13僕は秘、私は宝
耳に水が入ったような感覚だったと体を縛られ、目の前にはなぜか月日蝕夜が優雅にティータイムを楽しんでいた。何が目的だと起きた僕を冷ややかな笑みで見ている。
それに周りにはシャボン玉が埋め尽くされておりその中には一般人やプラネットコード社の人たちが入っていた。ここはきっとエルミスが食す部屋なんだろう。
「あれは身につけているんだ」
「何が目的?ひたるをあんな姿にしたのも蝕夜なの?」
「何度も言わせるな。僕ではない。エルミスがやっているだけのこと。ただモンディガを殺したのは別の者の差金」
何を飲んでるのか匂いでわかってしまう。人紅茶と言えばいいのだろうか。それを一口飲み月日蝕夜は本題へと入った。
「ここに連れて来てもらった理由はただ一つ。昏斗がどこまでディアヴォロスのことを知っているかどうか確かめておきたい」
「言ったところで、昏花に会わせてくれないんでしょ?」
「いいや。昏花は昏斗を探し回っている。話している間に来るかもしれない。話してみないか?」
全てを月日蝕夜に話している間に来る確率は少なからずあるかもしれない。ただ全てを打ち明けてしまったら、昏花に会える確率は低くなる。だが知っている情報を伝えとかなければ、解放はしてくれないだろう。
莉耶たちのことが心配でも、僕が気になる情報をくれればいいか。
「だったら僕が知りたい情報を教えてくれるなら、全て打ち明ける」
「何を知りたい?」
「冥王星プルイーナスは住めないと教えられてた。だけど実際、君は冥王星プルイーナスに住みそしてディアヴォロスの首謀者として動いている。そこに昏花も住めるってことは覚醒したの?」
「僕は生まれながら冥王星プルイーナスに住んでいた。いつからそこに月日家が住みついていたのかも詳細は僕も知らぬ。ただ言えるとしたら冥王星は準惑星に降格したことにも関係しているのかもしれない」
月日家がいつからそこに住んでいたのかも、月日蝕夜は知らないということなのか。ただ随分前から冥王星は準惑星として知られていたプラネットでもあるから月日蝕夜が言っていた通り降格したことに関係しているのかもしれない。
それだけ聞けただけで他はきっと謎を解き明かせとかまた言いそうだから感謝を述べる。
「ありがとう、蝕夜。僕が今知りたいことはそれだけだから。それでどこから話せばいい?」
「好きなところから話せばいい」
そう言われても僕に教えてくれた父さんの情報のみなことと、前世の記憶があるからそれを頼りに話すしかない。
「ディアヴォロスの全種がどこのプラネットにいるのか知ってる」
「ではここは主にどのディアヴォロスが多い?」
「水から生まれるヒュードル、泥から生まれるボルボロス、あまり雨が降らなくとも、雨水によって生まれるヴィロフィ。それからプラネットコード社ではまだ未登録である泉から生まれるクレッギ」
「さすがは真実を突き止める神だ。水星ヘルスミエでは、クレッギがいる。それを飼っているのはエルミスだ」
だろうなとは思ってた。実際にクレッギを見た者は誰一人いないから要注意と父さんから教わったことだ。他はと聞かれディアヴォロスに関することを伝える。
「ディアヴォロスは唯一、食せない人種がいる。コードを持たないネオリオ人。ネオリオ人はディアヴォロスを好む人間。父から教わった情報では育った環境が別物だから匂いが別格。ネオリオ人以外は地下に住み、ネオリオ人は今も尚、地上で暮らしている。僕の憶測にしかすぎないけど、ディアヴォロスというのは悪魔のような存在。日光にちゃんと浴びているネオリオ人が食せない理由は日光の光の現象。食べてしまったら自爆するようなものだから手を出せない」
