14僕は泉、私は水
菊太に案内してもらった場所は泉でそこに莉耶とひたるが戦っていたのだ。ここにエルミスはいなくても危ないし、いつ泉からクレッギが現れるかわからない。
ここは莉耶の援護をしてひたるを正気に戻さなければ、クレッギは倒せないだろう。それに後ろからヒュードルとボルボロスが来ている。ここは菊太に任せるか。
「菊太、背後のディアヴォロス頼める?」
ワンッといい返事をしてくれて、僕はひたるに向けて攻撃を開始しながら莉耶の援護をする。
「なんとか見つけたみたいだね」
「泉から落ちないで。泉から生まれるディアヴォロスがいるんだ。だから気をつけて」
ひたるも無限拳銃で僕らを攻撃し、僕らはひたるを呼び続けながら攻撃して近距離になって僕は迷わず剣を振るった。どうだとひたるの様子を確認するも戻っている様子がない。やっぱりバラじゃないと元に戻せないのか。
蝕夜に返して貰えばよかったと少々後悔するも、攻めていくとひたるの様子がおかしくなった。人によって時差があるのか定かではないけれど、ひたるともう一度呼ぶ。
すると助けてと言いながら足を踏み外し泉の中へと落下してしまった。まずいと泉の中へと入りひたるの手を掴もうとした時だった。何かが光り出しクレッギだと、すぐさまひたるを掴んで地上へと上がる。
間一髪だったと後ろを向くとクレッギが現れ、ここで倒さないとあそこにまだ保管されている人たちが食される。ひたるを安全な場所に連れて行きたくてもそれは無理のようだ。
クレッギは泉の水を丸ごと飲み込み水鉄砲に僕らを攻撃し始め、僕らは当たらないように避けながら隠れる。
初めて戦うものだからどう対処すればいいのか不明だ。父さんが教えてくれた情報はクレッギの倒し方について、触れてはいなかった。きっと父さんもクレッギに接触したことがないからなんだろう。
それにしても海王星ポセイドンのように魚とか出そうなイメージだったけど水星ヘルスミエは水風船のようなものばかり。ヒュードルを拡大したようなものと捉えればいいのだろう。
黄色の弾丸である電気を流しても効果がない。ヒュードルはそれで倒せるんだけどな。近距離で剣を振るっても、次の攻撃を受けることになる。だったらとスマートウォッチの画面を開き弾丸の色を確認した。
効果的なものといったら緑の弾丸だ。ただし何発も発砲すれば大樹が出来上がるらしく、使うときは要注意とある。以前も使ったけど、枝程度だった。けれど使用する人によって変わる時があるらしい。
一時的に回避できればいいけど効果が現れなかったら違う方法で探すか。
緑の弾丸に変えクレッギの攻撃を交わして一発発砲してみた。だがクレッギが弾丸を避けてしまい違うところに枝が生えてしまう。襲ってくるクレッギでもう一発とやってみるも、クレッギは僕の発砲を交わし続けあちこちへと木が生まれてしまった。
「昏斗、危ない!」
莉耶の忠告に気づきもしなかったエルミスが僕の後ろ側にいて回避できないと思った矢先のことだった。
「ひたる!」
僕を庇いひたるがエルミスの攻撃を受けてしまって、ひたるのお腹から出血し始めひたるを支える。エルミスはひたるを刺したことでクレッギを一度止めていた。
「ひたる、ひたる、しっかりして!」
「昏……斗」
「すぐ止血を」
「いい……の。あたいは……死んだと同然だもん。お願い……。鈴哉さんを……」
「ひたる、ひたる!」
ひたるの温もりが消えていくような感じになり、僕は指先を切って二滴剣に流し込むと弓へと変わる。鈴哉さんは必ず元に戻して連れ戻す。だからひたる、まだ生きてよ。生きてちゃんとひたるの思い伝えなくちゃ。
ひたるを地面に寝かせ弓を構え、弓矢を放つ。エルミスとクレッギの間を通過したことで、エルミスは外したと僕を馬鹿にするように笑った。
そうだよ、わざと外した。その理由はただ一つ。弓には特殊な力が存在する。気づかないだなんてねと、ひたるを抱えて少しエルミスから距離を離す。
ほら気づいてよ、エルミスと僕はわざとらしい笑顔を作るとエルミスの表情が変わった。エルミスとクレッギの後ろにはさっき木に変化したのを矢に当てエンヴィリオというゴーレム的なものだ。
当てればどんなのでもゴーレムとなり真神家を助けていた。実際に僕は初めて使うからどうやって使うのかわからずとも、根っこを生やしエルミスとクレッギを捕まえようとしている。
今のうちにひたるを病院かどこかに連れて行きたいけど、病院もディアヴォロスに襲撃されてそうだな。
「菊太!ひたるを連れて脱出して!僕と莉耶が止めてるから!」
「いいのか?」
「平気。エンヴィリオもいるから平気。早く行って」
菊太は人の姿になりひたるを抱っこして脱出してもらい、莉耶とアイコンタクトをとって総攻撃を開始した。エンヴィリオもいるから大丈夫そうだけど、一刻も早くエルミスを止めなければ一般人を救えない。
