21僕は面、私は喜
カジノ街は朝から晩まで賑やかで、たまにディアヴォロスに目をつけられたと思えば、サインくださいと色紙とペンをもらうことが多くなった。なぜかというと莉耶が毎月買っているファッション雑誌で僕と星音の情報が載っていたからだ。
ネオリオ人同士お似合いカップルという記事で僕と星音はそんなんじゃないと書いた記者に言いたいぐらい。
僕はすでに交際している女性がいるというのにと、隣で歩いている莉耶は目を光らせながら僕と手を繋いで歩いている。これまた記事になりそうな感じでも別にいいか。
僕と莉耶は水星ヘルスミエの一件が落ち着き、成り行きって言ったら変に思われるが大切な人を奪われ、大切な人が敵側にいることを知った仲で付き合おうとなった。
この前、星音とチェッカーで負けお願い事はなんだろうかと思ったら、付き合ってほしいと言われた時はわかってたこと。僕に好意があるのは前からわかってたし、前世の僕も星音のような人と出会っていた。
つまり、星音も前世の記憶があるからこそ僕に好意があるということだ。僕の他にもいい人はたくさんいるのになと歩いていたら、ピコンとスマートウォッチが鳴り確認する。
「影神からだ。明日の昼にお邪魔しても大丈夫らしい」
「なら手土産とか買ってたほうがいいかもね。何がいいんだろう」
「大丈夫。その辺は影神が用意してくれる。僕らは引き続き、甘ちゃん探し。菊太匂いで辿れそう?」
「いや、全く甘露の匂いがねえ。カジノ街の南東部に来てるけど、匂いで辿れるようなもんじゃねえ。なんか腐ったような匂いがする。臭え」
そんなに臭いものなのかなと空気を嗅いでみるもなんも匂いはなく、僕らは平気でもここだけはディアヴォロスが嫌う匂いを放っているとかなら納得がいく。
それに動物が全くいないのはきっと動物も嫌う匂いなんだろう。菊太が嫌がるなら一先ずここから退散して、違うところを探すか。
南東部から離れて南部へ行くと菊太がマジでやばかったと新鮮な空気を吸った。
「そんなにやばかったの?」
「あれは狂わされる匂い。だけど匂いが強くなっていたのは本家に近づいていたってことになるかもしれねえ」
「地図にメモっておけばよかったな」
「まあ明日僕が試しに行ってくるから、それ以外の件をお願い。ディアヴォロス調査もあるからね」
街外れには鉱山がたくさんあり、そこには鉱山そのもののディアヴォロスに宝石に化けているディアヴォロスが多く住み着いている。
悪さをしないように調査に当たるのも必要だけど、澪乃会長から直々に、甘ちゃんの捜索を最優先にしていいと言われた。早く甘ちゃんを取り戻して神パーティーに出席しなくちゃ。
莉耶と談笑しながら歩いていたら誰かとぶつかってしまい、僕とぶつかってしまった人が尻餅をついていた。女性の方ですみませんと手を貸し立たせる。
「堪忍しとくれやすなぁ。ほな、ごめんやす」
僕にお辞儀をして去っていく女性で、どこかで見たようなそんな気がするも僕らは一旦プラネットコード社へと帰還した。
桜庭課長はまた何かしでかすと思い、海さんが一緒に行動してくれているから問題はないだろうけど少々心配。まだ二人は戻ってきていないし報告ができない。
そしたら内線が鳴り出てみると荷物が届いているっぽく、一階へと降りた。何が届いたんだろうと行ってみると大きな荷物。その場では開けられなさそうだと受け取り自分の部屋で確認した。
さすがは影神だ。ディアヴォロスの肉がどっさり入っており、これなら喜んでもらえそうだ。しかも明日のために服まで用意してくれるとは有難い。明日行ってどういう結果になろうとも状況を確認してから動こう。
翌日、結局昨日は桜庭課長と海さんは戻って来ておらず、報告ができぬままタクシーの宝石車に乗って金神本家へと連れてってもらう。どんな場所なんだろうとネオリオ街からカジノ街に着くまで約一時間。そこからどういうルートで本家に辿り着けるのか。
カジノ街へと入りそろそろかと景色を見ていたら赤信号で運転手にあるものを受け取る。
「ここからは誰にも見せてはいけない場所に行きます。それをつけていただけますでしょうか?」
