佐倉楓を探して 1
楓さんが姿を眩ませてから、はや数ヶ月が経った。
あの出来事があってからほんの二、三日後に、アスタさんの死体と共に姿を消した彼。
仲間なら一緒に、彼を生き返らせる方法を探しましょう、と彼が一人で旅立つ前日に言えなかった自分が情けない。
私、榊雫が人生で後悔したことといえば、と問われれば確実に五本の指に入るくらいには後悔している。
連絡手段を絶って旅立った楓さんにしてあげられることといえば、せいぜい帰るべき場所を残し続けることくらいなものだった。
無力な自分が情けない。
私は日々そんなことを思いながら、彼が座っていた、主を失ったソファの穴を埋めるかのように自分が座って、楓さんのことばかり考えていた。
『探したければ探せ』
そう書き置きを残して去っていったものの、いくら探してもその痕跡すら掴めず。
なんとなく、この街にはもういない、どこか遠くに行ってしまったのだろうと察していた。
でも、私は信じていた。
きっといつかの明日、きっと帰って来て、いつものぶっきらぼうな調子で「ただいま」と言ってくれる日を。
だから私は諦めず、せめて楓さんが帰るべき場所を残し続けることに全力を尽くしていた。
楓さんが始めた、何でも屋稼業の店主を引き継ぎ、今日も今日とて依頼をこなすのだ。
以前は閑古鳥が鳴いていたが、先の騒動で名が知れ渡ったのか私たちを訪ねてくるものは以前より増加し、経済的にはかなり潤っていた。
「…….あのー?」
いつか楓さんが帰って来たならば、このお金を豪快につかってお帰りパーティーでも開きたいと密かに考えている。
「……聞いてますかー?」
その時は楓さんだけじゃなくて、アスタさんも一緒に――。
「もしもーし!聞いてますかー!」
「ひゃっ、ひゃい!すみません!聞いてませんでした!」
つい、ぼうっとしてしまった。
依頼人を前にしているというのに。
反省した私は一つ咳払いをし、改めて依頼人に依頼内容を確認した。
「で、では改めて。ようこそ。出来る限りの依頼は受ける、何でも屋です。今回の依頼内容はなんですか?」
「は、はい。ちょっと、人を探して欲しくて」
「人、ですか?その人の写真とか、名前とかわかりますか?」
「写真はありません。名前は、佐倉楓です」
「えっ――」
予想外に出てきたその名前に、私はあっけにとられた。




