朝倉くんはヤンデレ?
画面にはまったりとゲームをする二人の姿。樹の声はいつもより少し柔らかく、どこか落ち着いていた。
最近、ファンからも「落ち着いてる」「一緒にいる時の空気が良い」と言われることが増えていた。
「しかしさー……朝倉って、やっぱちょっと変わってるよな」
「……急に何だよ?」
「いや、変っていうか……重いっていうか。いや、重いんだけど。悪い意味じゃなくてな?最近ずっと考えてたんだよ。これ、リスナーにも聞かれるしさ」
「ふむ。なら、聞けばいいじゃないか」
「……お前さ、ヤンデレっぽいって思われてるけどさ、本当に監禁したいとか、傷つけたいとか、そういうのはないの?」
一瞬の沈黙。
だが、透――朝倉はすぐに笑った。
「あるにはあるよ」
「……は?」
「独り占めしたい気持ちは常にある。ずっと俺だけを見ててほしいし、誰とも話さず、触れず、俺とだけ生きてほしいとも思う。けど、それを全部実行したら、お前は壊れるだろ?」
「……」
「お前、外の空気吸わないとダメなタイプだからな。だから俺は、お前が“持てる重さ”にまで、俺の愛を切り分けてる。薄く、柔らかく、甘くして、渡してるんだ」
コメント欄:
【ヒエッ】
【いや言葉の選び方エグいな朝倉くん】
【“持てる重さに切り分けてる”って詩人かよ】
【これは完全に本物のヤンデレ】
【重い、重すぎる、でも好き】
樹は苦笑して、息を吐く。
「……逆に、俺がそういう願望持ったらどうするんだよ」
「監禁は嫌だが……殴る蹴るくらいならいいぞ?ちょっとした痛みなら楽しめる」
「……いや、お前さ……それ言っちゃう?」
「本気だよ?俺、たぶんそういう意味でもお前になら全部渡せると思う」
コメント欄:
【え、え!?】
【どっちがSでどっちがMなんだよこれ】
【朝倉くん、まさかのドM宣言!?】
【えでも言ってることはヤンデレSだし】
【混乱してきた……誰か解読してくれ】
樹は少しだけ視線を逸らした。
表情は見えづらいが、どこか考え込んでいるようにも、何かを堪えているようにも見える。
「……ま、まぁ、全否定ってわけじゃないけどな」
「ふむ?」
「……ただ、今ここでその話はやめとこう。配信中だしな」
コメント欄:
【全否定じゃないって言ったぞ】
【隠れS確定じゃん】
【なにこの二人……いろいろ振り切れてて好き】
【完全に朝倉くんが攻めかと思ったら違った】
【新しい扉を開かされたリスナー多数】
【感情のキャッチボールが高度すぎる】
朝倉は配信画面に目をやりながら、ふっと笑った。
「俺たちの愛は、複雑なんだよ」
「いや言い方ァ!」
二人の間に流れる空気は、言葉では言い表せない。
でも、確かに“愛”だった。
重くて、鋭くて、温かくて、ちょっとだけ危うい――そんな愛だった。




