黒豹
配信は一通り背中のタトゥーアートを披露し終え、樹が驚きと称賛の言葉を繰り返していたところから、そのまま少し落ち着いたトーンの雑談へ。
「てかさ、この黒豹……マジでお前っぽいよな」
「そうか?」
「うん、見た瞬間“あ、これ朝倉だ”って思った」
コメントもざわつき始める。
《確かに黒豹っぽい》《分かる、静かで強い系》《黒じゃなきゃ朝倉じゃない感じする》
樹がスマホの画面を指差しながら続ける。
「黒くて、しなやかで、静かに歩いてる感じ。目の奥では何か見てるのに、それをあえて言わないというか。…ああ、言葉よりも“雰囲気”で伝える感じか」
朝倉は一度視線を落として、薄く笑う。
「美術部の友人にも言われたな。“朝倉って、動物に例えるなら黒豹だよね”って。それでこの図案になった」
コメント欄:
《見る目あるなその友人》《黒豹朝倉って語感が最強》《イメージぴったりすぎる》
「俺はただ静かにしてるだけなんだが……勝手に“迫力がある”とか“目が怖い”とか言われる」
樹「実際、静かな方が怖ぇんだって。お前怒ってても声荒げないし、ニコニコもしないだろ。でも周りが“あ、今ヤバいかも”って空気読むもん」
コメント欄は爆笑気味。
《無言の圧》《静かに圧があるのが一番強い》《豹って基本獲物見てから動くもんね》
「ただ、あの黒豹……眠ってるような顔をしてるだろ?」
「ああ、確かに。目が細くて、でも睨んでる感じじゃない。……安心してる、みたいな」
「描いてるときに、“これは、誰かに守られてる黒豹だね”って言われた。俺、あんまり“守られてる”って自覚なかったが……」
樹、ちょっと照れたように眉を下げる。
「守られてるっつーか、俺から見たら……お前は守りたくなる存在っていうか、そうさせるんだよな。怖いぐらいに芯あるのに、ふとしたとき無防備なんだよ」
コメント欄:
《ああ~これが樹の沼》《黒豹、飼い主にだけゴロゴロ言うタイプ》《守ってるつもりが懐かれてたやつ》
「……そういうところ、たまにずるいぞ」
「は?俺が?どういう意味?」
「そうやって、当たり前に甘やかすから、慣れる」
コメント欄:
《慣れた結果、顔中にキス》《黒豹がゴロゴロ鳴いてる配信ここです》《慣れたら終わり、抜け出せない関係》
樹は苦笑しつつも、少し顔を赤くしながらマイク越しにぼそっと言う。
「……俺も、お前に慣れさせられてる側なんだけどな」
コメント欄大爆発。
《はい沼》《共依存成立》《黒豹と飼い主じゃなくて、黒豹と黒豹じゃん》《もはや同類》
朝倉は黙って、笑わず、でもふわっと目元が柔らかくなる。
「……そうか。なら、安心して眠ってていいな」
その一言に、配信の空気が一瞬静まり返る。コメント欄もしばし間が空いて、
《重い》《あったかい》《これが“黒豹の愛”か》《言葉で狩りに来るタイプ》




