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人間未満、あるいは未完成  作者: レム睡眠
1章 黛紫苑編
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15/25

後日談、満開の笑顔

決着から翌日。


今日は土曜日。休日で有り、学校も休校。

いつもの如くチャイムをうるさく鳴らす九十九はいないため、僕は存分に睡眠を楽しむ。


7時、8時、9時。

このまま12時に向かって過眠して、怠惰を極めようとしていた時、その幻想はある音によって引き裂かれる。


ピーンポーン。


一回だけ。珍しい。

無視を決めるか?

いや、この十数秒後には鬼のような連打が始まる。なら、大人しくでた方がいい。


「はぁ、はいはい」


僕はそこらにある服を掴み取って、最低限外に出られる格好をしてから、恨みを込めて扉を開ける。


「九十九、休日まで……」

文句を言いながら出るとそこにいたのは、

「やぁ、おはよう」

紫苑だった。


「お、おはよう」


拍子抜けだったということは言わずもがなだったが、なぜに。


「九十九さんって方からメールをもらってね、君の家がここだと」


おい、あいつがまさか住所をばら撒いてんじゃねぇだろうな。


「さて、行くよ」

「どこに」

「図書館。ほら、すぐ準備して」

「あ、はい」


有無を言わさないその態度に反論をできるはずもなく、僕は大人しく部屋の奥から勉強道具を引っ張り出して、家の外へとでた。


扉に鍵をかけたことを確認すると、スタスタと紫苑は足早に図書館へと向かう。


「あのー、早いんすけど」


僕は彼女の5歩後ろを歩きながら、彼女背に向かって文句を言う。


「早くしなきゃ、テストも近いんだし」

「えー、勉強そんなにしたくな……」


嫌気からダラダラと歩いていると、彼女は振り返り、僕に向かって指を指す。


「君のそのやる気のなさは分からないことが多すぎるからと見た。だから、私が教えてあげるんです」


ふん、と胸を張る彼女を見て、僕は言う。


「なんで、そんなに僕に勉強させようとするんだよ」


口を尖らせていると、彼女は少々真面目な顔をする。


「君には恩があるから。だから、私ができるのはそれぐらいだと思ってね」


彼女は自分の胸に手を押し当てる。


「辞めろ辞めろ、僕は恩を被せたくてそんなことをしたんじゃない。知ってるだろ?所詮は成り行きだ。そんなもんはすぐ忘れろ」

「無理だよ」


彼女は僕の物言いに対して、近くの花を摘みながら反論をする。


「知ってるかい?私の名前の由来、紫苑の花言葉」

「知らん」


僕が即答をすると、紫苑はふふふと小さく笑いながら答える。


「『あなたを忘れない』、だよ」


彼女の満面の笑みは、春の陽光に照らされながら、光をいっぱい浴びる花のように美しかった。


了。

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