クローゼットの中身紹介
夜の配信。画面には朝倉の落ち着いた部屋の一角、そしてその隣にくつろいでる樹の姿。視聴者数がじわじわ伸びていく中――
「じゃあ今日は……朝倉のクローゼットの中、見せてもらおうかって回でーす」
「謎の企画だな」
「いや俺も気になってたんだよ、マジで。家来るたびにちょっとずつ衣装増えてるし」
「……どうせコメント欄に言われてたんだろ?」
「バレてる」
そんなやりとりのあと、朝倉がすっと立ち上がり、クローゼットの扉を開ける。
パァン、と開いた瞬間、画面とコメント欄が騒然とする。
《えぐ》《衣装持ちすぎじゃない!?》《量もだがジャンルがわからん》《絶対一般人のクローゼットじゃない》
「じゃ、順番にいくな。まずこれ、貴族系ゴシック。レースの襟と金ボタン、燕尾服タイプ」
《似合うのわかる》《一回舞踏会に呼ばれてそう》《ウエスト位置が綺麗すぎるんよ》
「お前これでバレンタインの配信来たことあったよな」
「ああ、あのときチョコもらいすぎて持ち帰るのが大変だった」
「いや、それ俺もお前のファンから手伝わされたんだが」
「次、ストリート系。グラフィック強めのパーカーとか、バケットハットもある」
《ギャップやば》《私服こっち寄りなの嬉しい》《普通に歩いてたら視線奪われるタイプ》
「これ着てスケボー持ってんの、リアルにいそうで怖いんだよな……」
「滑れるぞ。言ってなかったか?」
「で、スーツ系。シングルもダブルも。タキシードもある」
《息して》《それで高校生なのやば》《式場で見かけても違和感ない》
「着崩さないのがいいんだよな。ちゃんと“着る”じゃなくて“仕立てる”感ある」
「スーツは型が命」
「これは地雷系・量産型。リボンとか、フリルとか、ピンクのやつ」
《!?》《!?!?》《それは反則》《いや待ってください朝倉さん》
「いやこれマジで着こなしてくるからな……可愛いとかじゃなくて、破壊力高い」
「地雷は地雷じゃなくて地獄って言われた」
「和服系もある。浴衣、袴、着物。祖母が教えてくれた」
《もう嫁じゃん》《は?着物も着れるの?》《無敵か?》
「お正月、これで初詣行ったの覚えてる。人混みで迷子になって泣きそうだった」
「俺が後ろから帯引いてたろ」
「そう。助かったけど、周囲の目が怖かったわ」
「これがチャイナ系(漢服)。刺繍が綺麗で、揺れる生地が好き」
《漢服まで!?》《どういう範囲で服集めてんの!?》《似合うんだよな……なんでだよ》
「中華テーマの撮影のときのな。俺が背景で小物持たされてたやつ」
「ちゃんと影になってた」
「それ褒めてるのか?」
「これは……執事服。クラシックなやつ。カフスまである」
《一瞬でメイド喫茶じゃなくて執事喫茶に行きたくなった》《なんで整いすぎてるんだよ》《雇いたい》
「この格好で『ご主人様』とか言われたら本当に倒れるからやめてくれ」
「言ったことないのに想像されてる……すごいな、お前ら」
「あとこれ、バニーボーイ衣装」
《きたぁぁあ》《あると思ってた》《耳付きだと……!?》《合法セクシー》
「本当にやめてほしい、隠しておいてくれ。俺の精神がもたん」
「一番テンション高いの樹だよな」
クローゼットを閉めながら、朝倉が最後に一言。
「服って、自分の外側をどう飾るかじゃなくて、どう在りたいかって話でもある。これ全部、俺だ」
《ほんとそれ》《どの服も似合う理由、今ので理解した》《中身がぶれてないからだ》《尊敬する》
樹もぼそっと一言。
「……どれ着てても朝倉だって、わかるんだよな。そこがすげぇんだよ」
「ふふ。ありがと」
――その日、配信はしばらくコメント欄が止まらないまま、静かに幕を閉じた。