「はい」
ここからはNGかと目隠しをつけて移動し進んでもらって数分後。車が停止しとってくださいと言われたから外すと玄関前だった。
代金を支払い後ろに乗っけていた荷物を持って玄関の前に立ちインターホンを鳴らそうとしたら召使いが出てくる。お待ちしておりました、どうぞと中に入り何もかもが眩しいぐらい宝石があちこちとついていた。
召使いについていき一室にお邪魔して、少々お待ちくださいと扉が閉まる。肖像画を見つけ、これは甘ちゃんだろうけどこれを飾るとは反吐が出る。
甘ちゃんが嫌がっている様子を飾っているだなんて、その肖像画を壊したいものだよと怒りを押さえながら待っていると扉が開いた。
そこに金神銀次が現れしかも肩を抱いて連れてきたのが甘ちゃん。堪えろ僕と作り笑いをしながら金神銀次に名刺を渡す。
「初めまして、プラネットコード社の真神昏斗です」
「わざわざ昏斗くんから会いに来てくれるとは思わなかった。これは失礼。私はネオリオ社で金星アプロディロを管理している金神銀次だ。そしてこの子は愛娘の愛蘭だ」
助けてという瞳をしている甘ちゃんでも我慢しているし、僕たちが一緒に行動していたのは金神銀次もわかっている。だから何も触れずソファーに腰を下ろし、甘ちゃんは金神の膝に乗ると金神は容赦なく甘ちゃんに触れ始めた。桜庭課長がいたらやばかったかもしれないと手土産を渡す。
「心ばかりの物ですが受け取ってください」
「おぉ。これはディアヴォロスの肉ではないか。よくこの質を保ったのを手に入ったな。美味しく頂くとしよう。それで何を聞きにきた?」
「兄と会いたい。どこに行けば兄に会えますか?」
「昏有くんは金星アプロディロにいない。今は確か地球オルモフィーケである調査にあたっているそうだ」
地球オルモフィーケに兄と接触できる可能性が大きいってことか。ならまず金星アプロディロで起きていることについても聞いておこう。
「金神さんには愛蘭ちゃんの他に息子さんがいるとお聞きしました」
「息子たちは出来損ないだったから売っただけだ。役に立てないものは売ると決めていてな。一度は愛蘭も売ってしまい、失敗したと思った。だがこの通り、自分の足で戻ってきてくれたのだ。それに喜ばしきことを昏有くんが言ってな。一番下の弟と結ばせる代わりにアステル幹部の一員にしてくれると。私はそれに乗っかることにした。アステル幹部に入ればディアヴォロスともっと契約でき、好きな時にディアヴォロスの肉が食べれる」
一番下って僕と一瞬思ったが琥珀と真珠が教えてくれてたのが本当ならばすでに三人はどこかで生きているということ。信じたくはないけれど、一番下は昏希でネオリオ社にいるとしたら三男の昏来と三女の昏未もネオリオ社にいるかもしれない。
「そうだ。昏斗くんが来ると聞いたから、昏斗くんに会いたいと志願した子がいてな。会ってくれるか?」
「はい」
入ってきていいぞと金神銀次が言うと扉が開き、現れたのは水神潤とそして僕とそっくりな子が入ってきた。まさかここでご対面できるとは思いもしなかったことだ。
「やあやあ昏斗くーん。初めまして、某は昏花ちゃんに振られちゃった女好きの水神潤でーす。よろしくね」
めちゃくちゃ軽いな、水神潤。それに対して僕の弟である子は照れ屋なのか水神潤の後ろに隠れている。ほらほらと水神潤が弟の背中を押して僕の前に立ち恥ずかしながら自己紹介してくれた。
「昏斗兄上、余はその……昏希である。昏斗兄上の活躍はテレビで拝見しておった。それに母上から昏斗兄上と昏花姉上のこと教示いただいてたから、余はこうやって会えたこと嬉しい」
「ストップ。てことは母さんは生きてるってことでいいの?」
「母上は余がまだ母上の中にいたときに昏有兄上に救ってもらったと言っておった。だが昏来兄上と昏未姉上は救えなかったと昏有兄上が悔やんでおったぞ」
信じられない事実でも、母さんを救ってくれたことに感謝したい。僕の推測が正しければ昏来と昏未はクレヴィー社で働いている可能性が高いな。