あっているかはわからずとも、その差だとしたらきっと日光を浴びていれば人間は助かる可能性が多くなる。蝕夜は一度考えるも、お見事と笑みを出した。
「確かにそうだ。地上にいるネオリオ人を食せない理由は、光の現象に値する。即ち元ネオリオ人も結局は食せないということだ」
「だから僕ら真神家を食せないってことでいいんだよね?」
「そういうことだ。さすがは真実を突き止める神でもある。一つ情報を提供しよう。地球オルモフィーケを管理しているゲス、星河はある実験を行った。それがなんだかわかるか?」
実験と考えると姉さんのことを思い出し、まさかと蝕夜に問い出す。
「ネオリオ人がエクリプス人になるかどうかの実験……」
「そう、その通り。本当は星音に試すつもりだったらしいができず、光の現象で火傷を負ったそうだ。だから元ネオリオ人を探していたところ、真神家にたどり着いた」
マカロンを口に入れる蝕夜で、僕もマカロン食べたいと見ていたら口に入れてくれる。僕はもぐもぐし、飲み切った蝕夜が続きを教えてくれた。
「旦那の方はエクリプス人となり、ご婦人の方は旦那によって食されたとゲスが言っていた」
「え?今までエクリプス人はネオリオ人を食せなかったのに?」
「きっと光の現象が弱まっていたから、食せたのだろうと旦那が言っていた」
信じたくはないことで、父さんは母さんを食し今も生きているということなのか。なら神パーティーで見かけたあの人は間違いなく父さんだったってことになる。
「このこと昏花には話したの?」
「いや話してはいない。そうしたら香りの質が落ちるからな」
昏花には知ってほしくはない情報でもある。ただいつかは接触するかもしれないってことでいいんだよね。後はこれを言っていいのか少々疑問が浮く。伝えたことで蝕夜は何をするのかは想像がつかない。
だけど僕がまだ話していないことを知っている顔をしているから、それを言わないと解放はしてくれないだろう。
真神家に代々受け継がれていることで、ディアヴォロスを退治できてしまうこと。それは蝕夜も実際見ているはずだ。
「後はディアヴォロスの弱点、舌にある第二の心臓をやればディアヴォロスは死す。僕はその情報をプラネットコード社に伝えた。後は真神家の力で正気を取り戻せたり、エクリプス人になってしまった捕食人間を戻すことができる」
「ならば僕を人間に戻すことも可であるのか?」
「それはわからない。エクリプス人として生まれた人を捕食人間のように、人間に戻せることは教わってもいないし、前世の記憶にはなかった。なぜそんなことを思いつく?」
「さあな。ただ時に人間が死す場面を見るとここが締め付けられる感覚になる」
蝕夜は胸に手を当てそう発言し、蝕夜も心を痛める時があるんだと初めて知れた。悲しそうな顔立ちになり、僕に語る言葉は僕の心を揺さぶる。
「僕は幅広い人間を食している生活に飽き飽きとしていた。皆はそう思わないようだが、普通の人間になれるのなら僕は人間になり、愛する人と一緒に美味しいものを食したい」
「それってつまり昏花のこと?」
頬がみるみると赤くなり、僕の視線から逸れ照れ始める蝕夜。可愛い昏花をこんな奴に渡すだなんて、兄としては絶対に却下だと突っ込みたいが飼い主は蝕夜でもある。
こんなことは言いたくはないけれど、応援するしかないか。昏花がどんな気持ちでいるのかは知らずとも、昏花の恋は応援したいから。
「兄として僕はまだ蝕夜を認めてないけど、昏花の恋は応援する。ただし、絶対に人系のものを与えたら、僕はバラの剣で仕留めるよ」
「何を言うか。僕は昏斗の仲間であると言っただろう。まあ良い。僕の気持ちに気づいてしまった以上、兄である昏斗にはちゃんと向き合う必要があったからな。僕はもう食さないと約束する」
「約束を破ったらどうする気?」
