42僕は温、私は蝕
アリスが向かった場所がなんとなくわかり、紅様を置いて岩車を使い目的地へと向かっていた。前世の記憶でアリスが気に入っていた場所を一度紹介してもらったことがあったからそこに逃げたと推測している。
そこはアリスと思い出の場所とか言ってたような気がして、あそこなら被害が出ないからあそこへ行ったんだろう。
「おい、飼育員!もっとスピード出せ!」
「やってるけど前にある岩車が遅すぎて」
貸せと助手席に座っていた海さんが運転手席に座った。僕は渋々助手席へと座り海さんに指示をしながら岩車を追い越しスピードを上げていく。
間に合ってくれと願いながら車を走らせて一時間が経過し、もうアリスはやられてしまったかと焦りの汗が出る。
火神炎悟がアリスを見つけられているかどうかが鍵となるけど、火神炎悟はあの場所を知っているのか。早く、早くと外の景色を見ていると、いきなり急ブレーキをかける海さん。
「海さん?」
「これ以上先進めねえじゃねえか!」
えっと前を向くと目の前には炎があってフローガが通行止めをしてそうに見えるも暑すぎて本当の炎だとわかる。
「青の弾丸に切り替えて一気に消火させるよ」
はいっと返事をしながら菊太も手伝ってくれるらしく岩車から降りて消火作業を行う。無限拳銃だから弾丸がなくなることはないけれど、すごい炎だと煙を吸わないように撃っていくもなかなか炎が消えない。
こういう時、美汐がいたらすぐ消火が終わりそうだったなと浮かべながら撃っていくと水の精霊が現れる。まさかと振り向いたら、水神潤ではなく水神雫だった。
「こっちのプラネットに来ましたら、炎の煙を感知致しましたので昏斗様たちを援護させてもらいます。事情は先ほどネオリオ社の者から報告を受けているので、昏斗様たちはお車に乗ってください。私が炎を退かします。その隙に行ってください」
「ありがとう、雫ちゃん」
僕たちは岩車に戻り水神雫が水の精霊を出して道を作ってもらい、その先へと進んだ。
炎があちこちへとありこれ以上は進めないと判断した僕らは岩車から降り徒歩で行くことに。途中で火のピュールがいて無限拳銃で消火しその先へと進んだらアリスちゃんとエンジースが戦っていたのだ。
アリスちゃんはボロボロで、多少天使の羽根が突き刺さっている。
「やっぱり昏斗は俺様が考えていることはわかっちまうんだな」
アリスちゃんが笑顔でそう言い、何があっても救い出すと僕らはエンジースに攻撃を開始した。それでもエンジースは僕らの攻撃を避けながら、アリスちゃんに向けて攻撃を再開している。
どうにかしてエンジースを払うことはできないのかと考えていたら、炎の精霊が現れエンジースに総攻撃を仕掛けた。
「やっと見つけたで、父はん!なんであんなこと言うんや!父はんにはまだ生きてもらうで!」
「俺様はもういいんだよ。炎悟、エンジースに目をつけられたら終わりなようなものだ!」
アリスちゃんと火神炎悟が口論をし始めてしまい、その間にアリスちゃんを狙う気かと僕はバラを取り出して剣に切り替えエンジースを止める。
「邪魔です、真神昏斗」
「嫌だね。アリスちゃんは、火神炎悟の父親だ。どうせ柊という人に頼まれただけでしょ?莉耶はそれを望んでいないのに、なぜこうなっているのか。君ならわかるはずだ」
動揺を隠しきれていないような表情を出し、やはり莉耶のキーワードを出すとエンジースは普段の力が抜ける。
「真神昏斗、これは挑発と言うことでよろしいのですか?」
「だったら君のお偉い人に言ってよ。僕たちは莉耶を手放すつもりはないし、例えエンジースに奪われたとしても真神家は見逃さないと。わかってるでしょ?真神家兄弟全員揃ったらどうなるのか。わかっているのなら今回は見逃してよ。親子喧嘩を止めなくちゃならないからさ」
知らない人が見たら親子喧嘩より兄弟喧嘩をしているように見えてしまいそうだ。どうするとエンジースの顔色を伺っていたらぴたりとエンジースが止まった。
「いいでしょう。但しエンジースに逆らったらバチが当たることをお忘れなきように」
エンジースが消えたことで一件落着になり、さてあの二人をどう仲直りさせようか。呆然としている桜庭課長たちで僕は場に入り止めに入る。
「どけや、昏斗!」
「邪魔!」
「エンジースがいなくなったから、いい加減二人ともやめてください!それに僕はバラの流星群を発動させる!」
僕が発した言葉で火神炎悟の一発をくらい嫌やと子供のようにほざいた。
「昏斗、本気で言ってるの?」
「そうだよ。火星アリーレスのためにもバラの流星群を発動させる。それにアリスちゃん、待たせている人がいるんだよね?」