クレッギはエンヴィリオに任せて、僕と莉耶はエルミスに与えていく。エルミスは僕が出したエンヴィリオで少し表情が強ばり焦り始めたのは何か理由でもあるのか。無鉄砲に攻撃がくるし何かを恐れている感じがする。
「やっぱり、昏斗と会わなきゃよかった!」
「僕はエルミスに会えて嬉しかったけどな」
社交辞令で言ってみるとエルミスは頬を染めながら、僕らに攻撃を当てていて、エルミスの攻撃を交わしていく。あれを使うしかないかとまだ莉耶たちに伝えていないことがあった。
真神家に隠された真の姿を出してしまうと、自我を持てなくなり暴走が始まる。止められるのは黄昏の花と呼ばれているリコーフォスが必要になるけど、その花は今どこに咲いているのかもわからない。でもいずれは見せなければならない時が必ず起きる。
リコーフォスがなくても自我を持てる自信が全くないけど、エルミスを人間に戻せれば水星ヘルスミエは平和を取り戻せるかもしれない。
「莉耶、もし僕が暴走したら殺す勢いで止めてほしい」
「何する気なの?」
「まあ見てて」
エルミスがボルボロスとヒュードルを出して来て、僕と莉耶に攻撃を開始しようとしている。一歩前に出て深呼吸をし枝の弓を解除した。
緊張感を持ちながら枝に口づけをすると枝についている葉が大きくなり僕を包み込む。僕の髪質が緑となり枝の模様が体中に入り、枝の両手剣が出来上がった。
葉が消えるとエルミスが目を見開いて、僕を凝視していた。この姿に一度ご対面したようなそんな気がする。いざっとエルミスに向けて、剣を振るい出す。
「ごめんなさい!だからいつもの昏斗に戻って!あたしが悪かったよ!だから、だから……」
エルミス、もう無理なんだよ。リコーフォスがない限り、僕の攻撃は止まらないし止めたくても僕自信が止められない。まるで誰かに操られたようにディアヴォロスを駆逐せよと命じられているようだ。
エルミスは泣きながら僕に謝りながら逃げ回っているも、僕の暴走は止まらずエルミスを吹き飛ばす。外に転げたらしいエルミスのところへ行くと、負傷してもうびくともしないような姿でもまたがり両手剣でエルミスの胸を刺した。
バラがエルミスを吸収し人間に戻してあげてと強く願う。すると肌の色が肌色になりこれでいいんだとエルミスの顔を見ていると何かが来て両手剣を抜きエルミスから離れた。
誰だと確認したら漆黒の肌を持ち、髪質は白髪で瞳の色は七色。しかも蝕夜のように目のようなアクセサリーをつけている。
「それ以上、暴走したらあなたは死にます、真神昏斗。死にたくないなら首に下げているものをご覧ください」
蝕夜がくれたペンダントに触れると昏花の写真が現れ冥王星の球体を高速させていくと、写真も高速しなんとリコーフォスの花がみえ解除された。
「なんでこのことを」
「蝕夜様は全てを知り尽くしているお方。真神家が暴走をすることも含め作り上げたもの。蝕夜様は今もなお心を痛めていらっしゃるからこそ、あなたを求め始めた。本来ならばエルミスは回収するよう言われるのですが、エルミスを解放してあげてほしいという願望を求めていらっしゃる。ですのでエルミスはあなたたちに託します。それでは」
僕と莉耶にお辞儀をした人はもういなくなってしまい、エルミスの意識を確認すると大丈夫そうだ。なぜ蝕夜が僕にこんなのをくれたのかは不明でも、僕らが真の姿になりいずれ暴走するのを防ぐためなのか。それはわからない。
「莉耶、エルミスのこと頼める?」
「平気だけど、戻る気なの?」
「クレッギを倒した感覚がない。すでにエンヴィリオも倒される頃だ」
「私も行く」
「ここは一人で行かせて」
莉耶のおでこにキスをして、僕は無限拳銃を構えながらまだ泉の場所で戦っているであろうエンヴィリオのところに引き返した。
戻ってみるとさすがは僕のエンヴィリオだなとこれが最後だよと、クレッギの弱点である箇所を撃っていく。するとクレッギは鳴きながら倒れ消滅した。
エンヴィリオは傷だらけでありながらも、僕のところに来て跪く。よくがんばったね。ありがとう、エンヴィリオと触れて解除と告げるとエンヴィリオはただの木となり、莉耶と合流した。
プラネットコード社に報告し、倉庫にいた一般人や社員たちを回収するも、誰一人生きてはいなかったそうだ。ただ倉庫以外の街などにいた一般人たちは意識が戻り回復を始めている。エルミスが無茶なことをしたことで一般人は全員地上に戻って来れたが、ディアヴォロスという人食い星人がいることで地下に戻りたいと志願する人がいた。
そこは支部長により決断が出されるため今は支社内にテントを張り、そこで暮らしてもらっている。
僕は桜庭課長と一緒に水木支部長のところへと向かっていた。なんかあの人嫌々そうな顔するから苦手なんだよなと最上階に着き支部長室へと入る。
