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明日も、ダンジョンへ。  作者: 為書結依
第二章 三人で帰る

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第34話 身体に合うもの


 朝、目を覚ますと、俺はしばらく天井の木目を眺めていた。隣の部屋に、昨日までいなかった人がいる。それだけのことが、妙に意識へ引っかかった。身支度を整え、階段を下りる。


 一階の食堂へ足を踏み入れると、土間の方から、箒の穂先が床を擦る乾いた音が聞こえてきた。厨房では女将が大鍋へ火を入れている。その手前、まだ朝の光が薄く差し込むだけの土間で、ヴェラが竹箒を動かしていた。灰色の服のまま、壁際から戸口へ向かって、一定の幅で埃を集めている。


 ゴミを散らさず、物へ当てず、音もほとんど立てない。手順に迷いはなかった。ヴェラは俺に気づくと、竹箒を止めて丁寧なお辞儀をした。


「おはようございます、ノワール様」


「おや、おはよう、ノワール」


 女将もこちらへ気づき、それからヴェラへ声を飛ばした。


「ヴェラ。もういいって言っただろ」


 箒の動きが止まった。ヴェラは竹箒を胸元へ引き寄せ、女将へ向き直った。


「……ですが、手が空いている時は、周囲を整えるよう教えられております」


「誰にだい」


 ヴェラは一瞬だけ黙った。


「以前の家で、です」


「ここじゃ頼んでないよ」


 女将は濡れた手を布巾で拭きながら、土間へ出てきた。


「部屋代も飯代も、ちゃんともらってるんだ。朝っぱらから働かれたら、あたしの方が居心地悪いよ」


「……では、何をすればよいでしょうか」


「何もしなくていい。朝飯ができるまで座ってな」


 女将は空いている椅子を顎で示した。ヴェラはすぐには動かなかった。


「……座って待つことが、現在の指示でしょうか」


「そうだよ」


「承知しました」


 箒を元の場所へ戻し、ヴェラは壁際の席へ腰を下ろした。背筋は伸びたまま。両手は膝の上。休んでいるというより、次の指示を受ける姿勢だった。


 俺は向かいの椅子を引いた。


「おはようございます、ヴェラさん。よく眠れましたか」


「はい、ノワール様」


 ヴェラはすぐに顔を上げた。


「室温、寝具、施錠状態に問題はありませんでした。夜間の物音も、行動に支障をきたす程度ではありません」


「そうですか」


 答えは間違っていない。ただ、眠れたかどうかより、部屋の使用報告に近かった。


「右足首から脛にかけて、今も痛みはありますか」


「歩行可能です」


「歩けるかではなく、痛みの有無を」


 ヴェラの返事が止まった。右手の指が、膝の上でわずかに揃え直される。


「……あります」


「昨日より強いですか、弱いですか」


「弱いです」


「分かりました。朝食の後、もう一度確認しましょう」


「承知しました」


 女将が湯気の立つ木椀を二つ運んできた。野菜と塩肉を煮込んだスープと、黒パンの籠が卓へ置かれる。ヴェラの前には、昨夜自分で選んだ厚手の湯呑みがあった。荒い筋の入った表面へ指を添え、ヴェラは女将の動きを待っている。


「パンは二枚が普通だよ。足りなきゃ足す。ヴェラ、あんたはどうする」


 ヴェラは俺を見た。


「……ご指定をお願いします」


 間髪を入れずに返ってきた。女将が俺の顔を見る。俺も女将を見る。まだ朝だというのに、すでに少し面倒だった。


 こちらで二枚と決めれば、話はすぐ終わる。


「昨日、訓練場で動いた後、夕食は足りましたか」


「はい」


「今朝は、昨日の夕食前よりお腹が空いていますか」


「……同程度です」


「では、二枚で足りそうですか。それとも、三枚あった方が安心ですか」


 ヴェラはパンの籠を見た。次にスープを見る。それから、自分の腹元へ一瞬だけ視線を落とした。


「スープと一緒であれば、二枚で足りると思われます」


「分かりました。まず二枚にしましょう。足りなければ、後でもらえばいいです」


「承知しました」


 女将がパンを二枚、ヴェラの皿へ載せる。


「食ってみなきゃ分からないこともあるんだからね」


「はい」


 ヴェラはパンへ目を落とし、小さく頭を下げた。食べ始めてからの動きは静かだった。パンを同じ大きさにちぎり、スープへ浸し、一定の速さで口へ運ぶ。半分ほど食べたところで、女将が尋ねた。


「どうだい。足りそうかい」


 ヴェラの手が止まる。


「現時点では、残量から見て完食可能です」


「足りるかって聞いたんだよ」


「……不足はしないと思われます」


「なら、それでいいよ」


 女将は肩をすくめ、厨房へ戻っていった。ヴェラはしばらくその背中を見てから、またパンをスープへ浸した。何気ない朝食だけで、これだけ言葉が要る。俺は何も言わず、スープを口へ運んだ。


