第8話:掲示板を覗く時、掲示板もまた覗いている
【呪いの人影?】ダンジョンを爆走するチャリ男の正体【救世主?】
1:名無しの探索者
最近あちこちのダンジョン配信に映り込んでる例のチャリ男について語るスレ
・呪いの鼻歌を歌いながら爆走する怨霊
・モンスターラッシュをモーセの如く割る英雄
・ダンジョン地下30階に吉〇家の牛丼を届ける配達員←New!
2:名無しの探索者
おい最後wwww混ぜるな危険すぎるだろwwww
3:名無しの探索者
牛丼配達は流石に草どう考えてもAIのフェイク動画
ダンジョン内だぞ?
間違いない
4:名無しの探索者
星宝輝士団の生配信でアタッカーがガチ食いしてたの見た
蓋を開けた瞬間の湯気が飯テロすぎたわ
5:名無しの探索者
いやいやおかしいだろwwwダンジョンだぞww
チャリで地下30階まで運ぶなwww物理法則仕事しろwwwww
6:名無しの探索者
ありすちゃんの配信でもオーガの群れをガン無視して爆走してたな
ありすちゃん、カメラの前なのに完全に般若になってて草生えた
7:名無しの探索者
超弩級アイドル配信者を一瞬で般若に変えるチャリ男
ある意味どんな魔物より恐ろしすぎるw
8:名無しの探索者
ありすちゃんが「待ちなさいよこの目立ちたがり屋の不審者!」って血眼で追跡して
チャリ男は「怨霊出たぁぁ!」ってガチ泣きでペダル漕いでたの
あれ最高にコントだった
9:名無しの探索者
ありすちゃんを怨霊扱いは草
あの子は怨霊じゃなくて承認欲求モンスター……
ん?あれ?どっちも人外って時点で大差ないのでは?
10:名無しの探索者
オカルト板だと『呪いの人影』扱いされてて草
不気味な鼻歌を歌いながら時速50キロ超えで毒矢トラップを全踏みしていくらしい
目撃したパーティは悲惨な末路を辿ると噂されているぞ
11:名無しの探索者
怨霊、救世主、配達員、属性過多すぎwwwww
どれが本物なんだよ
12:名無しの探索者
冷静に考えて配達員なわけねー
誰がそこまで届けるんだよ
ギグワーカーの命が軽すぎるわ
13:名無しの探索者
星宝輝士団の45階配信でも目撃されてるぞ
メンバーがモンスターラッシュで大苦戦して絶望してる時
「すいませーんちょっと通してもらってもいいですかー?」
ってチャリで中央突破していったの腹痛い
14:名無しの探索者
突っ切るだけならまだしも、
群がる魔物の攻撃を全部スルーしてたからな
あのチャリのフレーム、オリハルコンか何かか?
15:名無しの探索者
あれは画面の前でフリーズしたわwww
輝士団のリーダーが剣を構えたまま呆然と立ち尽くしてたのほんと草
16:名無しの探索者
マジで何目的でダンジョン爆走してんだよあいつ
チャリで行く意味がわからん徒歩じゃダメだったんか?
17:名無しの探索者
ただの配達員だとしたら
星宝輝士団のアタッカーが最高評価とチップを送ったって話も辻褄が合うんだよな
18:名無しの探索者
だからダンジョンに出前って何だよwww
世界一命がけのギグワーカーじゃん
時給いくら貰ったらそんな魔境行けるんだってwwwww
19:名無しの探索者
もしガチだとしたら、あいつが次にどこに出没するか気になるわ
ワンチャン俺の推しの配信にも映り込まないかな
20:名無しの探索者
お前の推しって誰よ
21:名無しの探索者
氷野村麻琴ちゃん
バールのようなものを振り回しててめちゃくちゃかわいい
ただし、同接20人前後の超底辺配信者な模様
22:名無しの探索者
底辺すぎて草も生えない
+++++
都内にある、築年数のいってそうな木造アパートの一室。
電動カミソリでヒゲを剃っているおっさんがいた。
おっさんはヒゲを剃りながら、もう片方の手でスマホをいじり、掲示板のスレッドを眺めていた。
「ネットじゃチャリ男の話題でもちきりだな。呪いの人影、救世主、配達員——いやいや、最後の配達員説はさすがにないって」
おっさんはヒゲを剃る手を止め、スマホを凝視する。
「……いや、一度試してみるのもありか? 今度の配信は、それでいってみるかな」
今は底辺のダンジョン配信者だが、いつまでも底辺で甘んじているつもりはない。
丹羽愛莉鈴や星宝輝士団レベルとまでは言わないが、せめてもう一桁か二桁、同接数が増えてほしい。
「今はあの人のおかげで何とか生活費も維持できてるけど。いつまでもあの人だけに甘えてるわけにもいかないしな。……これで、よし」
ヒゲを剃り終え、衣装に着替える。
そして、相棒を手にした。
バールのようなものである。
「よし、じゃあ、今日も配信するか! 脱、超底辺!」
おっさんはダンジョンへ向かう。
「みなさん、おはこんまことですっ!」
おっさんこと、氷野村麻琴の配信が始まる。
ピロンッ!
「わわ、ビッグラッキーさん、今日も大きな応援ありがとうございますっ! でもでも、絶対に無理はしないでくださいねっ!?」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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