30僕は出、私は罰
二体目のエンヴィリオの力を借りて平屋を壊し姉さんを救出できて、姉さんにバラを一本手渡す。姉さんはバラを受け取り少し悩んではいたが、姉さんも戦う覚悟を決めて指に傷をつけ血を二滴垂らし剣に変換した。
「全く。しょうがないわ。一緒に戦ってあげるけど、もう一人連れて行きたい人がいるの」
「それならもう僕のエンヴィリオが捕まえている頃だよ。昏花を助けよう」
僕と姉さんは昏花の援護に回ろうとした時のことだった。アンスロー三体が昏花、昏来、昏未を捕らえているし触夜が現れる。
「やれやれ、騒ぎが大きいと思えばそういうことだったのか。義弟昏斗、昏無を連れて行けば昏来と昏未を見捨てることになる。置いておけ」
「断る。そもそも、昏来と昏未は姉さんがいなくても平気でしょ?そうやって姉さんに吹き込んでおけば大人しくしてくれると思ったから姉さんを閉じ込めていた。さっきさ、姉さんと話した時に姉さんの瞳が曇った。だから嘘だとわかったから連れて帰る」
「昏花たちもか?」
「いや、今回は姉さんと鈴哉さんを連れて帰らせてもらう。昏花はクレヴィー社に就職して仕事を真っ当したいだろうから」
昏花もそれを望んでいるらしく星河会長と触夜が動き出す前にここから脱出しなければならない。エンヴィリオを作っている暇はなさそうだし、昏来と昏未は不貞腐れているような顔立ちだ。
動こうとした時に上から銃声が聞こえて僕と姉さんは瓦礫に隠れるも、銃声がこちらではなく星河会長と触夜を狙っている。僕たちの方には縄梯子が降りてきてそれを掴み上昇した。
クレヴィー社から離れて行き、ごめんな昏花たちと思いながら縄梯子を登り切る。すると昏希が手を差し伸べてくれて手を掴みヘリコプターの中に入った。
席に座って昏希がじっと姉さんを見つめているから、姉さんにこそこそと伝えると姉さんが昏希に自己紹介をする。
「初めまして、昏希。私は長女の昏無よ。さっきはありがとう」
「余は四男の昏希である。昏有姉上のことは多少母上と昏有兄上から教示していた。昏斗兄上、昏有兄上から伝言である。無茶しないことだそうだ。余も心配であったぞ」
「ごめん。地上に来たら真っ先に姉さんを救いたかった思いが強くて。あっ鈴哉さん置いてきちゃった」
「大丈夫である。余の仲間が助けに行っているから案ずるな。もうすぐ合流するであろう」
これでよかったんだとネオリオ社に着くまで姉さんはほっとした寝付けに入り、僕は外の景色を眺めていると昏希がこんな質問をしてきた。
「甘露は元気?」
「元気にしてるよ。連絡してみる?」
「元気にしているのであれば良い。余は直接連絡ができなくても手紙でやり取りをしようと思っている」
「甘ちゃんも喜ぶと思うよ。昏希ともっと話したかったって言ってたしね」
本当かと目を輝かせながら言ってきて、本当だよと伝えると操縦者がもうすぐ着きますと言われ姉さんを起こしてあげる。ここがネオリオ街と二つのプラネットにあるネオリオ街より街が倍にあった。
ネオリオ社に到着するとバンダナをつけた青年が軽々と鈴哉さんを担いでいる。
「姉ちゃんと兄ちゃん助けられたんすね。俺は地神千歳っす。よろしくっす」
手を差し伸べられ握手するとなんちゅう腕力なんだと圧倒していると、昏希がその辺にしてあげてと地神千歳に注意した。地神千歳はごめんっすと軽い謝り方をさせられそういう礼儀って確か姉さん厳しかったようなと横顔をみる。
姉さん今からでも礼儀を教えたがりそうな表情でも、ここはグッと堪えていた。
ネオリオ社へとお邪魔するとネオリオ社員たちはひそひそと僕たちの噂をしていて少し気まずいな。姉さんと鈴哉さんを助けたのはいいけど、違法者としてプラネットコード社は受け入れてくれないんじゃないか。
