6. 焼酎と炭酸水の割合は6対4
ギルドに入ると、目の前に受付カウンターがあった。
左側には受注できるクエストのビラが張り出されているのだろう、多くの人だかりがある。
右側を見れば簡易的なバーがあり、多くのお酒が並んでいる。
その左隣にはクエストで得た戦利品を買い取ってもらうための買取所があった。
いかにも──異世界のギルドって感じがして、少し心が踊った。
子供の頃に行きたかった遊園地へ、親に連れて行ってもらったあのワクワク感を彷彿とさせる。
僕は正面のカウンターにむかった。
「商業都市ハーヴィットギルド支部へようこそ。どういったご要件ですか?」
カウンターの前に立っていたのは、一人の受付嬢で、髪は黒髪でストレート、肌は澄んだように白く、メイド服を着用している。出ているところは出ていて、ひっこんでいるところはひっこんでいる為、スタイルも申し分ない。
こんな美人さんが受付してたら、血の気が多そうなハンターたちが言い寄ってきて大変だろうな。
それに、ここは商業都市ハーヴィットと言うらしい。
何も分からずにナヴィと共に王都から逃げてきたけど、街が賑わっているのはそういうことなのか。
「実は──ギルド登録をしたくてここにやって来ました。登録は可能ですか?」
「はい、可能でございます。こちらに記入の上、通行証の提示をお願いします」
受付嬢は手際良く、二枚の用紙を取り出した。
どうやらナヴィも記入するらしいのだが。
「すまない、可憐な乙女よ。ナヴィは人間では無いため登録は不要だ」
「え、でも──どこからどうみても人間……」
そりゃ、そういう反応になるわな。
でも──実際に人間では無いのは本当だし、ちゃんと説明はした方が良さそうだ。
「実は僕、精霊使いなんです。ナヴィは精霊で、人間で無いことは本当です」
受付嬢は困惑した表情を浮かべていた。
ここまで怪しがられると、こちらもどうしたら説明していいのか分からなくなってしまう。
すると──ナヴィは一度僕に引っ込み、再度出てきた。
しかも、次はいつものナヴィの姿だった。
「これで信じてくれただろうな! ナヴィはカケルの精霊だ! ちなみに焼酎と炭酸水の割合は6対4で焼酎が6だ」
「翌日二日酔い確定だよ!!」
酔いどれオヤジの発言が無ければ普通に可愛い女の子なんだけどね。
てか──普通に焼酎って言ってるけど、地球の時代で考えたら、この世界って中世のヨーロッパ的な雰囲気があるから、そもそも焼酎なんて存在しないでしょ。
せいぜいあっても、エールとかラム酒とかそういうのじゃない?
「え、分かります! 私も疲れた時とか、割合6対4で焼酎濃いめが好きなんですよね! 次の日大変ですけど」
いや、あんのかよ──
世界観丸潰れなんですけど。
焼酎がある異世界とか聞いたことないんですけど。
なんかもう色々と悲しくなってきた。
「この乙女は分かってるな。今度ナヴィと飲みに行こう」
「はい、楽しみにしてますね」
しれっと飲みに行く約束してんじゃないよ。
それはさておき──僕は用紙に自分の情報記入すると、それを提出する。
「カケル・ホシゾラ様ですね。では次に、この水晶に手をかざしてください」
「す、水晶? 何のために?」
「これは、ホシゾラ様が保有している魔力量や記入した内容に相違が無いか確かめるものとなっております」
待てよ──?
てことはだ。僕は受付嬢の人に精霊使いとジョブを偽って伝えてる。記入用紙にもそう書いてしまった。
だけど、僕の本当のジョブは勇者で、水晶に手をかざしてしまったら、僕が嘘をついているとバレてしまう。
しかも、僕が勇者だってバレてしまったら、おそらくここのギルドでは大騒ぎになってしまうだろう。
そしてゆくゆくは王都に知れ渡って、僕は連れ戻されてしまうかもしれない。
ここは登録するのを諦めるか? いやでも、ここでやっぱやめますってなったら逆に怪しまれてしまうし、何かいい方法はないですかね?
『かざしてみればいい。やればわかるぞ』
なんでそんな投げやりなんですかね?
こっちは冷や汗ダラダラ流しながら、職業詐称がバレないか怯えてるっていうのに。
ええい! ここはやるしかない! バレたらバレたでそのあと考えますよ!
やればいいんでしょ! やれば!
僕は意を決して目をつぶりながら水晶に手をかざした。
かざして数秒。
受付嬢から言葉ひとつ聞こえなかった。
恐る恐る目を開けると、淡々と記入用紙にメモをしていた。
「はい、確認とれました。精霊使いのホシゾラ様ですね。ギルド証を発行しますので、少々お待ちください」
「────えっ? どういう」
受付嬢はそのまま席を立って裏に行ってしまった。
理解出来ない僕は、ナヴィを一瞥する。
「ナヴィが何も対策してないなんて有り得ないだろ? ちゃんとカケルには、勇者のジョブが人に知れ渡らないように、情報を書き換えてるから安心するのだ」
「それならそうと早く言ってよ! 変にドキドキしたじゃないか!」
「人生はスリル。ドキドキしなきゃやってられねえぜ」
だからサムズアップして決めるな。
てかさ、なんでもできるナヴィが魔王討伐すればよくね?
僕じゃなくてもいいんじゃない?
「それはダメだ」
「なんで?」
「え、だって、魔王と飲み友だもん」
おい、まじかよ────
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