それに父さんがエクリプス人になったのなら昏来と昏未もエクリプス人となっているかもしれない。そこは頼りがいのある兄君に聞くのがベスト。
僕は一番年下の昏希に会えて喜ばしいのは本心だから、昏希の頭を優しく撫でる。
「僕も昏希に会えて凄く嬉しいよ。本当は母さんや昏有兄さんにも会いたい。だけど僕はプラネットコード社で真実を突き止めなければならないことがあるからまだネオリオ社に転職はできない。でも僕らは兄弟だから困った時に連絡していいから」
「はい、昏斗兄上。じゃあ連絡先」
「ストープ。連絡先交換しちゃだーめって言われてるでしょ」
「でも潤、昏有兄上はいいって言ってくれる」
駄目なもんは駄目と手で罰点を作る水神潤で、なぜ連絡先を交換できないんだろうかと疑問に思ったがそうかと理解した。
「わかりました。連絡先は諦めます。手紙なら許してくれるんですよね?」
「さっすがは昏斗くん。話が早い。手紙送るときの宛先ね。ささ、昏希。これから調査に当たるから某たちはお暇しよう。じゃあ、また会おうね、昏斗」
まだ話したいと言いながらも昏希の背中を押しながら退散していく水神潤であった。あっ忘れてたと扉を開けて遠くにいた水神潤に大声で伝える。
「雫さんが水星ヘルスミエに戻って来てほしいって言ってましたよー!ちゃんと戻ってあげてくださーい!」
わかったと水神潤はそう言って昏希と行ってしまわれ、部屋に戻りソファーに座った。
「昏希の許嫁にした兄さんはどうかと思いましたけど、愛蘭ちゃんは昏希と会ってどう感じた?」
「あたしはまだ会ったばかりだからそんな感情は生まれないし、どんな人なのかも時間をかけてみないと好きか嫌いかわからない」
「そっか。金神さん、僕と愛蘭ちゃんがどういう関係なのかもうご存知ならば取引しませんか?」
「取引しても無意味だ。愛蘭は渡さん」
「そうですか。ディアヴォロスの高級品を毎週送らせていただく代わりに、月曜日から金曜日、朝九時から夕方五時までの出勤の許可を頂こうと思ったのですが、滅多に手に入れないディアヴォロスの肉をいらないというなら諦めるしかなさそうです。優秀な人材を失うのは辛いですが仕方ありません。ごめんね、愛蘭ちゃん」
立ち上がり退散しようとしたら待ってくれと言われ、餌に引っかかってどうもありがとうございますと笑顔で振り向く。
「どうかされましたか?」
「毎週ディアヴォロスの肉くれるんだよな?」
「はい。私が知れる限りの人はありとあらゆるディアヴォロスを調達できる達人です。どうです?」
「その取引のった。ちゃんと愛蘭を返してくれるんだよな?」
「えぇ。ちゃんと返しますし僕は昏有兄さんの弟です。信じてください」
少し兄の名を出してみるとわかったと言ってくれて、甘ちゃんも桜庭課長に会えることで笑顔になる。
「ただし妙な真似をしたら、愛蘭は返してもらう。それでいいな?」
「もちろんです。僕がいるからご安心ください」
「なら今日は金曜日か。連れてって構わん。車を出すから玄関の前で待っていなさい」
行こっかと甘ちゃんの手を握り外で待っていると車が到着して、それに乗ると助手席にまさか金神銀次が乗る。わざわざついて来なくてもいいんじゃないかと思うぐらいだった。
「一つ聞いてもいいか?」
「なんなりと」
「なぜ我々から姿を消したのか父親から聞いたことはあるか?」
「いえ。僕は生まれながらセウスジアで育ち、皆さんから姿を消したのかは教えてもらってないです。ただ存じているかわかりませんが、真神家は新星ノヴァセリニにあるセリニ・ネアの目的を知ったから皆さんの前から消したのではないでしょうか?」
「昏有くんもそのようなことは言っていたな。昏有くんだけ我々のもとにいてくれたが、父親と喧嘩して家出をしてすぐに真神家がいなくなってな。心底心を痛めている。喧嘩しなければ一緒に行けたかもしれないと」
兄さんがそんなことを口にしていただなんてどんな人なんだろうな。
到着し夕方五時になったら迎えに行くと言い出して僕は甘ちゃんの手を握りプラネットコード社の中へと入った。みんなびっくりするだろうなって七階へ行き、第七捜査課室へ入ると部屋が真っ暗で電気をつける。誰もいないのはどうしてだと莉耶に連絡しようと画面を開きやっていたら菊太がやって来た。
