんなことは言いたくはねえ。一番昏斗を愛していた母さんが、ちいと病にかかった」

「え?」

「桃花ちゃんの両親を見ただろ?それと同じのを母さんは受けていたことが判明してな。まあこれは親父からもらった情報だ」

「だから星河会長を?」

「そうなる。今は落ち着いて普通に生活できているが、また発症したらおそらく桃花ちゃんのご両親のようになると医師から言われてる。だから極力俺も昏希も接触は避けていてな」


 そんなと落ち込んでいると昏有兄さんがあることを教えてくれる。


「甘ちゃんの里親である銅和錆彦に薬ができるか、依頼中だ。もし可能ならそれで助かるかもしれない。もし母さんに会いたいと言うなら、もう少し待っててもらいたい」

「ずっと待つよ。母さんがよくなるなら、僕は待ちたい。ねえ昏希のように手紙でやりとりはできないかな?」

「大丈夫だろう。母さんも昏斗たちに会いたいと行っていたしな。写真を送っても別に大丈夫と医師から言われている」

「よかった。なら母さんが見れなかった時期とか集めてアルバムにして送るよ。母さんの喜ぶ顔が見たい。今持ってないの?」


 わがままを言うと昏有兄さんは僕の隣に来てスマートウォッチの画面を開き、写真のアプリを見せてもらうとアステル幹部の人たちがふざけている写真ばかりでつい笑ってしまう。

 昏有兄さんの前ではこんな雰囲気なんだと見ていたら、一枚だけ母さんの写真を見せてくれる。


「母さんが抱いてるのは昏希?」

「あぁ。その頃はまだ発症していなかったから、子育てをしてたよ。だけど昏希が五歳ぐらいの時に発症して、俺の力でも直せないことがわかった。それでアステル幹部に星河喰雅が利用していた病院に乗り込んで医師を攫い、診てもらったらこの通り。一度発症した姿」


 動画を見せてもらい本当に別人のような姿で、よだれを出しながら暴れていた。


「攫った医師を特別にネオリオ人にさせて、今は母さんの主治医として働いてもらってる」


 いつ発症してもおかしくはないのは確かだ。僕たちの力でも無理になってしまうだなんて。今後、似たようなことが起きた場合、どう対処するのがベストか、蝕夜に問い合わせてみなければならない。

 今回のテオスパーティーに来てくれればいいけど、最近体調崩していると昏花から聞いたから来てくれるかわからない状態だ。

 とにかくこのことは心の奥にしまっといたほうがいいし、母さんに会いたがっている昏来と昏未には重い病気で移る可能性が高いとか伝えるのがいいだろう。


「ありがとう、昏有兄さん。そうだ、その後、火神さんどうしているのか気になって」

「報告は受けていた。ファザコンも抜けてしっかり火星アリーレスを管理するようになった。こちらこそ、ありがとな」

「少し心配してたんだ。父親を亡くして、すぐ立ち直れそうな表情じゃなかったし、無理に笑っていたというか」

「いや、炎悟には落ち込んだり悲しんでいる暇はねえよ。あいつには頼もしい兄弟がいるから寂しい思いはしないはずだ」


 それならそれでいいんだとそこからは明日どういう策を考えているのか、昏有兄さんに聞いて行った。


 ⁑


 テオスパーティー会場にお連れし、莉耶ちゃんを部屋にお通しし終わった後、警備はモンディガがやってくれることになる。莉耶ちゃんを一人にさせるのはまずいんじゃないかって思うも、お父さんも蝕夜も大丈夫と言っていたから大丈夫だよね。

 それにしても木星セウスジアの会場を一度連れてってもらった時、心が奪われそうなぐらい美しすぎて思わず何枚か写真撮っちゃった。

 花屋を経営していた昏斗がここに訪れたら間違いなく花の説明をしてそうとお父さんが使用としているお部屋に行ってみる。

「お父さん」

「昏花、もう慣れたか?」

「おかげさまで。それより、自分で元に戻ったの?」

「そうだ。自分で自害するのは腑に落ちなかったが、いい経験をさせてもらったよ」

「だったらもう蝕夜の下につかなくてもいいんじゃないの?」


 問いかけるとお父さんは座りなさいと言われて、ソファーに座りお父さんは向かいのソファーに座り語る。


「私は昏の真実でもあるから嘘偽りのない真実を突き止めなければならない宿命。そこでまだ謎があると感じ私は蝕夜につくことを決めた。もちろん蝕夜と星にも会っている」

「そっか。お父さん、私、このまま蝕夜のそばにいていいんだよね。前世の記憶を見る限り、ずっと蝕夜の家柄、月日家と接触してた」

「それは昏花が決めなさい。もし離れたいというなら話してみよう」


 まだ半分だけこれでいいのかというのが頭に浮かぶ。今は悩んでてもいいんだよね。


「もう少し悩んでみる。そう言えば、お父さんに聞きたいことがあって」

「なんだ?」

「お父さんは一度、死んだ人を知ってる?プルトナスに亡くなっちゃった、ヌクリ。他にまた、誰かを失うってことはあるのかな……」

「言いたくはないが残りの二人も一度死んでいる」

「じゃあ残りのプラネット三人の内にいるってこと?」

「そうなる。方法があればいいんだが、あの三人も人間からすると老人だ。元に戻ればアリスのようにすぐ亡くなるだろう」


 楽しそうにはしゃいでいたヌクリでも、実際は次々と亡くなる方を見て心を痛めていたとなれば開放するのが一番なのかな。でも一度会ってしまったら、失いたくない命に思ってしまう。それは昏斗も同じことだ。

 昏斗は昏の中で一番重大な役割を背負っている。まだ昏斗はヌクリを思い浮かべているとしたらバラの流星群ではなく違う方法で救えないだろうか。 


「そんなに落ち込むな」

「でも昏斗は私たちより重大なことを任されてる。背負っている昏斗は、本当は失いたくなかったんじゃないのかな……」

「そうかもしれない。ディアヴォロスの中で一番仲が良かったのはアリスと書物に記されていた」

「だったら」

「失いたくなくても、時にやらねばならない時が必ず訪れる。例え友人であろうとも私たちは前世の記憶を通して生きているようなものだ。これがあっていたのかわからずとも、アリスはそれを望んでいたか?死を覚悟していただろう。友の願いを聞くのも重要なことだ」


 あ……。昏斗はヌクリの願いを聞くためにやっていた。きっと心のどこかではまだ生きててほしいという願望があっても、自分の思いを押し付けず、ヌクリの願いを全て果たしていた。


「私っ馬鹿だ。ヌクリに何もしてあげられなかったっ」

「いや、アリスは最後に来てこう言ってた。昏花は本当にいい子で、そばにいてくれただけで嬉しかったと。人の心を動かすのは何かをしてあげるとかではない。思いやりが重要だ。昏花は思いやりのある子に育った。アリスの死後もこうやって思いやる気持ちも大切なことだぞ」


 お父さんの励みの言葉を受け入れ、泣いてばかりじゃ幽霊になってヌクリに怒られそうと涙を拭き取る。ありがとうとお父さんに伝えて、私は心配になった蝕夜のところへと行った。

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