19僕は金、私は誘
第七捜査課室で待っていた僕らは新しいデスクでカタカタと仕事をしていると桜庭課長と海さんが戻ってきた。しかしなぜか二人はパンツ一丁で負のオーラを出しながら戻ってきて、女子隊員はきゃーと物を投げながら逃げていく。
菊太は思いっきり海さんのお尻を噛んでもいつものパターンではなく、よろよろとソファーに座りズンッと落ち込んでいた。
二人はおそらくカジノで負けその格好になっていると言うわけか。カジノはいろんな種類があるけれど大体は運がなければやっていけないような気がする。
「桜庭課長、海さん、服着てもらってもいいっすか?」
「まさか久々に負けるとは思わなかったよ。しかも僕はもうやめようと言ったにも関わらず海が諦めないから服まで奪われるんだよ」
「昴だってはしゃいでたじゃねえかよ。今度は負けねえからな」
そうは言っても結構落ち込んでるじゃないですかと、とにかく服着てくださいと二人に服を渡し着替えてもらう。数分後、着替え終えた二人はすっかり元気を取り戻し普通に戻った。
あんなに落ち込んでたのに数分後、元気になるとは思わなかったが揃ったことで支部長に会いに行く。
一度モニターで会ったけれど桃花会長や甘ちゃんより年下に見えたような気がするな。どんな子だろうとワクワクしながら支部長のお部屋に到着すると泣き声が聞こえ何事だと開けてみた。
目が点になりそうだと驚きながら、泣いている原因が床に散らばっているガラスである。桜庭課長は即座にささっとガラスの破片を回収しゴミ袋にしまった。
海さんは支部長の頭をガシッと捕まえて、何してるんですかと止めたかったのだが莉耶が止めたのだ。
「おっさん、何回壊せば気が済むんだ?このドワーフの血を引く人間離れ。しかも泣く理由がどこにあんだよ」
「えへへ、海は相変わらず僕ちんには厳しいね。そろそろ降ろしてくれるかい?」
今でも海さんが怒りそうだとそわそわしながら支部長を降ろす海さん。会長は自分のデスクにある椅子に座り僕に名刺をくれた。名刺もここはピンピカなんすねと受け取り支部長が自己紹介をしてくれる。
「僕ちんは金星アプロディロを任せてもらっている宝郷芽樹、三十二歳。よろしくね」
三十二には見えないしお肌はプルップルで少年のようだ。声も少年の声だからてっきり僕の年下かと思ってしまった。それでも驚いたのがまだドワーフが実在していたことが驚きだよ。
「さて君たちに早速招待状と衣装が届いていたよ。但し今回ばかしはやめたほうがいい。相手はアプロディティスで、相手をするのが昏斗。駒側は昴たちと残りの駒になる一般人だ」
「水星ヘルスミエのように逃げるんじゃないんですか?」
「莉耶、まだ神パーティーの種類は教えてなかったの?」
ぎくっと反応した莉耶で誤魔化しているも忘れていたんだと僕らは察しし、代わりに甘ちゃんが僕に教えてくれた。
「えっとね神パーティーは隠れ鬼ごっこ形式とチェッカー形式、レース形式三種類があるんだよ」
「水星ヘルスミエは隠れてディアヴォロスから逃げるから隠れ鬼ごっこ。今回は駒ということはチェッカー形式ってことなんですね」
「そういうこと。隠れ鬼ごっこ形式よりチェッカーは他の命も背負うことになるから重要になるんだ。もし人間が勝てば全員解放されるけれど、負けてしまったら刈られる。だけど昏斗、君はそれでも参加したいかい?」
「はい。妹である昏花が参加するのであれば参加はしたい。それに出荷された一般人を守るのが僕らの役目でもある」
「そうか。参加するなら甘露も参加させなければならない。それでも行く気?」
僕が参加するには甘ちゃんが必要になるってどういう意味だろうと甘ちゃんの顔を見ると桜庭課長の裾を掴んでいた。桜庭課長はなら僕もと甘ちゃんの手を握る。
「課長である昴は駄目だ」
「まさか駒割りが決まっているんですか?」
「そう。元々は第七捜査課全員で挑んでも構わないと言っていたが、甘露の実の父親が反対されてね。もしアプロディティスに負けるならば、甘露は返してもらうと言っていた。本来、甘露の父親が返してほしいという要望があれば返さなければならない約束だったからね。父親の正体を知っているからこそ、今回は神パーティーの参加はやめてもらいたい」