「菊太、桜庭課長やみんなはどこに?」
「すーさんは?」
「それがさ、ネオリオ社に乗り込んで探してくるとかでみんなが止めても昴のやつ言うこと聞かなくて」
「あたしのノート持ってちゃったの?」
「証拠として持っていくって言ってた。どうする?」
せっかく取り戻せたというのに桜庭課長何してくれてるんだよ。待ってるって言ったの桜庭課長じゃん。どうすればいいものかと考えたのはこの方法しか思いつかない。
「もしかしたらその騒ぎで一緒についてきたとしたら桜庭課長が危ない気がする。甘ちゃん、変態親父を止められる?」
「うん!すーさんを助ける!」
「よし、行こっか」
菊太は誰かしら戻ってきそうな時に甘ちゃんを取り戻せたことを伝えてもらい、僕のバイクでネオリオ社へと急ぐ。何も起きなければいいと願いながら、スピードを上げていった。
⁑
昏斗を捜しながら普段通りに街並みを歩いていたら、目の前に水神潤が再び現れた。しかもまた挟み撃ちされ茜さんと八雲くんが後ろの人に拳銃を向ける。
「ヤッホー。元気にしてたかな?」
「いきなりなんですか?私は今、昏斗探しで忙しいんです。そこどいてもらえますか?」
「そう怒んなくても良くない。スマイルスマイル」
私はこの人嫌いだと思わず拳銃を取り出して威嚇の発砲をし、水神潤の頬に擦り血が出てそれに触れる水神潤。
「めっちゃ怖いんすけど。某、何もしてないのに銃向けるだなんて、酷いと思わない?昏希」
昏希という名前に昏という言葉で私は後ろを振り向くとフードを下ろした人は、昏斗が少年の時期の姿にそっくりすぎてびっくりしてしまう。どういうことなのと混乱していると、水神潤の隣に来て私に銃を向けた。
「余の仲間に傷をつける昏花姉上は嫌いだ。昏斗兄上は初対面でも余や潤を受け入れてくれた。それなのに昏花姉上は以前も潤に牙を向けたのが許せない」
「まあまあ、昏希。しょうがないじゃん。だって昏花ちゃんは某たちを敵視させるよう仕向けたのはディアヴォロスの帝王である蝕夜。それにネオリオ人である某たちはディアヴォロスを食すのが当たり前でもあるし、昏花ちゃんが連れているのってエクリプス人だよね。食べちゃいたいぐらい。だけどごめんね。アステル幹部はディアヴォロスを食さないのが掟」
「そこ言わなくてもよい、潤。それに今足止めするよう言われておる。だから少し遊んでもらうよ、昏花姉上」
私の家族に弟がいただなんて信じられないけど、昏斗が受け入れたってことは真実ってことだよね。それでも敵同士で争わなくちゃならないだなんてどうかしてる。
発砲してしまったのは謝らなくちゃだけど、昏斗が凄く怒っている時の瞳にそっくり。完全に怒らせてしまったとどう動くのだろうと準備していたら私の名を呼ぶ星音ちゃんで、昏希という弟は舌打ちをし行ってしまい、待ったねと昏希の後を追う水神潤。
「やっと見つけたよ、昏花ちゃん。仕事が忙しくてなかなか会いに行けなくてごめんね。蝕夜様から大体は聞いてると思う。その前に水星ヘルスミエで酷いこと言っちゃってごめんね」
「迂生はまだ反対。また昏花姉貴を悲しませたら絶対に許さない」
まだ姉貴呼ばれは慣れないけど、私の前に八雲くんが立ち私より身長が低くとも守ろうとしてくれている。それを見た星音ちゃんは八雲くんの目線に合わせてしゃがみ八雲くんの好きなお菓子を渡した。
「もう昏花姉貴をいじめたりしないって約束する。それにね、八雲くん。蝕夜様が昏斗と昏花ちゃんを一度会わせてあげるって言ってくれたの。詳細はまだわからないけど、流彗と遊ぶ日になると思う」
「それ聞いてない」
「もしかしてサプライズにするつもりだったのかな。言っちゃったけど、そういうことだよ。それに今昏斗の仲間がネオリオ社に奪われちゃったらしくて、手助けしてあげてって言われてるの」
ネオリオ社と聞いてさっき昏希と水神潤が邪魔しようとしたのはそういうことだったんだ。それでも昏斗と会えることが嬉しくて、早く会いたいなと私たちは一度ネオリオ社へと向かった。




