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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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ぬいぐるみ

いつもの雑談配信。

樹と朝倉がリラックスした雰囲気で、視聴者のコメントを拾いながら話していた。


「こないだ、“何ができないの?”って話、途中だったよな」


と樹が言い出し、再び「朝倉の苦手分野探し」が始まる。


「料理は?」「いや、この前フレンチ作ってたしな……」

「歌?」「配信外でめちゃくちゃうまいの聴いたぞ」

「ダンス?」「バーでポール使ってたやつ、今でも脳裏に焼きついてる」

「スキンケア?」「あれはもう信仰の域……」


コメント欄がまるで朝倉の能力図鑑のページを埋めるように“できること”を挙げていく中、ついにある質問が来る。


『じゃあ、裁縫とかは?』

『編み物とかニードルフェルトとか』

『ぬいぐるみ作ったりできんの?』


その瞬間、朝倉が――

珍しく、「あ」と小さく声を漏らし、眉をひそめた。


「……あー……それは、あまりやったことがないな」


「ん?できないってこと?」


「できない、というより……“触れてこなかった”かな。環境的に、縁がなかった」


「マジか、逆に珍しい……」



コメント欄がザワつく。


『!?!?!?』

『朝倉にも…できないことが…!』

『やった!人間だ!』

『なんか安心した』

『推せる』


「いやあ、ほんと良かった。お前も人間だったんだな」

「……ちょっとだけ安心したわ、うん」

樹もホッとしたように笑う。


だがそのとき、朝倉は一瞬――

カメラの死角になるように、ほんの少しだけ視線を伏せた。

口元に手を当て、何かを考えるように。


だが、誰もその表情には気づかなかった。


───数日後。


「今日の配信前にね、朝倉が“これ見せたいものがある”って言ってきたんだけど……」

と、樹が言いながら、机の下から何かを取り出す。


それは、ふわふわの手作りテディベア。

しかも、樹の目元と同じ模様が刺繍されていて、ちょっとだけ髪型も似せてある。

なにより、目元や口元のステッチが異常なまでに丁寧で、まるで市販品のクオリティだった。


「これ……おれ、もらっちゃっていいの……?」


「うん。練習した。何度も失敗したけど……ちゃんと仕上げたかったから」


「……うわあ……いや、嬉しいけど……」


コメント欄、即爆発。


『え、ちょ、まって』

『完成度やばすぎるだろ』

『既製品じゃないの!?』

『人形教室の先生でもここまでやらん』

『……やっぱ人間じゃなかった』


「ちょっとまって!?何がやったことがないだよ!?何回やり直したんだよこれ!!」

「……24回目、かな」


「うわあああ!!」


『ガチやん』

『努力の鬼』

『意地でも人間のフリさせてくれない男』

『我々はまた朝倉の深淵を覗いてしまった』


「……だから言ったでしょ?センスはなくても、やればできるようになるって」

「そんな怖い言い方ある!?」


樹が半ば呆れたように、でも嬉しそうにテディベアをぎゅっと抱きしめると、朝倉は小さく笑って――


「その子の名前、つけた?……もしよかったら、俺が呼ぶときにも使いたいな」


「うわ、好き……いや、もうなんか色々超えて好き……」


『尊い』

『深夜にこれはしんどい』

『しかもこっちが名前つけるパターンなの最高すぎる』


結局その配信は、樹が名前を決めきれず、朝倉とコメント欄で30分くらいぬいの名前会議をするという、優しすぎる展開で終わったのだった。


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