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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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実は樹も

雑談配信の途中、コメント欄が少し盛り上がる。

「朝倉くんの愛重くない?」「よく受け止められてるね」「でも逆はないの?」

そんな流れの中、ひとつのコメントが樹の手を止めさせた。


『朝倉くんは樹さんのこと大好きで、全部受け入れてくれてるけど……樹さんのほうは、朝倉くんに“重い愛”みたいなの、ないんですか?』


少しの間、無音が流れた。

樹は静かに息をついて、モニター越しの視線を外す。目元に、苦笑のようなものが浮かぶ。


「……うん、あるよ。めっちゃ言いづらいけど」


コメント欄が一斉にざわめく。

『え?』『えっっっ』『ガチ?』『気になる……』


「……俺さ、アイツを……傷つけたいって思うこと、あるんだよね」


リスナーたちの息が止まるのがわかる。

樹は少しだけ目を伏せて、机の上で手を組んだ。


「殴りたいとか、そういう単純な話じゃない。……なんかこう……俺のせいで苦しんでるところを見たいっていうか。壊したいって思うときがある。好きすぎて。どこまで俺を愛してるのか試したくなる」


「でも……それを言ったとき、朝倉は――“俺は痛みを愛だと感じることができる”って、そう言ったんだよ」


コメント欄がまたざわつく。


『えっ』『それって…』『ちょっと待って重い重い』『朝倉くん強すぎる……』


樹は顔を上げて、真剣な目でカメラを見る。


「本気なんだよ、あいつ。俺が傷つけても、拒絶しない。むしろ喜ぶような……そんな風に見える時がある」


「それが……怖いんだ。あいつ、自分が壊れてもいいって本気で思ってる節がある。俺が何しても、きっと“愛されてる”って思って笑ってくるんだよ」


「それで、俺……いつか本当に殺しちゃうんじゃないかって、マジで怖い。だから、踏み込めない。触れたくない感情に触れちゃいそうでさ」


コメント欄:


『重い、でも真剣』『こっちまで泣きそう』『やば……めっちゃSじゃん樹さん…』『共依存の沼』『朝倉くんが受け止めすぎてるのもやばい』


「しかもさ、あいつも“俺を傷つけたい”って思ってるんだよ。だけど……俺が痛いのは嫌って知ってるから、絶対やらないの」


「フェアじゃないだろ。俺だけが抱えてて、あいつは全部我慢してる」


樹の声が、少しだけ震えていた。

静かな怒りでも悲しみでもなく、深く深く、自分に対するやるせなさのような。


「……でも、アイツは俺の“嫌なこと”は絶対しない。それが分かってるから、余計にあいつの我慢が見えて、……つらくなるんだよな」


「ほんとは、もっと甘えさせてやりたいのに。好きって、ただ可愛がるだけじゃないんだよなって……思う」


コメント欄は一斉に息を呑んだように静まり、やがて、たくさんの言葉が流れはじめる。


『……愛って、そういう形もあるんだね』

『お互いに深すぎる…』

『樹さんも十分ヤンデレじゃん』

『朝倉くんが「痛みは愛だ」って言ったの、やばすぎるけど…わかる気もする』

『その上で制御してるのすごい…愛が怖いけど綺麗だ』


樹は最後に、少しだけ微笑んで、こう締めくくった。


「……まぁ、あいつは何があっても俺を嫌いにはならないと思ってるけど。俺は――できれば、嫌われるくらいのことはしてみたいと思ってる」


「……それで嫌われなかったら、もう、俺の負けだな」

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