◆


 朝食を終えて少し経った頃、宿の扉が開いた。


「おはようございます、ノワールさん。ヴェラさん」


 エルザだった。髪際には、リンが白い雫のように収まっている。自分の宿で朝食も身支度も済ませてきたらしく、革胸当ての留め具まで整っている。腰の短剣も、いつもの位置からずれていない。


「おはようございます、エルザ様」


 ヴェラがすぐに立ち上がった。


「座ったままで良いですよ」


 エルザが椅子を示す。ヴェラは一礼し、座り直した。エルザは俺の隣へ腰を下ろすと、鞄から帳面を取り出した。


「本日は、右脚の状態確認と、〈鉄床亭〉での装備選定を行います」


「承知しました」


「ヴェラさん。今朝の痛みについて、ノワールさんへ申告しましたか」


「はい」


「内容を私にもお願いします」


 ヴェラは先ほどと同じ説明を繰り返した。


 右足首の内側。脛の下部。昨日より弱い。歩行は可能。


 エルザは一つずつ帳面へ書き込んでいく。


「長く立っている時と、方向を変える時では、どちらが強く痛みますか」


「方向を変える時です」


「右へ向きを変える時と、左へ向きを変える時では」


「右です」


「盾を持っている場合と、持っていない場合では」


「盾の重量と保持位置によります」


「では、昨日使った二種類の盾に限定します。重い盾と軽い盾では」


「軽い盾の方が、痛みは少ないです」


「保持時間は」


「軽い盾の方が長く維持できます」


 俺は黙って二人のやりとりを見守っていた。エルザは迷いなく問いを細かくしていく。俺なら、少し待つところかもしれない。


 けれど、待たれることが、いつも相手を楽にするとは限らない。ヴェラの返答は硬いままだったが、先ほどより迷いは少なかった。


「右脚への負担を減らすことを優先する場合、軽い盾が適していると考えてよいですか」


「はい」


 エルザが記録しようとする。


 その時、ヴェラの視線が一度だけ帳面から逸れた。ほんの一瞬だった。


「ヴェラさん」


 俺が声をかける。


「何かありますか」


「……ご質問の範囲では、以上です」


 隠しているというより、聞かれていないことを答えてよいのか分からないのだろう。エルザもペンを止めた。


「では、質問を変えます」


 エルザは少し考え、帳面を閉じた。


「軽い盾が不利になる場所、または状況はありますか」


 ヴェラはすぐには答えなかった。右手の親指が、左手の甲を一度押す。


「正面から大きな圧力を受け続ける場合、軽い盾では保持できる時間が短くなります」


「他には」


「……味方の退路を一時的に塞ぐ壁として使用する場合、面積が不足します」


「なるほど」


 エルザは再び帳面を開いた。


「では、軽い盾だけを常用することが最適とは限りませんね」


「はい」


「先ほど、なぜその点を申告しなかったのですか」


「質問が、右脚への負担についてであったためです」


 エルザの指が止まった。責めるような表情ではなかった。ただ、答えの範囲を確かめているように見えた。


「質問されていない事項でも、装備選定や安全に関係することであれば申告してください」


「承知しました」


「今後は、そのようにできますか」


「……ご命令であれば」


 エルザは一度だけ目を伏せ、それから帳面へ視線を戻した。


「分かりました。では、現時点ではそれを指示として出します」


「承知しました」


 エルザは帳面へ一行書き足した。自発的な申告にはなっていない。


 それでも、今は申告する形を先に作るしかないのかもしれなかった。


「今日は、そこまでで十分でしょう」


 俺が言うと、エルザは俺を見た。


「まだ確認可能な項目はあります」


「店で実際に持ってからでも遅くありません。朝から全部聞かれると、ヴェラさんも疲れるでしょう」


 ヴェラがすぐに口を開いた。


「私は継続可能です」


「ヴェラさんが続けたいと思っているのですか?」


 少し意地悪な質問だ。だが答えが気になった。


 また返事が止まる。エルザはヴェラを見て、それから帳面を閉じた。


「では、残りは実物を用いて確認します」


「承知しました」


 残りは、店で実物を持ちながら確かめることになった。


◆


 宿を出て、大通りへ向かう。俺とエルザが少し前を歩き、ヴェラが少し後ろをついてくる。歩調を合わせるように言っても、しばらくすると元の位置へ戻った。


「ヴェラさん。横へ並んで構いませんよ」


「わかりました。では、今後はそのように隊列を組みます」


「隊列ではなく、三人で歩いているだけです」


 ヴェラは黙った。俺は歩幅を落とし、ヴェラの横へ並んだ。そうすれば、少なくとも並んで歩く形にはなる。エルザも少し速度を緩めた。


「ヴェラさん」


 エルザが前を向いたまま言った。


「平地での移動時は、ノワールさんの右側を歩いてください。段差や混雑がある場合は、歩きやすい位置へ変更して構いません」


「承知しました」


 ヴェラはすぐに俺の右側へ位置を変えた。なるほど。基本位置が決まると、足取りはすぐに戻った。


「曖昧な自由行動を求めるより、基本位置と変更条件を明示した方が負担は少ないと判断しました」


「ええ。俺もそう思います」


◆


 〈鉄床亭〉の重い扉を押すと、防錆油と革、金属の匂いが鼻へ入った。作業台の奥から、店主が顔を上げる。


「いらっしゃい。ノワールにエルザか。今日は三人か。何だ」


「彼女の装備を相談したくて来ました。こちらはヴェラさんです」


 俺がヴェラを示すと、店主の視線が肩、腕、腰、右脚へ順に落ちた。


「短槍と盾か」


「はい」


「右脚を痛めてるのか?」


「はい。右足首から脛にかけて、機能低下があります」


「隠さねえのはいい」


 店主はヴェラが持ってきた盾へ顎を向けた。


「今使ってる盾も見せてみろ」


「はい」


 ヴェラが、昨日〈鎖の館〉で契約装備へ加えた軽い木張りの盾を外して差し出す。店主は縁を指でなぞり、革帯を引いた。裏返し、持ち手の位置を確かめる。


「盾そのものは悪くねえ。ただ、持ち手が合ってないな。腕が遊ぶ」


「調整は可能ですか」


「できるに決まってるだろ。まず動きを見せろ」


 店主から盾を返され、ヴェラは左腕へ通した。構え、短い木棒を槍に見立てて突く。前へ出る動きは滑らかだった。右へ向きを変えた時だけ、右膝がわずかに揺れた。


「痛みは」


 エルザが尋ねる。


「あります」


「どの動作で」


「右足を軸に、身体を右へ回した時です」


「保持そのものは」


「問題ありません」


「痛みはありませんか」


「軽度です」


 エルザはすぐに言葉を修正させる。ヴェラも反論せず、答え直す。店主が棚から縦に長い盾を持ってきた。下端を地面へ預けて使える作りで、見た目ほど全ての重さを腕と脚だけで支える必要はないらしい。


