後日談、満開の笑顔
決着から翌日。
今日は土曜日。休日で有り、学校も休校。
いつもの如くチャイムをうるさく鳴らす九十九はいないため、僕は存分に睡眠を楽しむ。
7時、8時、9時。
このまま12時に向かって過眠して、怠惰を極めようとしていた時、その幻想はある音によって引き裂かれる。
ピーンポーン。
一回だけ。珍しい。
無視を決めるか?
いや、この十数秒後には鬼のような連打が始まる。なら、大人しくでた方がいい。
「はぁ、はいはい」
僕はそこらにある服を掴み取って、最低限外に出られる格好をしてから、恨みを込めて扉を開ける。
「九十九、休日まで……」
文句を言いながら出るとそこにいたのは、
「やぁ、おはよう」
紫苑だった。
「お、おはよう」
拍子抜けだったということは言わずもがなだったが、なぜに。
「九十九さんって方からメールをもらってね、君の家がここだと」
おい、あいつがまさか住所をばら撒いてんじゃねぇだろうな。
「さて、行くよ」
「どこに」
「図書館。ほら、すぐ準備して」
「あ、はい」
有無を言わさないその態度に反論をできるはずもなく、僕は大人しく部屋の奥から勉強道具を引っ張り出して、家の外へとでた。
扉に鍵をかけたことを確認すると、スタスタと紫苑は足早に図書館へと向かう。
「あのー、早いんすけど」
僕は彼女の5歩後ろを歩きながら、彼女背に向かって文句を言う。
「早くしなきゃ、テストも近いんだし」
「えー、勉強そんなにしたくな……」
嫌気からダラダラと歩いていると、彼女は振り返り、僕に向かって指を指す。
「君のそのやる気のなさは分からないことが多すぎるからと見た。だから、私が教えてあげるんです」
ふん、と胸を張る彼女を見て、僕は言う。
「なんで、そんなに僕に勉強させようとするんだよ」
口を尖らせていると、彼女は少々真面目な顔をする。
「君には恩があるから。だから、私ができるのはそれぐらいだと思ってね」
彼女は自分の胸に手を押し当てる。
「辞めろ辞めろ、僕は恩を被せたくてそんなことをしたんじゃない。知ってるだろ?所詮は成り行きだ。そんなもんはすぐ忘れろ」
「無理だよ」
彼女は僕の物言いに対して、近くの花を摘みながら反論をする。
「知ってるかい?私の名前の由来、紫苑の花言葉」
「知らん」
僕が即答をすると、紫苑はふふふと小さく笑いながら答える。
「『あなたを忘れない』、だよ」
彼女の満面の笑みは、春の陽光に照らされながら、光をいっぱい浴びる花のように美しかった。
了。




