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異世界に転職しました  作者: Aries
第5章
107/202

8日目

 




 オルトロスに大いに足止めさせられた俺たちは、とりあえず川で返り血を洗い流して場所を移した


 正直言うとみんな疲れてヘトヘトだったが、血と焼けた毛皮やはみ出た臓物の臭いが充満しているこの場に留まりたくなかったのだ


 暗がりの中、川沿いを上流に登り、崖をくり抜き新たな拠点で朝を迎えた


 朝と言っても日はだいぶ登った後だった


「聞いてた話と全然違うです!全然目的地に着かないです〜!!(疲れた!めんどくせぇ!!帰りてぇ!!!)」


「オルトロスウザす。あいらしつこ過ぎっし!」


「今回はもうヘトヘトだよ。みんなが怪我しなかったのは良かったけど、私はしばらくはモンスターと会いたくないな〜。」


「そうだね。でもハルカの魔法を見る機会が無かったのは良い事なんじゃないかな?今回は失敗って事でもう帰っても良いかも。残りの食料も考えないといけないし。」


「とわっちが帰りたいだけっしょ?」


「ですです〜。でもアイリも帰りたいです〜。疲れたです〜。」


 飯田の不満が爆発しつつある


 疲れた、帰りたいを連発してる


 キャラが崩壊してるぞー


 辛いのはみんな一緒だが、明確な答えがないまま進む事に対する不安が、徐々にメンタルを削ってく


 予定では14日〜16日程度で終わるはずだった


 まだ目的地に着いてないのに8日かかってるし、未だに死の森を抜けられないこの状況にイラつくのはわかるが、俺らに言われてもな


 食料は多めに持ってきてるから後1週間くらいいけるか?


 死の森さえ出れば現地調達できるし、最悪手出ししてなんとかなるだろう


 俺は別に戻っても良いと思う


 が…


「食料はまだ大丈夫なはずだよ。だよな?先輩。」


「ん?ああ。そうだな10日くらいなら大丈夫だ。」


 …俺と陽介の分を除いたらな


「じゃあ明日からまたガンガン進むぞ!!予定は遅れてっからチンタラしてらんねーし。つーか隼人、目的地はもうすぐなはずだろ?」


「そーだなぁ。過去の言い伝えでは、前の勇者が死の森に入って3日くらいで抜けたらしいから、もうそろそろなんじゃないか?みんな疲れてるのはわかるけど、結局帰る時も来た道を戻らないとだし、どうせクリアするまで来ないといけないなら、同じ事するの面倒じゃん?このまま進もう。」


 だよなぁ


 こいつらが諦めておめおめと逃げ帰るなんて事するはずがないよな〜


 実際に逃げ帰るわけじゃないけど、周りはそうは思わないだろうし


「とりあえず今日は装備を見直してもう少しだけ移動しよう。」


「そーだな!午後からはもう少し進もう!」


「えっ?今日も移動するの?みんなまだ充分に回復してないし、ゆいピーの充電もないし…。」


「楪さん。言いたいことはわかるけど、野営中に充分な回復は無理だよ。それにここだって昨日の場所からそんなに離れてないんだ、安全とは言い難い。」


「楪さんは心配性だな!大丈夫!!オルトロス達を倒して俺らのレベルもスゲー上がったから、安心して良いぞ!」


「とわっち心配あざっす。昨日休んでた時ある程度確認してるんで大丈夫と思うっす。」


「そ、そう?」


「MPポーションを使っても良いし、交代で昼飯食べて装備確認したら早速出よう。」


「おう!飯をくれ!」


 携帯食のパンと干し肉を配ると、斉藤からは文句を言われたが、もうこれしかそのまま食べれるものはない


 持ってきた食材も野菜が少しとイモくらいしかない


 まさかここで煮炊きはできない


 ちゃちゃっと食べて動いた方が良い


 俺と陽介は見張りの時とかこっそりヴォルトディアの干し肉を齧ってるからそんなに気にしないが、これだけだったらと思うと気が滅入る


 食べてる間もみんな無言だった


 楪は少し心配だ


 慎重になり過ぎてるんじゃなくて、心が折れかけてる


 こんな時こそ美味い飯が食えると良いんだけどなぁ


 無い物ねだりをしてもしょうがない


 少し気にかけておこう


 自分から前に進むしかないんだ


 これはゲームなんかじゃない


 安全地帯はない


『試練』とやらを乗り越えられない場合はどうなるのか?


 その疑問は誰も口にしなかった






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