甘ちゃんの実父が返してほしいと要望が出るなら返さなければならないだなんて。甘ちゃんは桜庭課長から離れずあのノートは実の父親がやった証拠品でもあるからなんだ。
駒に父親がいるとなれば参加はやめといたほうがいいかもしれないけど、そこに昏花がいるのなら会いたい気持ちはある。
「少し考えさせてもらえますか?」
「あまり時間はないよ。止める権利はないけど、甘露のためにも少しは考えて。それじゃあ僕ちんはこれから鉱山に行って宝石集めしてくるから後のことはよろしく」
リュックを背負って行ってしまわれ、宝石よりディアヴォロス優先なのではと思ってしまった。
第七捜査課室に戻り影神に甘ちゃんの父親情報をもらえたらいいけど、影神もなんだかんだで忙しい人だから頼み辛い。だとすれば自力で探すしかなさそうだとインターネットを開き、甘ちゃんの父親に関することを検索しているとピコンとスマートウォッチが鳴る。
誰だろうかと画面を開きメールを確認したら、知らないメールアドレスでも件名に水木ですとあり開いた。
プラネットコード社 第七捜査課 真神昏斗様
金星アプロディロにいるとお聞き、池谷さんに教えてもらいました。一つお伝えするのを忘れてしまいメールでお伝え致します。私の兄、潤はアステル幹部の一人。兄はある調査で金星アプロディロにいます。
もしかしたら昏斗様とお会いする機会があり、ご無礼な発言をするかもしれませんがお会いしたら、水星ヘルスミエに戻るようお伝えいただいてもよろしいでしょうか?私がかけたりメールを送っても返信が来ないので、昏斗様のお言葉なら聞くと思いますので、よろしくお願い致します。
なんの調査か気になるも、わかりました。お会いしたら戻るよう伝えてみますと返信し甘ちゃんの父親を検索したら金神銀次という人物が出てきた。ただ甘ちゃんの苗字は瓜畑だし、さてはとネオリオ社指揮官と調べ検索をかけるとヒットする。
金神銀次は金星アプロディロの指揮官だということが判明。年齢が中年のおじさんであり金持ちですというアピールしているような写真。ただ髪も目の瞳も甘ちゃんと同じだ。瓜畑という苗字は偽名でこれが本名の苗字。
頭に入れておこうと暗記していると海さんに呼ばれ、スリープ状態にし第七捜査課室を出る。
「なにか買い出しとかですか?」
「違う。ついて来い」
珍しいと来い、菊太と呼び菊太も連れて海さんの後をくっついていく。普段なら何もない時はほぼ寝ているのが多いのにどこに連れてってくれるのだろうか。プラネットコード社を出て宝石車に乗り出発し、運転をする海さんが僕に聞いてきた。
「さっき甘露の父親について調べてただろ?」
「はい。それがどうかしましたか?」
「甘露を引き取ったのは昴だってことは知ってるよな?」
「本人から聞きましたよ」
「あの時、俺と昴は地下で調査に当たっててな。地上と同じく豪華な街が7つあり、C街で金を倍にしながら裏売買について当たっていた。そこで妙な噂を聞いて潜入したんだが本当にふざけていやがった」
海さんは忘れられない過去のようなもので、ハンドルを強く握りその続きを綴ってくれる。
潜入した場所はオークションのような場所でも、中身は黒いケースに入っており値段だけが見えるだけ。それでも捕食人間は楽しそうに商品を見て買っていく姿に腹立たしかったそう。
なぜなら中に入っているのは全て捕食人間であり、まれに紛れてクレヴィー社の人間が買いに来ていた。これは許せないと判断しても、捕食人間の日常を邪魔することはできず、その日は一度引き返し宿へ戻った。
「どうするんだよ、昴。このままいけばディアヴォロスと同類のようなもんじゃねえか。ほっとくつもりなのか?」
「ほっとくつもりはない。値段の差はどういう意味なのか、それと裏売買の首謀者である捕食人間はおそらくクレヴィー社と繋がってる可能性が高い。そこを押さえれば壊滅できそうだけど、証拠が揃わないと動けない」
「ちっ。さっきの人たちは救えないってことかよ」
