32僕は父、私は望
流彗くんの誕生日当日となり送ってくれた燕尾服に着替えていた。僕と美汐、姉さんと鈴哉さんに菊太は誕生日パーティーになる星河本家へと行き、莉耶たちは神パーティーに出席することになる。影神は万が一に備えて影で見守ってくれるらしいから安心でも、莉耶たちが心配だけど大丈夫だと信じたい。
これでよしと準備が整い菊太も僕が特製で作ったオリジナルの首輪でご機嫌上昇中だ。扉を開けると昏花と同じぐらい見惚れてしまうほど莉耶が美しかった。
今回ばかしプラネットコード社全員が純白の衣で、蝕夜が本社在勤の皆さんに送ったらしい。美汐はそれによってどういうことよと怒っていったな。
「無事に帰って来てね、莉耶」
「大丈夫。だって私は第七捜査課、課長代理だもん。絶対に帰ってくる。約束」
昏花の次は莉耶たちを見送る形になるだなんて思わなかったと莉耶に抱きつく。時間はいつもと違って誕生日パーティーと同時刻。きっと大丈夫だよねと莉耶に触れていたら何か圧を感じそちらに目をやる。そしたら桜庭課長たちがニヤニヤして見ていたから僕と莉耶は離れた。
「キスまですると思ってたけど、そうじゃないか。いいよいいよ、二人の愛を深めて」
「桜庭課長、揶揄わないでくださいよ」
「冗談。莉耶、馬車が来てるから僕たちは行くよ」
「はい。じゃあ昏斗、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
莉耶は桜庭課長にエスコートをしてもらい、行ってしまわれる。またこの感覚を味わうだなんてな。僕たちも地上へ行こうかと姉さんと鈴哉さんの部屋で待っていたら美汐の叫び声が姉さんの部屋から聞こえた。
姉さんは美汐に何をしているんだと吐息が出てしまう。先に鈴哉さんが出てきてめちゃくちゃ似合いますと褒めていたら扉が開く。姉さんの美貌に惚れてしまいそうだ。
「姉さん、綺麗すぎます」
「昏斗、ありがとう。ほら美汐、照れてないで」
姉さんの次に出てきたのは水色のドレスを着た美汐がいて、可愛らしい姿に鼻血が出そうな勢い。
「何ジロジロ見てるのよ」
「ごめん。つい美汐が可愛すぎて」
「こらだめよ、昏斗。莉耶ちゃんがいるんだから浮気したら鈴哉が怒る」
ちらっとみると鈴哉さんは無表情でいて、しっかりしなくてはとぱんぱんと頬を叩く。
「そう言えばひたるは?」
「ひたるも本当は本社在勤だから神パーティーに向かった。僕たちも行こうか」
そうねと姉さんは鈴哉さんにエスコートをしてもらって、僕は美汐のエスコートをしながら地上へと向かう。下水道を通るのはあれだなと思えば美汐がシャボン玉を作ってくれてその中に入り下水道を通った。
「ありがとう、汚れる心配はないね」
「当たり前でしょ。それにドレス送りつけといてここを通るのは流石に引く。そもそもあたしたちを迎えに来ないだなんて最低だと思わない?神パーティーに出席する人たちは馬車に乗れるのに後で文句言おう」
なんて言えばいいのか言葉が見当たらず男性陣が先に登り女性陣たちが後から登って行く。美汐に手を貸していると車の音が聞こえ、僕たちの目の前に停止した。
顔を出したのは星音で姉さんは無事で良かったとほっとしている。星音が乗っている車に乗せてもらって星河本家へと出発した。
「星音、変なことされていない?」
「お母様、大丈夫です。それよりお母様、大変なことが起きる。今夜、捕食人間がいる地下を崩壊させるらしいの」
「本当なのか?」
「はい。蝕夜様はそれを防ぐためにプラネットコード本社にお勤めの方を全員、神パーティーに招待させた。本当にこれでよかったのか迷いはあると仰ってて」
捕食人間を全滅させるだなんて信じられないけど、いい質がなければ崩壊させるって教えてもらってた。まさか一から作り直すのかなと思いきや、星音がこんなことを言い出す。
「捕食人間ではなくネオリオ人に変えるってお父様が仰ってた。だから私も食されるかもしれない」
「ふうん。やっぱり琥珀さんと真珠さんが占った通りに動いたってわけか。安心しなさい、星音。捕食人間はあたしが守れって元上司に言われてっから」
「だけどあのエレベーターは使えない」
「あたしの力舐めないでもらえる?昏斗、覚えてる?水星ヘルスミエの地下で起こしたやつ。あれをやれば平気」
僕が一度捕まったあのシャボン玉のことか。まだエルミスだった力が出せるとはね。じゃあそこは美汐に任せるしかないか。
「それならいいけど、お父様が何を仕出かすかまだ読めない」
「大丈夫。私たちがついてるし、誰一人失わせない。それと星音、慣れてはいないかもしれないけれど、無限拳銃は持っていた方がいいわ」
