20.5甘は覚、星は諦
すーさんに何も言わずあたしは指定された場所へ行ってみたら、ネオリオ社アステル幹部である水神潤がいた。帰りたくもないあの場所に帰るのは辛い。
だけどもうこれ以上すーさんや莉耶たちに迷惑はかけたくないしちゃんと向き合うためにきた。ここまで育ててくれたすーさんには感謝してるし、昏斗のお兄ちゃんと直接会えるかもしれない。
「甘ちゃん、来たね。お父さんのところへ行こうか」
宝石車へと乗り込みお父さんがいる本家へと向かった。お父さんと会ったら里親のお父さんに引き取られるのかな。そんなこと考えていたら、すっと某キャンディーをくれる水神のお兄ちゃん。
「緊張しなくても昔のお父さんじゃないから心配はいらない」
信じてもいいのかなと某キャンディーを舐めながら外の景色を見ていくと景色がぼやけていく。目を擦ってもぼやけてしまいまさかと倒れそうなところ、水神のお兄ちゃんがあたしの体をキャッチした。
「おやすみ、甘ちゃん」
「水神の……お兄……ちゃん」
駄目だ。眠気さのあまり水神のお兄ちゃんが笑っている姿を見て、深い眠りへと落ちていく。
あたしは言葉が話せる年頃の頃からお父さんがあたしにやっている行為が許せなかった。里親に引き取られても毎日お父さんは会いに来て、異常なくらいあたしの肌に触れるお父さんが大っ嫌い。でも里親のお父さんだけは違った。あたしに触れずただ今やっている研究を見せてくれて、いろんなことを教えてくれた日々はかけがえのない幸せな記憶。
それをぶち壊したのは実のお父さんだった。里親のお母さんをディアヴォロスに手渡してほしくなければ今すぐ娘を返せと。その時、里親のお父さんは逃げろと言ってくれて、あたしは言われるがままに逃げ、追われる身となったけれど、そこにすーさんが現れた。
そこからはすーさんに全てを打ち明けてすーさんと共に過ごすことになり、最年少でプラネットコード社へと入社。
処分されそうというのはお父さんに捕まったらあたしではいられなくなるとわかっていたから。それなのに相談もせずあたしはまんまと罠にかかってしまった。
懐かしいお父さんの声に目を開けるとお父さんがあたしの両頬を触っている。また鳥籠の中だと理解しながら鳥籠の外には水神潤がくすくすと笑っていた。
「可愛い、可愛い愛蘭。やはり手放さなければよかった。愛蘭はこのまま一生、離すつもりはない」
あたしを見てメロメロになっているお父さんでも、昔のあたしだったら弱いままお父さんの命令に従ってた。だけどすーさんの出逢いによってあたしは変わったことを証明する。
「口臭い。離れてくれない変態親父」
実の父親に言ってみると顔が近かったお父さんは離れてくれるも、あたしの手を離そうとしない。お父さんの手汗凄いんだけどと睨んでいたらこんなことを言い出した。
「里親の父親がエクリプス人となって、金星アプロディロのクレヴィー社で働いて愛蘭を探していると聞いた。だから先に奪ってやった。それにお前には逃げられない運命にさせる」
「あたしの人生はあたしが決める!こんな場所も必ず逃げるんだから」
「そうはさせない。入って来てくれ、昏希くん」
部屋から現れたのは昏斗にそっくりの少年であたしとほぼ変わらない年齢差。昏斗の兄弟に他がいたということなの。
「余は真神昏希。真神家の四男である。お主は余の嫁であると昏有兄上から聞いたのだ。しかしお主は父上が嫌いだと聞いている。まずは父上と仲良くできるまでそこにいるがよい。仲良くできたと判断できた時に一緒に歩もうぞ」
何、殿様気分でいるのと少し腹が立ってしまうも、そもそもあたしは愛蘭というお父さんがつけた名前は捨てたもん。すーさんがつけてくれた瓜畑甘露という名が本名だけど、窮地を乗り越えるためにも従うしかない。
そう思ってあたしは偽の笑顔を作りながら、こう答えた。
「わかったよ。お父さん、さっきは無礼なこと言ってしまってごめんなさい。本当はお父さんと離れたくなかったのにお父さんがあたしを売ったから嫉妬しちゃったの」
