娘さんからのプロポーズ
配信者さんの家に遊びに行った日の午後、昼ドラ風おままごとが終わったあと、娘さんと朝倉が二人でお絵描きをしていると、
突然、娘さんがぴしっと背筋を伸ばして、まっすぐ朝倉を見上げた。
「わたし、しょうらい、おっきくなったら、あさくらくんのおよめさんになる!」
部屋にいた全員が「おぉ…!」と声を漏らす中、朝倉は目を瞬かせ、一瞬だけ息を止めたようだった。
そのあと――そっと、微笑んで、まっすぐ娘さんの目を見た。
「ありがとう。でも……俺には、もう、大事な人がいるんだ」
その言葉は真剣で、優しくて、少し寂しそうで。
娘さんは「……そうなの?」としゅんとした顔をしたけれど、すぐに「じゃあ……おともだちならいい?」と首をかしげながら聞いてくる。
朝倉はほんの一瞬、微笑みを深めて、やわらかく頷いた。
「もちろん。ずっと、おともだちでいてくれたら嬉しい」
ふわっとした声。まるで風が撫でていくような、優しい響きだった。
その瞬間、リビングの奥で見ていた樹がふっと目を伏せて、小さく笑った。
その肩越しに、配信者夫妻が「……イケメンが過ぎるな」と苦笑し、娘さんの口元はぱあっと明るくなった。
「やったー!」
娘さんはそのまま、朝倉の腕にぴたっとくっついて座り直し、お絵描き再開。
朝倉は何事もなかったかのように色鉛筆を手に取ったけれど、その横顔はやっぱり少し照れてるように見えた。
そして、カメラ越しに視聴者のコメント欄が爆発していた。
「尊すぎる」「その断り方…どこまでも優しい…」「娘さんの純粋さと朝倉のまっすぐさで浄化された」「ガチの紳士」「いや、今のがプロポーズじゃね?」
しばらくは「#おともだちでいてくれたら嬉しい」がトレンド入りしかけたほど。
配信が終わったあと、片付けをしているときに樹がぽつりと呟いた。
「……俺も、ああいうふうに振られたら、普通に好きになってたと思うわ」
それを聞いて、朝倉が小さく笑った。
「うん。お前、そういうの弱そうだもんな」
「なあ、俺のこと、娘さんの年齢から好きなんだろ?」
「うん。ずっとな」
結局、今日も今日とて、尊さの供給が止まらない二人だった。