アリスちゃんの顔を見ると悲しそうな笑みでそうだよと呟いた。すると火神炎悟は炎の精霊を出して僕を威嚇し始める。
「絶対にさせるか!父はんは絶対に殺させへん!」
火神炎悟が僕に襲い掛かろうとした時、昏花が火神炎悟を止めた。
「昏斗、ヒントをありがとう」
「昏花なら解けると信じてたよ」
「火神炎悟さん、なぜアリスが死にたがっているのかわかったんです。アリスの言葉ちゃんと聞きましょう。あの時、あなたに贈ろうとした本当の思いを」
火神炎悟は涙を浮かべてぴたりと止まり、昏花はアリスのところへと行く。
「なんでや……なんでほむは毎度毎度、失わなければならへんのやっ。命を粗末にするなって言ったの父はんやのにっ」
「火神さん、話をする前にここをなんとかしなくちゃ」
あちこちでは炎の海で僕たちは逃げることさえもできない。だから無限拳銃で撃ちながら脱出しなければならないということだ。
火神炎悟は涙を拭いて無限拳銃を取り出し青色へと変換させる。
「すまへん。こんなに出してしもうて……」
「いいよ。それじゃあ合図で脱出するよ」
炎の動きを見て合図を送り僕たちは撃ちながら避難していった。途中で水神雫と出会いアリスちゃんを救出できたことで豪雨のように激しい雨が降り始める。
さすがは水の神だと感心している場合ではなく、岩車に乗りネオリオ社へと帰った。
岩車が水を吸ってしまうことが判明しみんなびしょ濡れでシャワーを浴びていると、隣でシャワーを浴びている海さんに聞かれる。
「火神炎悟はどうなるんだ?」
「わからない。兄さんが下すことになるだろうからね。それにしても紅様はどうなるの?」
「それは桃花が下すだろ。まあアリスを公開処刑まで持ってたから紅は刑務所行きだろうけどな」
それはそうか。殺人者を支部長としては呼べないだろうしな。だとしたらプラネットコード社の支部長は一体誰になるんだろう。考えたこともなかったことだ。
シャワーを浴び終わり体を拭いて新しい隊服に着替え、火神炎悟が使う支部長室へと行ってみる。
僕たちはぽかんとするほど十人の子供たちが遊びまわっていたのだ。火神炎悟は自室だろうと思っていると、火神炎悟の叫び声が自室の方から聞こえる。
子供たちが雫姉ちゃんに怒られてるとはしゃぎながら鬼ごっこをしていて、一番下の子がはいはいしながら僕のところに来て抱っこしてあげた。
すると扉が開き全くと怒っている水神雫が出てきて、その後ろから火神炎悟が出てくるも頬には赤く手のひらが出来上がっている。
「昏斗様、先日は兄のことありがとうございました。兄は女好きであまり帰っては来ないことが多く、大事な日もすっぽかす最低な兄でしたが、ここ最近は水星ヘルスミエに帰ってくれるようになったんです」
「それはよかった。それより火神さんの頰のことなんだけど」
「この人、アリスと出会ってからファザコンになったんですよ。アリスの姿は子供なのでいつも父親のことばかり思ってて、時にデートをすっぽかすぐらいファザコンです。それでアリスは?」
以前、水星ヘルスミエと会った時とは別人のように見えてしまうのだが、とアリスちゃんと後ろに隠れていたアリスちゃんを出してあげる。
しかしいつものアリスちゃんではなく、なんかぎこちないような雰囲気を出しながら挨拶した。
「久しぶりだな、雫……」
「お父さん、ご無沙汰してます。どうかされたんですか?そんな顔して」
「そうか?俺様は普段通り」
「はあ我慢しなくても、いいですよ。但しこれが最後ですからね」
パッと花を咲かせるように笑顔になって水神雫に飛びつくアリスちゃんで、桜庭課長は甘ちゃんが見ないようにと手で隠す。アリスちゃんは嬉しそうに水神雫に抱きつき、なっと羨ましそうにみる火神炎悟だった。
やれやれと見ていたら桜庭課長が咳払いをして、アリスちゃんはありがとうと飛び降りる。
「子供たちを頼むや」
支部長代理の人が子供たちと一緒に部屋から出ていき、ソファーに座ってアリスちゃんの言葉を聞く。
「俺様は……アリスが亡くなった後、墓を掘ってアリスの遺骨を食した」
「なんでや?」
「アリスが望んだことだ。息子の成長を見届けられることができなくても、俺様とずっといられるのなら食してほしいって。もちろん、俺様は抵抗があった。他に方法があるんじゃないかって。だけど炎悟に一度だけ会わせてくれた日、アリスの父親に見つかって、アリスは俺様を逃がしてくれた。本当は守るべき命だったのに守れなかった悔いがあって、アリスが言っていたことを実行した」