証拠がない限り動けないこともあって、海さんと桜庭課長は証拠を探すために手分けして探して一週間のこと。海さんは普段通りに聞き込みをして宿に戻ったら、桜庭課長が四、五歳ぐらいの女の子と遊んでいた。
「何やってんだよ!」
「僕の子供」
「はあ?!」
「嘘だよ。たまたま例の奴らに逃げているところを目撃して助けてやったのさ」
「あのな、目立たず聞き込みをしろって言ったのは、昴だろうが!全く、俺より目立ってんじゃねえかよ。それでガキはなんで
逃げてたんだ?」
海さんの性格だからその当初、甘ちゃんは怖いおじちゃんと大泣きしてしまったんだそう。見た目で見れば海さん厳ついし、いつも目光らせてるもんね。
甘ちゃんが落ち着き寝たのを確認して、ようやく甘ちゃんのことを知ったらしい。
「甘露は金神財閥の娘であることが判明してな。本来ならば地上で住んでいてもおかしくはなかった」
「まさかディアヴォロスの肉欲しさに地下で商売をしていたってことですか?」
「そうなる。甘露はたまたま、里親の父親に連れられ来たが、やり取りを見たことで処分されそうとしたところ昴が救った」
甘ちゃんもネオリオ人だとは初耳だけど、金神と繋がっているということはネオリオ人で間違いはないのだろう。
「昴がそこまでして甘露を助け引き取ったのは、昴の幼少期に似たような経験をしたからだ」
「課長が?」
「俺もよく知らねえが、昴の故郷でも似たような売買をやっていたらしい。昴は前の土星スノロクの支部長に助けられた影響で甘露を引き取り実の娘のように接している。仕事中は部下だけどあの二人は俺たちが知らない絆があるからな」
通りでいつも一緒に行動してるのはそういうことだったんだと理解ができ、目的地に着いたのか車が停車する。
「ここから歩いて行くぞ」
はいっと返事しながら車から降りるとなっと恥ずかしいと僕は下を向く。僕にはまだ早いよと止まっていたら僕の異変に気づいたっぽく僕の腕を掴んでズカズカとその街へと入った。
お綺麗なお姉さん方たちが寄ってらっしゃいなぁと誘っているも、素通りして行き遊郭街に行くなら前もって行ってくださうよ。こういうの慣れてないんですからと前を向き海さんの背中をみる。
海さんは僕より年上だからこういう場は慣れてるけど、僕は何度来ても絶対に慣れない場だろうと感じた。
到着した場所は遊郭街の北側にあるお店で、ディアヴォロスが続々と入って行く。こんな場所に入っても平気なのかと店に入ると店員のエクリプス人が普通に案内してくれて、一室へとお邪魔すると遊女の方が二名いらっしゃった。
「久しぶりだな、琥珀、真珠」
「遅いですの、海。早く一緒に遊びましょうよ」
「そうですわ。ずっと海がいてくれませんとつまらない」
海さんはすまんと二人といちゃつき始め何この展開と見ていたら、右側にいた女性が立ち上がって向かってくる。一歩とまた一歩と下がり逃げたくても壁に到着して、女性が僕の頬に触れた。いらっしゃいと腕を掴まれそしていきなり倒されてしまう。痛たたたと起きようとしたら女性が僕の上に乗っかり、顔を近づかせてきて心拍が上昇していく。
落ち着け、ここは遊郭街だから遊び女と思えばいいけど、やっぱり無理だと思っていたら、おでこをくっつけ、なるほどねとすぐ離れてくれた。
「ふふっ。そんなに顔赤くしなくてもやらないから平気よ。まあ海ならやっちゃいますけどね」
「ずるいですわ、姉様。わたしゃも海の連れに興味がありますわ。いいですの?」
「気になるならどうぞ」
なんだこの人たちはともう一人の女性も僕に乗っかりおでこをくっつけてすぐに離れ海さんの隣に座る。余計にわからんと起き上がって正座すると右側の女性が不思議なカードを僕にくれた。夕日の模様に7つの星が描かれている。
「名を申していませんでした。あたしゃは琥珀と申します。左にいるのは妹の真珠。先ほどお渡ししたカードはあなたの人生に関係しているカード。黄昏時に観れる北斗七星。名も通り昏斗という名は受け継がれた名でもあり、前世の昏斗には昏斗も含め七人の兄弟がいたと言い伝えがあります」
七人の兄弟……。前世の記憶を読み取ると確かに存在した。
