28僕は上、私は下
三日後、僕はひっそりとプラネットコード社を出て角杭さんのご自宅へと行き解体されたディアヴォロスと一緒に郵送する形になった。それにしても動物よりディアヴォロスの肉って匂いとかがないのが不思議だ。
誰にも報告せず出て来ちゃったけど、やっぱり莉耶には言っておくべきだったかな。
馬車に揺れていると顔を出してご覧と角杭さんに言われて顔を出してみる。その光景は愕然としてしまうほど、ひどい状況になっていた。地球オルモフィーケは数千年前に戦争が終わり平和な世界だったと父さんが教えてくれた。
美しい建物が破壊され更地のように建物が全て崩壊されており、クレヴィー社にいるディアヴォロスやエクリプス人がネオリオ社と戦っている。
「危なくないんですか?」
「平気だ。私は街に行くがどうする?」
「クレヴィー社に行ってみようと思います」
「ならここから東の方に進めばクレヴィー社がある。気をつけて」
はいっと返事をしながら馬車から降りて、東の方角へ進みながら戦場の中を走った。姉さん、もしくは三男である昏来と三女である昏未を救出するつもりなのかな。進むにしてもどちらに加担しようとも無駄だ。とにかく星河会長に状況を説明してもらわなくちゃならない。
そう思った僕は瓦礫に隠れてバラを一本取り出し、バラの花びらに三滴垂らして弓へと変換する。僕は瓦礫に弓矢を当てるとエンヴィリオが出来上がり、エンヴィリオの肩に乗っかってクレヴィー社へと向かった。
クレヴィー社に向かって行くと違うエンヴィリオがこちらに向かってきて、エンヴィリオがやられると確信しエンヴィリオから離れる。エンヴィリオは真神家に仕えていたゴーレム。昏希じゃなさそうだし、もしかして昏花かとエンヴィリオ同士が戦っている場を見ていると誰かが歩いてきた。
誰だろうとつい見ていると僕より年上姿の僕が歩いて来て、その人はよく来たねという表情を出しながらエンヴィリオを止める。僕のエンヴィリオが僕のところに戻り、もう一体の方はその人のところへと戻った。
「昏希からの報告を受けて待ちくたびれたよ、昏斗。金星アプロディロでは世話になった」
「昏有兄さん?」
「あぁもちろん。俺が真神家長男、昏有だ。触夜に先手を撃たれた時は本当に嫉妬した部分もある」
僕の頭を撫でて来て次第にはハグしてくるからなんなのこの人と思わず突き飛ばしてしまう。
「そう照れるなよ。兄ちゃん、寂しがり屋なのわかってるくせに。あーそうだった。今戦場だったんだわ」
頭を掻きながら昏有兄さんが言い、ごく普通だなと感じるも、ディアヴォロスがこっちに来た瞬間。瞬きもできずに一瞬でディアヴォロスを倒す。
「ちっ。兄弟の再会邪魔しないでくんないか。このくそ悪魔ども」
ディアヴォロスから剣を抜いて、昏有兄さんを怒らせると後々面倒なことが起きうるかもと感じてしまった。
「さっさと終わらせて昏斗とのんびり話そうか。あっネオリオ社には連行しないから安心しろ。あそこは退屈すぎて他の連中に任せてあるからさ」
他の連中と浮かび上がってくるのは、水神潤や金神蓮たちのことだろうかと、昏有兄さんは誰かと会話をしている間にエンヴィリオを解除する。
こんな形で昏有兄さんと会えるのは喜ばしいけれど、こんな性格だったかなと前世の記憶を辿ってみるも全然性格が違うような気がした。
この付近に誰もいなくなったことで、昏有兄さんの愛車に乗り戦場から離れた街へと移動する。どこもかしこも崩れ切っていて、地球オルモフィーケに一体何が起きたのか全然掴めない。
「びっくりだろ。昔はこんなもんじゃなかった」
「そうなの?」
「まあな。ただきっかけはお袋を取り返した辺りから、この辺は危険区域として人が住まなくなった。あん時はまじで俺死にかけてたの覚えてる。そん時、親父も一緒にお袋救出作戦に参加してくれてたな」
父さんはたまに数日帰って来ないことがあったのは昏有兄さんと協力していたってことでいいのか。
「何か気づき始めたか?」
「数日帰って来なかったのは兄さんに会いに行ってたんだね」
「いや違う」