アリスちゃんがずっと閉まっていた思い。前世の僕にも教えてくれた通りの内容だった。棺にはもう遺骨がなくても下から温もりを感じていたのはアリスちゃんが出したであろう火のピュールがいるからだ。
アリスちゃんがいなくなれば、その灯火は消えることになる。
「だからな、炎悟。俺様がアリスを食したことでアリスは今も俺様の体内に彷徨い続けている。早く天国へと送りたいから、俺様は死を覚悟しているんだ」
「ほむにはまだ生きててほしいんや。ほむの未来図には父はんと一緒にやりたいこともあるさかい」
「ごめんな。その約束はできない。俺様はすでに死んでいるのに悪魔になったディアヴォロス。そのおかげで何百年も俺様は十分生きた。俺様はアリスと出会って、俺様はアリス以外愛せない。だからここで終止符を打つ」
それでも火神炎悟は納得していないようで、部屋を飛び出し水神雫が追いかけようとしたが止めに入った。
「今は一人にさせてあげて。死というのは相当な覚悟が必要だし、本人じゃなくても家族にとってはかけがえのない存在で一番に失いたくない思いが強いからね」
「昏斗様……」
「昏斗の言う通り。私たちには失いたくない命が多くある。アリスの命もだよ」
「昏花、ありがとう。俺様の最後の願いを聞いてほしい」
何かなと僕らは耳を貸して、アリスちゃんがやりたいことを聞いてあげていく。
⁑
アリスが最後にやりたいことを教えてもらい、私は早速蝕夜の元へと行って報告しに家に帰った。ペンダントを通して見てたと思うけど、あの一件でまだ体を休めているから多分寝ているかな。
家の中に入り蝕夜の部屋に行ってみると、まだ蝕夜は就寝中だった。起こしちゃ悪いかなって思いベッドから離れようとしたら、蝕夜に腕を掴まれる。
「蝕夜、ただいま……?」
いきなり引っ張られ何この状況と心拍数が上がり蝕夜の抱き枕になってしまった。
「ちょっちょっと、蝕夜」
「いい香り、食べちゃいたいぐらいだ」
何と思ったら蝕夜が私の耳を噛み顔をどかして、すぐにベッドから離れる。どうなってるのと身構えていると蝕夜がベッドから降りて私に近づいてくる。
「星が寝てるから最近昼間起きるようになってしまった。なぜそんなにビクビクしてる?昏花」
「今さっき耳齧ろうとしたでしょ?」
「あれは僕の愛情表現だ。そうだ、両耳チェックしてご覧」
さっきのことで蝕夜が使っている鏡でチェックしてみると耳には歯型のようなものが残っていた。まさか私が寝ている間に噛んでるってこと。
耳をチェックしていたらバックハグが来てしまい、再び噛もうとしたからストップをかける。
「耳に歯形がつくのはもうこりごり!」
「星より僕を選ばないからお仕置き。さて星はまだ起きないようだから、その間に仕掛けるとしよう」
「何を?」
「昏花は興味津々で何より。エンジースが動き出していると残りの後継候補者が言っていた。だから僕が作った神パーティー会場を勝手に使ったエンジースを誘き出すために仕掛ける」
「まさか莉耶ちゃんを使う気じゃないよね?」
蝕夜に問うと何かを企んでいるような笑みを出して、私を抱っこしてここはと懐かしいような場所に辿り着いた。
⁑
夕焼けが一番見やすい場所に逃げはったほむは、失いとうない命を失ってしまう辛さに耐えきれへんくて、体育座りをしながら頭を突っ伏していた。
まだ生きられる命やというのになんで簡単に死ねるんや。それがわからへん。母はんはしょうもないけど、父はんは元気やというのに。
考えてはったら子供の手がほむの肩を叩き顔をあげると、父はんやった。
「父はん……」
「ここは俺様が教えてあげた絶景スポットだからな。絶対にここにいるだろうって思ったよ。父親として何もしてやれなかったのは後悔してる」
「せやったら今からでも」
「もう決めたことだ」
「頑固父はん」
ほむが拗ねても父はんは子供のようにくしゃって笑い、ほむに背中を見せて言われる。
「だから最後に俺様が観せるショーを観せるから目に焼きつけとけ」
そう言いどこからか音楽が流れると父はんはファイヤーダンスをし始めた。父はんは楽しそうに踊りながら道具を使って披露しているとバラが一枚降ってくる。
まさかと空を見上げると赤く光ったのが流星群のように流れていて、いややと父はんのパフォーマンスを中止させたかったのに足元からバラへ切り替わる。
「父はん!」
父はんの手を取ろうとしても取れぬまま父はんは一番えぇ笑顔でありがとうとバラの花びらとなり、その花びらが風によって消えてしまった。最後の一枚だけ落ちていてそれを拾う。
父はん……ほむを残して寂しいやないか。せやけど父はんと母はんの子供でよかったわとバラの流星群を眺め最後の一枚をポケットにしまいネオリオ社へと帰った。