さっき桜庭課長を怒らせてしまったし、一応報告はすべきだよねとスマートウォッチの電源をオンにする。確認したら電話が数件が入っていた。
応接室に通されてそこで少し待つようにと言われたからその間に連絡しちゃおう。絶対に怒られるだろうなと操作していたら貸しなさいと姉さんが操作をし桜庭課長ではなく莉耶にかけた。
『ちょっと今どこにいるのよ!』
「莉耶ちゃん、久しぶりね。覚えているかな?」
『昏無さん!?え?どういうことなの?ちゃんと説明して、昏斗』
「桜庭課長たちもそこにいる?」
『ううん。今はいないっていうか今地上に行くための下水道を解除してもらってる。準備が出来次第昏斗を捜しに行こうってなってるところだよ』
桜庭課長にも一本連絡はしといた方が良さそうかな。そう思っていたら、起きる前に人間に戻しておいた鈴哉さんが起き上がる。
「鈴哉さん」
「貸してくれ」
まだ寝ておいた方がいいのではと思っても鈴哉さんは莉耶に伝えた。
「莉耶、俺は違法者だからそっちには帰れない。だけど昏無は違法者じゃないのはわかっているだろ?せめて昏無だけでも保護してやってくれ」
『お兄ちゃん、そんなこと言わないでよ。あれからね、昏斗の妹である昏花と遊びに行って感じたの。私たちはただただ私たちの思いを殺して、違法者って勝手に呼んでた。戻ってきてほしい気持ちが強い。それで桃花会長とよく話し合って違法者と呼ぶのはやめようって決まったから、お兄ちゃんも本社に帰ってきていいんだよ』
莉耶の言葉に鈴哉さんは涙を浮かべありがとうと告げていると、昏有兄さんと地神千歳が入って来て一度通話を終了させる。
「昏有」
「昏無、無事でよかった」
久しぶりの再会らしく昏有兄さんと昏有姉さんがハグし合い、いいっすねあの二人とにやつく地神千歳。
「昏無、息子の方は大丈夫なのか?この前会った時、息子ができたからこっちには戻れないと言っていただろ?」
「え?昏有と会ったのは五歳の時」
「ではあれは一体……」
「兄さん、その話っていつ頃ですか?」
「三年前ぐらいのことだ」
「それなら美汐が姉さんに化けてそう言ったのかもしれない。僕もまんまと姉さんに化けている美汐に気づかなかったから」
それを報告すると石のように固まってしまい、地神千歳が兄さんの体を突くと倒れてしまった。そんなにショックだったのかと、兄さんしっかりしてと体を揺さぶると急に立ち上がる。
「俺がそんな罠に引っかかるわけない。違う人だったようだ」
いやいや清々しい顔をしていても、心のダメージが大きいようだ。
「あーそうそう、昏有さん。ついでにこれ回収して来たっす」
すっと昏有兄さんに渡して来たのは大きな袋で中身を見せてもらったらなんとスコヤディがたくさん入っていたのだ。触夜はそれに触れたら大変なことが起きていたから、ディアヴォロスにとってはダメージを与える石なのに保管されていたのはどういうことだったんだろう。
「スコヤディか。これは影神に渡しといてくれ。俺たちが持っていると知れたら襲撃が起きそうだからな」
「了解っす」
地神千歳はスコヤディを持って応接室を後にされ、昏有兄さんがソファーに座って僕らも座り直した。
「昏斗はいいとして二人は今後どうする気だ?」
「私はお世話になってたプラネットコード社に戻る。鈴哉もそうするでしょ?ほら、ひたるちゃんのことも心配だろうし」
「あぁ。僕もプラネットコード社に戻って桃花ちゃんに報告するつもりだ。だけど流彗様はどうする?」
「実は流彗……、夫の子じゃないことが明らかになったのよ」
姉さんの言葉に驚いてしまって姉さんの身に何が起きたんだと姉さんの言葉を待つ。そしたら姉さんは頬を染めて鈴哉さんの手をとって告白した。
「DNA鑑定したところ、喰雅様の子ではなく鈴哉の子供だったの。でもこのことは誰にも伝えてない。言ってしまえば今頃私も流彗も殺されてた。だからまずは流彗の誕生日に流彗を取り返す」