「はい、お母様」
星音が無限拳銃使えるとは驚きだった。
本家に到着してみると玄関からすごい賑わいで車から降り、流彗のお友達や大人たちまでが集まっていた。星音は僕の裾を引っ張り、手に触れると怯えてるのがわかる。
大丈夫と手を繋いだまま家の中にお邪魔すると、そこに流彗くんと八雲くんがいたのだ。
「お母様!昏斗!来てくれたんだね。あっちで遊ぼう」
「流彗くん、お誕生日おめでとう。これプレゼント」
やったと喜びはしゃぐ流彗くんで八雲くんは何かに警戒を抱いているようだった。
「おぉ来たか、お前たち。昏無、流彗を見てあげてくれ」
「……はい、喰雅様」
姉さんは流彗くんと違う場所に行ってもらい、星河会長の表情が変わる。
「星音、ご苦労だった。お前は部屋にいなさい」
「嫌……です、お父様。私にだって流彗の誕生日パーティーに参加させてください」
「私に逆らうとどうなるかわかっているよな?今すぐ部屋に戻りなさい」
せっかくの流彗くんの誕生日にそれは失礼なんじゃないですかと星音を後ろにやっていたら蝕夜と昏花が登場する。
「いいではないか、ゲス。流彗が見ていなくても、流彗の誕生日だ。盛大に祝わなくてどうする?お前の小さな行動によって流彗が悲しむかもしれんぞ」
よく言ってくれた頼れる兄君とこの空気をなんとかせねばと考えていたら、昏来と昏未が料理を頬張りながらこっちにやって来た。
「喰ちゃんを虐めたら私めが殺してあげる」
「なんの騒ぎかと思えばこれはこれは昏斗兄様と裏切った鈴哉じゃん。それと蝕夜にペットの昏花姉様」
「また僕を怒らせたらあの程度じゃ済まさないからね、昏来、昏未」
蝕夜の発言によりふんっと違うところへと行ってしまわれ、何があったんだと二人が行ってしまった方角をみる。そしたら昏花が蝕夜が引きつれている間に離れようと言ってくれて僕たちは違うところへと行く。
星音はまだ怯えているし何かが起きることを知っている様子だった。
「星音、今日何が起きる?」
「ネオリオ人狩りが始まる……。神パーティーは真っ赤の嘘で、ネオリオ街へ乗り込む」
「じゃあ莉耶たちが行ったのって?」
「それなら茜さんが事情を説明してもらってると思うよ」
昏花が言っているなら本当なのだろう。ネオリオ街は昏有兄さんたちもいる。助けに行きたいけど、どう動くべきか全く策がない。ここにはほとんどの人がエクリプス人だ。昏来も昏未もまだ星河会長についている。二人をネオリオ人に戻せたとしても被害は大きく出るだろう。
美汐は蝕夜と一緒に残ってたし後、考えられるとしたらこれしかないと耳に手を当てる。
「影神、聞こえる?」
『聞こえます、坊ちゃん』
「流彗くんと姉さんを真神家の別荘に連れてってほしい。僕と昏花はネオリオ街へと向かってみる」
『わかりました。お気をつけて、坊ちゃん、お嬢様』
影神がどう動くかは定かではないけれど、鈴哉さんに真神家の別荘の場所を伝え、星音と一緒に行ってもらうことにする。
「昏斗」
「大丈夫。全てが終えたらすぐ向かうから安心して待ってて」
本当は星音に伝えたくはない場所でも偽の装置を置いて、仮に壊されていることがわかったら星音が犯人だ。二人が行ったことで菊太は人間となる。
「あれでよかったのか?」
「もちろん。もし装置が壊されていたら、星音が真犯人だ。ただネオリオ人を対象にし始めたから装置は壊さないかもしれない。今の状況だと地球オルモフィーケのネオリオ人が対象となっているから。とにかく星河会長は一旦置いといて僕たちもネオリオ街へと急ごう」
誕生日パーティーを出ようとしたら、爆発音が聞こえて始まったのか。急いでネオリオ街へと急がなくちゃと行こうとしたら昏来と昏未がアンスロー数体と道を塞いでいた。
「この先は行かせないよ、昏斗兄様、昏花姉様」
「邪魔したら殺すって言ったよね?なんでわかってくれないの?」
「昏来、昏未。こんなことしても意味がないことぐらいわかってるはずだ。昏来と昏未に何があったのかはわからない。だけど僕たちは兄弟だ。話してごらん。何があった?」
「言って何かが変わるって言うの?」
「やっぱり殺そうよ、昏来」
話し合える状態じゃなさそうだなとバラを手にし一滴を垂らす。昏花も一滴垂らして武器へと返還させる。ここで二人を止めるしかないと僕たちが動くと昏来と昏未も動き出した。
昏来は僕に攻撃し始め、菊太はアンスローを倒してもらっている。ぶつかり合いながら、昏来は僕よりも上回る腕で倒せる自信がない。鍛錬は続けていたけれど、こんなに差が出るとは思わなかった。昏来の攻撃に当たってしまい傷を負う。