うるうる目をしながらお父さんに抱きつくと、鼻血を出し倒れてしまうお父さん。
すーさん。必ず、すーさんのところに帰るからそれまで他の件をお願いしますと、しゃがんで倒れてしまったお父さんを突くも反応がなく水神のお兄ちゃんが運んでくれたのだった。
⁑
私、何してるんだろうと思いながらクレヴィー社へと向かっていた。本当は告白したつもりでも昏斗、天然な部分があるから受け止めて違うことを言っちゃったな。あの場で恋人同士として付き合ってほしいって言えばよかったのかもしれない。
だけどエクリプス人の取材担当者に載せてもらった内容はばっちりだったから、ファンのみんなも私の恋を応援してくれるから諦めたりはしない。
私にも前世の記憶というものがありいつも前世の私は前世の昏斗に恋をしていた。そういう宿命なのかなと思いながらも昏斗を誰にも手放したくはない。
遊園地、どんな服装にしようかなと後で行きつけのお店で洋服買おうと景色を眺めているとピコンとスマートウォッチが鳴った。マネージャーかなと確認してみるとお父様からで、アプロディティスの店に来てくれという文面。
なんだろうと運転手さんに伝えてアプロディティスのお店へと向かう。
到着しお店の中へ入ってみるといつも賑やかなお店だなと店員に父はと聞いたらこちらですと案内してくれた。個室の一室に案内してもらい、入ってみたら珍しい組み合わせと緊張する。
お父様と会食されていたのはディアヴォロスの帝王である蝕夜様で匂いがとてもいい香りに思わずよだれが出そうな勢いだった。
「蝕夜様、こんにちは」
「こんにちは、星音。忙しいのに呼び出してすまない」
「いえ。何かありましたか?」
「ここ最近と言ってはなんだが、ネオリオ社が活発に動き出してな。星音にも危険が起きるだろうと思って蝕夜と話していた。そこで考えたのは昏斗捜索隊に星音を守ってもらおうということになってな。そろそろ、昏花が暴走するかもしれないから一度会わせる。昏斗も会いたがっているし、蝕夜の片想いを応援するためでもあるんだ」
お父様の説明に私はえっと口元を両手で隠すと蝕夜様が恥ずかしそうに笑って、昏花が好きなんだと言ったのだ。これはディアヴォロスにとってビックニュースだよ。ディアヴォロスはネオリオ人を食せず、ネオリオ人である昏花に恋をする。
邪魔者はいなくなってラッキーだし、昏花と仲良くなれば昏斗の好きなものとか色々聞けそうかもしれない。
「蝕夜様はそれでよろしいんですか?私はただ生かされている身なので、拒否はできないですし、会わせないように邪魔を入れたりしてました」
「うむ、よい。僕は義弟昏斗を認める。ただ何かとてつもないことが起きようとしている。だから昏花と協力してもらいたいんだ」
「えっとそれはどういう?」
「アプロディティスが暴走するかもしれないということだ。アプロディティスは実の父親である金神銀次を殺害するだろう。今、プラネットコード社が動いているのは金神のご令嬢である愛蘭こと瓜畑甘露を奪われたことで神パーティーを初めて拒否したらしい」
金神銀次って確か金星アプロディロを管理されているネオリオ社の指揮官。つまりアプロディティスは元ネオリオ人だったってことなの。今までネオリオ人をエクリプス人にさせるのは不可能とされていた。だけどお母様がエクリプス人になれたことで次々とネオリオ人がエクリプス人になったのは事実。
私はそれでもまだネオリオ人としてやっていけているのか不明でも、昏斗の仲間を助けてあげたいな。さっき聞けばよかったとちょっぴり後悔するも、何か協力できないか後で聞いてみよう。
「わかりました。私の護衛をお願い致します」
「では昏花たちに話しておくとしよう。では」
すっといなくなってしまった蝕夜様で、私はお父様と一緒にクレヴィー社へと向かったんだ。
次回は三月中旬ごろになります。変更になるかもしれません。