「流彗様が僕の子供!?信じられない……」
「私も最初はびっくりした。鑑定士さんに誤魔化してもらってるからいいけどいつばれるかわからない。その鑑定士さんやご家族が危険になるかもしれないから早く動きたいの」
予想外なことが起き、まさか流彗くんが鈴哉さんの子供だとは思わなかった。流彗くんは姉さん似だから誤魔化せてはいるけどいつ星河会長が気づくか想像がつかない。流彗くんを愛している星河会長が自分の子供ではないと知った時、想像したくない絵が生まれそうだ。
姉さんを奪ったことで星河会長がどう動くか確かめておかないとな。
「流彗くんには伝えてあるの?」
「伝えてない」
「学校はどこにある?」
「北西にある街に学園があるけど、警備が厳重。入ったとしても出られる可能性は低い」
流彗くんは学校がありながらも、星河会長と一緒に旅をしている。救えるチャンスは他のプラネットで再会した時の方が有利かな。
「なら昏無の子供である流彗はこちらで救出しても構わない。そこは昏無と鈴哉が決めろ」
兄さんは子供好きだから甥っ子である流彗くんを助けてくれるのは当たり前か。姉さんと鈴哉さんはどうするんだろうと回答を待っていると白い犬が入ってきた。
水星ヘルスミエで見た犬だと白い犬は昏有兄さんが座っている横に伏せをしている。確か名前はベナ。
「流彗は私たちで助ける」
「まだ信じられないけど、僕たちの子供だ。僕たちでなんとかする」
「そうか。何かあったらネオリオ社に来るといい。俺は別件で動けないが他の者が助けるよう手配はしておこう。昏斗も何かあったらネオリオ社に来るなり、手紙を送るなりで回答はできる」
昏有兄さんからそんなお言葉を受けるだなんて意外すぎて後が怖いような気もするも有り難くその言葉を受け止める二人で僕も感謝を伝えた。
今日は泊まっていいと許可が出て一室を貸してもらい、姉さんと鈴哉さんは一緒の部屋。落ち着いたことで再度莉耶
に報告しようとスマートウォッチの画面を開く。
そしたらメールのアプリで一件入っており、誰だろうとメールのアプリをタップしたら桜庭課長からだった。
昏斗、莉耶から大体は聞いているけど、僕に報告せずに勝手な行動をとるときはちゃんと僕に報告すること。守らなければお仕置きが待っているからね。
先ほどネオリオ社会長である昏斗のお兄さんから報告を受けたよ。一晩休んだらすぐ帰社するように。以上。
兄さん、そこまでしてくれたんだと笑みが溢れつつ、わかりました。ご迷惑おかけしてすみませんと謝罪文を入れて返送する。姉さんも救出できたことだし、後は僕が抱えている六つのことについて突き止めなければならない。
最初に突き止められそうなのは二つ目の星河喰雅の本来の目的だ。姉さんは星河会長の奥さんでもあったから何か情報を持っているかも知れない。
明日姉さんに聞いてみるとして、流彗くんの誕生日パーティーはやっぱり欠席扱いにされるのかな。もしパーティーに呼ばれるのなら、そこで流彗くんを奪い返すことも可能だ。
するとスマートウォッチが鳴り出して誰かと思えば星音からで応答する。
「どうかした?」
『昏斗、ありがとう」
「ん?」
『お母様を救ってくれたことだよ』
すでに耳に入っていたのかと代表として僕が謝った。
「ごめん、星音」
『いいよ。私ね、お母様に一度だけ逃げなさいって言われた時よくわからなかった。だけど今考えれば私は誘拐された子だったから私を逃がそうとしてたんだって。お母様は無事?』
「平気。今は隣の部屋で休んでるよ。それで流彗くんのことなんだけど」
打ち明けると間が空いてしまい流彗くんの耳にも入っているのかと星音の言葉を待つとこんな回答がきた。