えっという顔をつい出してしまい、そう落ち込むなと言いながら街へと入って昏有兄さん行きつけの店に連れてってもらった。すごい賑やかなお店だなと個室のところでくつろぎ、何か飲むかと言われたからアイスティーを頼んだ。
「どこまで話したっけ?」
「父さんが昏有兄さんのところに行ったんじゃなかったってところだよ」
そうそうと昏有兄さんはお冷を飲みながら、話の続きを教えてくれる。
「親父は昏来と昏未が産まれる直前に、お袋が奪われた頃から、親父はクレヴィー社に一人で潜入し様子がおかしくなった」
「おかしくなった?僕と一緒にいた時は不審な動きとかはなかった」
「子供には見せていない裏の顔がある。いずれ親父とも接触するだろうし、それ以上のことは教えない」
父さんの裏の顔って言ったらどんな顔なんだろうと想像しても、父さんはいろんなことを教えてくれた良い父親しか浮かばない。
注文した飲み物が到着しそれを飲みながら、昏有兄さんに聞きたいことを打ち明ける。
「今やっている戦場は何を意味するの?」
「お袋だよ。お袋は俺が占拠した場所にいる。後は昏来と昏未を取り返そうとしてるが、あの二人は俺と昏希に敵視しているからな。お袋と昏希を取り返しに行った時、昏来と昏未はまだ一歳だった。二人も一緒に連れて行くのは不可能だっだから、俺は昏来と昏未に嫌われてるわけ」
そういう理屈で未だに戦争が続いているってことなのか。 地球オルモフィーケを管理しているのは星河会長らしいから話し合えばどうにかな理想だけど姉さんを奪ったやつだ。
「姉さんは救出しないの?」
「一度、昏無に会ってる。子供ができたからそっちには戻れないから後のことは頼むって言われた」
姉さんがそんなこと言うだなんて思わなかった。だけど一番最初に会食をした違和感は、やっぱり姉さんではなかったと言うことなのかもしれない。そこは一度確認してみないとわからないところだ。
後、昏有兄さんに聞いておくとしたら、これのことだろう。
「セリニ・ネアが本格に動き出したと言うことは間違いはないと思う?」
「いや、セリニ・ネアが本格的に動くとしたら昏斗がこちら側についた時と認識している。だから今はそんなに気にせず、他のことに集中しろとあの子に伝えといてくれ」
「あの子ってどの子?」
「決まっているだろ?澪乃桃花ちゃんだ。ご両親を亡くされて間もない時期にそばにいてあげたし、地下の奪還も俺が協力してやったんだ。会長室にあるぬいぐるみも俺が買ってあげたんだよ」
へ?嘘でしょと叫びだくなるような表情を出していると、昏有兄さんがにっと笑った。やっぱり昏有兄さんには一生敵わない気がする。
ちなみにこれも聞いておこうと、興奮気味を落ち着かせ問いかけた。
「昏花のことなんだけど……」
すると昏有兄さんは無表情になってしまい、やっぱり聞くのはやめといたほうが良かったと身構えていたら、机をドンッと叩き昏花愛を僕にぶつけてくる。
「あの野郎、俺は絶対に許さねえ!見ているだけで癒される昏花をのうのうと奪いやがり、しかも昏斗を奪おうとしてるじゃねえか!それにだ!昏斗!」
「はい!」
思わず返事してしまったが僕に指を指し外せと言われる。
「そのペンダントを壊せ!発信機とそれは触夜の目にもなんだよ!今すぐ外せ!」
「え?だけどこれはリコーフォースの花が見えるからもっといたほうがいいって兄君に言われた」
「兄君だぁ!?昏斗の兄は俺だろうが!」
顔近いし顔が怖いですと言いたいくても怒らせたのは事実だ。なんとか落ち着かせる方法はないのかと昏有兄さんの顔を見ていると、何してるの、兄上と救世主が現れる。
「会社にいないからここだろうってこちらに参ったが、昏斗兄上来ていたのですか」
「久しぶりでもないね。昏希、兄ちゃんはどうすればいい?」
「昏有兄上、何を言ってもそれは手放さないと思います。今現在、リコーフォスが咲いていない。あの力を解放した時にリコーフォスがなければ確実に死ぬ。これから先、昏斗兄上は何かあった時に、力を解放するなら持たせておいたほうがいいのではありませんか?」
昏有兄さんの顔が遠ざかり席に座り直しても、まだ怒っている。昏希は僕の隣に座って小声で兄さんの機嫌を教えてくれた。
