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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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忍者かよお前

「──あ、そうだ。今日ちょっと話したかったんだけどさ……」

俺が雑談配信でお茶を啜りながらそう切り出すと、コメント欄が「何?」「また惚気?」とざわつき出す。


「いや、惚気じゃない……いや、惚気かもしれんけど。

最近ほんとに、アイツ、朝倉の“気配の消し方”がすごすぎてさ。マジでホラーなんだわ」


『気配消すってどういうこと?』『忍者?』『ステルス性能高すぎる彼氏』


「いや、冗談じゃなくて。俺が部屋で作業してたり、ゲームしてたりするとき、

あいつが“ただそこにいるだけ”なのに、ガチで気づかないことがある。

この前もさ、リビングでゲームしてたら、“そこにいたの?”って背後から声かけられてさ──

振り返ったら、部屋の隅であぐらかいて本読んでたんだよ。俺が来たときからいたらしい」


コメント「ホラー」「それは怖いw」「逆に心配になるレベル」


「なにが怖いってさ、視界の端にはいたんだよ、間違いなく。なのに、脳が“誰もいない”って判断してたっぽい。

……で、思い出したんだけど、あいつ配信中にもたまに背景に映ってるんだよ」


コメント「は????」「どこに????」「今も?」


「いや、さすがに今はいないけど!

アーカイブ見返してたら、ソファの端とかドアの影とかに普通に“朝倉”がいる時あって、

でもコメント欄も俺もまっっったく気づいてないのよ。で、後から気づいて鳥肌立つっていう」


『存在感ゼロの天才』『それ能力者の類じゃない?』『ダウナー系の異能者感』


「俺も最初それ言ったんだけどさ、本人曰く──」


と、ちょうどそのタイミングで、音もなく部屋のドアが開く。

黒い影がスッとフレームの端に入ってきて、

カメラの前を静かに横切る。ロングの黒髪に、無表情の朝倉。


コメント「うわあああああいたああああ!!!」「心臓止まるかと思った」「今絶対いた!」「映ってたぞ!!」


俺も気づいてなかった。

マグカップ持って戻ってきた朝倉を見て、ようやく反応する。


「あ、なあ、今来たんだよな?な?最初からいなかったよな?」


朝倉は無言で俺の隣に腰を下ろすと、

こくん、と一度だけ頷く。


「お前さ、その能力、どこで身につけたのマジで。

いや忍者なの?なんか修行したの?」


「……ただ、静かにしてるだけ。動かず、息を潜めてれば……人は“そこにいない”って思うだけ」


コメント「怖い」「でもかっこいい」「やっぱり異能力者だこれ」


「なあ、でもカメラに普通に映ってても気づかれないってどういうことよ。

てか、朝倉、なんで毎回そんな位置にいるん?」


「……別に。居心地がいいだけ」


朝倉は、カメラをちらりとも見ず、目を伏せたまま紅茶を一口。

その仕草が妙に優雅で、またコメント欄がざわつく。


『本当に人間?』『朝倉=影の支配者説』『存在が異界』


「──まあ、でも俺はその気配のなさ、けっこう好きだけどな。

物音も立てずにすぐそばにいてくれるの、なんか安心するし。

……ただ、心臓には悪い。リアルにドキッとするからやめて」


「……じゃあ、今度から“来た”ってLINE送る」


「そういうとこ、律儀だなお前は……」


リスナーが爆笑とツッコミで盛り上がる中、

俺はふと、隣の朝倉を見た。


静かにそこにいるだけなのに、まるで空気のように溶け込んで、

でも確かに“俺の隣”にいてくれる。


──それが、朝倉なんだよな。

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