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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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朝倉が嫌いな人

配信中。雑談枠、まったりとした空気が流れてる。

いつものようにコメント欄からの質問に答えてた時、ふとこんなコメントが流れてきた。


『朝倉くんって怒ったりすることあるんですか?』


俺は少し考え込んで、軽く笑った。


「いやぁ、ない……とは言わないけど、まぁほぼないよな。あいつって、あの通りクールだし。

怒っても感情的にはならないタイプ。淡々と、言葉だけで刺してくる系? 怖いよあれはあれで」


コメント欄に「想像つくw」「言葉で処されたい」とか流れる中、俺は思い出したように呟いた。


「──でも、一回だけ。ホントに一回だけ、あいつが完全にキレたところ見たことある」


コメントが一気に「え!?」「気になる!!」ってざわつき出す。


「いや、俺もビビったよ。マジで“誰この人?”って思ったくらい。

なんかヤンキーっていうか……ちょっとガラ悪くなってて、口調もまるで別人。

あいつにあんな喋り方できる声帯あったんだって衝撃だった」


リスナー「相手誰だよ!?」「なにしたらそんな怒らせるの!?」「気になるんだが!?」


「……あれはな、あいつの叔父さん。

家族関係は深く話す気ないけど、あいつその人のことだけは、心の底から嫌ってる。

普段どんなこと言われても、耐えたり受け流したりするのに、そいつの前だと一発アウト。

スイッチ入ったみたいに、キレる」


コメント「えっ…まさか朝倉に地雷が…」「あんな冷静な人にそんなことあるんだ」


「その時もさ、ちょうど俺が家に呼ばれてて。

朝倉がちょっと外出て戻ってきたんだけど……帰ってくるなり玄関で“マジうぜえ、二度と顔見せんなクソが”って口調で」


俺、そこで目を疑ったよ。だってさ……朝倉の口から「クソが」なんて、聞いたことなかったんだぜ?

しかも“口角上がって笑ってんのに目が殺しにかかってる”みたいな、ゾッとする顔してて。


「“あいつ”のことになると本当にダメなんだって、あの時理解した。

それまでは、全部飲み込んでる強い子だと思ってたけど……そうじゃなくて、

“そいつだけは絶対に許さない”って、決めてる相手がいるんだって分かって、逆にホッとした部分もあった。

──ちゃんと、嫌いなもんを嫌いって言えるんだなって」


コメント「それ人間味あって安心する…」「それでも普段は平常心ってどんだけ…」「朝倉、守りてぇ」


「でな、何がすごいって……その後、俺の方を振り返った朝倉が、すぐにまたいつものクールな顔に戻るんだよ。

“……悪い、今のは見なかったことにしてくれ”って」


……その時の俺は、何も言えなかった。

あいつが見せた“素”の一面を、俺がどう扱えばいいか、分からなかった。


でも──


「それからは、俺だけはあいつのキレスイッチを知ってるっていう妙な優越感と責任感ができてな。

絶対あいつの前にその叔父を近づけさせないって、決めてる。

あいつは……自分を壊すような怒り方するから。

多分、誰より自分自身が傷つくタイプなんだよな」


コメント欄は一瞬しんみりしてから、「樹がいてよかった」「2人の信頼エグいな」「朝倉は守られてほしい存在」って温かい反応が流れてた。


「まぁ、そんな感じでね。

滅多に怒らないけど、“俺は全部耐えられる”ってタイプでもない。

そりゃ、朝倉も人間なんだよ」


そして画面の隅に、「……お前だけな、知ってていいのは」と、

低くて柔らかい声が入って、コメント欄が爆発した。


「うおっ、お前いつから聞いてた!」


『冒頭から』『朝倉いるの!?』『地味に愛が重いぞ!?』


「聞いてたなら言えよ!」


「……言う必要、あったか?」


「……はいはい、いつも通りだな」


そして俺は、ほんの少し安心した。


あいつが怒るときも、笑うときも。

全部を、俺だけは知っていていい。

あいつの「平気じゃないとき」を、ちゃんと受け止めていきたいって、そう思った。


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