その直後に...
樹の言葉が静かに落ち着いた頃、コメント欄の流れの中に、ひときわ目立つ名前が現れた。
【朝倉】
『……そんなことを気にしてたのか』
一瞬、コメント欄が止まる。
『え?』『本物?』『!?』『ご本人登場きた』『タイミング!』
樹も驚いたように口を開いたが、言葉が出る前に再び朝倉のコメントが流れる。
【朝倉】
『単に、お前が“痛み”を受け入れられなくて、俺はそれを受け入れられるだけのことだ』
『それに、我慢するってのも愛だろ?
俺は我慢してるつもりだけど……それを嫌だとは思ってない』
『お前が俺を大事にしようとする気持ちも、
踏み込みすぎないようにしてる優しさも、全部感じてる』
『だから俺は……それに報いたいだけだ。お前が苦しまないように、
お前が罪悪感を抱かないように、俺が先に折れてるだけ。
でもそれを“フェアじゃない”とか言われるのは違うと思う』
『これは俺の意思だ。強制されてるわけじゃない』
『……それに。嫌なことはちゃんと拒絶する。
俺がどれだけお前を好きでも、俺にも譲れないものはある』
『……安心しろ。俺は、お前が思ってるほど脆くも、従順でもない』
コメント欄がざわつく。
『は???????』『語彙が重すぎる…』『どっちもヤンデレじゃん』『いやまじで深すぎて泣ける』
『我慢は愛、って…刺さる』『朝倉、言葉選びが静かに鋭い』『名言きたな』『やっぱり人間じゃなかった』
樹はそのコメントの流れを黙って見ていた。
そして、深く息をついて、笑みをこぼす。
「……なんで見てんだよ、もう寝たと思ってたのに」
【朝倉】
『樹の声、聞こえたから』
「……もー……ほんっと、怖いくらいお前完璧だな。
俺の心配まで先回りして、言葉にして、しかも……俺より冷静にまとめてくるって、なんなん?」
【朝倉】
『お前が“俺を傷つけたい”と思ってることまで、
俺が気づいてないと思ったか? ……甘く見ないでくれ』
樹は思わず笑って、首を横に振る。
「……ほんと、どっちが手綱握ってるんだかわかんねぇな、もう」
【朝倉】
『俺はお前のものだ。だけど、俺の意思は俺のものだ』
『だから、お前はもっと自由にしていい。
それで俺が壊れるなら、そのときは、ちゃんと止めるから』
コメント欄:
『やばい』『尊すぎる』『思考が哲学すぎる』『愛の高度が高すぎる』『この二人、愛という名の戦場にいる』
樹はしばらく黙っていたが、ふっと小さく笑った。
「……ありがと、朝倉。マジで、お前が俺で良かったよ」
【朝倉】
『俺も、そう思ってる』