そしたら水木支部長がなんかニヤニヤしながら何かを見ていらっしゃった。これは触れない方がいいのではと桜庭課長をみると笑い出す。
「桜庭課長」
「糸はこう見えてお茶目なところがあるんだよ」
「誰がお茶目だ!」
聞こえてたんだと水木支部長の前に立ち、水木支部長は照れ隠ししながら見ていたものを引き出しに隠す。咳払いしながら報告をと言われ報告する。
「真神家には隠された真の姿が存在します。ですがその力を解放すると自我を持てなくなるケースがあり暴走する恐れがある」
「対処法は?」
「はい。ご存知かどうかは分かりませんが黄昏の花、リコーフォスがなければ止めることは不可能」
「ではなぜ昏斗はその力を解放したにも関わらず、戻れたのだ?」
「僕は一度、月日家の人間と遭遇した際、いただいたものがありました」
首に下げているものを外し水木支部長に見せる。
「これは冥王星プルイーナス……。これとどういう関係なんだ?見た目は冥王星プルイーナスに見えるが」
「僕がその球体に触れると妹の昏花の写真がいくつか入っているんです。球体を高速させると写真も高速し、見えるのがリコーフォスの花。それを見たことで僕は元に戻れると判断。ですがなぜ月日家の者が僕にくれたのかは未だ分かりません。随時月日家と接触した際、ご報告させていただきます」
「承知した。これは一応、他の支部長にも伝えとく。昏斗」
「はい」
「今回の一件でもう一つ確認しておきたいことがある。莉耶からの報告書を見る限り、泉からディアヴォロスが現れたと書いてあった。名は何と言うのか?」
「クレッギです。水のヒュードルと泥のボルボロスのように大きさは異なりますが、水星ヘルスミエで泉をまだ発見していなかったので、まだ報告は不要と認識していました」
言われてみればそうだなと水木支部長は腕組みをし考え、桜庭課長も考えていた。あのサイズだったら僕一人でも倒せたけど、泉が大きかったらさすがに僕一人とエンヴィリオの力では無理だ。まあ今回、泉を発見したからそこは警戒するべきかもしれない。
「まだ疑問点は幾つかあるが、報告をありがとな。また何かあり次第随時報告を頼む」
返事をして下がっていいと言われたから、僕と桜庭課長は第七捜査課室に戻る前に集中治療室へ行ってみた。ひたるはまだ意識が戻ってないそうで、生死の狭間にでもいるのだろうか。
「きっと大丈夫。ひたるは元気になるよ」
「ひたるは元気になると信じてます。あのエルミスは?」
「厳重にしてあるし、もう悪さはしないだろうと仮定しているけどいつエクリプス人に戻るかわからない。様子を見て解放するしかないだろうね」
エルミスは僕らと同様に捕食人間となったのだから、少しは反省するだろうと僕と桜庭課長は第七捜査課室へ戻った。
⁑
半分程度の一般人をクレヴィー社が見つけたけれど、助かった人たちがどうなったのかは知らない。
結局また昏斗に会えぬまま帰ってきちゃったけど、これでよかったのかなとベッドにダイブする。会いたい気持ちは変わらないけど、昏斗のためにも会わないほうがいいと感じてしまう。
そうは言ってもここに来たのには姉やお父さんにお母さんを探すためだもん。ここで挫けていたら、負けそうだと起き上がると蝕夜が目の前にいた。
「蝕夜?」
「そんなに昏斗に会いたい?」
「そりゃあ……私は引きこもりでずっと昏斗が生活費もろもろ稼いでくれてた。感謝をしないまま、私はここに来ちゃったから」
「なら今度は金星アプロディロで行われる神パーティーに誘ってみたらどう?」
「何か違うの?」
そうと私のベッドに座りスマートウォッチの画面を開いて金星アプロディロで以前開催された映像を観せてくれる。水星ヘルスミエはただ逃げるだけだったけど金星アプロディロはまるでチェッカーをしているように見えた。
「これは誰が動かしてるの?」
「金星アプロディロを管理しているアプロディティス。そして相手側は捕食人間代表。もしディアヴォロスが勝ったら全員は食される。ただし捕食人間が勝てば食されず金星アプロディロに住むことが可能なわけだ。しかし地下に戻すことも他のプラネットに帰還するのは許されないと決めている。まあ監視されているということだ」
「チェッカーしたことがないし、そんな知識がないからきっと助けられない」
「挑むのは昏花じゃない。昏斗にやってもらう。そうだな、駒はいくつか捕獲しといた方がよさそう。アプロディティス」
蝕夜が名前を呼ぶとすっと私と蝕夜の目の前に現れ、着物を着ている人に心を奪われそうな素敵な人。
「お呼びでしょうか、蝕夜殿」
「昏斗の周りにいる者を招待せよ。そうすれば昏斗は参加する」
「……御意」
少し間があったような気がするけど、アプロディティスは行ってしまい何をする気なのと想像がつかぬまま今日という一日が終了した。




