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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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ピンヒール①

今回の配信は、樹と朝倉がゲストとして呼ばれた、とある人気配信者の多人数企画。

その名も《ヒール・スポーツ祭》。テーマは「限界を超えろ!すっごい高いピンヒールで運動会!」という、完全に正気を疑うレベルのチャレンジ系だった。


「え、マジでこれ履くの?」


「これ10cm以上あるよな……バランス感覚ゼロなんだけど」


「歩ける人存在するの?!」


スタジオには、普段から運動配信をしている人、ゲーム配信メインで運動なんて何年ぶり?という人、体幹がゼロな文化系……と、バリエーション豊かな配信者たちが揃っていたが、全員が共通して青ざめていたのは、目の前に並べられたピンヒールの存在。


そんな中、すっと現れた朝倉だけは、長めのストリート系ジャケットにレザーパンツ、そして明らかに他のピンヒールよりさらに高い15cmほどのヒールを履いて、何事もないようにスッ……と歩いてきた。


「うわっ、何その歩き方……モデルやん……」


「てかそれ、他のより高くない!?」


「なんかコーチ感すごい……!」


実際、今回の企画で朝倉は“ピンヒールコーチ”として呼ばれていた。

主催者が以前朝倉のモデル撮影現場に立ち会ったときに、そのピンヒールでのパルクール並みの動きを見てしまったことがきっかけらしい。


「とりあえず、立てない人はそこに座ってていいから。靴の構造と、重心の置き方から説明する。走るのはそのあとな」


朝倉の低くて静かな声がスタジオに響く。

その指示に、普段はイキってる系の男性配信者も「ハイッ!」と即答。場が一気に引き締まった。


ヒールを履いて立とうとした瞬間、グラッときて尻もちをつく者。

ひざがガクガクして「これもうマジで無理だって!」と叫ぶ者。

バランスが取れずに手をばたばたさせて、体幹ゼロがバレる者。


それを見た朝倉が、クスッと笑いながらも、決して見下さず、丁寧に膝の角度や重心の置き方、足首の固定の意識を伝えていく。


「ほら、かかとだけで立とうとすんな。つま先にちゃんと体重を逃がす。背筋は伸ばして、骨盤はまっすぐ。腰で歩け」


「うっ……あっ、ちょっと歩けたかも!」


「足音がデカい奴は力みすぎ。音立てないで歩けるようになったら初級クリア」


「えっ、忍者か何かですか!?」


「いや、お前がドスドスうるさいだけだろ!」


コメント欄も爆笑。


「朝倉先生、鬼コーチだけど優しい」「すげぇ……言われた通りにしたら立てた」「めっちゃスタジオが道場」「でも見た目が一番美しいの朝倉さん……」

「そもそもこのヒールで動けるの異次元すぎる」

「15cmヒールで歩く朝倉、マジで黒豹」


途中、樹も履いてみたものの、


「こ、こえぇ! ちょ、足首死ぬってこれ!」


「お前、靴下で畳滑る時の猫みたいになってんぞ」


「うるせぇ!」


と、完全にわちゃわちゃ状態。


だが、数十分後には何人かの配信者が「歩けた……!」と感動の声をあげ、

競技本番の「ヒール障害物リレー」に突入する頃には、スタジオがまるでダンスバトル前のストリートのような熱気に包まれていた。


そしてその様子を冷静に見守る朝倉が、誰よりもヒールが似合っていて、誰よりも涼しい顔していたことは、視聴者たちの心に深く刻まれた。

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