「約束を破ったら、自害する。それで構わないか?」
「いや自害は駄目だ。聞いたことがある。自害した者は生まれ変わりもできない。だったら罪を償って死を待ったほうがいい。いや、そうはさせないよ。必ず方法を探して蝕夜を人間にする」
蝕夜は僕が発言したことが意外すぎたようでティーカップを持ったまま数秒固まってしまう。本当は今でも蝕夜を討たなければ、終わりは見えないと思っても昏花の主人だ。
昏花は蝕夜に拾われたことで、蝕夜の性格や態度を見て心が惹かれていると感じている。
言葉を待っているとティーカップを置き咳払いをして、下げてくれと知らない人がティーセットを回収し消えた。
「僕の恋を応援してくれるのなら、義弟を信じて待とうではないか」
満面の笑顔で言われ僕は昏花の恋は応援すると言ったはずなのに、この人勘違いしてるよ。それにまだ僕は蝕夜の義弟になったつもりはないのだが、スイッチが入ったように僕を縛っていたものが消えた。
蝕夜は人を疑わないタイプなのかと思いつつも、嘘はなかったし裾に隠していたナイフを出さない。
しかも連絡先を知る羽目になり、スマートウォッチの画面がもはや昏花で、この人に預けといていいものか不安が大きくなるばかりだ。
連絡先を交換し名はそうだなと考えていたら、勝手に僕のスマートウォッチで入力し登録しやがった。名は『頼りがいのある兄君』。まあいいやと画面を閉じ結局、昏花はここに来なかった。
「心配するでない。昏花にはプラネットコード社が先に来たと伝えとく」
「いつかは会わせてくれるよね?」
「もちろんだ。義弟昏斗よ。早く行きたまえ」
本当はもっと知りたいことがあったのだが、外では騒ぎが起こっており行こうとすると待つんだと言われ振り向く。
「一つ、言い忘れていたことがあった。エルミスは人間によって殺されかけていたところを、僕の血を与えエクリプス人とさせた。だからエルミスを救えるのは昏斗だけかもしれん」
「教えてくれてありがとう、兄君。それじゃあ」
蝕夜に別れを告げこんなこと言うのは嫌だったが喜んでくれたからいいかと、僕はここから脱出し莉耶たちと合流することにする。
ここは地上の方かと莉耶に連絡を取る前に、菊太が僕の匂いを嗅いで莉耶と一緒に来てくれた。
「大丈夫?」
「なんとか脱出できたよ。それより僕が閉じ込められていた場所には数え切れないほどの人間が入ってた。しかも行方不明になってたプラネットコード社の何人かも。ただあれは思うように助けられない」
「案内して」
きっと蝕夜はいなくなっているだろうけど、人間は残しているはずだと戻ってみる。
やっぱりここには数人が捕まっている状態で一番下にいる人を助けようともうまく壊れない。菊太、噛みつけと指示するも壊れなかった。僕をどうやって解放したんだと疑問に抱いているとエルミスが現れる。
「エルミス」
「あたしの倉庫ちゃんに入るだなんてね。でーもー捕食人間は渡さないぞーだ」
エルミスは僕らにあっかんべえをし、捕食人間たちを回収し始めそうはいかせないと無限拳銃でエルミスを撃つ。しかしエルミスを守るひたるで弾かれた。
弾かれたことでエルミスはププッ笑い出しひたるを残して、じゃあねと僕らに手を振りながら去ってしまう。ひたるを救わなければ、エルミスを捕らえることもできない。
緑の弾丸でいくか黄色の弾丸でいくか迷っていると、莉耶がこんなことを言い出した。
「バラの剣でいける?」
「バラ奪われたから今は持ってないけど、どうして?」
「半分は人間で半分はエクリプス人。なら声をかけ続ければきっと目を覚ましてくれるんじゃないかな。それでも駄目ならバラの剣で一度刺してみるってのはどう?」
「わかった。探してくるからそれまでは耐えて」