『流彗、前々から気づいてたらしいの。本当の父親は別にいるんじゃないかって私に何度か相談を持ちかけてきてね。まあさすがに驚いたよ。お母様から少し聞いてたのをもしかしたら聞いてたんじゃないかって。それでも流彗は、育ててくれた父親を憎んだりはしないと思う。お母様に何をしていたとしてもね。だから心配しなくても大丈夫じゃないかな?私もちょくちょく流彗見てるし、それに流彗のお友達である八雲くんがついてるから安心して』
星音がそう言うなら心配はいらないだろうけど、星河会長が何をしでかすかわからない。
「星音、それでも気をつけて。なるべく早く助けに行けるよう努力はする。それに僕の弟妹も残ったままだから一度社に戻って作戦を練るつもり。それまでは流彗くんのそばにいてあげて」
『わかった。仕事のスケージュールも久々に空いているから流彗が通ってる学校に行ってみるね。それじゃあ』
「気をつけてね、それじゃあまた」
電話を終え明日帰るから、体を休めようとベッドに寝っ転がりそのまま深い眠りへとついた。
⁑
家に帰り私の部屋へと入って疲れた体を休めるため、ソファーに深く座った。
怒られることはなかったけど、今までより凄く怒っていた理由はお姉ちゃんを逃したからじゃない。他に触夜を怒らせると言ったらなんだろう。
思い当たるのはスコヤディが全てなくなっていたことが原因なのかな。だけどあれは蝕夜やディアヴォロスにとって害の石だから奪われたとしてもよかったんじゃないかなって気がする。
お風呂入って寝ようと起き上がったら扉が開き、侍女さんがぞろぞろと私の部屋に入って来て最後に触夜が入って来た。
「触夜……」
「罰は何がいいか、僕なりに考えてみた。普段のやり方の罰は昏花が昏花でなくなる可能性があるから罰としてこれを着てほしい」
一人の侍女さんが大きな箱を見せてもらって中身がなんとメイド服だった。罰って結構重めの罰かと思ったけどこんなんでいいのと触夜の顔をみると一度は見たかった顔をしていた。
恥ずかしいけど罰ゲームって考えておけばいいかと大きな箱をもらって侍女さんに囲まれながら着替える。髪の毛もセットしてくれて、出来上がった姿を店に行くとすでに鼻血を垂らしている触夜がいた。
私はついメイド気分で触夜の手を握り、昏斗にしか見せていなかった笑顔を出す。
「お帰りなさいませ、ご主人様。今日は何をご希望ですか?」
聞いてみたけれど、触夜はハートを撃ち抜かれたように倒れてしまってこれは大変だと思っていたらプルトナスが現れた。私の姿を見て少々頬を染めながら蝕夜を運び、蝕夜の部屋へと連れていく行く。
私もプルトナスについて行き、今まで入らせてくれなかった触夜の部屋へと入ってしまった。普通の部屋なのにどうして入らせてはくれなかったんだろうと周囲を見てたらある一枚の写真たてを見つける。
綺麗な人と見ていたらベッドに運んだプルトナスが教えてくれた。
「触夜様のお母様だそうです。触夜様が幼い頃に事故で亡くなったとお聞きしました」
「事故?」
「はい。触夜様はそう仰っておりましたが、事故ではなく殺されたんじゃないかと」
「もしかしてセリニ・ネアが関係していたってことなの?」
「そこまでは調べられませんでしたが、おそらくセリニ・ネアの誰かによって殺害されたと考えています」
ここまでもがセリニ・ネアが関わっているとは思ってもみなかったけど、セリニ・ネアが動き出しているのは昏斗が動き出した時期。昏の星は水星ヘルスミエのように平和をもたらす力がある。
けれど昏の星の願いによって悪用される場合もあるから本当はプラネットコード社ではなく、ネオリオ社に残っててもらいたかった。そう前世の私が言っているような気がするな。
触夜が気絶しちゃったことで、何もすることがなくても私はベッドのそばにあった椅子に座ってそのまま眠りについた。