長男である昏有、長女である昏無、次男である昏斗、次女である昏花、三男である昏来、三女の昏未、四男の昏希。
だけど残りの三人兄弟にはまだ会ってはいないし、母さんは妊娠なんてしていなかった。神パーティーに出席していなければ三人に会える可能性は大きかったのか。わからない。
考えていたら真珠さんがこんなことを言った。
「昏斗の母上は生きている可能性が大きいとカードでわかっています。昏斗の両親は神パーティーに出席後、生きている可能性は低く出ていましたが、父上も母上もどこかで生きているとこのカードが示しました」
渡してくれたカードは悪魔の絵に中央には男と女の絵が描かれていた。それに女のお腹が膨れている。
「もしかして僕の弟妹を産ませるために母さんを生かしていると」
「そこまでは分かりませんが七人の兄弟が揃った時に宿る力をディアヴォロスの帝王である蝕夜様が奪おうとしているのではないかとあたしゃたちは考えています」
蝕夜が僕らの力を奪おうとするような感じではないし、そもそも蝕夜は今、昏花に惚れているからないだろう。それか蝕夜ではなく星河会長がその力を奪おうとしているなら止めなくてはならない。
後は母さんが生きている保証だけど、引っ掛かるのはなぜあの時、僕にあのような情報を蝕夜が言ったのかだ。父さんはエクリプス人となり、母さんを食したはず。名前も素性もバレているから別人を食したとは言えない。そこは影神に頼むしかなさそう。
「教えてくれてありがとうございます」
「いいですわ。それで海、連絡で教えてもらったことお伝えしても宜しくて?」
「頼む。早くしないと昴が暴走するかもしれねえからな」
なんだろうかと一度二人は席を外してしまい、二人を待つことになった。
⁑
蝕夜が迎えに来て私は今、蝕夜の行きつけのお店へと訪れており、高そうなスーツがずらりと並んでいた。こんな店になんのようなのかなと店員と話している蝕夜。ここでオーダーメイドしてもらっているのかなと待っていると蝕夜がこっちに来た。
「もういいの?」
「うむ、用は済ませたから鈴哉たちと合流して、昏斗を捜そう」
昏斗がここに到着したらまずはプラネットコード社だよね。そこからどう動くんだろう。瓜畑ちゃんとアプロディティスは兄妹だからもしかして瓜畑ちゃんとアプロディティスの件で動くはず。だからアプロディティスの近くにいればきっと昏斗は動く。
今度開かれる神パーティーはチェッカー形式だから人の人数が制限される。参加するにせよ相手の顔は見れないし画面で誰がいるのか見極められない。だとすると今回ばかりは神パーティーに参加するのはやめといた方がいいかもな。
鈴哉さんと合流するため宝石車に乗り、クレヴィー社に向かいながら外の景色を見ていたら目を疑いそうになる。
「止めて!」
「どうした?」
「お母さんがいたかもしれない。降ろして!」
宝石車を止めてくれて私は扉を開けお母さんがいた場所へ急ぎ周囲を見渡すもどこにもいない。見間違えではなかったと走っていたら、ネオリオ社があった。そっか、ここネオリオ街に入ってたんだと蝕夜が待っている宝石車のところに戻ろうとした時のこと。
私の目の前に知らない人がいるも、ネオリオ社の人間だと理解する。背後にも現れ挟まれてしまった。
「ここで何してんのかなー昏花ちゃん。それともご主人様から逃げてきたとか?」
「そんなんじゃないです。あなた水神さんのお兄さん?」
「そうそう。会ってもいないのにさすがは真神家だね。ちょうどいいや、昏有が凄え心配してたよ。今からでも遅くはない。本当の家に帰ろう。ね?」
手を差し伸べてきて本当の家に帰れるのは嬉しい。だけどなんだろう、水神潤の瞳が嘘のように見える。帰ったとしても兄に会える保証はどこにもない。
戸惑っていると近づいてくる水神潤とフードを被った人が私に触れようとした時、冥王星のペンダントが光ると蝕夜が登場する。
「遅いと思えばやはりそうか。昏花はお前たちには渡さんぞ」
蝕夜が現れたことで水神潤は作り笑いでまた会おうねと言い消えてしまって、蝕夜は無事で良かったと私を抱き寄せるのであった。