「次はこっちだ」


 ヴェラが長盾を受け取る。下端を床へ預け、盾の陰へ身体を入れる。さっきより右脚へ体重を載せずに構えられているように見えた。


「こちらは」


「静止状態では、右脚への負担が少ないです」


「では、こちらの方が適していますか」


「はい」


 答えは早かった。


「ヴェラさん」


「はい」


「その盾に、使いにくいところはありませんか」


 ヴェラは長盾を構えたまま黙った。


「……あります」


「どこでしょう」


「段差のある場所では、下端が引っかかります。狭い通路では、方向転換が遅れます。接地できない足場では、重量がそのまま腕と左脚へかかります」


「それでも、こちらの方が適していると答えたのはなぜですか」


「エルザ様の質問が、静止時の右脚への負担を基準としていたためです」


 店主が鼻を鳴らした。


「なるほどな。聞かれたことしか答えねえのか」


「はい」


「それで前に立つのは危ねえぞ」


 ヴェラは反論しなかった。ただ、盾の取っ手を握る指へ少し力が入った。店主はふと、ヴェラの手元へ目を落とした。


「……その手、槍だけでついた皮じゃねえな」


 ヴェラの指が止まった。


「盾の縁も、素手で受けてきたか」


 答えを待つ声ではなかった。店主は棚から使い古した革の手袋を一組取ると、無造作にヴェラの前へ置いた。


「やるよ。倉に転がってただけの物だ。捨てるほどでもねえから持ってけ」


 ヴェラは革手袋と店主を交互に見た。


「……頂いてよろしいのですか」


「やると言ったんだ。要らなきゃそこに置いていけ」


 店主はすでに次の作業へ視線を移していた。ヴェラは少しの間、手袋を見下ろしていた。それから俺の顔を見る。俺が頷くと、ヴェラは両手で手袋を自分の膝の上へ置いた。


 エルザが店主へ向き直る。


「用途を分ける場合、両方を持つことは現実的ですか」


「荷物が増える。毎回二枚持ち歩く気なら止めねえが、今の足には勧めん」


「では、軽量盾を基本とし、長盾は防衛条件が明確な依頼でのみ借りる、または準備する運用が適切でしょうか」


「そうだな。まずは丸盾だ。動ける範囲を減らさない道具を選べ」


 エルザはヴェラへ向き直った。


「軽量中型丸盾を基本装備とし、長盾は必要時の選択肢として残す。この方針で問題がありますか」


「ありません」


「望ましいですか」


 ヴェラの返事が止まった。


「……問題はありません」


 エルザは少しだけ待った。


「今の質問は、適否ではなく、ヴェラさん自身にとって望ましいかどうかです」


「ご判断に従います」


 答えは戻った。エルザは少し考え、問いを変えた。


「では、軽量盾と長盾では、どちらの方が自分の役割を長く続けられますか」


「軽量盾です」


「どちらの方が、現在の身体に合っていますか」


「軽量盾です」


「では、それを基本装備とします」


「承知しました」


 店主は軽い盾をもう一度受け取り、内側の革帯へ指を当てた。


「持ち手を少し詰める。腕が泳いでる。短槍は柄尻へ重りを足すより、前を軽くした方がいいな。足首は革帯で横振れだけ抑える。固めすぎると逆に転ぶ」


「お願いします」


 俺が答える。店主は紙片へ金額を書き、こちらへ見せた。安くはない。昨日の頭金を思えば、余裕があるとも言えなかった。


 それでも、払えない額ではない。エルザも一度数字を確認し、頷いた。


「この内容でお願いします」


 店主は軽い盾と短槍を手元へ引き寄せた。


「こいつと短槍は夕方まで預かる。調整しておく」