了解と菊太も人間になり無限拳銃で攻撃し始め、僕は薔薇でも花でもなんでもいいから探しに向かった。なかったら枝を切って戻ろう。枝より花の方がしっくりくるけどいいか。
建物から出て当たりを見渡すも花が咲いておらず仕方がないと枝を数本取って枝の先っぽで指先を切り葉に与える。まあまあかなと枝の武器を確認して戻った。
戻ってみると菊太が犬の姿に戻って、ヒュードルとボルボロスを噛み付いている。莉耶はと周囲を見渡すも莉耶がいなくひたるの姿もなかった。
「菊太、莉耶はどうした?」
ワンッとヒュードルとボルボロスを倒しながら道案内してくれて菊太を追う。もしかしたら泉に誘うよう指示が出ているのなら危険が生じる。一刻も早く莉耶のところに行かなくちゃ。
⁑
宝探しのようにどこにいるのと捜しては違う人でも助けなくちゃという一心で、何人か救出するもディアヴォロスがこっちに来てしまうんじゃないかって冷や冷やする。置いていたらディアヴォロスに食されてしまうし、放置するのもな。
どうしようこの人たちとディアヴォロス来ないよねと顔を上げたらプラネットコード社の人を見かけた。私を違法者と言った人だ。それに女の子も一緒にいる。
昏斗を捜しに行きたいし、多くの人を救いたい。すんなり現れるなって言われたけど、勇気を出そう。口の近くに手を持って大声で叫んでみた。
「すみませーん!プラネットコード社の人!助けてくださーい!」
先に気づいたのは女の子の方で私に向け指で指し、違法者と叫んでいるも、こらこらと眼鏡の人が女の子の指を下げこちらに来た。眼鏡をくいっと上げ呆れながら言われてしまう。
「全く、あっさり現れたら撃つと忠告したにも関わらず、助けを呼ぶだなんていい度胸をしているね」
「違法者助けるの?」
「仕方がない。今はこんな状況だし、人手が必要だ。それで僕たちは何をすればいい?」
「ディアヴォロスが来る前にこの人たちを安全な場所に連れてってほしいの。私みたいにはなってほしくない。お願いします!」
二人に頭を下げわかったと言ってくれるまで待つ。本当はこの人たちをクレヴィー社に連れて行くのがお決まりのようなものだけど人間の命は奪いたくはない。
待っているとわかったと言ってくれて顔を上げると女の子は誰かと通話し始めた。眼鏡の人は周囲の様子を窺いながらあることを言われる。
「この前はあんな酷いこと言ってすまなかったね。君にはまだ人の心を持っている。ただ僕らが会うクレヴィー社の人間はほとんどがエクリプス人となってしまった。だからあんな態度をとってしまったんだよ」
「そうだったんですね。そういえば私の仲間っていうんですかね。三人も一見普通に見えても実際は違うし食事の時はいつも私以外飲み物だけでしたから。あの差し支えなければお名前聞いてもいいですか?」
「僕は第七捜査課、課長の桜庭昴。あの子は瓜畑甘露」
「教えていただきありがとうございます。私、人を探しているのでこれで失礼します、桜庭さん」
桜庭さんと瓜畑ちゃんに一般人を任せて、私は昏斗を探していたら蝕夜と牢屋に入れられていたっぽい鈴哉さんたちと合流する。
「無事だったんですね」
「怪我はない?」
「はい。蝕夜」
「昏斗ならさっきプラネットコード社の人たちに助けられていたとエルミスから報告が上がったから安心して構わない」
「会いたかったな……」
「今度は会える。さてとエルミスの暴走が始まったわけだ。昏花たちもクレヴィー社の一員として動いて。僕は昏花の働きを見届ける」
昏斗に会えると思って探してたけど、また会えなかった。私たちを永遠に会わせない悪戯が仕組まれているのかな。ううん、私が申し込まなければ私は昏斗と一緒に花屋をやっていたんだと思う。
それでも私はこの道を選びまた迷うかもしれないけど、今のことに集中しようと歩み出した。