「昏斗!」
「大丈夫!」
昏花は昏未の相手をしているから僕を庇うことはできない。生意気な弟を持つとは初めてだよ。あぁ前世の僕はどうやって昏来とぶつかっていたのだろうか。
そうか。これよりもっと酷かったんだね。その記憶があるから誰も信用ができていない状態なんだ。ごめん、ごめんな昏来。今回ばかり昏花がいるから安心して使えるし、ペンダントもあるから大丈夫だ。
僕は暴走するよ、昏来ともう一本のバラをとり僕はバラにキスをする。髪の毛が赤となり棘の模様が体内に入って両手剣が出来上がった。
目の前にいる昏来に攻撃をし始めて行き、体が停止しなくても昏来に攻めて行く。
「昏斗兄様馬鹿なの?その力使ったら死ぬのわかってるくせに!」
そうだよ。この力を解放しなければ昏来、君は僕たちに本当の気持ちを言わないだろう。本当は助けてほしいと。その言葉が出るまでペンダントは使わない。
昏来は僕と距離を離して逃げて行くも、昏来を追跡して攻撃していたら誰かに止められてしまう。誰だよとジタバタしていたら僕がつけているペンダントを取り出してリコーフォスを見させられ元に戻ってしまった。
はあはあと息が切れていると頬を叩かれてしまう。痛いなと目の前にいる人を睨むとそこにいたのは僕たちの父さん、昏真。
「なんで……なんで父さんがいるの?」
「流彗くんの誕生日パーティーに出席をしていた。騒ぎが大きいと思ったらこれだ。あの力は解放するなと言っただろ?」
「だけど昏来は僕たちを敵視しているのは間違いない!そこをどいてよ、父さん!僕は昏来と昏未を助けたい!お願いだから邪魔しないで!」
「待て、昏斗。あの力の恐ろしさはお前が一番にわかっているはずだ。お前はすでに二回使っている。意味はわかるだろ?」
「じゃあどうすればよかったんだよ!」
父さんのシャツを掴みどうすることもできない僕にあることを言われた。
「昏来と昏未は俺に任せとけ。あの二人もわかってて、昏斗たちと向き合おうとしている」
「そうには見えなかった」
「昏来と昏未は他人との接し方がわからない。ずっと喰雅の元で教育を受けていたからな」
「……父さんはずっと昏来と昏未のそばにいたんでしょ?」
父さんはその言葉で口籠もり触れてはいけないことだったんだと悟った。おそらく父さんは昏来と昏未がいるから戻っては来なかった。だけど星河会長は昏来と昏未に会わせてくれていなかったからだ。
悔しいけどここは引くべきなのかもしれない。
「わかった。あの力は極力使わないようにする。だけど父さん、僕は諦めたつもりはないからそれだけは忘れないで」
「わかっている」
父さんから離れて本当はもっと話したいことがあるけれど、昏花の援護へと行った。
⁑
昏斗があの力を解放しただなんて思わなく、昏未より先に昏斗を止めに入りたかった。けれど昏未はお構いなしに攻撃してくる。どうにかして昏斗を止めに行けたらと考えていたら、菊太が助けてくれた。
「アンスローは全部噛みついたから安心しろ。昏花、ごめんな。俺、ずっと謝りたかった。あの時、この姿で止めていたら違う道があったんじゃないかってずっと考えててさ。二人を守り切れなかった悔いは残っちまったけど、昏花。また会えて俺は嬉しいぜ」
子供のような無邪気な笑顔を見せてくれる菊太に私は何をやってたんだろう。私も焦らず冷静でいたら違う道があったんじゃないか。そう思うようになってしまった。
「昏来と昏未のことは昏斗に多少事情はもらってる。敵側に育てられたことにより憎しみがあること」
思い出そうとも前世の私は記憶を封じてしまっているせいで、どういう教育を受けていたのか見えない。昏未、どうして私たち兄弟に敵視する必要があるの。
教えてくれなきゃ向き合えないよと昏未に攻撃を当てていたら、目の前に影神が現れた。
「やれやれ。お嬢様同士が争うのは美しくない」
「あんた誰よ。私め知らない」
「影神、出てきちゃってよかったの?」
「はい、昏無様たちを避難させた後、旦那様よりお嬢様の援護をするよう申し付けられています。さあ昏未お嬢様を止めましょう」
影神がお父さんと会っているだなんて知らなくて、私は一度だけお父さんに会わせてくれた。久しぶりに会った父さんの瞳はとても申し訳ないような表情を出していたのを思い出す。
お父さんはセウスジアを管理している者だから滅多に地球オルモフィーケには来ないらしい。ただ今回ばかり星河会長が起こすことに被害が大きくなるため、急遽お父さんを呼んでいたらしい。
まだお父さんに会っていないけれど、どこかで人を助けていると信じ、影神と協力して昏未を止めることにした。




