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ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


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第49話 年明け

 元日、悠真は家族と近所の神社に初詣に出かけた。参拝を終えた後、境内で偶然、紗奈と紗奈の母親に会った。


「あけましておめでとう」


「あけましておめでとう。今年、勝負の年だね」


 紗奈がそう言って笑った。去年の元日とは、明らかに表情が違っていた。悠真はその変化を、言葉にはしなかったが、確かに感じ取っていた。


 紗奈の母親が悠真に声をかけた。


「悠真くん、いつもありがとうね。紗奈がこうして笑っていられるの、あなたのおかげだと思ってる」


「いえ……紗奈が自分で頑張ったからです。俺は、ただ隣にいただけで」


「その『ただ隣にいる』が、一番難しいことなのよ」


 紗奈の母親の言葉に、悠真は何も言えなくなった。隣で紗奈が、少し照れたような、それでいて誇らしいような顔をしていた。




 一月半ば、私立大学の入試が始まった。悠真の第一志望である芸術大学の実技試験は一月末、一般入試との日程が近く、体力的にも精神的にも厳しいスケジュールになっていた。


「両方受けるって、やっぱり決めたんだ」


 紗奈が心配そうに聞くと、悠真は頷いた。


「どっちも自分のやりたいことに繋がってる気がして。後悔したくない」


「無理しないでね」


「紗奈こそ」


 紗奈の大学入学共通テストは、悠真の実技試験の一週間前に控えていた。二人はお互いの試験日程を確認し合いながら、励まし合う日々を送っていた。




 共通テスト前日、紗奈から連絡が来た。


「緊張しすぎて、逆に何も考えられない」


 悠真は返信した。


「それでいいんじゃないか。考えすぎるより」


「明日、うまくいくかな」


「うまくいくか分かんないけど、紗奈がこの一年やってきたことは、ちゃんと紗奈の中に残ってる。それは、明日の結果とは関係ないと思う」


 しばらく既読がつかなかった後、返信が来た。


「その言葉、覚えておく。ありがとう」




 共通テスト当日、悠真は試験会場には行けなかったが、朝早くにメッセージを送った。


「行ってらっしゃい。終わったら連絡して」


 試験が終わった夜、紗奈から電話がかかってきた。声は疲れていたが、悲観的な調子ではなかった。


「思ったより、落ち着いて解けた」


「良かった」


「悠真の言葉、思い出しながらやった。結果じゃなくて、ここまでやってきたことを信じようって」


「点数、どうだった?」


「自己採点、まだしてない。今日は、もう何も考えたくない」


「うん、それでいい。今日はゆっくり休んで」




 電話を切った後、悠真は自分の実技試験対策に戻った。窓の外は真冬の夜で、息が白くなるほど冷え込んでいた。


 机の上には、文化祭で展示した写真のデータが入ったハードディスクが置かれていた。悠真はふと、それを開いて、河川敷の写真を見つめた。


 一年前、この写真を撮った時、紗奈がこんなふうに自分の言葉で試験を語れるようになるとは、想像もしていなかった。


 悠真はデッサンの続きに取りかかった。それぞれの受験が、それぞれのペースで、山場を迎えようとしていた。


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