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ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


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第54話 それぞれの報告

 合格の知らせは、すぐに周囲に広がった。


 恒一に電話で伝えると、電話の向こうで大きな声が返ってきた。


「マジかよ!二人とも!? やるじゃん!」


「お前が一番先に決まってたけどな」


「早いのと嬉しいのは別だろ。……よかったな、悠真」


 最後の一言だけ、少し声のトーンが落ちていた。茶化しながらも、恒一なりに気にかけていたことが、悠真には伝わった。


「お前のおかげもあるよ、恒一」


「は? 俺なんもしてねえだろ」


「してた。ちゃんと見ててくれただろ、ずっと」


 電話の向こうで、恒一が黙った。それから、少し照れたような声で「らしくねえこと言うなよ」と返ってきた。



 玲奈からは、長めのメッセージが届いた。


《おめでとう、二人とも!》


《悠真の写真見て、私も専門学校目指そうって思ったの、本当だから》


《結果はまだ分からないけど、私も頑張る》


 悠真は返信を打ちながら、一年前、玲奈が悠真に告白した日のことをふと思い出した。あの時は気まずさと申し訳なさが先に立っていた関係が、今はこんなふうに、互いの背中を押し合える関係になっている。時間が、いろんな形を変えていくのだと思った。


《玲奈の写真、もっと見たい。専門学校決まったら教えて》


《うん、絶対教える》




 紗奈の家では、母親が結果を聞いて、珍しく涙ぐんでいた。


「よかった……本当に、よかった」


「大袈裟だよ、お母さん」


「大袈裟じゃないよ。あんたがここまで来られたこと、お母さん知ってるから」


 紗奈は何も言えず、ただ小さく頷いた。去年の今頃、自分がどんな状態だったか、母親が一番近くで見ていたことを、紗奈も分かっていた。


 その夜、紗奈は日記代わりにしているノートに、短く書き記した。


「合格した。でも、それより、ここまで来られたことの方が嬉しい気がする」


「支えてくれた人に、ちゃんとありがとうって言えるようになった自分も、悪くないと思う」



 三月中旬、卒業式まであと少し。


 教室の窓から見える桜のつぼみは、まだ固く閉じたままだったが、確実に春が近づいていることを教えていた。


 悠真と紗奈、恒一、そして玲奈。それぞれの進路が決まり、それぞれの道を歩き始めようとしている。でも、まだこの教室で過ごせる時間は、あと少しだけ残されていた。


 放課後、四人は久しぶりに部室に集まった。特に用事があったわけではない。ただ、なんとなく、まだこの場所で過ごしたい気持ちが、誰の中にもあった。


「卒業したら、この部室来れなくなるんだよな」


 恒一がぽつりと言うと、玲奈が笑った。


「寂しいこと言うじゃん」


「寂しいだろ、普通に」


 紗奈は窓の外を見ながら、小さく呟いた。


「──でも、場所がなくなっても、関係はなくならないと思う」


 その言葉に、誰も何も返さなかったが、みんな同じことを感じているようだった。


 三月の陽射しが、少しずつ長くなり始めていた。


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