表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
PR
82/152

今日は甘えた

夜、樹の雑談配信。

お茶を啜りつつ、リスナーたちとゆるいやりとりをしていたところに――玄関の開く音と、控えめなノック。


「……ん?あー、あいつだな。バイト終わったか」


樹が立ち上がってドアを開けると、そこにいたのは、制服の上から黒いジャケットを羽織った朝倉。

ネクタイが緩められ、少し乱れた髪に、夜の風の匂い。


「……帰った。疲れた」


「おかえり。おつかれさん」


そのまま無言で中に入り、配信部屋のソファにどかっと腰を下ろす朝倉。

ふう、と息をついて、スッと樹を見上げる。


「……ねぇ、疲れた。甘やかして」


「へいへい、分かりましたよハニー」


「……あとは全部お願い、ダーリン」


コメント欄が瞬間蒸発。


『は?????』

『何!?今何つった!?!?』

『甘やかしてってだけでも瀕死なのにダーリンは反則だろ!!!!』

『語彙力全部溶けた』


樹はにやにやと笑いながら、ソファの隣に座って膝をぽんと叩く。


「ほら、ひざ枕。特等席」


「……ん」


朝倉は無言で頭を乗せ、すぐに目を閉じた。

けど、ただそれだけじゃ終わらない。彼の手が、樹のパーカーの裾をちょいちょい引っ張る。


「……もっと撫でて。耳の後ろ、そこ、好き」


「はいはい、ハニーはお疲れなのね~」


「あと、声……低めの、安心するやつで喋ってて」


「注文多いな、君は。お子様か?」


「……ん。子ども扱いでもいい。……今日は、ワガママ言うって決めた」


「なるほど、甘えモードね。よしよし、可愛い可愛い」


「うるさい……可愛いって言わないで。でも撫でて。強めで」


樹がくすくす笑いながら、ゆっくり髪を撫でていくと、朝倉の眉がふっと緩む。

目を閉じたまま、喉がわずかに鳴って、トロンとした表情。


「……もう少ししたら、着替えるから手伝って。ネクタイめんどい」


「はいはい、お着替えまでご所望ですか。わかりましたよダーリン」


「……それ、俺のセリフ」


「じゃあ改めてどうぞ」


「……お願い、ダーリン」


その言葉に樹は、うわもう無理、と声にならない呻きをあげながら顔を覆った。


コメント欄も同様に大爆発。


『世界が爆発した』

『ありがとう…ありがとう……』

『いつもクールなのに甘えるとき赤ちゃんになるの…ズルい……』


「……お前ほんと、信頼してる相手にしかこれやらねぇんだろうなあ」


「……うん。樹だから、いい。……好きだから、ワガママ言う」


そのまましばらく、何も言わずに髪を撫でていると、朝倉は目を閉じたまま完全に脱力し、すうすうと寝息を立て始める。


樹はふっと優しい笑みを浮かべて、配信カメラに向き直る。


「……寝ました」


「ほんと、クールな顔してるくせに甘え上手なんだよな、あいつ。俺にだけだから、……やっぱちょっと、特別って感じがして……嬉しいよな」


「……はい、惚気でした。ごちそうさまでしたって言っていいぞ」


コメント欄はすでに心をやられていた。


『ごちそうさまでした(正座)』

『やばいもうこの二人無理最高尊い』

『愛されてるし愛してるのが伝わるのやばい……』


「じゃあ、ちょっと失礼」

そう言って、抱きかかえるように朝倉を持ち上げ――まるで重さを感じさせないほど自然に、お姫様抱っこで配信画面から去っていく。


コメント欄が爆発する。


『抱っこーーーー!?』

『うそやろ!?』

『お姫様抱っこしてんじゃねぇよ!!(最高)』

『なにこの尊い現場……』


数分後、戻ってきた樹は、席に着くなり、ふっと笑った。


「寝室に連れてった。……ぐっすりだな、あいつ」


「……いやー、ほんと、あいつがああやって甘えてくれるとさ。俺、たぶん世界一幸せなんじゃねぇかなって思うわ」


『惚気きたー!!』

『爆発しろ!いいぞもっとやれ!』

『こういうのが見たかった……ありがとう……』


「たぶん、普段は甘えたり弱音吐いたりするの、得意じゃないんだと思うんだよ。でも……俺のとこには、ちゃんと戻ってくる。そういうの、……嬉しいよな。俺の膝を安心できる場所って思ってくれてるってことだろ」


優しい、静かな口調。

いつものふざけ合いもない、ただただ慈しむような目で、

画面の先にいる誰よりも特別な“彼”のことを語るその姿に、コメント欄はただただ打ちのめされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