「お願いします」


「このあと稽古するなら、そこの木槍と木盾を持っていけ。仕上がるまでの代わりだ」


 店主は壁際の訓練用装備を指した。


「借り物だ。壊すなよ」


「承知しました」


 ヴェラがすぐに答えた。


◆


 店を出ると、朝の光はすでに高くなっていた。ヴェラは借りた木盾を抱え、木槍を手にしている。


「ノワール様、エルザ様。少しよろしいでしょうか」


「はい」


「私の装備へ、これほどの費用を割いていただく必要はありません。既存の装備でも、当面の運用は可能です」


「必要があるから用意しています」


 エルザが即答した。


「装備を身体に合わないまま使えば、右脚への負担が増えます。結果として、私たち全員の危険が増えます」


 反論できないヴェラに、エルザは言葉を続ける。


「装備費は、パーティー全体の安全費用です。ヴェラさん一人のためだけではありません」


「……承知しました」


 ヴェラはそれ以上言わなかった。俺なら、もう少し別の言い方をしたかもしれない。


 けれど、エルザの答えは間違っていない。罪悪感ではなく、役割と安全の話へ戻した。ヴェラにとっても、その方が受け取りやすいように見えた。


「ヴェラさん」


 俺は二人の横へ並んだ。


「今日、いくつも教えてもらえて助かりました」


「私は、問われた事項へ回答しただけです」


「それでもです」


 ヴェラはしばらく黙っていた。


「……承知しました」


 まだ、それ以上の言葉は出なかった。


◆


 職人区の外れにある稽古場へ入る。ドランは腰掛けに座り、片刃剣の手入れをしていた。俺たち三人を見ると、油布を動かす手を止めた。


「連れが増えたな」


「昨日、〈コンパス〉へ仮登録したヴェラさんです」


 ヴェラが一歩前へ出て、深く頭を下げた。


「ヴェラと申します。短槍と盾を使用します」


 ドランは返事をせず、ヴェラの右脚と、抱えている木盾を順に見た。


「構えろ」


 何もお願いしていないのに確認してくれるらしい。流石は師匠だ。


「俺の師匠がヴェラさんの動きを見てくれるそうです。稽古の間は、ドランさんの指示に従ってください」


「承知しました」


 ヴェラはすぐに盾を左腕へ通し、木槍を右手に取った。動きに迷いはない。役割を与えられれば、身体がすぐに反応する。ドランはしばらく見た後、顎を動かした。


「盾を置け」


 ヴェラの動きが止まった。


「……盾を置いた後の行動をご指示ください」


「好きに立て」


 ヴェラは木盾を下ろした。それから、動かなくなった。足を揃え、左腕を下ろす。右手に木槍を持ったまま次の命令を待つ。


 ドランが目を細める。


「敵が来る」


「方向は」


「前だ」


「距離は」


「お前が決めろ」


 ヴェラの呼吸が一度止まった。


「……守る対象は」


「いない」


 右手に持つ木槍が僅かに揺れる。


「敵を止める位置は」


「それもお前が決めろ」


 ヴェラの身体がわずかに前へ傾いた。


 けれど、足は動かなかった。一度正面を見る。右足へ体重を移しかけ、止まる。今度は左へ戻しかけ、それも途中で止めた。


 視線が俺へ向く。


 次にエルザへ。口が開きかけて、閉じた。木槍がまた揺れた。


「……ご指示ください」


 ドランは俺とエルザを一度見た。それから、ヴェラの右脚ではなく、指示を待ったままの姿勢を顎で示した。


「足より先に、こっちを直す必要があるな」


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