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ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


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第48話 冬期講習

 十二月半ば、冬期講習が始まった。紗奈は朝から晩まで塾の自習室にこもる日々が続き、悠真も実技試験対策のデッサンと並行して、一般入試科目の勉強を進めていた。


 クリスマスが近づいても、二人が会う時間は減っていた。それでも、以前のような不安は薄かった。


「会えない日が続いても、平気になったな、俺たち」


 悠真がメッセージでそう送ると、紗奈からすぐに返信が来た。


「会えないのと、繋がってないのは、違うから」


 その言葉に、悠真は一年間の変化を改めて感じた。会えない時間そのものより、会えない時間をどう過ごすかが、二人にとって大事になっていた。




 冬期講習の合間、紗奈は模試の判定でE判定を取ってしまい、珍しく落ち込んだ様子でメッセージを送ってきた。


「E判定だった。もうダメかもしれない」


 悠真はすぐに電話をかけた。


「もうダメって、決めつけるの早くないか?」


「でも、この時期にE判定って、相当まずいって聞いた」


「聞いたって、誰から?」


「……ネットで」


「ネットの情報より、紗奈の今の勉強量の方が信用できると思うけど」


 悠真の言葉に、紗奈はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。


「悠真、こういう時、変に励まさないよね」


「励ましても、判定変わらないし」


「うん、それでいい。ただ、話聞いてほしかっただけだから」


 紗奈はそう言うと、少し落ち着いた声で続けた。


「明日からまた頑張る。今日は、ちょっと弱音吐きたかっただけ」


「いつでも聞くよ」




 クリスマスイブ、二人は短い時間だけ会うことにした。近所のカフェで、それぞれ参考書を持ち寄っての「勉強デート」だった。


「これ、デートって言えるのかな」


 紗奈が苦笑しながら言うと、悠真も笑った。


「らしいっちゃ、らしいだろ。俺たちの一年」


 二時間ほど、それぞれ黙々と勉強をした。時々、分からない問題を教え合う以外は、ほとんど会話がなかった。それでも、二人にとってはそれが心地よい時間だった。


 別れ際、紗奈が言った。


「今日、会えて良かった。短い時間だったけど」


「うん。また、正月明けにでも」


「うん。それまで、お互い頑張ろう」




 年末、悠真は実家の部屋で、これまで撮ってきた写真データを整理していた。ふと、去年の今頃の自分を思い出した。紗奈の異変に気づき始め、どうすればいいか分からず、ただ不安だけを抱えていた季節。


 あれから一年。悠真はスマホを取り出し、紗奈にメッセージを送った。


「去年の今頃と比べて、今の紗奈は全然違う。ちゃんと、自分の言葉で話せるようになった」


 しばらくして返信が来た。


「悠真がいたから。一人だったら、多分、変われなかった」


「俺も、紗奈がいたから変われた」


「お互い様、ってことだね」


 窓の外では、年の瀬の冷たい風が吹いていた。もうすぐ、受験本番の年が明けようとしていた。


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