「怒ってるけど、昏斗兄上にもしものことがあったら困るから心配してる。昏花姉上だって本当は救いに行こうと動いた。だけど蓮の弟くんに邪魔されて助けに行けなかったことが悔しいみたい」
「え?じゃあ金神蓮を恨んでるんじゃ」
「対面させた時は本当にやばかったけど、蓮の弟が亡くなっていることは本当のこと。だから弟をエクリプス人とさせたのは蓮自身だから、弟は蓮に任せたいらしい」
金神蓮を金星アプロディロを任せる理由はそういう意味を持っていたのか。僕は一度しか会っていないけれどプルトナスはどういう思いを持っているのか少し気になるな。
「あ!昏有兄上、そろそろ、戻ってください。アステル幹部が全員揃ってる」
「意外と早かったな。潤は平気なのか?」
「はい。雫さんに結構怒られてたけど、法事がひと段落したそうでこちらに戻ってる」
「まだ昏斗と話していたいが戻るか。昏斗、会えてよかった。何かあったら影神に言ってくれ」
わかったと告げると昏希と一緒に行ってしまわれ、残された僕もお会計を済ませて帰ろうとしたら会計は済ましてくれていた。今度昏有兄上にあったらお礼言おう。
地上と地下に通じる下水道は封鎖されているし、角杭さんも戻っている頃だろう。
さてどうやって帰ろうかとお店を出て街をぶらぶらしているとあそこで人が集まっている。なんだろうと近くへ行ってみると、大きい画面が設置されておりそこに映っていたのは星音だった。新曲を歌っていて、星音からメール来てたっけ。
新曲出るから本社に数日後、届くと思うと書いてあった。
星音が鍵であるのは間違いはないけれど、星河会長がなぜ星音を誘拐したのか影神に調査してもらっている。それまでは各プラネットを奪還して新星ノヴァセリニに潜入できたらいい。
大きな画面から離れて市場の方に進み、なぜここだけは戦場とならなかったのかが不思議だ。戦場の場所にポツンとある街に何かがあるとしたらなんだろう。
考えながら歩いていたらツンツンと背中を突かれ後ろを振り向くも誰もいない。なんだと再び歩くとまたまた突かれなんだと無限拳銃を構えた。そこにいたのはからす座に生まれたと言われる烏人間で黒いローブを纏い口が烏のくちばしのまま。
これはちょっと初対面なら誰もが叫びそうでも動物が人間の姿になるのは菊太でわかった。それに思いだしたことがあって、父さんが星座から生まれてくる人種がいるからいずれ会えるだろうと。
「僕を突いて何か用?」
「昏の星、話がある。ここでは話せない。移動、する」
なんだろう、この感覚と警戒を抱いていると烏人間の体から黒い羽が多く現れて僕を囲み始める。まずいと引き金を引こうとしたらさっき突かれたところから激痛が走り無限拳銃を落とす。
僕の体に何をしたんだよと烏人間を睨むも、烏人間は表情を変えず次第には烏人間が見えなくなった。
⁑
こっそり地下へと通じるエレベーターに乗ってしまい、触夜怒っちゃうよねと思いながら神市役所の中へと入った。街に神市役所を見つけて触夜に適当な言い訳をし、入ってしまったのもある。昏斗に会うつもりはないけど、地下が今どうなっているのかを確認しておきたかった。
神市役所を出てみるとここも普通に生活をしている人たちが多い。何も知られぬまま神パーティーを楽しみにしている人たちがいるんだろうな。
歩いて行くとなぜか壁が見え不思議に思い近づいてみると、これはと私は衝撃を受ける。壁に真神家の家紋があちこちにありこれをできるのはたった一人。昏有お兄ちゃんだけだと前世の私が言っているような気がする。その壁を見ていると一人のお婆さんが私に教えてくれた。
「その向こうの先には悪魔がいるから封鎖をしたんじゃそうじゃ」
「悪魔って言ったのは誰ですか?」
「市役所の人間たちじゃよ。早く神パーティーへと行けたらいいのじゃが、わしゃは受け付けてくれないんじゃそうだ。久々に日光を浴びたいものだねえ」
「え?まさか」
ほっこりした笑みを浮かべるお婆さんは気をつけるんじゃよと言いながら去って行き、まだこのことを知っている人間がいただなんて思わなかった。




