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月光の誓約 陽光の宿怨  作者: あるちー
第二章 闇の胎動
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6 変化と邂逅と困惑と

結局、猩々事件の後は何事もなく無事合宿は終了した。

ただ、今回の件は師匠から合宿参加者(宿郷一族)には真相が告げられ、また箝口令も出された。

そして例年恒例のほぼコミュニケーション合宿は撤回され、普段以上の厳しい鍛錬が行われることとなった。一部不満も出た(一般道場生)ようだが、道場の母体は宿郷一族でほぼ占められているため、大多数によって一掃された。

結局俺にとっては満足いく合宿になったので何の文句もない。

まあ、問題は鈴鹿が俺から一定距離から離れなく、常に監視体制に入っていたのが玉にきずだったが。

この勢いで戻ってからも鍛錬をしようと意気揚々としていたのだが、そうはいかなかった。

鈴音ちゃんがめちゃくちゃおこだった・・・

父親、鈴鹿、香鈴、そして俺が数日不在だったのだ、最初は不思議そうに屋敷や庭を探していた様だが、どこにもいないとわかるとギャン泣き、その後は拗ねるわ怒るはまた泣くはで残っていた奥さんと祖母、和馬は散々な連休だったようだ。

俺達が帰ると最初はご機嫌になってまとわりついてきて可愛がっていたのだが、段々とここ数日俺らがいなかった事を思い出したようで、そこからのご機嫌取りが容易ではなかった。

最悪なのは、鈴鹿の奴が


「そ、蒼太は妹ちゃんのご機嫌取りも上手そうだから、蒼太にお願いするね!」


と捨て台詞を吐き、更に師匠と香鈴までもがそれ乗っかった。

これが居候の悲しい立場だ。頭を抱えながら式神を駆使し、丸一日を費やしてご機嫌を治してもらった。


「そうたんはにぇ、いないないちゃ、めっにゃの」

「うんうん、今度泊りがけの時は絶対鈴音ちゃんに言うよ」


すると鈴音はにぱーと笑って頭をなでててくれた。

今日一日のご機嫌取りがすべて癒された気がした。


「やっと鈴音のご機嫌も治って良かったわ。蒼太君ありがとうね」


本当に大変だったようで、美しい美鈴さんの目の下はうっすらと隈が出来ていた。

苦笑いしながら、俺の膝でひな鳥よろしくスプーンからご飯をぱくつく鈴音はすっかりご機嫌だ。


「流石蒼太、この幼女殺し」

「鈴鹿、押し付けた分際で不名誉な呼び名をつけるな」


なんて女だ。自分は早々に撤退したくせにいうに事書いて幼女殺しだと、まるで性犯罪者だ。


「あーごめんって。でもさ、なんで鈴音はそんなに蒼太に懐いているんだろう?」

「ですよね、いまだに人見知りは激しいですし」

「ごほん、いくら蒼太でも鈴音を嫁に出すつもりはないぞ?」

「師匠??」

「お父さん、いくら嫉妬してるからって、その発言はひくわー」

「ですです」

「蒼兄大変だな・・・同情するよ」


小学生に哀れまれている・・・


「そうたん、もっとぉ」

「ああ、ごめん、あーん」

「あーん。むぐむぐんっくん、おーいしーのー」


まあこの天使の笑顔があれば頑張れる・・・さ。

複雑な思いを抱えつつも一家団欒は続いていく。ふと、実家を想い懐かしい気持ちになった。



梅雨明け宣言も出され、ここ数日は雲一つない晴天が続き、暫くロードマラソンに変更していた俺は、久しぶりに山マラソンをしていた。

薄闇からゆっくり明るくなっていく様を感じながら、木の根に足を取られないように走る。

今日の朝練から、どうやら剣術の型を伝授される様だ。

鈴鹿の剣筋を見てから約二か月、ひたすら素振りと型素振りを行った。もちろん投擲術等も同時に行い、術の修練も置いておいて、学校と睡眠の二時間以外はひたすら修練に打ち込んだ。

あまりにも呑み込みが良いので、異例ではあるが本格的な剣術修行に進めることになった。


「お、戻ってきたな」


師匠が手を上げながら俺を呼んでいる。その横には不貞腐れた?いや拗ねてるかのような鈴鹿もいた。


「どうしました?師匠」

「昨日、本格的な剣術修行に移る事は話しただろう?」

「ええ」

「それで宿儺様と話して、君を宿儺様が直々に鍛錬したいと言ってきてね」

「ええっそれって・・・」

「今後宿儺様を師匠に学んでくれ。ま、私は兄弟子になるかな。はっはっは」

「いえ、師匠には色々ご指導頂きました。宿儺様を師匠と仰ぎますが、今後も師匠と呼ばせてください」

「まあ、その辺はまかせる。私はそろそろ道場に行かなければいけないので、鈴鹿、あとはよろしくな」

「はぁい・・・」

「なんか気乗りしてないようだな」

「べっつに、こっちよ、ついてきて」


やはり不機嫌そうな態度で案内する鈴鹿。何が気に入らないのか?

進んでいくと認識阻害の結界を超えた事を感じた。そう、丁度宿郷家に来た初日を思い出していた。

やはり、あの時感じたのは宿儺様か。

しかし、結界内に入ったら霧が出てきたな。こういうのって普通逆なんだが?

不思議に思ってると、人影らしき姿が見えてきた。

どうやら刀を振っている様だ。

その姿がはっきり見えるようになって俺は息を飲んだ。

鬼気迫る殺気、まるで目の前に敵がいるかのように流れる様に刀を振り何合か打ち合った後、残像しか見えない程の神速で相手を斬り伏せた、様に見えた。

ふーっと息を吐いた後刀を鞘に納め、一礼してこちらを向いた。

???????


「来たか、神狐の孫よ。わしが悪名高き両面宿儺だ!」


そういってどうどうと胸を張るが、身に着けているのは襦袢のみ、しかもさっきまで激しく動いていたのだ。なんつーかどでかい双丘が半分くらい露出してるし、さらしもブラジャーもつけていないようで、双丘の先端がばっちり襦袢越しに分かってしまう。


「ちょおおおおおおお!しししし、ししょう???なんって恰好してるんですか!!!」

「ん? いつもの恰好じゃないか」

「そそそ蒼太!!!あっち向いてて!!!」

「・・・・あ、ああ」


ん?ん? あれ? んんんんんんんんん??


「ちょ、ちょちょっちょっと待ってくれ! 両面宿儺って女性だったのぉぉぉぉ??」


俺の絶叫は宿儺と鈴鹿以外には届かず、むなしく響くだけだった。




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